環境省自然環境局
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  第2回「国立・国定公園に係る海域の保全及び利用に関する懇談会」の概要

1.日時
平成19年3月14日
13:30~16:30
新宿御苑インフォメーションセンター
2.出席委員
宇井委員、加藤(真)委員、加藤(峰)委員、亀崎委員、鹿野委員、清野委員、多紀委員(座長)、仲 岡委員、西田委員、藤原委員、牧野委員、吉田委員
3.会議の概要
 事務局から国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言等を紹介し、海域の生物多様性等に関する現状と課題について資料説明を行った。その後、加藤(真)委員から「渚と浅海の生物多様性保護のあり方」、仲岡委員から「藻場・岩礁帯の生物多様性」、牧野委員から「海域生態系管理と漁業管理」について話題提供頂いた後、意見交換を行った。

○ 瀬戸内海周辺の大きな干潟は国立公園外となっている。海砂採取については、環境省の働きもあり環境保護の観点から禁止する動きになっている。ただし、資料では入れられていなかったが禁止されていないところで採取が集中する傾向にある。周辺地域では逆に厳しい状況で、最近では沖縄のサンゴ礁を始め、北海道など日本全国で行われるようになっている。また、中国で国内需要が増加したために、輸出が禁止されている。そういった全体的な動きについても情報を集めておいてほしい。

○ 情報を集めた目的がわかりにくい。国立・国定公園内で保護すべき部分がどうなっているか、海の生態系を守るために現行の制度で何が出来て、何が出来ないのか等をまずまとめるべき。当面は情報収集が必要というのは理解出来るが、その調査の視点も定まっていないのではないか。

→ 広い観点から情報を集め、何が必要かを検討していく段階。今後、絞った点について検討する場についても考えていきたい。(事務局)

○ 資料では国立・国定公園内でカバーされているかどうかに関してまとめているが、実際はほとんど普通地域。自然公園でカバーされていることがその地域の自然保護にどの程度意味があるのか。

→ 海中公園地区を除いて海の中を守る制度となっていない。場合によっては今後制度改正も必要かもしれない。(事務局)

○ 資料3-1では国立・国定公園と藻場・干潟・サンゴ礁等の重なりを見ているが、都道府県立自然公園や都道府県立自然環境保全地域を含めると結果は変わるのではないか。海浜植物群落のカバー率は思っていたより低い。中津干潟のように広々とした干潟が残っている地域は保護の必要性がある。今の制度でもやろうと思えば出来る。干潟の保護に関しては都道府県にも範を示せる。また、重要な海浜植物群落については特別地域に出来ないのか。大東岬や夷隅川河口等では天然記念物になっているが機能していない。

→ 都道府県立自然公園は信頼できるGISデータが揃っていない。感覚としてはそれらを入れてもあまり割合は変わらないのではないか。(事務局)

○ 「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する提言」には入っていないが、環境省の制度を思い切って組み合わせてもよいのではないか。景観の概念は広がっているかもしれないが、一般の人が見て美しくないが価値ある生態系もあるはず、そういったものは自然環境保全地域の対象になるのではないか。自然環境保全地域を公園内にもう一度組み込んでもいいのでは。

→ ご指摘のあった点は局内でも議論する。(事務局)

○ 2回の会議を通じて感じたのは、環境省は海域保全で何かしようとしていて、保護されている面積は国立公園が一番広いので、普通地域を何とかしようとしているのではないか。

→ そういった方向性も考えられるかもしれない。海域保全に関して公園制度でまだまだ出来ることがあるのではないかという認識で会議を行っている。是非具体的なご指摘を頂きたい。(事務局)

○ 加藤委員の発表で親水性の高い護岸が漂砂の移動を妨げるという話があったが、それ以外に何か影響はあるか。

→ 親水性護岸だけでなく護岸そのものが生物の生息環境としてよくない。(加藤(真)委員)

○ 海岸事業や道路事業の実態を把握する必要がある。面的防護方式は22年間くらい採用されているが、海岸管理事業を具体的に見直さなければいけない。所掌を越える部分についても事例の収集が必要。海砂採取による生態系への影響については何か論文等はあるのか。

