自然環境・生物多様性

新たな世界自然遺産候補地の考え方に係る懇談会 | 第5回議事録

平成25年1月29日

  • 環境省(芹澤) それでは、定刻になりましたので、ただいまより第5回新たな世界自然遺産候補地の考え方に係る懇談会を開催させていただきます。
    私は、本日の進行を担当いたします環境省自然環境計画課の芹澤でございます。どうぞ宜しくお願いいたします。
    なお、取材によるカメラ撮影につきましては冒頭のみとさせていただきます。議事に入りましたら取材のための撮影はご遠慮ください。
    初めに、林野庁の篠田次長よりご挨拶いたします。篠田次長、お願いします。
  • 林野庁(篠田) おはようございます。林野庁の次長の篠田でございます。第5回目の懇談会の開催ということでございますので、一言だけ簡単にご挨拶を申し上げたいと思います。
    今日はお忙しい中、委員の先生方にはご出席をいただきましてまことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げたいと思います。8月からこの懇談会を開催してまいりましたけれども、第5回ということで、今回が最終回と理解をいたしておるところでございます。これまで先生方に色々ご議論を賜り、また、ゲストスピーカーの方々からも有益なお話をいただいて、幾つかの方向性は出てきたのかなと考えております。
    自然遺産の取組でございますけれども、こちらの取組が結果的に自然環境とか生態系の保全に一定の役割を果たしてきていることは言うまでもないことだと思いますが、そういったことが確認されたことは1つございます。それから、当然、自然遺産ということになりますと、国はもとより地方公共団体、或いは地元の民間の団体の方々のご協力を得て進んでいくということがございますので、そういった方々の連携とか協働が重要になってまいりますけれども、その役割分担を予め明確化しておくことも、これまた重要であろうというご指摘、或いは方向づけがされたのかなと考えております。それから、これは時間軸ということだと思いますけれども、登録しっ放しではなくて、時間的な経過を重視してモニタリングをしていくことも必要だろうということがあったかと思います。それから、登録地域だけでなく、やや広い観点から物事を見ていくことも必要だろうということであったかと思っております。
    また、自然遺産の場合ですと、間々オーバーユースということが問題になってまいります。事実そういった懸念もしなければいけないところも既にあるかと思いますけれども、そういった点もございますので、これもかなり初めの段階から意識して対応しておくことが必要だろうということだと思っております。
    その他色々ございましたけれども、幾つかの点で非常に重要なご示唆をいただきましたし、それらにつきましては、これからの自然遺産地域、その候補地の保全ということで関係する私どもで、役立てていきたいと考えているところでございます。
    本日また候補地の検討の考え方についてもご議論をいただくということでございますので、先生方には忌憚のないご意見を是非お願いしたいと思うわけでございます。
    簡単でございますけれども、冒頭に当たりましてのご挨拶とさせていただきます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
  • 環境省(芹澤) ありがとうございました。
    本日は8名全ての委員にご出席をいただいております。ご紹介させていただきます。お手元の座席表をご覧ください。
    まず、座長の岩槻委員。
    大河内委員。
    太田委員につきましては、遅れる旨ご連絡いただいております。
    小泉委員。
    敷田委員。
    中静委員。
    橋本委員。
    吉田委員。
    また、関係する省庁といたしまして、農林水産省、水産庁、文化庁からもご出席いただいております。
    なお、環境省、林野庁の出席者につきましては、お配りいたしました出席者名簿及び座席表をご覧ください。また、環境省出席者が遅れておりますことをお詫び申し上げます。
    ここからは議事の進行を岩槻座長にお願いしたいと思いますが、カメラ撮影につきましては、ここまでとなりますので、これ以降の撮影はお控えください。
    それでは、岩槻座長、お願いいたします。
  • 岩槻座長 岩槻です。それでは、早速議事に入らせていただきます。
    議事次第に従って進めさせていただきますけれども、資料を幾つか準備していただいておりますので、資料についての説明を、まず事務局からお願いいたします。
  • 環境省(芹澤) それでは、お配りしました資料の確認をさせていただきます。
    まず、議事次第、1枚めくっていただきまして資料一覧、めくっていただきまして座席表、そのあとに委員名簿、出席者名簿と続いております。左上ホチキス1点留めしております資料1、その次に同じく1点留めの資料2、資料3がA4、1枚となっております。その次、左上1点留めの資料4となっております。足りない資料等ございましたら、お申し出いただきますようお願いいたします。
    それでは、座長、お願いいたします。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。それでは、早速、議題(1)「世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について論点整理」についてということで、第4回から少し時間が経ってしまいましたので、思い出していただきながらということですけれども、前回議論していただいて大体とりまとめていただいたことの語句修正等、修正を必要とするところの議論が少しあって、そのことについては座長に一任ということだったのですけれども、事務局と詰めさせていただいて、まとめさせていただいておりますので、事務局からご報告をお願いいたします。
  • 林野庁(櫻井) 林野庁研究・保全課の櫻井でございます。座ってご説明させていただきます。
    「世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について論点整理」につきましては、知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島についてのレビューを終えた後に、第3回の懇談会において事務局から素案をお示しいたしましてご議論いただきました。また、第3回の懇談会の終了後にも委員の先生方からご意見をいただきましたので、そちらも踏まえまして、前回の第4回懇談会において事務局から論点整理案としてお示しし、ご議論いただいたところです。先程座長のお話にもありましたとおり、第4回の懇談会においても幾つかのご意見をいただきまして、それを受けた修正につきましては岩槻座長にご一任ということになってございましたので、岩槻座長にご了解をいただきました論点整理の最終版をご報告させていただきます。
    資料1をご覧ください。第4回懇談会資料からの修正部分を網掛けで表示してございます。変更部分についてご説明をさせていただきます。
    まず、4ページ目をご覧ください。○科学委員会に期待される役割の1ポツ目の記述に関しまして、敷田委員から、4行目から5行目にかけてになりますが、「最新の知見を有し、最も危機意識を持って問題を察知し、管理主体が最善の方策を導き出すことができるようにとあるが、この管理主体が何を指すのかが不明瞭なので明確に記載した方がいい」というご意見と、「管理を科学委員会や国だけに託すということではなくて、地域の関係者の参加を促し、その知恵や知見をうまく活用することが妥当だ」というご意見をいただきました。これを受けまして、この5行目にある「管理主体」と1ポツ目の冒頭の文章の主語、第4回でお示しした資料では「関係機関、団体等」としておりましたが、この主語については同じものを指すと考えられることから、冒頭の主語を「国、地方自治体及び地元民間団体等の地域の管理主体が」というように、管理主体について明確に記載する形に修正いたしました。
    また、併せまして、1ページ戻っていただきまして、3ページの○地域連絡会議に期待される役割の1ポツ目の記述について、「地域の多様な主体が参画して合意形成を図ることが重要」という記述の後に、「地域の関係者の知恵や知見を活用した管理を実現していく」との記述を加筆いたしました。
    次に、また4ページに戻っていただきまして、4ページ目から5ページ目にかけてあります○科学委員会に期待される役割の3ポツ目の記述について敷田委員から、「科学委員会の意見を踏まえて行われる順応的管理等の取組について、ガイドやインタープリターを通じて地域住民や利用者にわかりやすく説明するという記述があるが、管理主体が世界遺産について今後具体的にどのように保全管理や利用を行っていくのかについての方針を利用者や関係者に示すことの方が重要ではないか」とのご意見をいただきましたので、こちらの文章を「世界自然遺産地域の顕著で普遍的な価値や、科学委員会の意見を踏まえて行われる順応的管理等の取組及び保全管理や利用の方針について地域住民や利用者にわかりやすく説明する上で、知床財団のように管理に継続的に関与する実務者のいる地元民間団体や地域に根ざした研究者による管理者と地域住民や利用者との間の橋渡しも有効である。」という記述に修正いたしました。
    併せて、また3ページに戻っていただきまして、○地域連絡会議に期待される役割の2ポツ目になりますが、こちらの記述に保全管理や利用の方針に関する記述を加えまして、「地域連絡会議を構成する行政機関・団体等は、この合意形成の結果導き出された課題への対応策や保全管理及び利用の方針、保護担保措置である保護区内の制限の必要性や内容について、地域住民や利用者に、正確かつ分かり易く説明する必要がある。」という記述に変更いたしました。
