日時
平成25年7月30日(火)10:00~12:10
場所
中央合同庁舎3号館4階 国土交通省総合政策局局議室
出席者
- 委員
- 池谷 奉文 公益財団法人日本生態系協会会長
大和田 紘一 東京大学名誉教授
近藤 健雄 日本大学理工学部海洋建築工学科教授
進士 五十八 日本農業大学名誉教授
鈴木 和夫 独立行政法人森林総合研究所理事長
辻本 哲郎 名古屋大学大学院工学研究科教授
吉田 正人 筑波大学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻教授
鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授 - 関係省庁
- 環境省、農林水産省、国土交通省、文部科学省から関係課長等出席
議事
会議は公開で行われた。(一般傍聴者7名)
議題1 自然再生事業の推進に向けた取組状況について
環境省より、資料2により、実施計画の作成状況等について説明
議題2 自然再生事業実施計画について
- (1)実施者(福井県、ハスプロジェクト推進協議会)より、資料4-1、4-2等により三方五湖自然再生事業実施計画の説明。
- (2)実施者(東京都)より、資料5-1、5-2等により野川第一・第二調節池地区自然再生事業実施計画第二次実施計画の説明。
- (3)実施者(環境省釧路自然環境事務所)より、資料6-1、6-2等により釧路湿原自然再生事業達古武湖自然再生事業実施計画の説明。
- (4)実施者(環境省九州地方環境事務所)より、資料7-1、7-2等により第二期阿蘇草原自然再生事業野草地保全・再生事業実施計画の説明。
委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。
三方五湖自然再生事業実施計画
- 三方五湖におけるコンクリート護岸は過去にどのような目的で整備されたのか。
→湖周辺に広がる梅畑のアクセス向上を図るための湖岸道路の整備に際して、コンクリート護岸が必要となったもの。 - コンクリート護岸の前面に石積みを行うことで、自然再生の取組は完了となるのか。
→水域分断の解消の必要性があると考えており、今後検討していく。 - 三方五湖の再生にあたり、農薬等を減らしていく取組も必要ではないか。
→水田からの農薬を低減させていく取組を検討している。 - 自然再生を進めてきた結果、渡り鳥が新たに飛来するようになったなどの効果は発現しているのか。
→自然再生を開始してから、コハクチョウが飛来するようになった。 - 三方五湖には、海水域と淡水域があるとのことだが、それぞれどのような対策を考えているのか。
→三方湖は淡水湖であるのでフナなどの再生を進め、汽水湖である久々子湖や水月湖ではシジミの再生を進めていくことを考えている。 - ヒシの除去を行うことにより、外来種が増加するなどの問題は発生しないのか。また、ヒシの除去方法はどのように考えているのか。
→ヒシの除去による外来生物の侵入をはじめとした自然環境の変化については、現在、東京大学が研究しているところである。ヒシの除去を進める際は、ヒシ除去による影響をモニタリングしながら、順応的に取り組んでいくこととしている。また、ヒシは堆肥となる可能性があり、地元とともに検討しているところである。 - 自然再生の取組には順応的アプローチが重要であり、そのためには広く多様な主体の参加が必要となる。また、自然再生により生み出された自然環境は次世代が享受するものであるため、若い人の自然再生への参加を促すことも重要となる。三方五湖自然再生協議会では、若い人もメンバーに加わり、シンボル的存在となって自然再生に取り組んでいる。
- 魚類の増加を促すシュロなど地域の知恵を活用した自然再生を進めることは良いことであると思う。
野川第一・第二調節池地区自然再生事業実施計画第二次実施計画
- 自然再生の取組は上手く進んでいると思う。今回が第二次とのことであるが、第三次はいつ頃作成されることを考えているのか。
→今後、水環境の整備を行うことや関連地区への湧水の確保が必要となると考えている。具体的な時期については、第二次計画に基づく自然再生を進める過程で検討していきたい。 - 草地化を行うために用いる草の種子は、地域の種を用いることが大切であるが、どこのものを使用することを考えているのか。
→野川、多摩川の種子を用いる予定である。 - 今回の対象地だけでは、面積的にも狭小であり、豊かな生態系は創出されないと思う。周辺の都市公園などを含めて広域的に検討して欲しい。
→周辺でタカが確認されている箇所もあり、広域的に自然再生が進むよう検討していく。 - 部分的な自然再生では、再生された自然環境がカラスの住み処にしかならないような事象もある。高次消費者が住める広域的な自然環境の再生を目指す必要がある。
