環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

ラングホブデの袋浦へ

2013年1月7日(月)

 2013年初めての南極日記となります。南極昭和基地で新年を迎えることができました。昭和基地の年越しは、隊員達が手作りで工夫し新年気分が盛り上げられました。今年もよろしくお願いいたします。

 私は1月5日から7日の日程でラングホブデの袋浦(ふくろうら)でおこなわれているペンギン調査に同行しました。12月に行われた生物調査の際には、ラングホブデ地区の袋浦から少し離れた雪鳥沢という場所でしたが、今回同行したのはペンギンがルッカリーと呼ばれる営巣地を作っている場所となります。

 袋浦に到着し、先に現地入りしているペンギン調査チームと合流しました。そして早速、宿泊の小屋から数十メートル離れた場所のルッカリーで、300羽程度のペンギンたちを発見しました。ペンギンは白と黒のシンプルな色合いのアデリーペンギンです。

アデリーペンギンの繁殖状況調査風景写真拡大

 ペンギン調査では、ペンギンの個体数計測、ペンギンの行動範囲の調査、採餌生態調査等を実施しました。調査チームは一時的にペンギンを捕獲し、その重量を計測しますが、かわいらしいペンギンといえども野生生物です。力は強く、他の鳥では翼に相当する "フリッパー"でたたかれたり、クチバシでつつかれるととても痛いそうです(なおペンギンの一時捕獲等、今回の調査は全て専門家に事前に調査による影響を確認した上で実施しています)。

 歩くことが遅い印象のあるペンギンですが、雪面に腹ばいになり、素早く移動することもできます。これを"トボガン滑り"と呼びます。トボガンとは「そり」のこと。今年は袋浦には雪が多くなく、今回はトボガン滑りを見られませんでしたが、南極滞在中に一度は間近で見てみたいものです。

 袋浦滞在中にペンギンを何羽も見ましたが、一つ予想外だったのは、ペンギンがなかなかの長距離を歩くことです。昭和基地でも袋浦でも海岸から少々内陸側に入った岩の上等でペンギンそのものや足跡を見かけることがありました。ペンギンの体の大きさやゆっくりとした歩行から考えて、長距離を歩くのは結構な労力ではないかと思われます。

 今回私が同行したペンギンの調査は、長年にわたり調査チームが様々なデータを集めているところです。また、国際的には「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(Commission for the Conservation of Antarctic Marine Living Resources : CCAMLR)」においてもペンギンのモニタリングが進められています。これらのデータ等を元に、南極の生態系の変化を捉え、将来的な環境変化の影響を明らかにしていく研究が進んでほしいと思いながら、袋浦を出発しました。私は明日8日からラングホブデよりさらに遠方のスカルブスネス地区に向かいます。

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