1 日時 |
平成17年1月20日10時00分~12時05分 |
2 場所 |
経済産業省別館9階944会議室 |
3 出席者 |
(委員)太田 英利(座長)、千石 正一、安川 雄一郎、石橋 徹 |
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(環境省)生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室課長補佐 |
4 議事概要 |
<特定外来生物の選定について>
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答)
- ヒアリングされた種類は飼育動物として輸入されているものに偏っている。アカミミガメは中国産と思われる生体が食用として輸入されている。ちなみにスッポンモドキというカメは食用として流通している。食用に輸入されるのは生体が多い。スジオナメラも、食品として入ってきている輸入量はペットよりずっと多いはず。
- 未判定外来生物について、見分けられるかできないかというのは判定する人の能力による。一般的にはカミツキガメとワニガメの区別はつきにくい。オオガシラ属Boigaとよく似た頭の大きいタイプのヘビであるチャマダラPsammodynastesは混乱するだろう。チャマダラはあるペットフェアで安く販売されていたが若干の毒があり、噛まれて指が腫れたという電話がかかってきたことがある。
- ペットだけではなく食品としての流通も把握しておく必要がある。
- ハブに種類名証明書を添付するということならば、サキシマスジオについても同様にするのか。スジオナメラは外国でブリードされたものが輸入されることがある。また、流通が多いために未判定外来生物から外したヒキガエル属には種類名証明書を付けないのか。付けないと混乱が予想される。
- (事務局)意見をいただいたので、種類名証明書を付けるリストに入れたいと思う。
- 両生類では、陸生のカメは観賞魚のルートで流通している。特に中国からカミツキガメ、アカミミガメが入ってきている。
【カミツキガメの扱いについて】
- 指定することのメリットとデメリットについて、どう考えるかということ。
- (事務局)前回の議論のポイントを整理すると、デメリットは今飼っている方が、飼いきれなくなって逃がしてしまうのではないかという恐れがあること。メリットは輸入が許可制になり、蛇口を閉められるということと、適切に飼うようになること。ペットに関して、新規に飼うことはできないが、現に飼っているものは環境を整えて申請すれば必ずしも今飼っているものを手放さなくてもよいことを普及啓発していく必要がある。動物愛護管理法の危険動物について、カミツキガメが対象外となっている県があり、カミツキガメを指定することのメリットは大きいのではないかと思う。また、動物愛護管理法では、申請手数料が非常に高額になっており、飼育施設への追加投資が必要となる。今飼っているものについて、条例下での許可があれば、この法律による新規の投資は必要ない程度の厳しさで、登録の手数料も必要ない。現に野外で見つかっているものに対する防除ができるという意味ではメリットがあると考える。
- 申請にはコストがかからないということだが、申請した個体と申請者をリンクさせる、個体識別ができるシステムを作る予定はあるのか。
- (事務局)マイクロチップ等、考えてはいる。個体登録的なシステムを整備していきたい。その点では新たな負担があるが、登録手数料はかからない。
- カミツキガメにマイクロチップを入れるとすると、かなり危険な作業になる。全身麻酔をかけなければならず、高額になる。動物愛護管理法を無視して飼っている人は相当いる。二重の法律がかかると第二次遺棄ブームがやってくる可能性がある。
- (事務局)それぞれの生物の特性に応じて、マイクロチップに限らず対応していきたい。闇で飼われている部分は、とにかく野外に出ないようにする必要がある。この法律では、遺棄することの罰則の方が許可なく飼育することの罰則よりもかなり大きくなっている。
- 動物愛護管理法は、カミツキガメという危険なものを飼育してはいけない、だから登録し、未成年は飼ってはいけない、という趣旨であった。潜在的に危険な動物を登録することは重要だと思うが、それに登録料がかかることが登録のブレーキになっているのではないか。動物愛護管理法についても、登録料を下げる、あるいは無料にする等の考えも必要なのではないか。
- (事務局)地方自治体は、手数料の中からまかなうという考え方で実施体制を確保しており、手数料は自治体の考え方によるものである。
