イソギンチャク類は刺胞動物の花虫(はなむし)綱に属します。花虫類は八放サンゴ類と六放サンゴ類とに2分され、八放サンゴ類はウミトサカ類やヤギ類・ウミエラ類など、ポリプが羽状突起を備えた8本の触手を持つ仲間が属します。六放サンゴ類はその他の様々な形態のポリプを持つ仲間が属し、7目に分類されます。そのうち6目の種がわが国で、また同時に串本の海域でも見られますが、6目の内、ツノサンゴ類(クロサンゴ類)は八放サンゴ類のヤギ類のような樹木状の群体となり、イソギンチャク類と混同されることはありません。更に、串本付近で単にサンゴと呼ばれている仲間、正式にはイシサンゴ類はイソギンチャク類に非常に近い仲間ですが、石灰質の骨格を持っていることで、イソギンチャクと混同されることは稀です。そして、イシサンゴ類は串本の海を特徴付ける重要な仲間ですから、この類は別項で紹介します。
 
 さて残る4目すなわち、イソギンチャク目・ホネナシサンゴ目・スナギンチャク目・ハナギンチャク目の種は一般的なイソギンチャク類の形状に似ているため、それぞれが区別されることなく、イソギンチャク類として一括されることが普通です。そこで、ここではこの4目の種をイソギンチャク類として紹介します。
 
 この仲間は、世界中の海の潮間帯から深海までに住んでいますが、多くの種のすんでいる場所は、岩礁海岸の潮間帯を含めた浅海域で、世界中の岩礁海岸へ行けば、必ず何種かのイソギンチャク類に出会えます。そこでわが国の人々に限らず、世界の人々にとって、イソギンチャク類は海の生きものの内で比較的なじみの深い仲間なのです。

 イソギンチャク類は他の刺胞動物と同様に、肉食で、触手で小型の動物を捕らえて丸飲みにします。餌を捕ったり、敵から身を守るために、イソギンチャク類をはじめ、刺胞動物は体のほとんど全ての部位に、刺胞と呼ぶ毒を発射するためのマイクロカプセルを無数に持っています。その中でも、餌を捕るための触手には最も多くの刺胞が並びます。刺胞動物の中には、ある種のクラゲのように人を刺して大変な害を与えるものがありますが、イソギンチャク類の中にもわずかにその様な物があります。ここ串本で普通に見られるイソギンチャクの中で、刺されて痛いのは、スナイソギンチャクとウデナガウンバチくらいで、それらにしても大変危険だというほどではありません。その他の種、とくに潮間帯付近で見られる種では人に害を与えません。
 
 ここでは串本海中公園、およびその付近の水深約20mまでの浅海に見られるイソギンチャクの仲間を紹介します。


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