    続きまして、5ページをご覧ください。5ページの○世界自然遺産地域周辺も含めた広範囲の保全についての検討の記述につきまして、吉田委員から、「原案では広範囲に移動する動物の保全管理のためであることだけが記載されているが、外来種対策についても触れた方が良いと考えるので、エゾシカの個体群管理の記述の後に東京港からの航路上も含めた広範囲な管理計画を適用している外来種対策を加筆してはどうか」とのご意見をいただきましたので、そのように加筆しております。
    最後に、7ページをご覧ください。7ページの○オーバーユース対策・観光客とのコミュニケーションの強化の2ポツ目の1文目にございます木道等の遺産を保護するための施設整備に関しまして、小泉委員から、「登山道の侵食の問題に関して、すぐにぱっと木道を造って対応するというのは色々問題を起こすことがしばしばあり、その前に登山道の侵食に関する基礎的な調査を行うなどして十分に検討を行う必要がある。そういった趣旨を盛り込めないか」とのご意見をいただきました。これを受けまして、2パラグラフ目の施設整備と利用の制御のバランスに留意が必要との記述の後ろに、「また、施設整備の偏重は自然性を低下させる恐れもあることから、例えば登山道における木道の整備に当たっては、予め登山道の侵食に係る基礎的な調査を行うなど、整備の必要性や妥当性を十分検討すべきである。」との記述を追加しております。
    以上、論点整理について第4回懇談会でのご意見を踏まえた修正についてご説明をさせていただきました。
    この論点整理では多くのご示唆をいただいております。今後の世界自然遺産地域の、或いはその候補地の保全管理に役立てていきたいと考えております。
    以上でございます。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございました。というふうな修正をさせていただいたのですが、多分それでご発言いただいた意図は含められると思っておりますので、これでこの件に関しては、こういうとりまとめをしたということでご了承いただけたらと思います。
    それでは、議題の第2に移らせていただきますけれども、「新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方について」ということで、この懇談会は、最初から候補地を選定するというのではなくて、新しく2カ所登録されて、3カ所目も登録に向けての準備が進んでいるという段階で、今後我が国における自然遺産をどういう風に考え、新しい自然遺産の候補を選定するか、或いはもうそういうのは止めにして既存のものを中心に充実を図るか、というようなことを含めて考え方を検討していただくということで、それで既存の世界遺産に関しては今のような論点整理をしていただきました。これまで議論していただいたことを踏まえながら、事務局で資料2にありますような「新たな世界自然遺産候補地の考え方に係る懇談会まとめ(案)」を作っていただいておりますので、まず事務局からこれをご説明いただきます。ただ、ちょっと長くなりますので、幾つかに区切って議論していただいた方がいいかと思います。
    この懇談会は最初から色んなゲストスピーカーの方に既存の世界遺産の現状などについて紹介をいただいて、そういうことで時間をとって、あまり議論をする時間はなかったのですけれども、今日はフルにこのことについて議論をしていただくことができますので、区切って議論をして全体をまとめるという進め方がいかがかと思います。そういうことで、まず事務局から説明をお願いしたいと思います。宜しくお願いいたします。
  • 林野庁(櫻井) 続きまして、資料2について説明をさせていただきます。先ほど座長からもご説明がございましたとおり、この資料につきましては、新たな世界自然遺産候補地の考え方に係る懇談会のまとめとして事務局で用意をさせていただきました。特に後半の部分については、本日中心にご議論いただくような内容も含まれておりますので、ご議論のベースとしてご用意させていただいたとご理解いただければと思います。
    まず、1ポツ目の部分についてご説明をさせていただきます。この1ポツ目につきましては、世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理についてということで、先程の論点整理で具体的に細かく記載いただいた内容でございますので、ここでは、その要素を少し入れた上で論点整理を参照するという構成で作ってございます。それでは、読み上げをさせていただきます。
    1.世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について(知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島の保全管理の状況及び課題を踏まえて)
    • 世界自然遺産地域の顕著で普遍的な価値を維持するための保全管理は、保護担保措置である国の保護区としての国による管理に加えて、地元自治体並びに地域の関係者等が連携・協働する体制のもとで、専門家からの科学的な助言を得て実現されており、自然環境や生物多様性の保全上の効果も確認されている。
    • 世界自然遺産への登録の準備過程で保全管理が進められ、また、登録を契機として、世界遺産登録に向けてそれまで取り組んできた課題や、遺産登録後の環境変化により生じた新たな課題に対して、より一層の取組強化が図られている。
    • 世界自然遺産地域において進められているこれらの保全管理の取組は、自然環境の保全管理に関する効果的な事例として他の地域において参考となる。
    • 世界自然遺産地域や同候補地の自然環境を適切に保全し、かつ持続的な地域社会の発展を実現するためには、国、地元自治体及び地域関係者が適切な役割分担の下で、それぞれが積極的にその役割を担うことが重要である。
    • 我が国の世界自然遺産地域及び同候補地においては、今般の懇談会においてとりまとめた「世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について 論点整理(知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島の保全管理の状況及び課題を踏まえた検討)」を踏まえて、適切な保全管理の更なる充実に努められることを期待する。
    以上でございます。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。というのが、まず基本的な考え方といいますか、これまでの議論を踏まえてということですが、このことについて何かコメントを、どうぞ。
  • 吉田委員 2ポツ目のところで準備過程のことが書いてありますけど、例えば私も参加した準備過程の小笠原諸島の科学委員会などでの議論の中で、2つ重要なことがあると思うんですけれども、1つは遺産の価値に対する認識が深められるということで、もちろん全てが顕著な普遍的価値と認められるかどうかは、また別として、恐らくこれが顕著な普遍的価値があるだろうと考えて議論していくわけです。それによって、もちろん科学委員会というレベルだけではなくて、地元でもそれを認識していくことが凄くあります。例えば小笠原の場合には、ホエールウオッチングとかドルフィンスイミングの船長が、普通だったらいきなりイルカを探し始めると思うんですけれども、「あの岩はこの小笠原ができる時の枕状溶岩で」なんていう話を、登録後し始めているんですね。そういうことは今までなかったと思うんですけれども、そういう価値の認識が深まっていくことが凄く重要なことなので、「準備過程で」の後に「遺産の価値に対する認識が深められるとともに」を入れてほしい。
    もう1つは、「保全管理が進められ、」がいきなりになっているのですが、これはその前の資料1でも散々書かれていますけれども、保全管理は単に行政的な管理者が進めるだけではなくて、保全管理に関する目標とか役割分担を準備過程で議論することが凄く大事で、それを作ったことが登録後の管理が効果的に進むことになると思うんです。ですから、そこにも「保全管理に関する目的や役割分担の議論に基づいた保全管理が進められ、」という形で、準備過程での大事な部分を2点申し上げましたけれども、そういったことを是非入れていただけるとありがたいと思います。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。世界遺産ということの考え方は、この懇談会の中での議論でもあったんですけれども、登録することが目的ではなくて、登録することによってどんな良いことを導くかということが目的です。だから、過程においてもそういうことがはっきり出てくることが重要だということが議論になってきていますので、確かにそのことに触れておく方が正しい整理の仕方かと思います。
  • 小泉委員 全体の論調が初めから「保全管理」から始まっているんですね。今、吉田さんもおっしゃっていましたが、(世界遺産登録の)成果がここには書かれていないように思います。この会議では、例えば白神の価値とかが報告されています。世界遺産になったことで、今まで分からなかった(自然の)新たな価値が発見されたりして、それを住民やガイドの人達がガイドの時に話をしたりしています。しかし、そのような価値は、このまとめペーパーには出ていないような気がします。
    今、国立公園が全体として地盤沈下するような傾向にあります。もう70年以上も経っているのですから、ある意味では仕方ないことかもしれませんが、これに代わるものとして、例えば世界遺産とかジオパークとか出てきているのではないでしょうか。時代が変わって自然の見方なり価値なりが随分変わってきました。そして、そういう変化に対応するものとして世界遺産、ジオパーク、エコパークと色々なものが出てきているように思います。保全管理は大事ですけれども、それだけではなくて、世界遺産というのはこういう意味があったという価値を、もう少し前面に出してもいいような気がします。
  • 岩槻座長 このことも成果ということの中に含まれているんでしょうけれども、それを具体的にここで議論されたことが分かるように表現するということかと思います。