- 遺棄は重罪であるということが遺棄への抑止力になることを期待されているが、個体と持ち主のリンクがされていないと抑止力にならない。誰が摘発することを想定しているのか。
- (事務局)この法律では運搬も規制の対象になっている。持っている際に許可証がなければその場で捕まえられる。摘発するのは警察である。
- 犬はかなり厳しく管理されており、規制がかかっているが、捨て犬の数は膨大である。カメより犬を遺棄する方が心情的に難しいと思うが。個体と持ち主の把握ができていないと遺棄防止は難しいと思う。登録料について、規制がないところからあるところへ移行するときに高額な登録料がかかるというのはハードルが高い。将来的に金額を段階的に上げていく等の処置は検討できないか。
- 今現在飼っているものに対していきなり2万円払えというのではなく、初めから覚悟を持って飼え、ということ。犬の管理システムやICチップのようなものは、本来あってしかるべきものだと思う。
- カミツキガメについて、指定することのメリットとデメリットを考え、どうするか。
- 整備しなければならないものが多すぎるので、現時点では時期尚早。継続審議に回した方が無難な種だと思う。
- 指定と同時にかなり捨てられると思う。防除の仕組み作り、捨てた直後にどれくらい回収できるか。爬虫類飼育関連のイベントで調査したところ、法律・条例のかかるものを飼うことには慎重。飼いたくない、引き取って欲しいという人が多い。
- 遺棄は起こると思うが、他に有効な手だてがない。アカミミガメは、捨てられる数が多すぎるので要注意外来生物リストに入った。本来は、温帯域のカメは全てここに入れてもよいと思うが。
- 要注意リストに関してはそのとおり。業者ヒアリングの結果を見ると、依然としてカミツキガメの輸入量が月50頭ある。輸入されるのは幼体でかなり安価と考えられる。体制の整備は早急に必要であり、指定を先延ばしにすることによって、海外から流れ込み続けることをどう考えるか。より広範囲に、より除去しにくい状態になってしまうことを危惧する。
- アカミミガメのほかにも、生態系に影響があるカメはもっといる。たまたま研究されているのがアカミミガメであるだけ。同様に、なぜカミツキガメだけが、と考える人もいる。防除の裏付けがあるのであれば、指定すべきという意見に賛同する。
- カミツキガメの飼育頭数は、輸入量の数百倍と考える。現在飼われている個体の多数が違反状態と思われる。
- カメの輸入元はアメリカ、中国であり、相当数が養殖されている。中国でもアカミミガメはよく見かける。カミツキガメは中国で食用として高く評価されている。ペットとしてだけの取引を考えていると思うが、生体としての取引禁止も含めて考える必要がある。
- 食用のものは経済的・産業的にも大きな影響があるので別に議論したい。メリットとデメリットの議論に戻すと、1年あるいは2年延ばしたときにどの様なメリットとデメリットが考えられるか。
- 1年で全部合わせて1千頭程度の輸入があるとして、そのほとんどが幼体であり全てが大きくなるわけではない。これまでは毎年数万頭が輸入されてきているので、それに比べると割合が小さい。条例で指定されていない県向けに集中的に輸入されている例がある。
- 輸入している業者は数軒であり、法律でしばるのではなく、輸入を減らすような行政指導や交渉は成り立たないのか。
- (事務局)呼びかけはできるが強制力はない。営業への影響の補償もできないので、現実的ではない。
- 予測される遺棄に対して、国として何らかの前進ある回答はできないか。
- (事務局)生体を国が引き取って飼育することはありえない。個人のやっていることの後始末を国がする事はない。ただし引き取りの斡旋はできる。
- カミツキガメに関して、継続審議という選択肢はないと考える。
- 法的な中身の改正がない限り、継続審議には意味がない。カミツキガメは日本の生態系に非常に大きく影響する。アカミミガメは諸般の事情で指定できない。問題が生じているため名前が挙がってきている中に、カメが1種も指定されないことによって、カメというものに対して注意が払われなくなることを危惧する。カミツキガメを指定生物に入れるべきである。
- 引き取りについて、法律よりも先に動けないことは分かった。防除について相当積極的に対処することを前提に、指定生物に入れることに賛成。
- 制定の日までに、殺処理の準備、個体管理システム、保持時の摘発システム、過去の条例違反を問わずに登録できるシステム、飼育家の飼育施設が全て整うのであれば、賛成できるが。
- (事務局)自治体の条例違反を不問に付すことは無理。
- 日本の池にカミツキガメがいないようにするための法律ではないのか。飼っている人から直接引き取りはできないことは分かった。
