日時
平成23年8月22日(月)13:00~16:00
場所
経済産業省別館825号会議室
出席者
- 委員
- 池谷 奉文 財団法人日本生態系協会会長
大和田紘一 東京大学名誉教授
近藤 健雄 日本大学理工学部海洋建築工学科教授
進士 五十八 東京農業大学名誉教授
鈴木 和夫 独立行政法人森林総合研究所理事長
辻本 哲郎 名古屋大学大学院工学研究科教授
中村 太士 北海道大学農学研究院教授
三浦 慎悟 早稲田大学人間科学学術院人間環境学科教授
吉田 正人 筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授
鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授 - 関係省庁
- 環境省、農林水産省、国土交通省、文部科学省から関係課長等出席
議事
会議は公開で行われた。(一般傍聴者7名)
議題1 自然再生事業の推進に向けた取組状況について
環境省より、資料1により、上山高原自然再生協議会の設立等について説明。
議題2 自然再生事業実施計画について
- [1]実施者(国交省荒川上流河川事務所)より、資料4-1、4-2等により荒川太郎右衛門地区自然再生事業の実施計画の説明。
- [2]環境省および実施者(久保川イーハトーブ自然再生研究所)より、資料5-1、52等により久保川イーハトーブ自然再生事業の実施計画の説明。
- [3]環境省および実施者(秋田県)より、資料6-1、6-2等により森吉山麓高原自然再生事業(第2期)の実施計画の説明。
- [4]環境省および実施者(徳島県)より、資料7-1、7-2等により竹ヶ島海中公園自然再生事業の実施計画の説明。
- [5]環境省および実施者(公益財団法人阿蘇グリーンストック)より、資料8-1、82等により阿蘇草原湿地保全・再生事業の実施計画の説明。
委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。
荒川太郎右衛門地区自然再生事業
- 洪水の時に河川からの水をいれることが年に何回か起こるのか。
→ 現在でも年に数回入っており、乾燥が進んでいる部分については、何回か冠水頻度を高め、湿地環境を保全する必要がある。 - 根本的に本川を改修する方がよいのではないか。
→ 今のところ、改修する治水計画はない。 - 湿地草地の保全・再生の目標と指標としてのエキサイゼリの関係をどのように捉えているのか。
→ 今回の上池の改修の中でエキサイゼリの保全を行っている。 - 乾燥化の原因については、どれが一番乾燥に効いているのか。
→ 旧流路の湧水の減少、地下水の低下、土砂の堆積といった要因が複合することによる。 - 分流したときに分岐した側の入口に土砂がたまってしまう現象が見受けられるが問題はないか。また、ギャップの更新について半永久的に必要になるが問題はないか。
→ 流路の降り口については、極端に大きな土砂流入がないと想定している。また、ギャップの更新については、どのように進めるのか、実際に一緒に活動していく方々の意見を踏まえながら、十分に検討していきたい。 - パートナーシップ型維持管理とは何か。
→ 一緒に事業を行うNPO等のボランティアの方々。 - どのような状態で生態系を維持していくのか最終目標が議論されているのか。また、これまでのモニタリングの期間において氾濫により水の流入があるのか。
→ 70年前くらいにあった風景を取り戻すことを目標としており、その時の生態系の維持を考えている。水の流入については、昨年の 11月、今年の5月に水の流入があった。
久保川イーハトーブ自然再生事業
- 農家の方とどのような農業(農薬・肥料について)を今後行っていくのか話し合っているのか。
→ 多くの田んぼでは農薬や肥料を使っているところが多いため、低減された農法を行う場所があればさらに多くの生物が回復することが期待できる。 - ウシガエルの排除の方法は何か。
→ カゴ罠を使った方法で排除している。 - 外来生物であるウシガエルやアメリカザリガニがこの地域で放逐された起源は何か。