  • 敷田委員 私も吉田委員、小泉委員の考え方に非常に賛成であります。特に挙げさせていただきますと、最初のポツの文章の中で出てくる関係者(アクター)、ステークホルダーが国と地方自治体と専門家の3者になっています。先ほどの論点整理の中ですと、地域の関係者や特に可能であれば利用者もここに関係するアクター(関係者)であると思いますので、国、地方自治体、専門家に加えて、特に地域の関係者と、可能であれば利用者の意見も反映するという表現にしていただければと思います。
    それから、2ポツ目の吉田委員のご主張の準備段階での検討が必要というのは、まさにそのとおりでありまして、登録後の管理の基本デザインを登録前に是非しておくことが必要だというのがはっきり書かれていれば、登録を準備している段階と書かれている期間に登録だけが目標になって、とにかく登録できればいいという地域の動きになってしまうことを防げるのではないか。むしろ地域として、その機会を利用して管理システムをデザインしよう、設計しようということに繋がれば、非常に前向きな登録になっていくと思いますので、宜しくお願いします。
  • 太田委員 これまでの議論でずっと感じていたんですけど、世界自然遺産に登録するということが対外的に、或いは国とか行政でその価値を主張すると同時に、地元への普及啓発という意味がかなり強くあると思うんですね。そこが、もちろんそれぞれの書かれている内容に言外に込められてはいると思うんですけど、余りストレートな書き方はしていないんですね。例えば学校教育機関への普及啓発として活用されるとか、学校という言葉を持ち出すのは、環境省さんとしては中々大変なのは分かるんですけど、もう少しストレートにその辺りのメリットも触れられた方がいいと思います。
  • 岩槻座長 学校教育だけではなくてもっと一般的な普及に関して、今までの3人の方のご発言も、具体的にそういうことをおっしゃっていませんけれども、そういうことに繋がることかと思います。
  • 大河内委員 2点気がつきました。1つは、これはもう出てきた話ですけど、単に自然環境を守るというのではなくて、世界遺産の場合には顕著で普遍的な価値を守るということで、それはかなり大きな違いがあるんですね。小笠原諸島の例ですと、それまでは絶滅しそうな希少植物を植えて戻すというのがあったわけですけど、そうじゃなくて、そういう植物が生育する進化の場を守るとなると、また一段厳しい管理が求められてきて、またそのことが地元の人達に伝わっていって、植えて希少種を維持するだけでは駄目なんだよという話になってくるわけです。ですから、そういう意味でいうと、顕著で普遍的な価値というのは一番冒頭に出てくるんですけど、基本的に保全管理するのは価値を保全管理するんだということかと思います。これはどこにどう入れるかは今は分かりませんけど。
    それと、そのほかに世界遺産になるということは、ある意味でいうと、そういう価値を守るということを国際的に宣言しているわけで、昨年秋の世界遺産の会議の時もありましたけど、利用についての持続性について、持続可能な利用以外は駄目なんだという記述をどこかで入れるべきと感じました。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。僕も色んなところで世界遺産の話をしていますので、この懇談会で議論したのかどうかはっきり覚えていないんですけれども、世界遺産というのは、そもそもユネスコの重要なツールとなっているものであって、設置されているユネスコとは一体何かということから考えますと、世界遺産を通じてユネスコが理念としているものをどういう風に実現していくかというのが世界遺産の本来の役割であって、自然遺産の場合には、非常に優れた自然遺産を守っていきましょうということの義務感みたいなものがどうしても表に出てくることになってしまうんですけれども、自然遺産というツールを用いて何を主張していくのかというユネスコの理念をどう体現していくかということが重要な問題なんで、そういうことを今の皆さん方のご発言の中で具体的に表現しておられるんだと思います。こういうのを文章にしてしまいますと、どうしてもそういう具体的なことは消えてしまいますので、なるべくそれが分かるような形に修文するということかと思います。ちょっと大変な作業になるかもしれませんけれども、そういうことはもう少し取り入れていかないといけないんじゃないかと思います。
    というような修文を加えるということで、これは最後に全体についてのことになりますけれども、今回は座長一任というだけではなくて、会議そのものはもうこれで終わりですから、座長が理解した範囲で事務局にお願いして修文してもらって、それを皆さんに回すということはした方がいいかと思いますので、最後にそれはまたご相談させていただきます。
    ということで、2つ目の問題の前半に移らせていただきたいと思います。また、事務局から説明をお願いいたします。
  • 林野庁(櫻井) 2ページになりますが、2.新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方についての基本的な方針についてご説明させていただきます。この部分につきましても、これまでいただいておりますご意見を踏まえて作成させていただいておりますが、具体的には、本日中心にご議論いただくことになろうかと思います。読み上げます。
    • 上記1.の通り、世界自然遺産登録前後の取組を通して、生物多様性保全上重要な地域の保全管理が進捗している状況を踏まえると、今後、世界自然遺産の登録基準を満たすと考えられる重要な自然地域が新たに認められた場合には、当該地域の世界自然遺産登録を目指した取組を進めることは、重要な自然環境を後世に伝えていくうえで有効な手段と考えられる。
    • 今後も、新たに世界自然遺産の登録基準を満たす重要な自然地域の有無を把握するためには、知見や情報の収集・分析・検討は継続することが適当である。この場合、平成15年世界自然遺産候補地に関する検討会における検討の過程で収集した知見や情報を有効に活用すべきである。なお同検討会では、学術的な知見や情報の不足が指摘されていたことを踏まえ、今後、それらの充実が欠かせない。
    • 一方で現在、世界自然遺産には188件、世界遺産全体では962件の資産が登録されている中で、世界遺産への新規の登録を増やすことより、既存遺産地域の管理を充実すべきとの指摘も出ているところである。新たな世界自然遺産候補地を検討する際には、こうした国際的な動向を踏まえて慎重に検討することも必要である。
    以上でございます。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。これまでのレビューを含めて、今後どうするかということについてのご意見を伺いたいということですが、ある意味では3ポツ目のことが結論が出ないと1、2は余り議論の価値がないということになるかもしれませんけれども、3ポツの辺りから色んなご意見をまた述べていただければと思いますが、いかがでしょうか。
  • 吉田委員 3ポツ目のところですけれども、細かいことですが、IUCNは複合遺産29も入れて自然遺産217という言い方をしているので、世界自然遺産188、複合遺産29として、必ずそこまでは自然遺産の範囲内であると考えた方が良いかもしれません。
    それはちょっとした細かいところですけれども、基本的な方針の中に私は入れた方がいいと思うのですが、資料1の前の方にも書かれていますけれども、「国際的な動向」というのは何なのか。つまり、3ポツの次に加えた方がいいかなと思っているんですけれども、1つは、世界遺産条約自体の国際的動向ということで、2003年からするともう10年経っているわけで、その間に世界遺産リストのカバーしている範囲も変わってきているわけです。ですから、世界遺産リスト全体のギャップ分析の中でどういった遺産を推薦していくべきか、候補地を推薦していくべきかということの視点からも考えなくちゃいけないというのが1つです。
    それからもう1つは、ここに書かれていませんが、生物多様性条約はこれからの保護地域のネットワークを考える意味では非常に重要で、生物多様性条約の「愛知目標11」、そのもっと前のクアラルンプールの会議から議論されている保護地域に関する作業部会(PoWPA(Programme of Work on Protected Areas))、そういった中に書かれている目標の中で世界自然遺産を国際的な保護地域のネットワークの中で位置づけるという視点が必要です。そういった視点は2003年の時にまだ気づかなかった視点だと思うんですけれども、2013年に出すんであれば、そこの視点を入れないとまずいと思います。
  • 小泉委員 吉田さんの場合は、どうしても生物が中心になると思うのですが、実は生物だけではなくて、自然景観とか色々な観点があると思います。国立公園を指定した時は、大きな景観が中心になっていました。つまり、(生物多様性が重視される)今の見方と違う形で指定しています。(自然景観に関しても、)現在は現在で、色々な科学的な知見が集積してきていて、今までどうして出来たか分からなかったものが、今の時点では色々分かってきています。これは新たな価値の発見ですから、こういうものは前面に出していった方が良いと思うんです。世界的な動向として、(新規の登録は)抑える傾向にありますが、日本はまだ全部で4カ所だけですから、まだまだ少なく、日本列島の自然の価値でまだ認められていないものが結構あるような気がします。今日はその段階ではないので、申し上げませんが、外に出して恥ずかしくないというか、出すべきだといえるものが結構沢山あると思います。前回19カ所候補地が挙がって、そのうち3カ所しかまだOKになっていないわけです。従って、その続きをもう少しきちんとやった方がいい。大きな景観とか地質・地形とかも考えた方がいいでしょう。世界遺産はジオパークとはまた別の問題ですから重複しても構わないと思います。
