環境省自然環境局
懇談会トップページ

  第1回「国立・国定公園に係る海域の保全及び利用に関する懇談会」の概要

1.日時
平成19年2月1日
13:30~16:30
新宿御苑インフォメーションセンター
2.出席委員
宇井委員、加藤(真)委員、亀崎委員、鹿野委員、清野委員、多紀委員(座長)、西田委員、藤原委員、牧野委員、吉田委員
3.会議の概要
 資料1~4を用いて事務局より説明を行った。委員からの意見の概要は下記のとおりであった。

○ IUCN(国際自然保護連合)の定義では世界の保護地域を6種類に分けている。その中で、日本の国立公園の陸域はII(生態系の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域)という分類とV(景観の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域)という分類が混じっているが、日本の国立公園の海はごくわずかの海中公園地区を除いてほとんどがVであろう。

○ 自然公園法の目的は景観保全であるが、景観とは視覚化しているものだけではなく五感で感じられる広いものを含めている。ランドスケープというよりドイツ語のランドシャフトという言葉に近い。
しかし海では限定的な視覚的対象のみを評価している。海の様々な景観をタイプに分けて評価出来ていないのは問題。海はストックよりもフローの生態系なので目に見えにくい世界であり、それを評価できる基準を持っていない。

○ 国際的には海域においても生物多様性保全の動きが活発化している。海域保護地域の2012年目標というのも出されている。例えば韓国では最近アメリカの米国海洋大気庁(NOAA)にならって各省で連携して海域保全を進めている。日本は海域保全においては近隣諸国に遅れを取ってしまっている。

「海域の景観・利用に関する現状と課題」

○ 沿岸の白砂清砂などは伝統的に美しい風景として評価されてきたが、近年は遠景や巨視的な視点が重視され、海岸線が人工であるかどうかが大きな問題にならなかった。近年、海辺の風景が消失し、再びふるさとの風景としての水辺の評価が向上している。

○ 多様な海域景観の水平的保全や海上景観から海中景観までの垂直的保全、漁村などの文化的景観保全、里海の保全、保護や利用のめりはりの利いたゾーニングが必要。

○ 串本海中公園センターには年間7000人以上の利用者があり、ダイビング・シュノーケリング・シーカヤックなど様々なアクティビティーを行っている。自主ルールにより、漁業者との衝突や利用者間の衝突、サンゴへの影響などはほとんど生じていない。

○ 子どもの頃から渚を歩き、貝を拾っている。海の利用の仕方は江戸時代から大きく変わっている。瀬戸内海国立公園の指定当時は干潟が多くあったが、価値が認められてこなかったため開発されてきた。

○ 海の場合、保護と利用が相補する。例えば干潟利用が内湾を浄化し、藻場が漁業対象種を育てるなど利用し続ける事が維持に不可欠。

○ 砂が堆積する砂堆といわれる場所が海砂採取でなくなってきたが、生物の生息上は重要な地域。
これから重要になってくると思われる。

○ かつて白砂青松にいた貝を拾える事が少なくなってきている。国立・国定公園内も殆どは岩礁海岸であり砂浜は少ない。

○ 25年間ウミガメの研究をしており、身体的な海域景観が失われてきた事を感じている。現在日本国内には180~250箇所の砂浜でウミガメが産卵しているが、人工物の全くない砂浜はそのうち30に達しない。

○ 沿岸における大きな自然破壊として砂の浸食があり、日本の砂浜がどんどんなくなってきている。長期的な視点で見直す事が必要。

○ 海岸の風景は海と陸で成り立つし、その接点が最も重要であるにも関わらず規制の陸海の違いが出てしまっている。過去に陸上へ特別地域を限定してしまったのは反省点。時代とともに評価される風景というのは広がってきたが、海に関しては海中公園制度創設以来対応できていない。

○ 瀬戸内海でカブトガニの研究をしており、法の様々な抜け道により沿岸の自然環境が改変されるのを見てきた。笠岡湾の開発などについて管理事務所にお願いをしてきたが、断られてきた。

○ 今回のGISデータを解析した資料はビジュアルで見られる総合的な視点が欠けている。もう少し課題の事象に合わせた空間のスケールがある。

○ 越境をして影響があるものについてはどの法規制も策がない。ただし、波や流れなどの予測技術は進歩している。

○ 重要な浅海域が全て守れるかどうかは別として環境省で重要な地域のランキングなどを出してはどうか。そうすれば地元のインセンティブも上がる。

○ 2003年の世界公園会議に先立ち、アメリカの米国海洋大気庁(NOAA)で海洋保護地域のガイドラインを策定した際、日本の政府窓口は不明確であった。今後に期待している。

○ 国立・国定公園における海域の範囲は海を視点とするものがあってもよい。例えば慶良間や離礁群など。グレートバリアリーフで行われているようにボートの中などでそれらの保全・利用のプレゼンテーションが必要ではないか。

○ 八重山では120件のダイビングサービスがあり、ボートの集中や、そのアンカーによるサンゴ礁への影響が懸念される。

○ 海域保護地域については世界的には動植物捕獲全面禁止が基本となっている。これから日本でもどこを担保するか考えていかなければいけないが、その前にメリット・デメリットを科学的に実証していくことが必要だし、地域の関与が不可欠。

○ 海域に管理には地域をどう関わらせていくかを考える必要がある。例えば地域振興やNPO設立とからめるなど。

○ 海域管理に関しても啓蒙・啓発の面が大変重要ではないか。例えば、パラオ国際サンゴ礁センター設立により日本人ダイバーのマナーの良さは定評がある。

○ 日本人は縄文時代から魚を食べ続けており、その中で発達した漁業制度も特徴的。漁業権が発達し、地域の漁業者達が自らルールを作り、管理も行うというのは先進国では珍しい。生物多様性、生態系管理との関係を考えると、今ある制度の長所を最大限活用すべき。漁業者はモニタリングや漁業管理
の様々な取組を行っている。

○ 漁業以外の観光などのセクションとどう調整していくか、突発的な事故への対応などは既存の制度では対応できない。

○ オーストラリアなど他国の海域保護地域は我が国と視点が異なる、獲った魚の多くは海外へ輸出し、漁村も近代的であり外貨獲得が目的となっている。日本には全国に3千以上の漁村があり、そこには漁業に依存して住民がいる。そこを含めた沿岸の生態系があり、漁村の文化的多様性にも注目すべき。

○ 漁村の平等性のために海岸保全施設などのインフラ整備が広く進められてきており、全国の海岸が開発されたのはその結果である。漁業者も西日本などでは漁業だけで生活できなくなっており、そうした土木工事に依存している。沿岸域の人々の生活見直しが必要。

○ データ分析の中で、国立・国定公園内の漁村数とそれらの自然資源への依存度を検討してほしい。

○ 海の環境行政は幅が広がってきており、例えば二酸化炭素の海底貯留を現在検討している。生態系への影響予測を考える必要があるが、それを誰が行うのか決まっていない。国立・国定公園ではどこまで沖合を含めるかを考える必要がある。ただし、海底地形や洋上風力発電の設置など、それを考える上で必要な基礎的な情報がまだ十分にない(事務局)。
 

懇談会トップページ