1 日時 |
平成16年11月24日10時~12時15分 |
2 場所 |
新宿御苑インフォメーションセンター2階会議室 |
3 出席者 |
(委員)太田 英利(座長)、千石 正一、安川 雄一郎、石橋 徹 |
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(環境省)生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)水産庁生態系保全室課長補佐 |
4 議事概要 |
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答。)
(委員からの主な意見)
〔特定外来生物の選定の進め方について〕
- (資料2-2について)この資料をみると、現在、輸入されているものは未判定外来生物に指定しないと考えて良いか。
(事務局)未判定外来生物に指定されると輸入禁止となることから、現在、輸入が行われているものは未判定外来生物に指定するのではなく、特定外来生物にあたるか否かの判断を行うべきと考える。
(事務局)いついつと特定しているわけではない。輸入統計がきちんととられているわけではないので、どのような種が入ってきているのか実態はわからないのが実情。
- 輸入実績があれば指定しないとのことだが、年に1,2個体だけ輸入されているような、非常に輸入数が少なく、かつ定着のおそれのないような場合であっても、未判定外来生物の対象にはならないのか。
(事務局)それくらいならば、ほとんど輸入されていないものと考えられ、対象になりうる。
〔爬虫類・両生類に係る選定の考え方について〕
(事務局)資料3-1について、ブラウンアノールは定着していないので、記載ミスであり、リストから削除してほしい。また、ミナミオオガシラは、野外で発見・捕獲された例があるが、定着までは確認されていない。
- 資料3-1について、ワニガメとかグリーンイグアナは、野外では見つかってはいるが、定着してはいなので、この定着している種のリストに掲載することには疑問がある。
(事務局)この資料はやや曖昧であるが、本来、国内で定着しているものをリストに載せるべきであるところ、定着しているかどうかは分からないが、野外で発見されたケースも対象にしている。
- そういう基準で載せるのだとすれば、これだけでなくかなり掲載種は増えてくる。
(事務局)他の分類群でも同様で、このリストは若干曖昧なところがあるが、それぞれのリストへの掲載方法は、分類群グループごとの事情により異なってしまうことがあると考えられる。
- この法律の運用は、継続性を考えているので、このリストが決定版でこれをベースに議論がスタートするというものではなく、このリストも継続して見直していくよう事務局に努力をしてもらって、精度を高めていくべき性格のものである。
- 定着していなくても逸走してしまったものも対象に含めていくという方針であれば、資料の集め先として、警視庁をはじめ警察に問い合わせると作業が楽になると考える。
- このリストに載ってからどうするか考えるというのでは遅いが、実態を把握しておくことは重要なので、警察に問い合わせるなどの方法を使って精度を高めていってほしい。
- 中国から輸入されているスッポンは、在来のものと亜種レベルで区別できる。すでに沖縄で定着しているので、スッポン(中国亜種)もこのリストに加えるべき。
- 資料3-3で、ペットショップで常時見られる種は数十種程度との表現があるが、ペット用の生物は、一度、海外の業者にまとまった量を発注し、それが売れたら、また発注するというやり方の繰り返し。毎年、一定量輸入しているのではなく、数年おきに入って来るというのが現状なので、実際に店頭で販売されている種数は数十種どころではなく、もっと多い。
- 偶然、逸出したものについても集計して取り扱うのであれば、それの集計結果を統計的に分析することをお勧めする。逃げるのが上手だとか、日本でも暮らせそうだとかの傾向が見えてくるのではないか。せっかくデータを集めるのであれば、そのほうがデータが生きてくる。
(事務局)今回のリストは少ない時間の中で、文献等に知見があるものを選んだものであり、委員のご指摘を踏まえてリスト作りをやっていきたい。
- 統計的に分析するときは、地域的な傾向もみてほしい。本土と沖縄では大きく異なる。本土であれば大量に持ち込まれても定着しないものが、沖縄ではわずかでも持ち込まれれば定着してしまう可能性がある。地域別に統計を取ることは重要なデータとなる。
- 資料3-3の1で示されている非意図的な導入の量は意図的な導入に比較して極めて少ないとの認識は危険。シロアゴガエルは、意図的に輸入したり誰かが広げているということは考えられないが、どんどん分布を拡大しており、非意図的に分布を拡大しているものと考えられる。
(事務局)非意図的導入については認識しているが、意図的に比べれば量は少ないと考えられ、そのことを記述している。
- 非意図的導入は、量の問題ではなく種数が問題。人が意図的に持ち込むものよりも、かなり定着しやすいものが入ってきている可能性はある。
- 資料3-2で、オオヒキガエルは人の生命・身体への被害についてもチェックを入れるべき。カミツキガメも畦に穴をあけるという点で農林水産業に被害はあると考えられ、こちらにもチェックをいれるべき。
(事務局)これらは、文献においてこういう指摘があるかどうかをチェックして作成したもの。
