串本海中公園センターの水族館には450種以上の串本の海で見られる生きものが飼育されています。水槽にはそれぞれ解説が書かれており、読むだけで水槽内の生きもののことが簡単に分かるようになっています。しかし、短い解説文だけでは分からないことも多く、水槽の生きものについて全てを知ることはまずできません。そこで、この新しいコーナーを使って、水槽の解説文では知ることのできない、水族館の生きものの秘密を少しずつばらしていきます。
「ホラガイの食事」
第1回のネタは餌です。水族館の生きものには、魚の切り身やオキアミなどのエビ類を与えています(図1)。餌は普通、冷凍されたものを、解凍・調理(図2:適当な大きさに切り分ける等)して、各水槽の担当者が水槽内の生きものの様子を見ながら、適宜与えています。冷凍の餌は保存が容易で、利用し易いのですが、これだけでは飼育できない生きものも水族館にはいます。その代表が今回の主役「ホラガイ」です。ホラガイの餌はヒトデ類、しかも新鮮なものが好物です。そんなホラガイの餌にはオニヒトデを生きたまま与えています。ご存じの通り、串本沿岸海域ではオニヒトデの大発生によってサンゴに被害が出ており、恒常的な「オニヒトデ駆除」が続いています。この駆除されたオニヒトデが餌として利用されているのです。現在飼育しているホラガイ6個体に対して週に1回、直径20pのオニヒトデを3個体くらいを目安に与えています。毎日でなく、時間も決まっていないため、ホラガイがオニヒトデを食べているところを見ることができたお客さんはラッキーと言えるでしょう。今回は、このホラガイの食事風景を連続写真で紙芝居風に見ていただきましょう。
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図1.水族館で使う通常の餌 |
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図2.調餌する飼育係 |
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ホラガイの水槽にオニヒトデを入れると、それまでじっと動かなかったホラガイたちが一斉に動き始め、触角を伸ばしてオニヒトデの匂いのする方向を探し始めます(図3)。ホラガイは普段殻の中に軟体部を隠していますが、動き出したその体にはマサイキリンのような複雑な網目模様があります。眼はほとんど見えず、長い触角がオニヒトデに触れることでオニヒトデの位置を確認できます(図4)。すると、今まで閉じていた口が開き、中から黄色く長い吻(格納できる本当の口)が伸び始めます(図5)。また、同時にオニヒトデが逃げ出さないように、大きく力強い足をオニヒトデに乗せ、押さえ込みに入ります。元気の良いオニヒトデを与えると逃げられることもあり、その場合はホラガイも負けずに追いかけていきます(図6)。吻の先端が口になっており、中にある歯で噛み千切りながら、少しずつ食べていきます(図7)。食事が進んでオニヒトデが少なくなってくると、足で抱え込むようにして他のホラガイに取られないようにして食べることもあります(図8)。大きなホラガイの場合、直径20pのオニヒトデを数時間で食べ尽くし、後には何も残りません。
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図3.触角を振りながらオニヒトデを
探す |
図4.触角が触れるとオニヒトデを
見つける |
図5.吻を伸ばし、足で押さえ込む |
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| 図6.逃げるオニヒトデを追いかける |
図7.長い吻の先で、ムシャムシャと
食べる |
図8.最後は足で抱え込んで食べる |
このように、水族館ではオニヒトデを餌にしてホラガイを飼育していますが、簡単に飼育が続けられるのはオニヒトデが大発生しているからです。オニヒトデの大発生が収束したときには、簡単に入手できる餌がなくなるためにホラガイを飼育し続けることは困難になります。オニヒトデは強い毒を持ち、サンゴを食害して大きな被害を与える生きものですが、こういったサンゴとオニヒトデ、オニヒトデとホラガイの関係を水族館で紹介できるのは、オニヒトデが大発生している間だけとなります。ちなみに最後の写真(図9)はホラガイの糞から出てきたオニヒトデのトゲです。ホラガイはトゲごとオニヒトデを食べますが、トゲは消化できないので、そのままの形で糞となって出てくるのです。
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図9.糞の中にはトゲがいっぱい |
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