  • 岩槻座長 他はいかがでしょうか。この基本的な方針の考え方に伴って、新しい今まで以外の候補地も考えるべきであるという意見にまとまるとすれば、次にそれは具体的にどうすればいいのかという話に進むわけですけれども、基本的な考え方に関しては、今の2つの意見が加わる。ただ、今の小泉さんのご意見で、吉田さんは生物多様性ということをおっしゃったのですが、生物多様性条約は生物多様性だけに関わることではなくて、もっと広い地球自然のことにまで関わっている問題としてご発言されたんだと思いますので、この言葉が出てくること自体は別に否定しなければならないということではないと理解させていただきます。
  • 小泉委員 否定しているわけではありません。
  • 岩槻座長 それでは、基本的な方針については今の2点を加えるということで、皆さんのご意見としては、自然遺産は既存のものを充実することが中心で、もうこれで新しいことを考えることは今の段階では必要ないじゃないかというご意見はないという風に整理させていただいて宜しいでしょうか。私自身もそれは、むしろ積極的にそうすべきだと思いますのは、先ほどの1ポツのところで議論もあったように、登録に至るかどうかは別として、新しい自然遺産を考えることによって自然遺産をより広く理解していただく。それが自然遺産を考えたことの意味にとっては極めて重要なことであるという意味から、もうこれでおしまいとすることは、必ずしも世界自然遺産を考える上でのいい解決ではないと思います。
    そういうことを踏まえて、それでは(2)に進ませていただきたいと思います。
  • 敷田委員 今の先生のご意見に関連してですが、もしそうであれば、(1)の最初のポツの「目指した取組を進めることは」というところは主語が明確になっていないので、これを、例えば積極的に進めるとか、主語をつけて誰が進めるというのをはっきりさせた方が宜しいかと思いますが、いかがでしょうか。
  • 岩槻座長 具体的には先程のところで出てきたように、地元まで含めて管理主体全部を含めるということですか。
  • 敷田委員 考えられるのは、国と当該地域だと思います。
  • 岩槻座長 当該地域、専門家も、地元も。
  • 敷田委員 どこまでが対象になるのかは僕は判定ができないところですけれども、この方針の全体の主語が、主体が誰になるかで決まってくると思います。
  • 岩槻座長 それは(2)で議論すべきことにも繋がると思うんですけれども、世界遺産で、特に自然遺産の場合には環境省、林野庁が非常に丁寧に世話をして事前登録するところまで準備をしていただいていますけれども、それだけではなくて、もっと地元、地域の積極的なそれに対する方向づけも必要じゃないかと思うんですけれども、そのことを含めて、2で議論をした上で主体をどこまで広げるかということも整理をさせていただければと思います。
    ということで、(2)へ進ませていただくということで、また事務局から原案について説明をお願いいたしします。
  • 林野庁(櫻井) (2)に進ませていただきます。(2)新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方で、こちらもこれまでいただいているご意見を踏まえて作成しておりますけれども、追加、修正等、ご議論いただきたいと思います。
    • 平成15年の世界自然遺産候補地検討会においては、我が国における自然環境の観点から価値の高い地域をできる限り広く検討対象とした上で、世界遺産条約上の世界自然遺産の登録基準への適合性を詳細に検討するため、面積要件や人為的改変度等をもとに、19の詳細検討対象地域を抽出して詳細な検討を行った結果、その時点で登録基準を満たす可能性が高い地域として最終的に3地域(知床(平成17年登録)、小笠原諸島(平成23年登録)及び琉球諸島)を候補地とした。
      今後、知見や情報の更なる収集・分析・検討を継続するにあたっては、この詳細検討対象地域19地域から既に候補地として選定された3地域を除く16地域を中心に作業を進めることが妥当である。
    • 一方、世界自然遺産に加えて、世界各地の自然を、それらが存立する地域社会の取組とともに保全するための他の国際的な取組としてユネスコエコパークや世界ジオパーク等が推進されている。世界自然遺産が世界で唯一の価値を有する自然を保護・保存する地域であることに対し、ユネスコエコパークは生物多様性の保全と持続可能な発展との調和を図る地域であり、世界ジオパークは国際的な重要性をもつ地形・地質学的な遺産を地域社会の持続可能な発展に活用している地域とされており、それぞれ異なる目的や基準を有する。
      また、世界自然遺産を含む国際的な取組は、国立公園や保護林等の国内の制度による保護地域によって支えられている。
      それぞれの地域の自然度や目指すべき保全管理・利用のあり方に応じて、それぞれの地域にふさわしい国際的な取組を活用するとともに、国際的な取組と国内の保護地域とを連携させ、これらの取組が国全体として有機的・体系的なものとなるようにすることで重要な自然環境の保全の進展が期待されることにも十分配慮すべきである。
    以上でございます。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。この懇談会としては、本当は新しいところも考えるべきであるというとりまとめの仕方をしたら、多分ここは具体的にどこの地域を新しい候補とすべきであるということは議論しないということで始めから始まっていますので、そういうところを選定するのは新しく作っていただくはずの検討会のようなところで議論していただくのが本来で、役割は終わったと言えば終わったようなものですけれども、次の検討会を縛る意味ではないんですけれども、ここの懇談会としては今までのレビューを含めて新しい地域を選ぶとすれば、どういう考え方で選んだ方がいいかという提案をさせていただくという意味での論点整理をしていただきたい。その1つの原案として、1つは、前の検討会で選ばれた19マイナス3を中心にした候補をどう広げていくかということと、その他の様々なユネスコがやっているような地域の設定、その他のやり方を含めてどういう風に考えていくかを議論していただければと思います。
    それでは、資料3、4に基づいて前の検討会についての説明を先にお願いいたします。
  • 事務局(千葉) 自然環境研究センターの千葉と申します。座って説明させていただきます。
    今、櫻井さんからの内容と重複するといいますか、少し詳しく説明することになると思います。資料3をご覧ください。資料3では詳細検討すべき地域の絞り込み手順ですが、これは平成15年の候補地に関する検討会の資料を一部編成したものでございます。
    まず、母集団の選び方としまして、一番上の四角で囲った部分ですけれども、左端にAの既に一定の要件を満たした地域とございます。ここでは、法的根拠に基づいた原生自然環境保全地域や自然環境保全地域、森林生態系保護地域などの保護林、或いは国立・国定公園の特別保護地区、第一種特別地域、或いは天然保護区域を対象にした地域でございます。これらの既存の保護地域のみでは社会的な事情で重要なところがまだ保護地域になっていないところもございますので、母集団Bでは、それらを補完する形で環境省が行っております自然環境保全基礎調査、通称緑の国勢調査で集めたデータや研究者へのアンケートなどで選定した重要地域、或いは重要湿地を対象としてございます。重要地域には合計1,600地域ほどございまして、また、陸水域、浅海域を合わせた重要湿地には500地域が指定されてございます。これに加えまして、景観や地質・地形について緑の国勢調査の一環として実施された自然景観資源調査の結果を利用してございます。これは約15,000件ありました。従いまして、母集団は法的根拠を持つ保護地域とそれらを補完する形で地域を指定しているものから構成されています。
    その下の方に移ります。絞り込みのプロセスとしまして、これらの膨大な母集団から詳細に検討する地域を絞り込むためには、最初の段階ではある程度機械的な作業を進めていくことが必要でございました。原則的には1kmメッシュデータの電子データを用いましてデータ解析を行っていく手法をとっています。
    まず最初に、母集団Aの部分でございますけれども、ここは既に価値を評価した上で指定されている地域でございますので、最初のプロセスはスキップして次のプロセス、隣接・近接地域の統合まで進みます。先ほども申しましたが、Aから漏れてしまうところがありまして、そういったところは補完的に陸域、陸水域及び浅海域の生態系の中で重要な地域を拾い上げております。これらの合計が約2,000地域ありまして、[1]の操作としまして、面積要件として50km2以下の地域を対象から外すこととしました。この50km2というのは、森林や湿地を対象とした世界の自然遺産を取り上げた場合、当時80数件ありましたけれども、そのうちの2件だけを除いて、全てが50km2以上であったという事実がありましたので、それを踏まえまして、とりあえず50km2の面積で足切りをした経緯があります。
    次のステップとして、3番目になりますけれども、50km2以上の重要な地域につきましては、植生自然度と道路密度、人口密度などのデータによりましてスクリーニングをかけて自然性の高い地域を抽出しました。陸域生態系につきましては屋久島の重要地域の指標と比較して検討しました。陸水域生態系につきましては自然湖岸率、また、浅海域生態系につきましては自然海岸率を使って自然性の指標として検討しました。
    一方で、50km2を切ってしまいますと、かなり小さい島嶼地域については重要なところが抜け落ちてしまう懸念がありますので、[2]で生物地理学上重要な島嶼地域につきましては拾い上げております。具体的には、南西諸島と小笠原諸島については特殊性が認められるということでスクリーニングから外して隣接・近接地域の統合に進んでおります。
