第3回「森里川海大好き!読本(仮称)《編集委員会 開催結果報告》

開催日時

  平成29年6月7日(水)16:00~18:00

開催場所

  STANDARD会議室 虎ノ門SQUARE

出席委員

  養老孟司たけし委員長、 天野礼子委員、 内山たかし委員、 小林朋道委員、 竹内典之みちゆき委員、 田中まさる委員、 辻英之委員

主な発言

 1.読本の活用方法について
  • (学級文庫や図書室に)置いてあったら子どもが読むもの。子どもが引きつけられ て読むような要素もつくってあげないとなかなか広がらないし、先生の負担も増える。魅力あるものであれば、先生が解説しなくても、子どもに読ませるだけでもその中で学んでいけると思う。(小林委員)
  • 子どもが自発的に手に取ってくれるもの、自ら面白そうだなと思って見てくれるものであれば、学校教育の中での活用という道もある。今の段階ではまだ形ができていないが、自発的に手に取ってもらうものと考える。(事務局・千田チーム員)

  •  2.読本の構成イメージについて
  • これまでの議論を踏まえて、読本構成のイメージを3パターン用意した。(事務局)
  • パターン1 「生きものと子どもの対話」を通じて、読み手に気付きを与える。
    パターン2 「二人の子どもの対話」を通じて、読み手に気付きを与える。
     主人公A案 都会の子どもと田舎のこども
     主人公B案 一人は現代っ子で、もう一人は自然のことを良く知っているおじいちゃんの化身
    パターン3 図鑑形式で森里川海の面白い話を掲載し、読み手の関心を高める。
  • パターン1の生きものと子どもの対話が良い。(田中委員、ほか)
  • 生きものの魅力を前面に出したほうが、より多くの子どもたちが振り向いてくれる。日本の場合はぱっと図鑑を見て、動物とか虫とかが好きな子は食いついてくるが、そうではない子どもの方がずっと多い。パターン3はここでは無しだと思う。(小林委員)
  • とりわけ意表をつくようなものに、子どもたちはまず食いついてくる。理屈抜きに、大人が教えるよりも、生きものや自然から教えられているんだなと思うので、やっぱり生きものは強い。(辻委員)
  • パターン2Aの二人の子どもを「都会と田舎」ではなく、「海沿いの子どもと山とか森の子ども」にする。海の子どもも山のことはわかってないと思う。海はもしかしたら都市の海沿いかもしれない。ウナギを登場させて、子ども二人とウナギ。コウノトリでも良いが、海の子どもと山や森の子どもの設定にして、ウナギがそれを案内するみたいな。都市と田舎という二元論的にしないほうがいいと思った。(辻委員)
  • パターン1の生きものと子どもの対話の中に、生きものと都会の子、あるいは、生きもの、海の子、山の子、川の子も入っても良いので、そういうものの折衷案みたいなものですね。(天野委員)
  • パターン2Bは無いような気がする。対象が小学校5年生で、その子らがこの読本でお爺ちゃんを想定するときに、それに耐えられるお爺ちゃんがどれだけいるかというと、ちょっと無理だろうなという気がした。パターン1とパターン2Aをうまく組み合わせられれば一番いいのかなと思う。都会と田舎の子なのか、あるいは森と海の子なのか。その子どもたちが川に沿って冒険し、生きものたちと出会っていく中で、何が今、猛烈な勢いで変わっているんだろうとか、どこまで行ってしまっているんだろうみたいな話が出てくれば、子どもたちは理解する気がする。(竹内委員)
  • パラパラ新しいメンバーが出てくるのではなく、同じ人や動物や植物が出ているというのが、子どもにとって引き込まれる要因じゃないかと思う。(小林委員)

  •  3.表現方法について(擬人化について)
  • 擬人化するということは、本物じゃないものをテーマにしてしまうことになり、それで大丈夫だろうか。(事務局・奥田主査)
  • 擬人化は一重にみんなやる特性。例えば「平成狸合戦ぽんぽこ」や「けものフレンズ」もそうだが、私の直感ではそれほど問題ではないと思う。擬人化の中にそれぞれの生きものの習性がきちっと出ているかどうかが重要。(田中委員)
  • 擬人化はもともと世界共通の手法だが、日本では人間の側が逆に動物化する擬動物化など、そういう話は受け入れられてきた気がする。(内山委員)
  • 大人が、人と動物の違いをはっきり把握してないといけない。トトロが話題になっていたがトトロはしゃべらない。しゃべらせると変だ。だけど相手が何を言わんとしているか暗黙のうちにわかる。そこら辺の深みが必要。もし動物を登場させるなら、本来動物がやらないことをやらせると嘘になる。しゃべるんだったら人間のほうに仮託して、動物がこう思っているんだと子どもにしゃべらせる方法もある。(養老委員長)