- (事務局)正式に飼っている方には新たな負担無く最後まで飼い続けていただける。
- これから問題になるのは外来などの種に対する捕獲・駆除等である。マングースも現在は国が駆除事業を進めているが、最初は特定の個人が入れたものであった。防除に対する今後の展開に期待したい。
- 法律や条令を厳密に適用すればするほど遺棄が増える。外来種の場合、管理下にあるものは問題ない。飼育を続ける手助けをする仕組みづくりはできないか。
- 特定生物のリストに入れて、次に遺棄されないシステム作りをするステップに移るのではないか。
- 捨てられてしまうという結果に責任がとれない。前述したことについての工夫をし、捕獲するための予算について議論を継続するのであれば指定に賛成。指定されるのと同時に議論がストップすることは避けたい。
- カミツキガメを特定外来生物としてリストに挙げること、異議なしと認めてよいか。
(一同異議なし)
- 水産庁の方がいらっしゃるので思いついたのだが、捕獲について、内陸水産業の方で集めて中国に輸出していくシステムを作ってはどうか。
- (事務局)養殖を含め未だなされていないことから、ビジネスとしては難しいと思う。
- 今回の話は、長期的にということではなく、法律施行後、短期間で出てきてしまったものの処理ということ。
- 養殖するとは言っていない。駆除に伴い捕まえたものを一時的に輸出するということ。中国では、外国から、かつてはベトナム、現在はミヤンマー等から、食用のカメを買い集める努力を相当している。買い集められる方では、野生個体群の壊滅が起きている。野生のものではなく外来のものを輸出すれば、中国と日本のお互いにメリットがあるのではないか。
- 行政の部局間の連携を進めていただきたい。
【ウシガエルの扱いについて】
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答)
- 食品としての流通は冷凍品でもさほど問題ない。実験用には生体でないと困るというのは分かるが、野外から捕まえてきたものは遺伝的にも不均一で、医学実験などには使えない。ウシガエルを特定外来生物に入れても構わないと思う。
- ウシガエルはオタマジャクシとして相当流通している。小さいうちは魚用の飼料で簡単に飼えるが、成体になると生きた虫しか食べないので捨てられる。
- ウシガエルは、日本中どこでも日没近くに沼に行くとそこここで見られ、捕っても捕りきれるものではない。法律に指定されると駆除しなければならない。
- (事務局)島嶼などいないところに新たに持ち込まれるのは防がなければならないというのが問題意識としてあるが、この法律では規制は全国一律にかけなければならなくなる。
- 逸出が減る方向に行くのではないかと思うので、指定した方がよいと考える。
- 一年程度継続したからといって、デメリットが大きくなるとは思わない。今回は入れないこととしたい。
(一同異議なし)
【要注意外来生物リストについて】
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答)
- ヒキガエル4種について、未判定だったものから、流通量が多いため要注意リストになった。この基準ならばBufoparacnemisなども入っていないとおかしい。
- 注意を喚起する点で個々の名前が必要なのは分かるが、千石委員のおっしゃるように、温帯から熱帯に生息するカメはそう簡単に飼って放してはいけないという注意喚起が必要である。
- 温帯のカメということではアカミミガメに関して、北米産のクーター属を入れないのは問題。全体にバランスを欠いてい
る。なお、要注意リストに挙げられているものを種類名証明書添付生物や未判定外来生物に入れることは可能か。
- (事務局)種類名証明書添付生物には入れるべきである。
- ミシシッピアカミミガメ、キバラガメ、クーター類、ミシシッピチズガメ等、北米産のカメは要注意外来生物に入れるべきである。
- 要注意リストはかなり多くしても構わないと思う。持ち帰って内容を充実させたい。
- 要注意リストにさえ挙がっていないから大丈夫だと解釈されると困る。表現上の工夫も含め、座長に一任して欲しい。
(一同了承)
<その他>
- 委員会を継続する事は分かった。法の不備を継続的に審議する予定はあるのか。
- (事務局)5年を目処に見直すという付帯事項がある。動かしながら見ていきたい。
- 飼育者に対して広報活動をもっと積極的にしていただきたい。設備、金銭的な負担がどうなるのか、飼育は分かっていない。ペット雑誌のたぐいに、PRの広告を掲載するなどしてはどうか。
以上
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)