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最新の話題 2004年10月【海域】

脱死滅回遊魚!?トゲチョウチョウウオ

写真1. クシハダミドリイシのポリプをつついているトゲチョウチョウウオ成魚のペアー。本種の特徴である背びれの軟条部が長く伸びている。写真1. クシハダミドリイシのポリプをつついているトゲチョウチョウウオ成魚のペアー。本種の特徴である背びれの軟条部が長く伸びている。

 黒潮の影響を強く受ける串本の沿岸では熱帯のサンゴ礁域に生息する魚たちがたくさん見られます。とくにこの季節になると多数の熱帯性の魚たちが出現します。中でも目を引くのがチョウチョウウオの仲間で、テーブル状や枝状に生育するミドリイシ類の周辺で色鮮やかな姿を見ることができます。彼らの多くは全長が8 cm以下の未成魚がほとんどです。冬になって水温が下がると越冬できず死んでしまいますが、こんな魚たちは串本における死滅回遊魚と呼ばれています。

 ところが近年の温暖化と黒潮の接岸によって冬期の水温が上昇し、越冬する個体が目立つようになりました。その代表的な種がトゲチョウチョウウオです。この魚は成長すると背びれの軟条部が長く伸びるのが特徴で、こんな個体がペアーを作って泳いでいるのが良く見られるようになりました。サンゴのポリプを仲良くつっついている光景はまるでサンゴ礁の海のようです。

 串本海中公園の周辺海域で、1982年から毎年数回コースを決めて出現魚種の調査をしています。この時、チョウチョウウオ類については大きさ別に観察した個体数を記録しています。この観察記録の中から、冬期の低水温でサンゴが大量に死亡した1984~1988年までの5年間と水温が上昇傾向にある2000~2004年の5年間の10月における観察記録を下の表にまとめてみました。前の5年間は黒潮の大蛇行による離岸期ですが、最近の5年間は黒潮の接岸期で種数・個体数ともに圧倒的に数が多くなっているのがよく分かります。

 その中でトゲチョウチョウウオを見ますと、他種と比べて著しく異なった傾向が見られます。それは高水温期であった2000年~2004年の観察で、越冬個体が圧倒的に増加していることです。他のチョウチョウウオも越冬個体が観察されていますが、未成魚と大型魚の割合はトゲチョウチョウウオが郡を抜いているのがおわかりでしょう。水温の高い状態がこれからも続けば死滅回遊魚を脱して串本の海に定住できるようになると思われます。しかし、この夏に黒潮が大きく蛇行して離岸しましたので、この冬には低水温傾向になると予想されます。こんな試練が訪れることも知らずにトゲチョウチョウウオは今、元気に泳いでいます。

チョウチョウウオ類の出現個体数(S:全長8 cm未満、L:全長8 cm以上)
1984~1988年(低水温期)2000~2004年(水温上昇期)
サイズSLSL
トゲチョウチョウウオ27310533
ミカドチョウチョウウオ3
ウミヅキチョウチョウウオ7
ゴマチョウチョウウオ13
セグロチョウチョウウオ5
ミゾレチョウチョウウオ83
ニセフウライチョウチョウウオ3302
チョウハン12
ミスジチョウチョウウオ232032
アケボノチョウチョウウオ692465
ハナグロチョウチョウウオ1
スミツキトノサマダイ2016110
アミチョウチョウウオ110
トノサマダイ6042714
ヤリカタギ13635
スダレチョウチョウウオ2
イッテンチョウチョウウオ1
フウライチョウチョウウオ935
フエヤッコダイ3

注)チョウチョウウオ、シラコダイ、タキゲンロクダイの3種も観察されているが、個体数の記録を行っていない。

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