    [4]では人為的な改変度によりスクリーニングをかけて、比較的自然性の高い重要地域とAの既に一定の要件を満たした地域及び島嶼地域を重ね合わせて整理統合しました。これによって61地域に絞られたわけでございます。61地域のうちAの既存の保護地域は50km2の足切りという処理をされていなかったので、ここで再度、面積50km2以下の地域を対象外としました。この操作によって隣接地域と統合されて50km2以上になった地域は残りますけれども、そうでない小面積の地域に関しましては、ここで絞られるということでございます。また、陸水域の場合に関しては湖面だけが評価されているということがありましたので、その周囲が重要地域にかかっていない開発が非常に進んでいる地域がありましたので、陸水域については周囲の護岸と一体となって評価されているところで、なおかつ50km2以上のところを抽出してございます。その結果、このような機械的な作業によって43地域が抽出されたということでございます。
    ここまでが生物系の観点から行った作業となりますが、母集団のCに戻っていただきまして、地質・地形の評価に関するプロセスを説明させていただきます。母集団として環境省が行いました自然景観資源調査による約15,000件のデータからスタートしております。
    まず、[7]の操作としまして、4つに区分しました。すなわち火山景観、山地景観、峡谷・渓谷景観、そして海岸・多島海景観の4つの地形区分で分けまして、その中で代表選手を選ぶ作業をしました。代表選手を選ぶということで、データ上解析が非常に難しかったので、次に区分毎に面積の上位のものを10カ所程選んで整理をしています。また、小泉先生から、三陸海岸と山陰海岸に関してはまとめて把握すべきだといったご意見がありましたので、それらを含めまして、結局42カ所の代表的な地形・地質が選出されたわけです。
    ここで生物系で抽出した43地域については、IUCNが使用しているUdvardyという生物地理区分を参考に分けて、各地域の希少生物や植生の多様性などの情報をもとに検討会でご議論いただきました。また、地形・地質に関しましては小泉先生の意見を参考にしまして先生方のご意見をいただいた結果、一番下の[10]ですけれども、詳細検討対象地域として19地域が選出されたことになります。
    その後の検討結果は資料4をご覧ください。これは平成15年に行われました「世界自然遺産候補地に関する検討会」のとりまとめのペーパーでございます。1ページの下段にあります(検討の結果)では、登録基準と完全性の条件を満たす可能性が高い地域に関して、知床、小笠原諸島、琉球島の3地域が抽出されました。その下の(議論が分かれた地域)としまして、複雑な火山地形と広大な高山帯、高山植物の分布などが評価された大雪山、特異な地質や急峻な地形と豊かな動植物相の存在が評価された日高山脈、雪食地形や偽高山などの多雪による特殊な特徴が評価されました飯豊・朝日連峰、我が国独特の照葉樹林が評価された九州中央山地周辺の照葉樹林の4つが選出されました。
    3ページには(今後の取組について)記載されております。先ほどの櫻井さんの方の内容と重複しますけれども、この検討によって詳細検討を行った19地域を初め、我が国は世界に誇るべき自然地域が多く存在することが再認識されたということと、これを機に、今後ともこのようなすぐれた自然環境を有する地域の保全・管理の努力を継続することが強く求められるところです。また、検討は、あくまでも世界自然遺産の登録基準に照らして行われたものであって、これに合致しないためにその地域の持つ特徴、顕著で普遍的な自然の価値が否定されたものではございません。また、学術的観点からの国外比較などに必要な知見や情報の不足も見られたことから、そうした新たな知見や情報の収集・分析・検討は継続すべきであり、将来新たに知見や情報が得られ、登録基準や完全性の条件への適合可能性が出てきた場合には、世界自然遺産候補地として検討を改めて行うべきであるとしております。
    最後に、世界自然遺産は推薦や登録することが唯一の目的ではなく、その地域の普遍的な価値を人類全体の遺産として将来にわたり保全していくことが目的であることを忘れてはいけないということと、関係行政機関や地元住民などが一体となって、登録後も、長期間にわたる保護管理やモニタリングに尽力していくべきであるといったことが強調されてございます。
    私からの説明は以上でございます。
  • 岩槻座長 どうもありがとうございます。事務局から参考のために文化遺産と自然遺産との我が国における登録にむけての方策の比較を環境省からお願いいたします。
  • 環境省(宮澤) 自然遺産と文化遺産の候補地の選定のプロセスから推薦までの流れについては、日本の国内でプロセスがかなり異なっておりますけれども、一般的にこの違いについて問われることも多いということで、ご議論いただく前にご参考として簡単にご説明をさせていただきます。こちらについて、お手元に資料はご用意しておりませんので、簡単に口頭でご説明をさせていただきます、ご容赦ください。
    まず、文化遺産についてご説明をいたします。文化遺産につきましては、必ずしも候補地の選定のプロセスは一通りに限られているものではないんですけれども、近年のプロセスということでご紹介させていただきますと、近年では平成18年度に入った時点で暫定リストに記載された文化遺産が4件となっており、そのうち2件については既に推薦書、或いは推薦書の暫定版が提出されていたという状況になったことを受けまして、暫定一覧表に記載するべき文化遺産について、地方公共団体等から提案を公募するという形をとっております。公募につきましては平成18年度と19年度の2回実施しておりまして、提案のあった案件については、提案を受けて文化審議会の文化財分科会世界文化遺産特別委員会で調査、審議されまして、最終的には文化審議会文化財分科会による了承を得ております。その上で所定の手続きをとって暫定一覧表記載の手続がとられているという状況でございます。平成18年には、この公募の提案に応じた提案書は24件提出されておりまして、検討の結果、24件のうち4件が暫定一覧表への記載が適当と判断されまして、平成19年に暫定一覧表へ記載されております。それから、平成19年には19件の提案がございました。うち5件を暫定一覧表記載が適当と選定しております。但し、これらの5件につきましては、まだ一覧表に記載するまでの課題があると指摘されまして、それぞれの地域において対応して、一定の見通しが示された後に再度審議されました。結果として、こちらも関係する分科会の了承を得て、5件とも平成22年までの間に暫定一覧表に追加記載されているという状況でございます。こうした公募のプロセスを経まして、平成19年から22年にかけて暫定一覧表に記載された案件は、文化遺産で計9件ございます。このうち2件が平成24年に推薦書提出、または推薦書の暫定版が提出されております。それ以外の7件につきましては、引き続き推薦に向けた準備が進められていると聞いております。以上が文化遺産の流れでございます。
    一方で、世界自然遺産に関しましては、こういった提案公募型とは異なる方法を採用しておりまして、それが先ほど自然環境研究センターから説明をさせていただきました平成15年に有識者から成る検討会を開催して学術的見地から候補地を選定したという状況でございます。第1回の説明会でご説明しましたが、平成15年に候補地として選定した後、候補地についてはさらに科学的な知見の集積や外来種対策を初めとした保全管理上の課題への対応を進めまして、暫定一覧表に掲載、推薦をしております。知床につきましては平成16年に推薦書を提出して、翌17年に登録、小笠原諸島につきましては検討会の4年後の平成19年に暫定一覧表を記載しまして、平成22年に推薦書を提出、翌23年に登録といった流れになっております。
  • 岩槻座長 文化遺産と自然遺産は同じ世界遺産の傘の下にありますけれども、もともと出発点から多少異なっているところがありますし、日本でもお世話をしていただく部局が違いますので、やり方が違っても当然だとは思いますけれども、しかし、同じ世界遺産でもそういう風な違いがあるということも念頭に置いていただいてご議論いただければということです。
    それから、平成15年の時はこのメンバーの中では小泉さんと吉田さんにメンバーに加わっていただいて、今ご紹介いただいたような割と膨大な作業をやって19を選んでいるということです。ある意味では、この19が暫定リストそのものの候補というやり方だったと思うんですけれども、こちらの方では、いかに登録に近づけられるかという対策まで進めた上で暫定リストに載せるという作業をやっていただいたという風に、これまでのやり方を見せていただいておりますけれども、そういうことを踏まえて今後はどうするかについて、しばらくフリーディスカッションをお願いしたいと思います。どうぞ、何かご意見をお願いいたします。
  • 吉田委員 今、環境省から文化遺産の登録のプロセスなどもご説明いただきましたけれども、自然遺産に関しては同じような公募はすべきではないと思います。文化遺産の場合、実際は地域の方々が遺産を維持しているコミュニティーによる維持ということがかなりありますので、地元の意欲を買って登録に進めていくことが重要なので、そういうプロセスを経ているかとは思いますけれども、自然遺産の場合はかなり広い地域ですので、自然遺産の国、或いは実際の管理者の責任は非常に重たい。そしてまた、国際的なコンテクストの中でちゃんと位置づけていくことが必要なので、地域における地域自慢的なものを入れてしまうと登録のプロセスに至るのは非常に困難になってきますので、ここに書かれているように、2003年の検討会の中から出てきた19地域マイナス3を中心に作業を進めるということで私はいいと思います。
    ただ、ここに登録基準を満たすかどうかのことだけ書かれているんですけれども、先程皆さんにご覧いただいた資料4の平成15年の報告の中にも書いてありますけれども、知床、小笠原諸島、琉球諸島の3カ所は、単に登録基準を満たすだけじゃなくて、世界遺産条約に定める登録基準と完全性の条件を満たす可能性が高いと完全性の条件についても触れているわけです。あと、前回、米田さんからご説明があったように、IUCNでは単に登録基準というだけじゃなくて、完全性の条件、保護担保措置、この3つの柱が揃って初めて登録できるんだというのを非常に強調しております。ですから、今後の検討に当たっては、登録基準に合致するかどうかというだけではなくて、完全性の条件を満たすかどうか、そして保護担保措置がとられているかどうか、とられていないとすれば、近々にその保護担保措置がとれるかどうかを重視して検討していくべきだということが1点です。
