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事例紹介(事業地紹介)

自然再生推進法に基づく自然再生協議会の事例紹介です。
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石西礁湖自然再生協議会[現場ルポ]

石西礁湖自然再生協議会について

記事:環境省九州地方環境事務所 那覇自然環境事務所 国立公園企画官 川越久史
写真等提供:環境省

地域の自然環境の特徴

 「石西礁湖(せきせいしょうこ)」は、石垣島と西表島の間に広がる南北約15km、東西約20kmに及ぶ、わが国で最大のサンゴ礁の海域です。石垣島の「石」と西表島の「西」をとってこのように呼ばれています。
 この海域には、伝統的な赤瓦の屋根や白砂の道が印象的な竹富島をはじめ、黒島や小浜島などの島々が点在し、周囲はサンゴ礁の海に囲まれています。

空から見た石西礁湖
空から見た石西礁湖→拡大図はこちら(JPG)
西表国立公園 シモビシ海中公園地区(2003年撮影)
西表国立公園 シモビシ海中公園地区(2003年撮影)
造礁サンゴ
造礁サンゴとは、石灰質からなる塊状の骨格を持ち、褐虫藻と呼ばれる単細胞生物が細胞内に共生しているサンゴのことをいいます(図1:サンゴとは:国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター)。

 サンゴ礁とは、生きた造礁サンゴやそれらの遺骸などにより形成されている地形です。概ね緯度30度以下の熱帯から亜熱帯の浅海域で発達しており、世界的に見れば、分布北限域に位置しているのが、わが国のサンゴ礁です。
 日本列島で確認されている造礁サンゴの数は、420から430種と言われており、このうち、石西礁湖を含む八重山諸島海域では360種以上が確認されています。日本で確認されている造礁サンゴのうち、8割以上がこの海域で確認されていることになります。
 また、サンゴはその大きさや形が様々であるため、多くの生きものにとって、採餌や繁殖のための格好の場所となっています。マスクをつけて海を覗いてみると、そこには色とりどりのサンゴの間をスズメダイやチョウチョウウオといったカラフルな魚たちが泳ぎ回っています。ウミガメやマンタと呼ばれるオニイトマキエイといった生きものも見られます。
 石西礁湖は多くの生きものが暮らす“海の楽園”となっています。

美しいサンゴ礁
美しいサンゴ礁
マンタ(オニイトマキエイ)
マンタ(オニイトマキエイ)

なぜ、今、自然再生なのか?

 1970年代には、石西礁湖全域がサンゴ礁群集の分布域とされ、サンゴが海面を覆い尽くすような景色が見られました。しかし、今、石西礁湖ではそのような景色が見られなくなってしまいました。
 なぜ、石西礁湖の豊かな海は変わってしまったのでしょうか。その原因として次のようなことが考えられます。

危機に瀕するサンゴ礁生態系 黒島東礁地(2005年撮影)
危機に瀕するサンゴ礁生態系 黒島東礁地(2005年撮影)

(1)白化現象
 サンゴから褐虫藻が抜け出て、サンゴが白っぽく変化することを「白化現象(はっかげんしょう)」と言います。サンゴは褐虫藻と共生しているため、褐虫藻が抜けた状態が続くとサンゴは死んでしまいます。白化は、高水温、低水温、強い紫外線の照射、低塩分、バクテリアによる感染など、様々なストレスが引き金となって発生すると言われています。
 石西礁湖を含む八重山海域では、1983年の夏に初めて白化現象が確認されました。その後、1998年の夏には、海水温の上昇が原因と考えられる白化現象が世界各地で確認され、石西礁湖でも広範囲にわたってサンゴが死滅しました。その後も2001年、2003年など、白化現象が繰り返し起こっており、サンゴに対する大きな脅威となっています。

白化したサンゴ
白化したサンゴ

(2)オニヒトデ
 サンゴを食べる生物のうち、サンゴ礁に特に甚大な被害をあたえるものが「オニヒトデ」です。石西礁湖でも1970年代を中心としてオニヒトデが大発生しました。当時、環境省や沖縄県では莫大な予算を投入し、対策に取り組みましたが、被害を抑えることができず、壊滅的な被害を受けました。その後、1990年代初頭にはオニヒトデの分布密度は低下し、それに伴い、サンゴ群集も回復を見せていました。
 ところが、2001年のモニタリング調査で、前年度までほとんど見られなかったオニヒトデが目立ち始めました。2003年のモニタリング調査では明らかな増加傾向が確認され、一部の海域では大発生が確認されています。

