自然環境・生物多様性

平成17年度 第2回自然再生専門家会議 議事概要

日時

平成17年6月20日(月)13:35~15:25

場所

経済産業省別館 1028会議室

出席者

委員
池谷 奉文 財団法人日本生態系協会会長
小野 勇一 北九州市立自然史博物館館長
鈴木 和夫 日本大学生物資源科学部教授
辻井 達一 財団法人北海道環境財団理事長 (委員長)
広田 純一 岩手大学農学部農林環境科学科教授
鷲谷いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
主務省庁
(環境省、農林水産省、国土交通省、文部科学省)から関係課室長他が出席

議事

会議は公開で行われた。(傍聴者約10名)

議題1 「自然再生事業の推進について」

 事務局より、第1回自然再生専門家会議での主な意見について説明を行った。これについて委員からの特段の追加意見は無かった。

議題2 樫原湿原地区自然再生事業実施計画について

 第1回自然再生専門家会議にひきつづき樫原湿原地区自然再生事業実施計画に対する意見を求めた。
委員からの主な発言は、以下のとおり。

  • 実施計画に基づき行う事業の科学的な根拠及びその結果に関する予測について計画書の中で読み取れるようにするべき。
  • どういうものを再生するのかという目標値を明確にしておくべき。
  • モニタリングと同時に、達成度等の自己評価が必要ではないか。
  • 事業の進行管理、連絡調整を行う主体はどこか。
    →(事務局)佐賀県環境課が事務局として進行管理を行っている。事業完了後も協議会メンバーらによる管理団体に維持管理を行ってもらう計画となっている。
  • 責任を伴った事業主体を明確にしておくべき。
  • 保全上重要な生物の地域系統の局所的絶滅や侵入生物の蔓延を招くと回復が困難なので、順応的な取組とはいえ、この2点は起こさないということを前提とした試行錯誤であるべき。

 最後に事務局から本実施計画に対して自然再生推進法に基づく助言は要しないことを説明し、前回及び今回の議事概要及び議事録を公表することで、専門家会議での意見を実施者や関係協議会に伝えることとなった。

議題3 神於山地区自然再生事業実施計画について

 事務局より実施計画の概要並びに自然再生推進法及び基本方針に照らし助言は不要との考えについて説明。
 委員からの主な発言は、以下のとおり。

  • 里山においてはため池が重要な要素。樹林と水辺のつながりを意識しているか。また、かつて健全な里山の生態系が存在していたときの人との関わりについて、この計画でどのように認識するのか。
    →(事務局)ため池である藤尾池は神於山保全くらぶの活動の拠点として位置づけている。竹林を整備することで水位が回復した経緯がある。また、当地はかつてはアカマツ林であり、柴の採取地などとして地域とのかかわりがあった。今後、地域住民がどう関わっていくかは、協議会の検討課題としている。
  • 里山再生ということであるが、どのように生物多様性を取り戻そうとしているのかよくわからない。
    →(事務局)人が関わることによって猛禽類の餌となる動物を含む多様な生物が生息できる状態を取り戻したい。
  • 全体構想にある三つの再生理念をまとめ、大きな戦略を整理した方がよい。その上で、戦術としてタケを駆逐することは、同様の問題をかかえる自治体にとって参考になる。
  • ある程度明るい整備された林は猛禽類の狩り場となり、生物の保全上有意義であることを記載しておくべき。
  • 竹林対策はいくつかの戦略をもって弾力的に対応すべき。長期的には竹林の自然枯死もあるので考慮すべき。
  • 保全クラブと町会、地主との関わりは?
    →(事務局)構成員の多くは岸和田市民。クラブの活動は市有地内だが、社寺林、共有林などは地域や氏子により管理されている。
  • 企業の参画の形態として寄付だけでなく、活動メンバーとしての参加を期待できないか。農業との関係の記述が少ない。水源地としての先人の思いを伝える活動が大切。
    →(事務局)河口から山頂まで歩くハイキングなど水源を訪ねる活動も実施している。
  • 竹林管理により池に水が戻ったことは生物にとってかなり重要。意識的に管理することが生物多様性にとっても良いことであるというアピールになる。環境学習でも利用されたい。
  • 周辺の土地利用の資料(所有者、利用状況)がほしい。また、財政上の分担、誰がいくら出してどんな活動をやっているかを明確にすべき。
  • 全体構想における超長期的目標イメージ図は、山の下半分を常緑樹林とするかのような誤解を招くのではないか。

 本実施計画に対して自然再生推進法に基づく助言は要しないこと、また、議事概要及び議事録を公表することで、専門家会議での意見を実施者や関係協議会に伝えることとなった。

その他

 その他として、委員から各省庁の自然再生事業に対する考え方を伺いたいとの質問があった。各省からの出席者の主な発言は以下のとおり。

  • (林野庁)関連省庁と協力し合って推進すべきと考えており、協議会設立の際は積極的に対応してきている。
  • (環境省)直轄や交付金で各地の取組を支援しており、関係省庁と連携した事業もいくつかある。全国の協議会参加者が集うワークショップの開催等ソフト面での支援も考えている。
  • (国土交通省河川局)河川法では河川区域内の環境を整備することも目的。農林サイドと協力して進めている事業もある。
  • (国土交通省都市局)昨年末、景観緑三法で制度を充実した。都市公園においても自然再生的な取組は以前から取り組んでいる。新しく作る国土交通省の緑の政策大綱の中で、自然再生を大きな柱としたい。道路、河川部局と連携し、都市での自然再生を進めたい。
  • (農林水産省農村振興局)土地改良法では環境に配慮することが前提。里山の保全等の計画に対し交付金で支援している。
  • (農林水産省大臣官房)環境に配慮した農林水産業を支援。協議会設立の際は積極的に参加してきている。

 これらを受け、委員からは以下のような発言があった。

  • 壁を越えた再生への取組が必要。日本の国土をどうするのかを論じるべき。環境省の旗振りに期待。
  • 個別の事例の積み上げが重要。個々の事例では担当者が重要な役割を果たしている。各省庁においては現場の各担当が良い方向に進めるようチェックしてほしい。現場に良い人材を送ってほしい。

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