- 東京都として野川全体として、広域的な生態系ネットワークの考えのもと、自然再生を進めていくことが重要である。
→野川流域連絡会などと連携しながら、広域的に進むよう検討していきたい。 - 草地を目指す第二調節池においては、草地化以外の何らかの対策が必要になるのではないか。
→第二調節池は、現在、都立武蔵野公園となっており、そこの管理者と連携して検討していきたい。 - 自然再生の指標となる動植物は設定しているのか。
→今後、モニタリング等を行いながら検討していきたい。 - 都会の中の自然ということで、自然を調査・観察している方もいると思う。その情報も参考にしながら、指標種を定めるなど目標を明確にし、その目標を達成するために、自然再生を行っていく評価の仕方もある。
- 当事業は、東京を代表するものであるので、より広域的かつ強力に進めるため、地元自治体との更なる連携の強化を考慮されたい。
釧路湿原自然再生事業達古武湖自然再生事業実施計画
- 農地からの排水については、農家への環境配慮の普及啓発だけではなく、使われなくなった農地を買収する必要もあるのではないか。また、達古武湖の南部湿地は浚渫工事を行うべきではないか。
→南部湿地については、環境省で浚渫工事を行う予定をしている。また、達古武湖に土砂由来の濁水が流れ込む原因となっている人工林地について買収し、広葉樹林等に再生させていく取組を行っている。 - 畜産業による湖沼の水質悪化は世界的にも生じていることである。参考となる事例として、湖沼へ流入する前の緩衝帯となる湿地がある。また、底質の変化にも注目することも大切であり、ヨシなどの刈取りによる水質浄化も対策として考えられると思う。
→達古武湖の南部にある湿地は緩衝帯となるものであるとは考えているが、原因となる家畜糞尿が湿地において湖と非常に近い場所にあるので、その撤去が必要である。
さらに、現地が泥炭由来の軟弱性地盤であるため、現地に入ることが困難でヨシの刈取りの対応は難しいものである。
また、底質の変化については、栄養塩の蓄積はあるが、大きくはないと考えており、さらにヒシ対策をすることで改善すると考えている。 - ヒシのロゼット茎(浮き葉が平面状に広がったもの)で刈り取ることにより、その下部が沈み、ヒシが残る可能性もあると思う。
→達古武湖では、ヒシをロゼット茎(浮き葉が平面状に広がったもの)で刈り取ることによる効果を検証している。検証では、年2回重点的に刈取りを行うことにより、次年度以降の減少傾向が確認されている。 - 現場には、農地と林地があるが、これを区分けして進めていくことが大切であると思う。また、林地における再生はどのようなことを行っているのか。
→農地と林地は区分けして行っていくことを考えている。林地の再生は、針葉樹林である人工林を広葉林に再生させる取組を進めている。 - ヒシの実は食用になると思う。これを地域で食べることで物質の循環は行えないのか。
→ヒシの実の料理などを行事でつくり、地域住民の関心を促すなど行っていきたいと考えている。 - シカをはじめ増えすぎた動植物は、人間が食料にする。これが自然再生に繋がることも認識する必要がある。
第二期阿蘇草原自然再生事業野草地保全・再生事業実施計画
- 高齢化により、自然再生の実施者が不足するのであれば、ボランティアをもっと活用する方法もある。
→協議会の一員である牧野組合への調査によると、野焼き等の作業を10年以上続けられるのは全体の約4割であり、将来が危惧されている。また、阿蘇ではボランティアが年間2,300人程度参加しているが、これを支援するため、平成23年度より、阿蘇草原再生募金を用いている。
また、ボランティアの方々の活動拠点となる阿蘇草原学習センターの整備を進めているところである。 - 当該事業における評価手法を開発中とのことであるが、評価には人との関わりが必要であり、これを評価の中で明確にしていくことが必要であると思う。
その他の意見
- 自然再生を取り巻く状況として大きな問題は、学校教育の中で環境教育が積極的に行われていないことである。環境学習を学校教育に入れるよう検討して欲しい。
議題3 自然再生基本方針の見直しについて
委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。
- 自然再生基本方針の見直しの検討を行う中で、自然保護団体との意見交換も入れて欲しい。また、生物多様性基本法、生物多様性国家戦略もできたことから、これらと連携した広域的なものとしていく必要がある。
→自然再生基本方針の見直しにあたっては、自然保護団体を含む幅広い意見を聴いていきたい。 - 現在の法定協議会は、モデルであり、法に基づかず自然再生を行っている所の意見を確認することも重要である。