    2点目は、19マイナス3の16と書いてありますけど、この数値はもうちょっと柔軟に考えてもいいと思います。つまり、全部新規登録だけで考えるのかということなんですね。新規ということもあるでしょうし、拡張ということだってあると思うんですね。例えばブナ林の場合は、ヨーロッパではウクライナからドイツの方までシリアル・ノミネーションでどんどん拡張していっている。それは時代を経る毎に残されたブナ林の価値が、多少手が入っていようとも重要であるという認識に変わってきているからということもあると思います。そういうことを考えると、日本の中での登録も新規だけではなくて、この19カ所、或いはその近辺の中で拡張ということだって考えられる。ですから、新規のみならず拡張も含めて検討を進めることが妥当であるという書き方の方がいいと思います。
    ここでせっかく手を挙げたのでお話をさせていただきますと、この頃は、とにかく国内候補地を選ぶことが重要でしたので、国際的なコンテクストの中で、或いは国際協力でという視点はなかったと思います。岩槻先生が座長としてユネスコの生物圏保存地域のことを最後の方に入れてくださったわけですけれども、そういったことが非常に大事で、日本はこれから新しい候補地を出していくことによって一体何をしようとしているのか。ずっと散々議論しているように、観光の看板ではないよ、ということですよね。でも、新しいものを入れるんだったら何だろうか。例えば日本が出そうと思っている遺産と世界の、或いはアジアの他の地域との何か連続性とか関連性があって、それをやることによってほかの国の保護地域と連携がとれたりとか、国際協力ができたりとか、そういう方向に進めることができるんじゃないかというものを優先すべきではないかと思うんですね。それは岩槻座長として先ほどおっしゃったユネスコの原点に戻るということかと思うんですけれども、単に日本国内の都合だけで出すのではなくて、国際的なコンテクストの中でどういったものを出したら日本として貢献できるのかという視点に基づいて選んでいくべきではないかと思います。
  • 太田委員 今の後から追加していく考え方は非常に魅力的で、例えば小笠原諸島は既に指定されていますけど、実は研究が進んでいけば、今入っていないところに重要なセンターがもう1つあることが解明されることは十分あると思います。それから、まだ論議の俎上なんですけど、琉球諸島は現在一体性がこれくらいでいいだろうということで、候補地が絞られている段階でこういうことを私が余り言ったらあかんのかもしれませんけど、一体性の範囲で実際の一体性、十分な担保を考える上で、より今の議論されているエリア外のものが入るのが妥当であるということは十分あり得るわけで、それを逆に指定されたところが、今は島嶼の話だけをしたんですけど、逆にもう既にこの表に入っているからということで今後の議論の俎上にあまり上らないことがもしあると非常にまずいわけで、そこは少し強調されるべきことじゃないかと感じます。
  • 中静委員 私も吉田さんと今の太田さんと同じような意見です。スケール的に見ても日本の世界遺産は面積的にもそんなに大きなものではないので、例えばオーストラリアの熱帯林は途切れ途切れになって相当広い面積が指定されていることを考えると、今のままの世界遺産で本当にきちんとした完全性が保たれているかという議論はちょっと疑問があるところもあるのかなという気はします。
    それから、国際的な視点も僕は非常に大事だと思っていて、例えば知床も色んな問題があるので、すぐにということは多分ないでしょうけれども、北の方には似たような自然が沢山あるわけですから、そうすると、例えばボルネオは保護地域を国境をまたいで作っているということもありますし、世界遺産の指定でも、そういうことも含めて今後の課題として考えておく必要があるのではないかという気がします。
  • 橋本委員 (1)とも絡むと思うんですけれども、登録をこれからどういう基準でやっていくかという吉田さんの国際的なコンテクストから、国が何の目的をというのが凄く大切だと思うんですけれども、一方で世界遺産をこれから維持していって保全していく時に、多様な主体の参画が必要と言っているのに、地元からの推薦が全くなしということが、今後、候補地として選定しました、世界遺産として登録しますとなった時に、登録の段階から多様な主体がコミットできないということが、適切なのかということは、良く議論した方が良いいのかなと1つ思います。
    もう1つは、今まで登録を目指していくというのはあるんですけど、実際、平成15年に19カ所の暫定的なものが出て、その中から順番に登録されていっているわけですけれども、登録出来ないということが発生するわけですが、登録出来なかった時のフォローをどうするのかも考えていかなければいけないのではないかと感じました。それはなぜかというと、たまたま世界遺産の基準に合致しなかったから登録されなかったけれども、地域の持つ顕著で普遍的な自然の価値は否定されていないと平成15年では言っているわけです。そうすると、1つのゴールしかないというわけじゃなくて、ユネスコエコパークだとかジオパークがあるから、そのジオパーク、エコパークに登録したらどうですかみたいなところになってきて、それをさらに国としてどうフォローするかというところまで考えた上で、一体化して世界遺産の候補地を選定していくというものを持たないと、せっかくの日本国内で醸成された保全意識とか世界に日本の自然の価値を発信していくというマインドがそこで消失してしまうんじゃないかという恐れをちょっと感じました。地元も、この19のリストが出た時点で、自分のところが候補になるんじゃないかということで、今も実際に活動している団体は沢山ありますよね。その人達の意見を酌むのかどうかは凄く難しい問題で、もう少し詳細な議論が必要なのかなと感じました。
  • 小泉委員 地域の推薦がゼロとなっているのですが、もしかしたら地域推薦も取り入れた方がいいように思います。実際指定された場合、色々やってくださるのが地域なんです。全く駄目というのも(ちょっと困る感じがします。もちろん推薦が多くなりすぎる恐れもあるのですが、)初めから引っかからないと思うんですけれども、そういう中には良いところが出てくる可能性もあると思います。
    それから、今回のお配りになった資料に、前回、議論が分かれた地域が出ています。大雪山とか飯豊・朝日とかがそうなんですが、前回は3カ所しか選べないという制約がありました。19カ所の候補地から3カ所しか申請できないという話だったものですから、駄目というよりも、むしろ3カ所に絞るためにこういった評価をせざるを得なかった。だから、ここは良くないという書き方がされているんですが、必ずしもそういうわけじゃなくて、致し方なくこういう書き方になっているというのもありますので、考慮する時にそこだけ少し考えていただいた方が良いような気がします。
  • 敷田委員 私も皆さんの意見に賛成です。特に私から申し上げることとすれば、1点目として、(2)の後半の丸ポツの書き方の表現だと思うのですが、最初に世界遺産以外の制度の例示を挙げて、その後に、ふさわしいものを選びましょうねと誘導している文章になっていますが、最初から、これはもう複数の制度がありますよということを前提として考えてくださいという記述の方が分かりやすいと思います。これは専門的見地からではないのですが、吉田さんがおっしゃったように、観光を強化するといいますか、観光振興のための世界遺産というのは、純朴に大勢の人がまだ信じている状態なので、それから脱するためにも、最初から世界遺産が横綱で、それを目指して駄目だったら大関でもいいので他の遺産のタイトルだという話ではなく、それぞれの地域に応じた相応しい制度は最初からあるので、その可能性を最初に考えてくださいというのをメッセージとして強く出していただく方がいいと思います。これが1点目です。
    それから、2点目としましては、今の国際的な視点、それから橋本委員がおっしゃった地域の視点も、その間に国としての方針もあるわけで、それをこの基本的な方針の中でもう少し明確に整理して表現をした方が、これを後から読む人が何がメッセージなのかが非常に分かりやすいと思います。ですから、国際的な視点も必要であれば明確に、国際的な視点はこういう風に意識して選定をしていくんだよ、基本的な方針はそれなんだよと分かるように構造を変えていただく方がいいと思います。
    3点目ですが、特に地域の視点としては、最初に議論した資料1にもありましたが、準備段階が非常に重要だということは、もう皆さん共通した認識になっていると思いますので、地域としては科学的な知見の集積や保存を非常に積極的にやってほしいということと、準備段階から管理システムづくりに地域として取り組むことを心がけてほしい。これが恐らく地域としての意欲とか熱心さ、情熱みたいなものよりも、こういう風な視点を地域が持っているところを相応しい地域だと考えるとメッセージとして示した方がいいかと思います。
  • 大河内委員 私も2点あるんですけど、1つは最初の選び方ですけど、その前に地域の推薦を受けるかどうかは別として、戦略的に選ぶのが基本的にはいいと思います。選ぶやり方は次の委員会が決めればいいと思いますけど、必ずしも前回の15年のものに全て従う必要はないと思うんですね。例えば小笠原諸島の時の評価委員でIUCNから来た方は、前はセーシェルの世界遺産の担当だったんですけど、それはアルダブラゾウガメのハビタット1つだけです。もの凄く狭いところです。ただ、何でそれがなっているのかというと、アルダブラゾウガメが世界的に非常に知名度が高いもので、そういう非常に優れた価値があれば、他のものを超えてでも世界遺産になる可能性はあると思うんですね。そういう色んな可能性がまだ若干はあると思うので、前回のはむしろ面積とかから入っていますから、それとは違う選び方をしていますので、そこはまだ多様な選び方が考えられるのかなと思います。
