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終わりに
ササノハベラという串本沿岸で普通に見られるベラは近縁な2種が混在していることが判明し、1997年にそれぞれ別の名が付けられました。以前よりササノハベラは2つの型があることが知られており、外洋に面した磯に多く生息し、大型になるものを「黒潮型」、内湾の磯まわりに多く、小型で成熟するものを「内湾型」と呼んでいました(山と渓谷社 日本の海水魚など)。今では前者がアカササノハベラPseudolabrus eoethinus、後者がホシササノハベラP. sieboldiと呼ばれます。ホシササノハベラには名前の通り背中に白い点があり、これが見分けるのに一番簡単なポイントとなります。また、眼の下を通る黒いスジの向きが違うことや体色の違いも見分けるのに役立ちます。
さて、錆浦沿岸でも一応2種のササノハベラが見られますが、これまではホシササノハベラはほとんど見られませんでした。しかし、最近では多くのホシササノハベラを見るようになりました。3月に低水温が続いていたころから、3 cmほどの小さな個体を見かけるようになり、5月には7~8 cmに成長したものまで見られるようになりました。アカササノハベラの方が多いことは変わらないのですが、ホシササノハベラが普通に見られるようになってきたのです。
このササノハベラを2種に分けた馬渕氏の論文を読むと、アカササノハベラが太平洋に面した暖かい海域だけに分布するのに対し、ホシササノハベラは瀬戸内海や日本海側にも分布しています。先月号に書いたように寒い冬の海がこの異変を呼び込んだものと思います。5月になってもまだ水温が20度を超えない日が続いていますので、この後も面白いものが見られるのでは、と期待しています。