環境省自然環境・自然公園日光国立公園那須地域保全整備検討会

第2回日光国立公園那須地域保全整備検討会 議事概要


1.日時

平成20年2月29日(金)10:00~12:00

2.場所

中央合同庁舎第7号館 1320号共用会議室

3.出席委員等

岩槻委員、小倉委員、進士委員、田部井委員、渡辺委員、関係機関(環境省、宮内庁、栃木県、那須町)

4.議事概要

 事務局より、会議資料に基づき、自然とのふれあい施策の概要、エコツーリズムの推進、那須の範囲と歴史、那須地域の利用の現況及び那須地域の保全整備のあり方について説明を行った。
 那須地域の保全整備のあり方について、委員からの主な意見とそれに対する事務局回答の概要は以下のとおりであった。

【那須の歴史的背景について】

○御用邸用地を始め、広大な自然が手つかずの状態で残ったことには、歴史的な理由がある。那須疎水の開削以前は表流水がほとんど無く、人が住む場所は川沿いに限定され、薪炭利用を主とした土地だった。明治になって多くが官有地に編入された後、明治政府による華族等の入植政策により大農場が開拓され、疎水ができて初めて利用価値が出てきた。つまり、人が住み始めてからまだ100年しか経っていない土地であり、こうした歴史的背景から広大な自然が残されたという認識を持つ必要がある。

【利用の現況等について】

→(関係機関)平成22年に那須高原スマートICからのアクセス道4車線化整備が完了し、さらに平成20年度に那須甲子道路が無料化される見込みであることから、那須高原スマートICからどうぶつ王国、那須甲子道路へのルートの利用増加が見込まれる。

→(関係機関)近年の那須地域では、従来からの大型レジャー施設や自然探勝だけでなく、博物館や美術館等の利用や「食」を目的に訪れる客も増えている。宿泊客より日帰り客の方が多く、その割合は増加している。

→(関係機関)交通渋滞は深刻な問題であり、駐車場不足や迂回路がないことが原因。最も深刻な時期は春のツツジと紅葉の時期である。

【貴重な自然環境の保全について】

○余笹川沿いのブナ林は特に重要であり、保全を図りながら活用することが肝要。

【自然体験促進のためのセンター機能について】

○全国的に自然体験活動やエコツアー等への参加者はまだまだ少なく、推進のためのてこ入れが必要。自然体験活動やエコツアー等に関する情報提供、教育・研修等の機能を持つ、ナショナルセンターの整備が必要であり、知名度が高く、人と自然との幅広い関係性を有しているこの地域で整備すべき。

○ナショナルセンターは全国の指導者養成を基本に考えてほしい。自然体験指導者の養成や実地の訓練を行い、全国の関係者が必ず訪れるような場にすべき。

○まずは、那須地域に特化した指導員を早急に養成する必要がある。自然の成り立ちには、歴史的背景があることを学んでほしい。

○体験のための拠点施設は、中部ゾーンに作るべき。ゲート・エリアは、土地が狭いので、利用者のための拠点ではなく管理部門の中枢とするとよい。

○競技場跡地の活用方法はもっと検討すべき。

○ナショナルセンターの運営にあたっては、近隣の関連施設も含めたエリア全体のコンソーシアムが必要。単なる協議会ではなく、一歩進めて経営情報、利用情報、活動プログラムの共有や企画を連携して実施する体制が必要。

【体験プログラムについて】

○日本文化である人と自然のかかわりを反映したプログラムが必要。一週間以上の長期滞在は、参加する学校や団体の引率等の関係で難しいという現場の声を聞くが、子供たちが自然の中で学び取り、感じ取った価値観を行動に転化していくにはある程度の期間が必要。人材育成も重要。

○利用者がデータを収集するような参加型の取組を考えてほしい。

【管理運営について】

○イギリスにおけるチャリティーや米国における財団のような、管理運営の受皿団体が必要であり、検討すべき。

【学校教育との連携について】

○保全についてはしっかり検討されているが、利用については抽象的な表現になっている。子ども向けの環境学習においては学校教育との連携が必須であり、県の教育委員会や町と相談して学校教育との連携・教育について今後具体化すべき。

【里山としての位置付けについて】

○この地域の森林全体を「里山」として認識することに対して違和感を持っている。里山の一般的利用である薪炭利用や落ち葉さらいを行っていたのは標高800m程度までで、上部まで里山と捉えることは適当ではないのではないか。

○里山というと薪炭林を連想するが、那須地域では林内放牧が主な利用だった。そういう意味で二次的自然ではあるが、殺生石のような山岳信仰もあるし、一般的な里山というよりは人里離れた奥山だったのではないか。

【モニタリングと情報発信について】

○情報発信の内容には、県立博物館が継続している第2期調査の結果も含めることが効率的であると考える。検討してほしい。

○所管換予定地と御用邸用地として存続する地域とでは、今後、人の入り込み方や管理に違いが出てくるので、それらの影響に対する比較調査が可能である。また、今後手を入れる前に、現況調査を行っておく必要がある。

【ゾーンの呼称について】

○「温泉の森」等のネーミングはもう少し検討してほしい。

【クマ対策について】

○現地調査の際、別荘地からわずか数十mしか離れていないような場所で、クマの爪痕をいくつも見た。陛下のご意志で国民に公開される場所であり、利用・管理にあたっては、被害がでないように十分配慮してほしい。

【今後の取組方針について】

→(事務局)那須地域の施設が、全国の指導員育成の「道場」的役割を果たせないか、検討したい。管理については、人数制限やガイド付きツアー等の利用をコントロールする仕組みを想定している。財政面も含め、県、町や民間企業との連携によって管理を支える仕組みを検討したい。