    もう1点は、富士山が今度、文化遺産で出しますし、フィリピンでは棚田が文化遺産になっていて、人為の入った自然が文化遺産の方でくくられて今動いているということも、自然遺産を決める時に、日本は非常に人為の入った地域が多いので、それを無理やり自然遺産にどうしてもしたいという風にするのかどうかも含めて、文化遺産も選択肢の1つに入れて良いのではないかと私は思います。
  • 岩槻座長 宜しいでしょうか。色んなご意見が出てきたんですけれども、前の19に必ずしも拘らなくてもいいというのは、19に拘らなくてもいいということと、19を絞ってきたプロセスをもう一遍同じことをやらなくても良いということとは別だと思うんですよね。ですから、あの作業は、多少科学的な知見も違っていますし、それぞれの地域の事情も違っていますから、やったら、またちょっと違うものが出てくるかもしれませんけれども、基本的にはそういう作業はそう何度も何度も繰り返す必要はない。だから、19というのが基本的な候補としては残っている。ただ、それに限定するのではなくて、それ以後、新しい知見が出てきたり、今、大河内さんがおっしゃったように50km2以下でももっとこういう面白いテーマがあるじゃないかというようなことがあれば参考にされたらいいと思うんですけれども、そういう意味では19を生かされたら良いと思います。それから、ほかの色んな組織との対応ということも、今まさにおっしゃった富士山みたいに文化遺産へ移行した考え方もあるでしょうし、これは、今いみじくも大河内さんは人為の加わった自然とおっしゃったんですけど、ネイチャーという言葉を使えば、人為が加わったネイチャーというのは余り言わないんですよね。ですから、今、エコパークと呼んでいるBiosphere Reserveを考える時に、Biosphere Reserveにアーバン地域のBiosphere Reserveをつくろうという議論をMABで随分やっていただいたことがあったんですけれども、我々が言うような里地里山的なものを「自然」とBiosphere Reserveの中に認めようとしても、欧米の人はそれはなかなか理解してくれないんですよね。ですから、当然、人為の加わったところは自然ではなくて文化になってしまう。そういう里地里山的な物の考え方はあると思います。それは今後検討していただく時に、自然の方では挙がってこないということにならざるを得ないんじゃないか。
    それから、ほかの色んなシステムとの対比について言いますと、19の候補地の中で、今、富士山のように自然から文化へシフトが移ったものもありますし、ここでは祖母山・傾山・大崩山云々と書かれている広い地域の中で、綾がエコパークに登録されたというのは、この地域で言おうとしていた日本に特有の照葉樹林というところが強調されたわけですけれども、それは自然遺産として候補に挙がっていたということも、そこで色んなことを考えていただく上で非常に大きいインパクトになったと思います。それがきっかけになって、綾が非常に良い状況でエコパークになったものですから、最近ではこのリストの中で言いますと南アルプスだとか只見川がエコパークの候補として検討されているということですけれども、そういうふうな展開をするということが自然遺産という旗を掲げることのもう1つの意味でもあると思います。綾が照葉樹林になったら、それでもう良いのかというのではなくて、それが今度、世界遺産としてどう展開できるかは、地域の拡張ということを含めて、その地域でもっと検討されるべきことであると思われます。そういうことを含めて色んなシステムとの対応だとか新しい場所の選定、或いは地域の拡張を含めて検討していただけるということがあれば、単に世界遺産になれば観光客が増えるというだけじゃなくて、世界遺産ということが一体何で、それに対してエコパークやジオパークは一体どういう意味を持つのかを地域で考えていただけることになるかと思います。
    ただ、文化遺産と自然遺産の基本的な違い、登録へ至るプロセスの違いも、結局は文化遺産に比べると自然遺産の方は、それを保全することの担保がエネルギーの上でも経費の上でも格段に難しい。ですから、どうしても、国は知りません、地方で勝手にやりなさいというわけにはいかない。それは残っている。ただ、逆に地域の方から言いますと、全て国にやってくださいというやり方も、今の時代がとは言いませんけれども、やっぱりそれで良いのかどうか。地域でやれることが一体何で、どこまで地域でやって、国はどこを分担してくださいという合意で地域が盛り上がってこないと、国が設定して、国がやりますから、地域はそれに従いなさいというやり方は余り好ましいことではないんじゃないか。僕個人的にそういうふうに感じるんですけれども、そういうことを含めて整理ができればと思います。
    一通り皆さんのご意見が出たところで、いかがでしょうか。
  • 敷田委員 重ねて言いますけど、もっと具体的なメッセージとして整理をして書いてよいのではないでしょうか。特にこの後、具体的に選定をしていく人達の委員会ができた時に、余り抽象的にどうとでもとれるように書いてあるのは迷惑だと思いますので、はっきり書いてしまった方がいい。皆さんの意見を集め合わせれば、かなりはっきり書けると思うのですが、いかがでしょうか。
  • 橋本委員 ということは、ここで具体的な文言をこうしましょうという議論を今からした方がいいということですよね。
  • 敷田委員 それはそれぞれの方がおっしゃったのを足し算して構造を変えれば整理がされると思います。例えば国際的な視点も吉田さんがおっしゃっていますし、それがはっきり書かれればいい。
  • 橋本委員 それを事務局でもう1回案を作っていただくということですか。
  • 敷田委員 そうですね。というのは私の意見です。
  • 小泉委員 国際的な視野と言った場合に、色々な意味があるような気がします。例えば大雪山とシホテ・アリニには、(自然そのものに)共通性があります(から、国際的といった場合、1つはそういう共通性を考えていくということがあります)。それから、例えば渡り鳥がラムサール条約の登録地を転々と移動していくとかいった繋がりもあります。それから、もう1つ大事なのは、世界的に見た場合、日本の自然の特徴はこういうことだということを、はっきり打ち出すという意味の国際性もあると思います。前回、3地域を推薦した場合も、かなりそういう意識はあったと思うんですけれども、まだ抜けているところはあると思いますから、それは今回入れてもいいと思います。
    前回、私は最後に海岸のことを申し上げたんですが、例えば今までの登録地を見ると、海岸はほとんど入っていないんです。柱状節理のところのコーズウェイ海岸とか、どこかのフィヨルドとか4カ所ぐらいしかないんです。海岸は海の国・日本にとっては大変大事なところなので、もう少し入れてもいいように思います。前回、小笠原諸島と南西諸島が入りましたが、(基本的には島の生物多様性が評価されて入ったわけで、)今後はほかの島でも(自然景観上の)特徴のあるところは、入れてもいいと考えています。前回の残りは16カ所になっていますが、場合によっては新しいところが何カ所か入っても良いような気がします。
  • 岩槻座長 海岸という意味では、知床が特徴を強調できたのは、半島は島みたいなものでもありますし、海岸としての意味が活かされていたことは確かですよね。
  • 太田委員 前の手続に関しては不勉強ですけど、例えば私自身の経験からすると、話がかなり具体化してきてからユネスコの委員が来られて、現場も見ながら話をしようかというところで、こちらが非常に普遍的な価値を持っていると思っている種類のことを説明しても、もうひとつピンとこなくて、逆にこちらが余り考えていないようなことで結構「オー、これはワンダフル」みたいなことになったり、それをそのまま従うというのではなくて、こちらからすれば誤解だと思ったんですけれども、そういうことを修正しながら、本当の価値がそれで通るのかどうかを予備段階からある程度チェックする必要があると思うんですね。先程大河内さんがアルダブラゾウガメの話をされましたけど、例えば小笠原諸島に関して、委員の方が来られて、それが普遍的価値に通じるかどうかを実際にご覧になってコメントされて、議論があったのはどの段階ですか。この3地域に絞り込む段階ですか。それとも、それよりさらに後の段階ですか。
  • 吉田委員 3地域の選定は2003年ですから、ずっと後の話ですよ。
  • 大河内委員 来られたのはもっとずっと後です。この3地域が決まって、まず最初に下見というんですか。 吉田さんの方から説明を。
  • 吉田委員 IUCNの調査は2010年ですので、この2003年の会議の7年後です。
  • 太田委員 そうすると、多分これは経費の問題だとか色々関係してくると思うんですけど、キーワードの1つは普遍的な価値がどれ位世界に通用するかという話になると思うんですけど、その辺りは向こうの意見を全面的に取り入れるという意味ではなく、少し感触を掴む意味で、もう少し早い段階で何がしかの外の専門家の意見も招いて入れるという段階を入れた方が良い、技術的な問題ですけど、或いは議論の中に入っていただくことを今後具体的に考えた方が良いような気がします。
  • 岩槻座長 それは太田さんが一番最初の段階でメンバーでなかったのであれですけれども、小笠原諸島の話の時に小笠原諸島の状況を紹介していただいた時に、3つのカテゴリーで申請したにもかかわらず、1つのカテゴリーだけで登録されたという経過がIUCNの評価もあって、あったのですけれども、登録されたからそれで良いじゃないかというわけじゃなくて、それは僕が個人的に申し上げたことだけれども、あとの2つのカテゴリーがなぜ通らなかったかということは深刻に捉えて考えておかないといけない。それから、今後それに対して具体的な主張をしないといけないということで、伺ったら、それに関するペーパーもそれ以後に随分準備していただいているということで、そういうやりとりは登録までのことだけではなくて登録後にも続けて、或いは登録がペンディングになった時には、そういうことを議論して、こちら側の主張が国際的にどう認めていただけるかは積極的に議論していかないといけない。だけど、そういうことは常にあることで、こっちが一生懸命に良いと思っていることが国際的には必ずしもそうではないということはあることなので、それはある意味ではしようがないことかもしれません。
