1.日時
平成23年1月24日(月)13時00分~14時30分
2.場所
経済産業省別館821号会議室
3.出席者
- (委員)
- 長谷川 雅美(座長)、石橋 徹、千石 正一、安川 雄一郎
- (環境省)
- 野生生物課長、外来生物対策室長、外来生物対策室室長補佐
- (農林水産省)
- 環境バイオマス政策課課長補佐
4.議事概要
(事務局より挨拶)
〔未判定外来生物について、未判定外来生物の輸入届出の概要〕
(事務局から資料1、資料2及び資料3を説明)
- (事務局)未判定外来生物は、外来生物法第21条に基づき、輸入にあたってはあらかじめ届出が必要とされ、生態系等に係る被害を及ぼすおそれがないものとの判定の結果が通知されるまで輸入が禁止されている。今回輸入の届出のあったアノール属のアノリス・アルログス、アノリス・ホモレキス及びアノリス・アルタケウスの3種は、同属のグリーンアノール及びブラウンアノールが特定外来生物へ指定された際に、未判定外来生物に指定されたものである。届出の概要については、資料3のとおりである。
(議論は特になし)
〔アノリス・アルログス、アノリス・ホモレキス及びアノリス・アルタケウスに関する情報〕
(事務局から資料4を説明)
- (事務局)アノリス・アルログス、アノリス・ホモレキス及びアノリス・アルタケウスは、原産地では、特定外来生物ブラウンアノールと分布や生息環境、生態的特性が大きく重複し、野外放逐されれば国内でも温暖地域を中心に定着するおそれがある。国内に定着すれば、昆虫類などを食害したり、在来のトカゲ類、鳥類などと競合するなどして、生態系への被害が懸念される。
- アノリス・アルログスとアノリス・アルタケウスは、ヨーロッパやアメリカでは飼育や流通があるようだ。日本のペット業者が出入りするアメリカやドイツのマーケットで出品されることがあるらしい。ただし、キューバは輸出を禁止しているため、マーケットに出回っているのは密輸などで持ち出された個体であろうし、またサイズが小さいことなどからペットとして人気のある種でもないので、飼育量や流通量はかなり少ないようだ。
- 被害の重大性については、伊豆諸島や小笠原諸島等に入った時の悪影響だけではなく琉球列島への影響も言及した方がよい。アノリス・アルログスとアノリス・ホモレキスのように、低木や草地などで活動して、アリ類などを食べる種類に関しては、キノボリトカゲやアオカナヘビなどの在来種に影響を及ぼす可能性が高い。
- 小笠原ではグリーンアノールがポリネーターを減少させている事例があるようだが、農林水産業への被害はないのか。
- 農作物の受粉がセイヨウミツバチなどの飼育昆虫だけでなく、在来のハナバチ類にも大きく依存していることへの認識は日本では十分ではない。野生のポリネーターの保護を真剣に考えていくことが、今後の生物多様性の保全上重要との指摘がある。アノール類に食害されるおそれのあるハチ類に受粉を依存している農作物への影響に注意する必要がある。
- アノール自身がポリネーターになって植物の繁殖に関与する可能性があり、外来植物の分布拡大を助長する可能性すらある。また、台湾に定着したブラウンアノールはアリ類を食害しているが、生態系で重要な地位を占めるアリ類の働きが変化すれば、農業被害も間接的に相当大きなものになると推測される。このように、直接的ではなく二次的なものとして、在来生態系に影響が及ぶ可能性がある。
- (事務局)今回の種は、農林水産物に直接加害するものではないことから、生態系への被害が第一義的で、農業被害はそれに伴うものと整理しているため、既指定のグリーンアノール等と同様に農業被害を生じさせる種としては位置づけない案としている。
- (事務局・農林水産省)生態系に対する被害が食い止められれば、結果的に農林水産業に対する被害も防ぐことができるという理解だと思う。栽培植物と野生動物との関係は十分に解明されていないのかも知れないが、今後の参考にしていきたい。
