環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

シドニーに入港しました

2013年3月18日(月)

 しらせは3月12日には南緯60度を越え、南極地域から外に出ました。3月上旬くらいまでは南極大陸の周辺を移動しながら海洋の調査を進めていたことから、外気温が氷点下だったことも多かったのですが、北上を開始し、14日には11度を計測し、15日には16度16日には20度と日に日に暖かい場所に移動してきていることを実感しました。

 18日にはシドニーに入港し、ほぼ40日ぶりに陸地に降り立ちました。隊員は久しぶりの陸地での時間を楽しんでいました。

 私自身は慣れない設営系の作業と各種観測の手伝いを、大変な強風と寒さの中で隊員とともにこなしたこと、南極地域の環境の保護に関する法律の解釈について隊員と意見交換したこと、昭和基地周辺の環境の状況を把握するために使用する各サンプル採取に協力してもらったこと、美しい景色や南極の様々な野生生物を見て感動したこと等々、南極地域滞在中に体験した様々なことを昨日のことのように思い出していました。

 観測隊はこれから帰国し、それぞれ普段どおりの日本の生活に戻っていきます。特に越冬隊は1年4ヶ月近く南極地域に滞在していたことから、立ち並ぶ建物との距離感や植物の緑等、以前は特に新鮮さを感じなかったことが新鮮に感じるのではないでしょうか。

 帰国後の観測隊の中には、新聞に南極での経験について寄稿を依頼されること、南極での体験について講演依頼されること等、南極に向かう前の生活に戻っても南極での経験を発信していく場があるようです。

 魅力を伝えたいけれど、それによって訪問者が増えてしまったら、原生的な自然環境に負荷がかかってしまうのではないか、原生的環境が損なわれてしまうのではないかと、自分が講演等で南極の魅力を伝えることがいいことなのか疑問をもっているという隊員もいました。

 一人の人間だけでは、南極の魅力と原生的環境の保全、そして原生的な環境があるからこそ成し遂げられる科学研究の発展について、意見を発し続けることはできません。南極の魅力と原生的環境の保全、科学研究に対する考えを引き継ぐ人を育て、その結果南極の環境が守られていくように、自分の考えを講演などによって伝えていくことが疑問に対する答えの一つという考え方もあると思います。

 同時に、科学研究やその後方支援をされる方を含む、南極を訪れる方全員に、南極という原生的な環境をもつ地域へ立ち入ることの影響という問題が常に存在し、その問題にどう対応すべきかをじっくりと考えることが必要ではないか、と南極から戻り、思います。

 54次隊の南極同行日記は今回で終了となります。調査研究の話など、観測隊員として来ている専門家の情報をそのまま流すのであれば、隊員が書いたほうがより正確に伝わるのではないかと考え、南極での活動と南極環境保護法との関係や廃棄物の話題など、環境省から同行している人間でなければ書くことはないだろうという視点で同行日記を綴ったつもりです。なかなか興味を持たれないのではないかと悩んだりもしましたが、今まで読んでいただいた皆様に御礼を申し上げます。大変ありがとうございました。

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