  • 大河内委員 今のに関連してですけど、結局こういうふうに今までのプロセスでやっていくと、本当に我々が価値だと思っていることが国際的に発信されているのかというところのチェックがあるんですね。小笠原諸島の準備期間は、1つは外来種対策もやっていたんですけど、同時にその間に発信を色々やった。さっき言った通らなかったことについては、取組が足りなかったと反省していて、なぜ足りなかったかは、今はもう分かっているので、少なくとも1つについては準備を今進めているわけですけど、それは単に研究者が論文を書けばいいということでなくて、色んなアピールしなきゃいけない部分があって、その情報の共有をしていないというのはそのとおりなので、いつか太田さんにその辺の話をしたいと思います。
  • 吉田委員 今の話の続きですが、国際的という小泉先生の方に戻ると、国際的には3つぐらい意味があるんですけど、1つは国際的なギャップということで、今、海岸ということをおっしゃいました。それから、中静先生のおっしゃった国境を越えた連続性とか関連性とか、そういった意味での国際的という意味があります。3つ目が国際協力の部分だと思うんですけれども、例えばハワイのパパハナウモクアケアと昨年登録されたパラオ共和国のリーフとか島は一緒に登録するように登録する前から協力し合っているんですね。2年ぐらい登録される時期のギャップはありましたけれども、そういう登録する前の段階で姉妹公園的に一緒に登録を進めていこうという形でずっと前の段階から協力をし合っているようなところもあります。そういう意味で、登録段階での国際協力もあり得るんじゃないか。
    今のお話ですが、登録基準に合っているかどうかという話とちゃんと保護担保措置ができているかという話は多少時間的なギャップはあって、日本の場合には、きちっと登録基準も合っているし完全性も説明できる、保護担保措置も整って外来種問題なども対処しましたよという段階で初めて推薦書を出しますので、そんなことはないんですけれども、途上国の場合には、とにかく登録基準には合っていると思うけれども、保護担保措置は十分まだ整っていないという段階で出してしまっているわけですね。それを何とか拾い上げようと世界遺産委員会で入れてしまうから、これが非常に問題になっているというお話は前回いたしましたけれども、それに対して去年の11月ぐらいにIUCN、ICOMOS、ICCROM、この諮問団体の中から色んな意見が出ていまして、1つの案は、登録基準を満たすというところまでのチェックの段階と、保護担保措置がちゃんと満たされるという段階の2つに分けたらどうなんだ。もう登録基準は良いんだから、保護担保措置が整っていなくても、それは後で良いといって入れてしまっているから大きな問題なので、いわば基準は合っているとちゃんとチェックできた段階で暫定リストにして、暫定リストに入ってからちゃんと保護担保措置が整って初めて世界遺産リストに入れるかどうかをチェックするという2段階にした方がいいんじゃないかという議論も出ています。その代わり、それは今度は登録までの時間が相当かかることになってきます。
    つまり、私が言いたいのは何かというと、そういうような登録プロセスも含めた前段階の方に少し力を入れていこうというのをアップストリームプロセスと言っているんですけれども、遡るプロセスの方に日本も政府レベルでも、或いは研究者レベルでももっと参加して、そういった中で日本の候補も審査していただくというような国際協力が必要なんじゃないかと思います。ですから、日本の候補を検討してもらうことだけ考えるんじゃなくて、日本の候補もアップストリームプロセスに入れて、後で登録基準がひっくり返ることのないように、登録基準をまず満たしてから次は担保措置という風にやっていくのを日本でもやってもらうと同時に、或いは他の国の候補地についても日本の国際協力で、例えば登録基準は満たしているけれども、国立公園としてレンジャーが少ないとか色んな面で十分できていないところを国際協力で引き上げてあげる、それで登録出来るようにするという国際協力だってあり得るのではないか。そういう様な意味で、似たようなタイプのものを一緒に登録に向かって頑張りましょうよ、という形の国際協力だってあり得るんじゃないかということで、アップストリームプロセスを1つの提案として申し上げて、余り詳しくこういう文章の中で書けないかもしれませんけれども、そういった前段階での国際協力もある得るのではないかと思いました。
  • 岩槻座長 いずれにしても前の平成15年の時の検討会では、その国際的な視点はあまり入っていなかった。入ったとすれば、例えば大雪山をロシアの世界遺産と比べてという意味でしか比べていなかったので、今後そういうことが検討されるなら、今やそういうことを無視してはいけないという議論を是非加えていただきたいということだと思います。
    ただ、トランスバウンダリーについては、日本は非常に難しい立場にあって、もう10年程前に、ユネスコMABで北方四島をトランスバウンダリーのBiosphere Reserves、エコパークにできないかというシンポジウムをやってロシアのメンバーにも来てもらって議論したことがあるんですけれども、純粋に自然を見るという視点はなかなか出来ないということがありますから、これは残念ながら今すぐに解決できる問題ではないと思います。
    いずれにしても、今沢山具体的なことを含めてご提案いただきましたので、もともとこの原案はまとめの議論のたたき台として作っていただいたので、事務局は大変ですけれども、今の色んなご発言を踏まえて、これの全体のまとめを準備していただいて、私も相談させていただきますけれども、その上で皆さんにメールで配付してご了解を得た上で、この懇談会の結論にするという取り扱いをさせていただこうかと思いますけれども、それで宜しいでしょうか。
    それでは、色々建設的なご意見をありがとうございました。
    それでは、その他になりますけれども、どなたか事務局からその他について。
  • 小泉委員 ちょっとすみません。その他で質問です。さっきIUCNかどこかから審査員が来て審査するという話でしたけど、ジオパークも良く似たところがあって、審査員によって評価に凄く違いがあるんです。妙に厳しい委員とか、そうでもないとか。こちらの言うことが分かる人と分からない人がいます。こういう評価に対して、これは納得がいかないから、もうちょっと何とかしてくれというようなことは、この場合は言える立場にあるんでしょうか。その辺、吉田さんに教えてもらいたいと思います。
  • 吉田委員 報告書が出されて、評価書が出されて、事実が違っていれば、それに対してある一定期間の間に反論するチャンスはあります。
  • 岩槻座長 ただ、評価の違いはしようがないんですよね。
    宜しいですか。その他について、今まとめのことについては私から申し上げてしまいましたけれども、何かありますか。
  • 環境省(芹澤) その他のところでとりまとめの仕方についてお伝えする予定でしたが、岩槻座長からお伝えいただきましたので、事務局からは特にございません。
    それでは、岩槻座長、ありがとうございました。
  • 岩槻座長 それでは、マイクをお返しします。どうもありがとうございました。
  • 環境省(芹澤) それでは、最後に環境省、星野審議官よりご挨拶させていただきます。審議官、お願いいたします。
  • 環境省(星野) 本日は長時間にわたりご議論いただきましてありがとうございます。本来であれば自然環境局長が最後のご挨拶をするところでございますけれども、所用でこの会議を欠席させていただきました。本懇談会は8月に第1回の会合を開催いたしまして、本日まで計5回にわたりまして世界自然遺産の保全や管理の現状、そして将来に向けた新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方についてご議論をいただきました。委員の皆様方からはそれぞれのご専門の立場から、日本の世界自然遺産に対する貴重なご意見をいただきましたことに深く感謝申し上げます。世界自然遺産の保全管理につきましては、日本にある既存の自然遺産4地域、知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島ではそれぞれに設置された科学委員会の熱心なご指導をいただきながら保全管理を進めているところでございます。
    本懇談会において総括的なレビューを行っていただいたところで、世界自然遺産地域に登録されたことによって、それぞれの地域で生物多様性保全が進展しているという成果を確認させていただきました。一方で、地元自治体を含む地域の関係者の積極的な参画、観光利用への対応、周辺地域も含めた広範囲の保全など適切な管理に向けた課題をご指摘いただいたところでございます。
    新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方につきましては、平成15年に詳細検討対象地域とされた中で残っている16地域を中心に、今後さらなる情報収集作業を進めるという考え方を本日お示しして、様々なご意見をいただいたところでございます。今後、岩槻座長ともご相談して整理をして、今後の検討作業を着実に進めてまいりたいと思います。
    昨年は世界遺産条約が採択されて40周年という節目の年でございました。この機会に世界でそこにしかない唯一無二のすぐれた遺産を適切に保全して後世に伝えるという世界遺産条約の基本的な理念を再確認した上で、懇談会のご議論も含めて、環境省と林野庁が連携をして世界自然遺産が抱える課題の解決に向けて努力してまいりたいと考えております。
    本日はどうもありがとうございました。
  • 環境省(芹澤) ありがとうございました。では、以上をもちまして最後の懇談会を終了とさせていただきます。皆様、お忙しい中、ご出席いただきましてありがとうございました。

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