オニヒトデ
オニヒトデ

石西礁湖及び周辺海域におけるオニヒトデ確認数の推移
石西礁湖及び周辺海域におけるオニヒトデ確認数の推移

(3)赤土汚染
 サンゴ礁を衰退させる大きな要因の1つに陸域からの赤土等表土の流出があります。これは赤土汚染と呼ばれています。自然災害や造成工事、農耕などによって地面を覆っていた植物が取り除かれ、むき出しの地表面となり、それが強雨にさらされた時、赤土等が海に流れ出し、海水を赤く染めます。赤土等の粒子は、サンゴの上に堆積し、褐虫藻の光合成を物理的に阻害したり、サンゴの幼生が着床するのを妨げたり、稚サンゴの成長を阻害することが知られています。

赤土流出
赤土流出

(4)水質の悪化
 石西礁湖と漁業などで直接関わる人の多くは海の透明度が悪くなったと訴えています。
 石垣市では下水道の整備を進めていますが、進捗が遅く、下水道への接続率も低いのが現状です。現在では新築の際に合併浄化槽の設置が義務づけられていますが、古い住宅の多くは合併浄化槽が設置されていないため、生活排水が無処理のままで海に流れ込んでいます。
 また、八重山は畜産が盛んなため、海域に流出する栄養塩の影響も懸念されます。

生活排水
生活排水

(5)その他
 それ以外にも、石西礁湖のサンゴ礁は様々な危機に直面しています。シロレイシガイダマシ属の巻貝類などによる食害やサンゴに発症する病気。人工構造物の設置などによる沿岸海域の開発。大型貨物船の停泊時のアンカーによる被害。ダイビングやスノーケリングを行う観光客等の不注意で壊されるサンゴ。販売を目的としたサンゴの違法採取といった問題も発生しています。

自然再生の理念・目標

 石西礁湖自然再生の目標は、協議会が作成する自然再生全体構想の中で明らかにしていくこととしています。
 これに先立ち、環境省では、「石西礁湖自然再生マスタープラン」を平成17年7月に関係機関等の協力により策定しました。自然再生全体構想の策定に当たっては、このマスタープランも参考資料の1つとして活用したいと考えています。ここでは、マスタープランに示された目標をご紹介します。

(1)未来の石西礁湖のイメージ
 サンゴ礁生態系は様々な恵みをもたらしますが、石西礁湖のサンゴ礁生態系は多くの危機に直面しています。このため、将来にわたってサンゴ礁生態系の恩恵を地域が享受していけるよう石西礁湖の保全と再生を進めていくこととしています。
 これまでに実施した調査や意見交換会、ワークショップの結果から、石西礁湖自然再生マスタープランでは、人為的な影響が比較的軽微だったと考えられる1972年の西表国立公園指定当時の姿を石西礁湖における自然再生の目標としています。
 しかしながら、陸地からの赤土や生活排水の流入による水質の悪化、地球温暖化による海水温の上昇に伴って繰り返し起こる白化によるサンゴの死滅など、サンゴ礁生態系を取り巻く環境は日々悪化し続けています。
 石西礁湖とその周辺においては、陸域からの負荷を軽減し、サンゴの回復を手助けするなど、当面は現状より悪化させないことを目標に取り組みを進めていくこととしています。

石西礁湖自然再生の目標

□長期的目標:1972年の国立公園指定当時の豊かなサンゴ礁生態系を取り戻す。
□短期的目標:環境負荷を軽減し、現状より悪化させない。

クジラブッダイ:
ブダイの仲間で和名は「カンムリブダイ」。
ギーラ:
シャコ貝。刺身などにして食べる。
イノー:
サンゴ礁の礁原に発達する礁地(しょうち)や内湾などの静穏な浅い水域。
アーサ:
和名は「ヒトエグサ」という緑藻。春先にはサンゴ礁の浅瀬に繁茂するアーサを採る光景が見られ、昔から沖縄の島々の風物詩となっている。お汁などに入れて食べる。
サバニ:
古くから沖縄に伝わる伝統的な漁船。

