環境省自然環境・生物多様性南極地域の環境保護南極地域観測隊同行日記

温暖化とペンギン

2010年12月25日(土)

 近年、地球温暖化が問題となっていて、テレビなどで南極の氷が解けるシーンを見かけることがあるかと思います。南米の南に位置する南極半島ではこのような現象がよく見られ、問題視されているのですが、実は、オゾンホールが南極の東側に偏っている影響により、南極の東側は冷却されているようで、南極においては一様に温暖化が起こっているとは言えないようです。むしろ、冷却により海氷が厚くなっていて、昨年就航した新しい砕氷機能を搭載した新しらせでも、昨年のチャージング(砕氷)回数は過去2番目の多さとなっています。今年も海氷が厚く、その上に積もった雪も多いようで、砕氷に苦労しているようです。

アデリーペンギンの雛写真拡大

 この海氷の下にはオキアミという小さなエビのような生きものが多く生息しているのですが、このオキアミをアデリーペンギンなどが食べているため、海氷がある昭和基地周辺では、比較的多くのアデリーペンギンが見られます。

オングルカルベンのアデリーペンギン写真拡大

 この日、モニタリング活動のため、昭和基地からスノーモービルに乗ってオングルカルベンという近くの島に行きました。この島にはペンギンのルッカリー(繁殖地)があり、ペンギンの個体数調査などが定期的に行われています。あるルッカリーに連れて行ってもらったところ、前回の調査では100羽ほどペンギンがいたようですが、今回は子育て中のペンギンが4羽しかいませんでした。どうやらルッカリー周辺の海氷が厚く、海が開いている部分が無いために餌を取りに海に入ることが難しくなってしまい、繁殖がうまく行かず減ってしまったようです。
 海氷が無くなっても餌がいなくなるので困り、海氷が厚くなっても餌をとりに行けず困る。海氷の微妙なバランスが維持されることの大切さを感じた出来事でした。

ページのトップへ