→ 海外での事例ではあるが国内では見つけていない。(加藤(真)委員)

○ 海の生態系を守ることが漁業の不利にならないと言い切ることは出来るのか。また、そのための調査にどのくらい時間がかかるのか

○ 調査は基本的に事前に結果を言えない。漁業者が考えるタイムスパンと自然環境に結果が出るスパンとの関係については議論の余地がある。また経済的利益に関する算出をした論文も国内ではほとんどない。

○ 水産は試行錯誤の繰り返しであり、我が国の水産関係の研究は進んでいるが、シュミレーションで結果をおとすレベルには到達していない。

○ 日本ではないかもしれないが、IUCNでは海洋保護区による経済効果を算出している。ただし、IUCNが定義する海洋保護区は禁漁区だけではない。

○ 海域に対して何をやらなければいけないかと生物多様性の高い風景の評価は密接に関係している。風景観は拡大しており、単に美しいかどうかだけでなく環境にどんな意味付けや価値付けをするかに影響を受けている。科学的価値を前提に審美的な価値としており、生物多様性が新たな素晴らしい風景を生み出している。例えば、干潟は80年代から美しさが評価されているし、藻場の美しい映像も評価されてきている。やはりその背景には科学的知見がある。20世紀は科学的知見がなく、海に対して無力であったが状況は変わっている。環境省はこれまで補えなかった部分を自信を持って補ってほしい。

○ 中津干潟がこれまで法的に保護されていなくても残ってきたのは、大分の方言で「いのちき」という自然と共に生きることを示す言葉があるように、森・川・海に守られることによって生活してきたという歴史的背景があるためである。そのため、「自然保護」という概念には拒否反応があり、その概念を生のままで持ち込まないように言ってきた。大分県も海域の生物多様性保全には力を入れている。
地域ごとに自然の保護に対する距離感は異なるので、その地域の歴史性を踏まえながら施策を考えていくべき。生物多様性に関しては大分や千葉などで地域ごとに始められている施策を横断的に見るべき。
加藤委員の発表であった奄美大島の砂浜や中津干潟の保全に関して環境省は具体的なカードを持っていない。他の漁業者との関わりなどで困った例や成功例などを収集して環境省の本省で整理すべきである。

○ 資料についてはもう少しきめ細かな解析をしてほしい。藻場やサンゴ礁の範囲はどのように出されたのか。本当に減ってきていないのか。ウミガメの分布についても上陸点だけでなく産卵量などで定量的に評価することができる。面積だけでなく質についての分析も必要。

○ 基礎調査の報告書で藻場についてはタイプ別に危機的な状況がまとめられている。面的な量だけが示されると、減っていないように見えて、開発の免罪符を与えてしまうことになる。

→ 質の部分も含めて分析してみたい。(事務局)

○ 資料6で漁業依存度について調べてもらったが、高齢化が進んでいる地域もあり、年代別に分けて考える必要がある。

○ 海にかかる生態系を守り活かし伝えていくために国としてしたいことが明確でないと先に進めない。その先に自然公園制度をどうするかという話がある。

○ IUCNの保護地域カテゴリーは実を伴った保護地域指定を進めるために出来た。オーストラリアでは保護地域のゾーニングごとにカテゴリーを当てはめている。海に関しては陸とは異なるゾーニングも考えられる。

○ 海中公園の仕組みについて、地域の住民や漁業者、利用者はほとんど意識をしていない。串本では企業の職員がモニタリング等を行っており、オニヒトデ駆除等も民間の活動としてやっている。こういった体制についても具体的な議論が必要。

○ 風景は見る主体と客体があって初めて成立するが、まさに今は人々の目が水の中にも入っている。保全に対する社会的背景は高まっているので、課題に関する知見を集めて是非よい武器を作ってほしい。

○ これからの海の公園制度を考えるとき、意志決定や現状把握、研究が重要になってくる。海の自然の現状については十分にわかっておらず、モニタリングの体制を整えていくことが重要になる。

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