 なお、自然再生に取り組む私たちの未来の石西礁湖のイメージは次のとおりです。

「山と森と海と人々がつながり、岸近くにもサンゴが育まれている。すきとおった海のなかを、クジラブッダイが群れ泳ぎ、ギーラが湧き、サンゴのお花畑が咲き誇っている。イノーはモズクとアーサ採りのオバーで賑わい、サバニの上のオジーは今日も笑顔で帰ってきた。夏の日差しに、水しぶきをあげてはしゃぐ子どもたちの白い歯が眩しい。」

未来の石西礁湖のイメージ
未来の石西礁湖のイメージ→拡大図はこちら(JPG)

(2)石西礁湖自然再生に向けた5つの方法
 石西礁湖自然再生マスタープランでは、素晴らしいサンゴ礁を次の世代へ引き継ぐために、[1]保全管理の強化、[2]持続可能な利用、[3]サンゴ群集の修復、[4]普及啓発、[5]調査研究の5つの方法を提案しています。

[1]保全管理の強化 〜海と陸を守るために積極的に取り組みます〜
  • 海域の保全
     国立公園の海中公園地区など、海を保全する区域を定め、海の改変を防ぎます。また、みんなで守りたい海を決め、みんなで守っていくことを応援します。
  • オニヒトデ対策
     オニヒトデの発生状況を調べ、みんなで相談して決めた区域で力を合わせて集中的な駆除を行います。
  • 水質改善
     サンゴの育つ海を残すため、赤土、処理されていない生活排水、農薬や化学肥料、畜舎排泄物などが海に流れ込むことを防ぎます。
[2]持続可能な利用 〜豊かな恵みを子どもたちにも伝えます〜
  • 持続可能な漁業利用
     いつまでも大きな魚が獲れるよう、漁場の保全と魚を獲り過ぎないためのルール作りを進めます。
  • 持続可能な観光利用
     いつまでも多くの観光客に訪れてもらえるよう、サンゴに優しい観光を進めます。
  • サンゴ礁に配慮した各種工事
     工事を行う際は、十分な調査を行ってサンゴ礁への影響が最小限となるよう工夫します。
[3]サンゴ群集の修復 〜サンゴの力を信じてお手伝いします〜
  • サンゴ群集の修復
     サンゴ礁の回復を手助けする形で、サンゴ群集の修復を行います。
     自然に近い修復を行うために、事前にしっかり調べるとともに、修復後もサンゴの変化を調べ、見直しを行いながら慎重に行います。
[4]普及啓発 〜サンゴのために行動する輪を広げます〜
  • 環境教育・環境学習
     小学生からオジー・オバーまで、幅広く環境教育・環境学習を進め、地域で伝統的に培われてきた知識や技術を伝えます。
  • 情報の発信とネットワーク
     科学的な情報を広く伝え、サンゴ礁に優しい行動を広げていきます。
[5]調査研究 〜サンゴ礁のことをもっと調べます〜
  • モニタリング調査
     サンゴ礁の変化に素早く気づくための定期健康診断、モニタリング調査を住民参加で進めます。
  • 調査研究の推進
     海はまだまだ謎だらけ。一層の調査研究を進めます。
  • 情報整備の推進
     サンゴ礁に関する情報の収集、整理を進めます。

石西礁湖自然再生協議会

 平成18年2月27日、「第1回石西礁湖自然再生協議会」が石垣市で開催されました。
 環境省九州地方環境事務所那覇自然環境事務所、内閣府沖縄総合事務局開発建設部港湾計画課、沖縄県文化環境部自然保護課の3者の呼びかけによって、個人32、団体・法人30、地方公共団体20、国の機関7の計89の個人・組織でスタートした協議会。公募委員には、漁業やダイビング、観光などに携わる地域の方々やサンゴ礁生態系等に関する調査研究を行っている研究者や専門家など、石西礁湖に関わる多様な主体が集まりました。
 今後、協議会では、石西礁湖自然再生の目標や協議会参加者の役割分担等を「石西礁湖自然再生全体構想」として取りまとめていく予定です。

第1回石西礁湖自然再生協議会
第1回石西礁湖自然再生協議会

石西礁湖自然再生協議会の進め方
石西礁湖自然再生協議会の進め方→拡大図はこちら(JPG)

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