→ ウシガエルについては、10年前に出稼ぎに行かれた方が持ち帰ったという起源が濃厚である。アメリカザリガニについては、ペットの放逐という可能性が高い。 - この地域の放牧は、林内放牧なのか外来牧草を導入した放牧のどちらか。また、ニホンカモシカは生息しているのか。生息しているのであれば、シカの食性に注意を払う必要があるのではないか。
→ 放牧は林内ではなく牧草地化するという方法である。ニホンカモシカの個体数は多くないが生息している。
森吉山麓高原自然再生事業(第2期)
- 樹木の再生だけを考えているようだが、種類が多い野草の再生についてはどのように考えているのか。
→ 現在は、ブナ林を再生するために樹木の植栽だけを考えており、野草については今後、検討が必要と考えている。 - ブナ、ミズナラを中心に植える区画があってもよいが、自然状態に近くして森吉山周辺にあるようなカエデなどと一緒に植えるという、比較対象ができる区画をつくることも必要ではないか。
→ 現在はブナに限定しているが、今後、多様な樹種を植栽し比較を行いたい。 - ブナの豊凶調査を行っているようだが、残存林に関する動態調査は実施しているのか。
→ 現在は行っていないが、今後残存林に関する動態調査ついても調査をする必要がある。 - クマゲラをどのくらい生息させようとしているのか、また、クマゲラが生息するために必要な生態系はどう考えているのか。
→ クマゲラの繁殖については調査を実施していないため、今後、クマゲラの調査も行っていきたい。
竹ヶ島海中公園自然再生事業
- 上流の人工林からの土砂流出が下流のサンゴ礁をだめにするため、上流側の集水域の自然再生が最大のポイントである。
- 防波堤に対する根本的な対策が必要。
- 防波堤について可動式にするなどを行い、海の中で擾乱が保てるようにしないとサンゴ再生は難しいのではないか。また、サンゴの移植について、自然のものを折って持ってきても定着が難しいため、セラミックスなどを使って、自然状態で定着させて増やしていくという方法について検討する必要がある。
- 物理的な影響の連鎖のみならず、環境の生物対策制御などが変化したことも原因の連鎖の中にあるため、生態的なメカニズムの全体像を理解することが、能率よく問題を解決するために一番重要である。まずは、何らかの事業で検証可能な仮説をたてる必要がある。
- 調査的な内容が非常に強く、原因がはっきりしていないと思われる。
- 非常に多くの課題を挙げているが、焦点を絞って何らかの方向性が見えないと評価がしにくいように思われる。
→ もう少し焦点を絞れるように努力する。 - サンゴの減少と森林及び海水交換との関係について何らかの数値的に示せるものはあるのか。また、生理生態学的な調査は成功したのか。
→ サンゴの減少については、防波堤ができるとことも一つの理由としてあるが、海水温の異常低温によるサンゴの死滅が何回かあり、再生の間に別のサンゴが入ってきたという考え方もあり、防波堤とサンゴの減少についてはっきりと示せるものがない。
阿蘇草原の湿地保全・再生事業
- 富栄養化について、畜産廃棄物、雨水や人間活動など考えられるが原因は何か。
→ 湿地周辺における畜産的営みの変化(改良牧草地化)及び野草刈りの減少が原因。 - 生物多様性保全のため、また水環境のため、富栄養化につながるような人間活動は違う形でやるように、キャンペーンを張るなりして、いいあり方に変えていくサポートをすることが必要。
- 畜産は昔より牛の頭数が多いのか。
→ 放牧牛の頭数は、昔と比べれば減ってきている。 - 肥料の投入量が牧草の生育よりもはるかに何十倍も多くやっていることがあり得るため、数量化することも検討する必要がある。
→ 現在の水の量、質や水位について、来年度くらいまでには何らかの形でしっかりと捉えていきたい。昔の利用管理にまなび、再現する方向で取り組んでいきたい。 - オーバーユースの理由は何なのか。
→ 写真愛好家の方が写真を撮りに行くことが主な原因。 - 財源で何か要望はないか。
→ 生物多様性の保全は2、3年でできることではないので、もう少し継続的な事業の助成が必要である。また、野焼きなど草原が維持されるために必要な支援体制を整えてもらいたい。
-以上-