環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

昭和基地のクリーンアップ

2012年12月31日(月)

 12月29日にはブリザード級の強風が吹き荒れ、飛散したものがあることに加え、本日は大晦日であるため、観測隊では飛散物の状況を確認するとともに、昭和基地の大掃除(野外の残置廃棄物の回収)を行いました。

 かつて昭和基地にはかなりの量の廃棄物が残されていましたが、2005年から2008年に実施された昭和基地クリーンアップ計画により、観測隊は多くの残置廃棄物を日本に持ち帰りました。今回のクリーンアップでは、過去に凍り付いて回収できなかった廃棄物や細かな木クズ等を中心に回収しました。

回収作業の様子写真拡大

 大掃除は、環境保全隊員の「南極をきれいにするぞ!」という大きなかけ声に、隊員が「おぅ!」と返して開始されました。各隊員がそれぞれ分担する場所に分かれ、そこで廃棄物の回収や処理をして、ドラム缶、プラスチック、不燃、金属、可燃(木材)、複合(金属とゴムが一緒になっているもの)等に分別し、集積したところで一応の終了となりました。今年は、昨年に比べ雪で凍り付いてしまった廃棄物が少なく、比較的作業が進めやすかったようです。回収した廃棄物は今後、日本に持ち帰るために梱包します。

 南極地域の環境の保護に関する法律には、第15条に、廃棄物の発生の抑制等に関する条文(※)があります。内容は「発生した廃棄物を南極地域から除去するように努めなければならない」というもので、観測隊は地道に、着実に廃棄物の回収に努めています。

 昭和基地では廃棄物を効率よく持ち帰るため、空のドラム缶はつぶして容積を減らす、他の廃棄物についても容積を減らし、一度の輸送でなるべく多く船に積載する取組をしています。また、廃棄物は飛散しないようコンテナ等に入れ、廃棄物保管庫等で保管しています。毎年全ての廃棄物を確実に持ち帰ることができるわけではなく、状況次第では持ち帰りができないことも生じるためです。

回収後、圧縮したドラム缶写真拡大

 また、廃棄物を細かく分別するのみならず、限られた燃料で可燃物を効率よく燃焼させるため、廃棄物を圧縮して容積を小さくしてから燃焼させるといった資源節約の取組や、ドラム缶の圧縮の際に油漏れに注意しながら下に防油堤代わりとなるパネルを敷く等汚染防止の取組を行っており、環境への配慮も行っています。

 このような取組を続けながら、昭和基地を世界で一番きれいな南極観測の基地にしてもらいたいと思いました。南極地域観測を実施する国立極地研究所では今年度から環境分科会を立ち上げ、過去の廃棄物の扱いも含め環境保全の取組について検討を行っており、環境省もその議論に参加しています。環境省としてもこういった観測隊の取組を応援するとともに、クリーンアップで見聞きした内容を参考にしながら、今後のクリーンアップ等の取組についてさらによい方法等を観測隊とともに探求し、提案していきたいと思います。

(参考)南極地域の環境の保護に関する法律
第15条 何人も、南極地域においては、廃棄物の発生の抑制に努めるとともに、発生した廃棄物を南極地域から除去するように努めなければならない。

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