自然環境・生物多様性

新たな世界自然遺産候補地の考え方に係る懇談会 | 第5回概要

日時

2013年1月29日(月)10:00~12:00

場所

TKP八重洲カンファレンスセンター1階 カンファレンスルーム1A

出席委員等(敬称略)

(1)委員
岩槻 邦男 (兵庫県立 人と自然の博物館 館長)
大河内 勇 (独立行政法人 森林総合研究所 理事)
太田 英利 (兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 教授)
小泉 武栄 (国立大学法人 東京学芸大学 教授)
敷田 麻実 (国立大学法人 北海道大学観光学高等研究センター 教授)
中静  透 (国立大学法人 東北大学大学院 教授)
橋本 佳延 (兵庫県立 人と自然の博物館 主任研究員)
吉田 正人 (国立大学法人 筑波大学大学院 准教授)

議題

  1. (1)「世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について 論点整理(知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島の保全管理の状況及び課題を踏まえた検討)」(報告)
  2. (2)新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方について
  3. (3)その他

概要

(1)世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について(報告)

  • 事務局より第4回懇談会資料からの修正点について報告し、内容について了承された。

(2)新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方について

  • 「1.世界自然遺産地域における成果と今後求められる保全管理について(知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島の保全管理の状況及び課題を踏まえて)」に対する意見
    • 保全管理に関して、可能であれば利用者の意見も反映するとの表現を入れてはどうか。
    • 遺産登録に向けた準備過程の成果に関する記述があるが、準備過程において、科学委員会等での議論を通じて遺産の価値に対する認識が深められることが重要。
    • 準備過程において、保全管理に関する目標や役割分担について議論されることで、登録後の保全管理を効果的に進めることができる。登録前からこのような取組が必要であることを明記することで、地域がこの機会を利用して保全管理に取り組む動きに繋がるのではないか。
    • タイトルに「世界自然遺産地域における成果」とあるが、成果に関する記述が足りない。世界自然遺産への登録を通じて、新たな価値が見出されるとともに、その価値について地元も含めた一般への普及啓発が進んだことなど、世界自然遺産になったことで得られた成果を明確に記述すべき。
    • 世界自然遺産の保全管理は、単に自然環境を守ればいいという訳ではなく、その顕著で普遍的な価値を守るということである。そのためにはさらに厳しい保全管理が求められる。そのことが地域の関係者にも理解されることによって、より適切な保全管理が行われるようになる。
    • 世界自然遺産に登録されることは、顕著で普遍的な価値を守ることを国際的に宣言しているということであり、持続可能な利用以外の利用は駄目だということを記述すべき。
  • 「2.新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方について-(1)基本的な方針」に対する意見
    • "世界自然遺産登録を目指した取組を進めることは、"とあるが、誰が進めるのか主語を明確にすべき。
    • 世界自然遺産188件とあるが、複合遺産29件も自然遺産であると考え、書きぶりを修正すべき。
    • 世界遺産リスト全体のギャップ分析を踏まえて今後どのような遺産を推薦していくべきか、世界自然遺産を国際的な保護地域のネットワークの中でどのように位置づけるか、といった国際的な動向に関する視点も必要。
    • 新しい世界自然遺産を検討することは、自然遺産をより多くの方に理解して頂くことにつながり、これは極めて重要なことである。
  • 「2.新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方について-(2)新たな世界自然遺産候補地を検討する場合の考え方」に対する意見
    • 世界文化遺産は地域の方々により維持されているが、世界自然遺産の場合は広い範囲を管理する必要があることから、国など管理者の責任は非常に重い。また、国際的な視点で検討する必要があり、地域自慢的なものは世界自然遺産への登録は困難である。そのため、候補地の選定において、文化遺産で過去に実施したような公募の形を取るべきではなく、平成15年検討会の際の詳細検討対象地域を中心に検討すべき。この際、新規のみならず、既登録地域の拡張も含めて検討を進めることが妥当。
    • 国内の世界自然遺産は面積的にそれほど大きくなく、今のままで完全性が保たれているのか疑問があるところもある。
    • 候補地を検討する際は、登録基準に合致するかだけでなく、完全性の条件を満たすか、保護担保措置がとられているか、とられていない場合は保護担保措置を近い将来とることが出来るのか、についても重視すべき。
    • 候補地は、日本だけの都合で選定するのではなく、他国の推薦案件に協力が出来るなど国際協力に繋がる地域の選定、国境を越えた連続性、関連性など、国際的な視点も必要。
    • 世界遺産は多様な主体の参画により保全管理をしていくと言っているにも関わらず、登録を目指す段階で地域が参画できないということが適切かどうか、良く議論すべき。
    • 科学的な知見の集積や、保全管理体制の構築に積極的に取り組む姿勢をもっている地域が、世界自然遺産地域の候補地としてふさわしい地域である、とのメッセージを示した方が良い。
    • 世界自然遺産の候補地を選定する場合は、候補地として選定されなかった地域のフォローまで考えるべき。世界自然遺産だけでなく、ユネスコエコパークやジオパークといった選択肢もあることを示すことで、地域でこれまで醸成されてきた保全意識や自然の価値の発信などが継続されるのではないか。
    • 世界自然遺産だけでなく複数の制度があることを前提とし、それぞれの地域に応じたふさわしい制度を最初に検討する必要がある、というメッセージを強く打ち出した方が良い。
    • 国際的な視点や基本的な方針とは何かなど、全体的に更に具体的な表現をすべき。
    • 候補地の検討は戦略的に行うべき。選定の方法については、前回は面積要件によって地域の絞り込みを行っているが、世界には面積が小さいにも関わらず、非常に優れた価値があることが評価されて世界自然遺産になっている地域があるため、面積要件に囚われる必要はないのではないか。
    • 詳細検討対象地域の19地域に必ずしも縛られず、日本の自然の特徴として、例えば海岸に注目するなど、柔軟に検討してもいいのではないか。
    • 日本の自然は人為の入った地域も多く、文化遺産の方が相応しいところもあるのではないか。
    • その地域の普遍的な価値がどれくらい世界に通用するかについて、早い段階から外国の専門家の意見を聞く機会を作った方が良い。
    • 平成15年の検討会後、詳細検討対象地域のうち候補地に選ばれなかった「富士山」はこれを契機に世界文化遺産を目指した取組が進み、「綾」はユネスコエコパークに登録された。この綾のユネスコエコパーク登録の影響で、その他の地域でもエコパーク登録を目指した取組が活発になっている。詳細検討対象地域に挙げられたことが、このような新たな展開を生んでいる。こういう点で、世界自然遺産という旗を掲げる意味がある。
    • 既存遺産地域の拡張も含めた新しい候補地の検討や世界自然遺産以外の制度の適用の可能性について検討を行うことによって、世界遺産、ユネスコエコパーク、ジオパークなどの制度が、それぞれどのような意味を持つのかを地域で考えるきっかけになるのではないか。

ページ先頭へ↑