自然環境・生物多様性

平成20年度第1回自然再生専門家会議議事概要

日時

平成20年6月16日(月) 13:30~15:40

場所

環境省22階第一会議室

出席者

委員
池谷 奉文  (財)日本生態系協会会長
小野 勇一  北九州市立自然史・歴史博物館館長
鈴木 和男  独立行政法人森林総合研究所理事長
広田 純一  岩手大学農学部農林環境科学科教授
吉田 正人  江戸川大学社会学部ライフデザイン学科教授
鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
主務省庁
環境省、農林水産省、国土交通省から関係課室長等出席

議事

会議は公開で行われた。(傍聴者約15名)

議題1 自然再生基本方針の見直しついて

 環境省より、資料1~5に沿って、自然再生基本方針の見直しについて説明がなされた。
 委員からの主な意見は次のとおり。

  • 協議会で地域特性に応じた取組を進める方向とあわせて、基本方針において、生物・地理学的な視点から国土のグランドデザイン、生態系ネットワーク等の全国的・広域的な視点からの自然再生のあり方を追加した方がよい。
  • 科学的知見については、現行の基本方針では曖昧となっており、仮説を立てて実行し、それを検証するという科学的プロセスに沿って自然再生を実施することが大切であることを明らかにする必要がある。また、人間活動の圧力、社会的・経済的背景など自然再生が必要となった原因・構造を把握することが大切である。さらに、生態系の動的な維持機構・レジリエンス(回復力)を考慮に入れることが重要である。
  • 自然再生を継続的に実施していくためには、地域経済や文化と関連づけた自然再生の取組が必要である。特に、二次的自然については、再生の必要性が高くなっており、その維持管理、自然再生と地域活性化との関係について、基本方針の中で、別途項立てして、高い位置づけで記載することが望ましい。
  • 一般の者には、火入れや池さらいなどの伝統的手法が生物多様性の保全に役立っていることがあまり理解されていない。基本方針において、これら消えつつあるものを生活文化という考え方の中で盛り込むことが望ましい。
  • なぜ日本において自然再生が必要なのか、自然環境が改変されてきた時代背景を含めて基本方針に明記することが必要。また、外国では不採算地は自然に戻すことが基本となっており、これから日本でも人口が減少していく中で、土地利用をどうするかも含めて考えるべき。
  • 里地里山としてとらえられているエリアの他に、低湿地の再生も必要である。ただ、日本の水田では、生産しながらウェットランドの機能を再生することが可能であることが欧米と異なる点であり、このような日本型の自然再生も大切である。
  • 自然再生を実施することによるメリット、人間にとってのプラスの側面、例えば生態系サービスの増大等について研究すべき。この点が明らかにならないと、生物多様性の回復の必要性が理解されない。
  • 環境教育の重要性について強調すべきと考える。

議題2 蒲生干潟自然再生事業 干潟・砂浜の修復実施計画

 環境省より、資料6-1~6-3に沿って、自然再生事業実施計画について説明がなされた。
 委員からの主な意見は次のとおり。

  • 実施計画は干潟を重視しており、砂丘植生については言及されていないが、干潟以外の植生についてもモニタリングを行い、その動向をみて、必要であれば対処を行うべき。
  • 砂の流入を止めると植生遷移が進んでしまう可能性もあり、干潟周辺の植生についてのモニタリング結果を踏まえて留意して進めるべき。
  • 越波防止堤などにより物理的に砂を止めるのではなく、河口テラスを再生するなど、他の手法も視野に入れつつ今後の対応を進めて欲しい。