  • 養老先生がおっしゃった、動物に人と同じことをさせないというのは大事。シートン動物記やビアンキ動物記では確かに主人公は動物だが、動物行動学的にどう動いているというか、実際の習性や行動に基づいてストーリーを仕立てているので、いろいろ学んできた子どもにとっても非常に勉強になるし、面白いし引き込まれる。(事務局・奥田主査)

  •  4.その他、読本の内容に関連する意見
  • 読本がどう使われるかというレベルの問題ではなく、読んだ子どもたちが森や川や海へ行って遊ぼうという方向。それが生まれれば子どもが逆に大人を変えていく、先生を変えていくというスタンスが基本になると感じた。(田中委員)
  • 日本でも唯一ダムの撤去が行われたのが熊本県の球磨川の荒瀬ダムで、こうしたことを誰かが困る書き方ではなく、写真や絵で載せていくことを一つの核にしたい。森は海の恋人というのがあれば、その裏返しもあって、その両方が核になっているような読本になったら、それが一番この委員会にとっては望んでいるものじゃないかなと。(天野委員)
  • 税金や年金がどうかという視点とは別に、自然が豊かな場所で楽しく暮らそうという視点。今日配られたパンフレットでも、オンリーワン商品で地域づくりとか、楽しい、移住する人がふえて地域が元気になる、バイオマスの話とかが書いてあって、自分でもこういうところで生きて暮らせるかもしれないみたいな。(小林委員)
  • 「地球にとっての危ない、地球にとっての喜び」というのと「自分にとっての危ない、自分にとっての喜び」という視点があるが、後者がないと環境問題は進展しない。(小林委員)
  • 読本を見て、川や海を危ないものの象徴と捉えるのではなく、豊かなものなんだなと伝わるようなものにできればと思う。(辻委員)
  • 読本の作りの素直さが、子どもの何度も読みたいにつながる。ずっと重ねて読まれている「スイミー」とか、あまり奇をてらわないで、シンプルにやったほうがいいと思う。(天野委員)
  • 科学的知見に基づいた長い時間軸で、子どもたちに何か物を考えることの大切さだとか、そういうことを感じられるような工夫をするのが大事。(田中委員)

  •  5.今後の進め方について
  • みんなの意見をまとめてやっていくのは非常に難しいので、例えば田中委員が「こう行きます」というのを固めて、もし意見があれば直していくというやり方が、良いんじゃないかなという気がする。(内山委員)
  • 今日の議論をもとに、ファシリテーターや環境省でもう一度練ってみて、その案を大阪に持ってきて田中先生を中心に(天野委員、小林委員、竹内委員で)議論する。そこでの議論について東京の人たち(養老委員長、内山委員、辻委員、山本委員)が、これで良いかどうかという形でやって、良くしていくのはどうか。(天野委員)
  • 多少の不完全さがあっても、ある人の情熱がちゃんとにじみ出ている方が子どもには伝わる。全部出ているから一番伝わるわけではない。(内山委員)
  • どうやったら一人一人の子どもたちに伝わるのかといった辺りについて、現場の先生の声を意見交換会で聞いていただけると良いと思う。(山本委員)
  • 子どもたちが読本を読んで刺激を受けて、森、川、海、そこらで遊ぶ。そこのつなぎをどうするかという部分が、これからすごく大事になると思う。(田中委員)
  • どうやって子どもたちを受け入れられる現場をつくっておくかが、すごく大事なんだと思う。(竹内委員)

  •  6.読本の広報と普及について
  • 今年度のスケジュールの終わりの方で、あるいは読本ができてからでも良いが、読本の広報としてシンポジウムの開催についても今後考えていったらどうかと思う。(天野委員)
  • 第5回委員会では、単に最終確認をするだけではなく、次年度以降どう普及していくかについてディスカッションするようなシンポジウムを開催するやり方もある。また30年度以降に、読本をベースに絵本あるいは漫画をつくるのかについても、まだ検討の余地がある。普及を進めるための新たな媒体をどうしていったら良いのかも考えられるのではないかと思う。当然、そこには、いろんな企業や団体などの協力先も探すこともあり得ると思う。いろんな可能性があるので、そこは私どもでも考えていきたい。(事務局・鳥居主査)
  • 当日配布資料

    Get ADOBE READER PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。
    >> Adobe Readerのダウンロード