- 本会合としては、資料4の総合評価に基づき、アノリス・アルログス、アノリス・アルタケウス及びアノリス・ホモレキスの3種を、生態系に係る被害を及ぼすおそれがあるとして特定外来生物に指定すべきという結論にしたいと思うがいかがか。
(一同了承)
〔今後のスケジュール〕
- (事務局)本日のご意見を踏まえて資料4について必要な修正を加え、各委員にご確認いただいた上で、本日の結論として特定外来生物等専門家会合委員へ文書による意見照会を行い、その後パブリックコメント及びWTOのSPS通報を行うなど、特定外来生物の指定に必要な手続きを進めたい。
〔その他〕
- 同胞種が侵略的な外来種であるはずという根拠だけで特定外来生物に指定するのではなく、指定に際しては個々の種の特性に基づくべきであるが、種の識別が困難なものもあり、生態系影響は起こり得るから、危険回避のために幅広く指定するべきとの考えもある。
- 実際に外来種が定着するケースは、生物学的特性に加え、社会的要因が大きい。安価で大量に出回って、野外に捨てられることが一番の大きな要因になるだろう。生物学的な要因だけでなく、もう少し社会的側面から外来生物を分析することが肝心だと思う。現行の外来生物法では種等を単位として判定しているが、輸入や利用の実態に応じた扱い方によって判定するほうがいいと思う。
- (事務局)輸入の実態は変わり得るし、今回の届出については、輸入目的は学術研究であるが、仮にそのことのみにより生態系等に係る被害を及ぼすおそれがないものと判定した場合、以降は利用目的が何であろうと輸入が自由になってしまう。種の特性を踏まえた生態系影響を第一義として判定する必要がある。
- 生物は生息環境と一体なので、外来生物問題も地域ごとに対応を考えるべきだが、外来生物法は全国一律にかかってしまう。国内外来種の問題にも対応できていない。本来は、地方自治体ごとに条例などで対応した方がよい。
- (事務局)海外からの輸入の規制は地方自治体レベルではできない。水際の対策は国がやらざるを得ない。
- 輸入の届出から判定まで自動的に進んでしまう仕組みだと、いろいろ問題が起こる。届出書が提出されてから受理されるまでに今回は1週間ほど間が空いているが、その間に調整をすることはできないだろうか。例えば、環境省が主体となって、国内で同種の個体を保有している人と情報共有し、輸入をせずに届出者が個体を手に入れるようにできないだろうか。
- (事務局)一部の動物園の間では輸入を検討する前にそのようなことが行われているようだ。しかし、制度上は輸入の届出が出されればそれを留め置くことはできない。
- (事務局)未判定外来生物もまだたくさん残っている。これまでは届出が出てきた度に判定を行っているが、基本方針では計画的に判定を行っていくことも求められている。この基本方針と今回のご指摘を踏まえて検討していきたい。
- 輸入届出前に未判定外来生物の判定をどんどん進めることになれば、「生態系等に係る被害を及ぼす可能性は否定できない」という理由を用いて、全て特定外来生物に指定されることになるだろう。未判定外来生物から特定外来生物になると、闇のルートでの流通が増えたり、遺棄の加速等につながるおそれがある。これを懸念して、未判定のまま据え置いたり、あるいは外来生物にしないという判断もあり得ると思う。
- (事務局)計画的に判定を進めた結果、生態系等に係る被害を及ぼすおそれはないものとして、特定外来生物に指定しないという判定もあり得る。予防原則で評価していくことが大切だと思っているが、自然科学的、生態的な影響だけではなく、社会及び経済的な影響や規制による弊害という面も含めて総合的な判断を行いたい。
- 未判定外来生物ではなくても、侵略的な種はたくさんいる。現在未判定外来生物に指定されているものが全て妥当かどうかにも疑問がある。また、要注意外来生物リストという便利なものもあるので、活用したらよい。