- オオヒキガエルの毒が目に入って失明したという文献はどこかにあるはず。
(事務局)この資料は今回限りの資料であるので、今後、種の選定の検討にあたっての資料作成において、反映するようにしたい。
- 資料3-3では、ペットが原因と最初に大きく書かれているが、今回資料3-2で示されているような生物は、ペット由来のものは少ない。タイワンスジオは展示用のものが逃げ出したものであり、タイワンハブはハブ酒用である。オオヒキガエル、ウシガエルは意図的導入であり、シロアゴガエルは非意図的導入である。爬虫類・両生類の問題の頭にペットを持ってくるのは如何なものか。
(事務局)利用者の形態がペットだけでないのは、ご指摘のとおりなので、書き方は工夫したい。
- 今回の法律は、生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を軽減し、なくすることが大目的。指定によるメリット、デメリットを検討し、生態系等への被害を防止する観点でメリットがあれば指定すべきである。そのことを考え方の基本として、個別の種の検討をしてほしい。
〔個別の評価を実施する種について〕
(資料3-4について事務局より説明)
- 法律によれば、特定外来生物に指定されると飼育を禁止されることとなる。飼育とは管理下においてあるということだが、今後、飼育や譲渡をしてはいけないということになると、業者も売れなくなってしまい、遺棄してしまうなど逆の効果を起こしかねない。
(事務局)今飼っている個体が遺棄されるおそれはある。個人で現に飼っている個体については、愛玩目的でも継続的に許可をとって飼えるようにするが、業者の方は売るために持っている。飼養状況を把握して次回の委員会で説明する。
- 指定後の行政のアクションにもいろいろな方法があると思うが、飼育規制をするよりも先に駆除を先行させるとかはできないのか。
(事務局)法律上は、指定すると、規制は全部かかってしまう。ただ、防除は指定するしないに関わらず、やろうと思えばできる。今、輸入を止めないといけないというものがあれば、指定していくことが必要。
- 法律の施行までに、特定外来生物を捨てても処罰の対象にはならないのか。
(事務局)施行されてからでないと罰則はかからない。
- それまでの間に、特定外来生物を捨てるという行為は確実に起きるが、その対策はどのようにするつもりか。
(事務局)なかなか難しい。行政で全部引き取ることはできないので、業者の人に捨てないよう呼びかけていく。
- 多くの流通があるものを閉めると、それを商っている人たちは、代替商材を必ず用意する。国内の業者、海外の生産者ともここで取り上げる種よりもさらに商材を広げてくる可能性がある。子供がカメを飼うという文化的な面も考えれば、(カメの供給が減ることはなく)代替商材として、(在来種と同種とされる海外のカメ等)遺伝的交雑のおそれのあるものが入ってくる可能性もある。このような代替商材が必ず出てくることへの対策を別途検討しておいた方がよい。
(事務局)特定外来生物と近い種類の生物であれば未判定外来生物に指定することでチェックすることはできる。もう一つは、アカミミガメを今回含めていないことと関係するが、たくさんアカミミガメを飼っている人たちにどうメッセージを伝えていくかをしっかり考えていく必要がある。今回は、施行までにきっちりと押さえておくべきものを検討していくもの。蛇口を閉めていくことで効果があるようなものはしっかりとやっていく必要があるし、そうでないものは、違う手を使って考えていくことが必要。その意味で、どういう情報があり、どういう人たちが相手なのか、はっきりしていないのが課題。
- アカミミガメだけでなく、カミツキガメでもそうだが、業者だけでなく飼養者の中にも、外来生物法に基づく許可を得るのに(許可基準を満たす飼養施設を確保するなど)お金がかかることから、捨ててしまう人は多いはず。これはデメリットだが、指定して規制することで、小笠原とかまだ入っていないところへの侵入を食い止めるというメリットはある。
- 今日、ここで結論を出すのではないので、次回に向けて、問題点を明らかにしていくべき。
- 生態系の仕組みは本州と琉球列島では異なる。在来のヒキガエル属のいた台湾にオオヒキガエルが導入されても余り生態系被害はなかったので、本州ではあまり被害はないと思う。しかし、離島は注意が必要であり、離島では、一律に特定のアカミミガメとかいったものではなく地域毎に考えていく必要があるのでは。
(事務局)日本では、国内のある地域だけを限定的に規制する法律を作るのは極めて例外的であり、全国一律の規制とせざるを得ない。特定の地域を守るといっても、流通を押さえるためには、輸入する国際空港や他の県から入ってくることを考えると全体を押さえていく必要がある。また、国立公園など重要な生態系を有し、保護していくべき地域での規制のあり方については別途検討中である。
- 新・生物多様性国家戦略では、「特に他の地域と隔絶され、固有の生物相を有する島嶼等では、移入種(外来種)が在来の生物相と生態系を大きく変化させるおそれが強くあるため、重点的な対応が必要です」と書いているが、これに対して、対策として緩い。
(事務局)規制については全国一律とならざるを得ないが、防除については、現に奄美、やんばる、西表島等でやっている。
- 日本の生物を知る人間からみれば、非常にかゆい所に手が届かない思いが強い。しかし、今回の法律を施行していくため、その制約の中で議論していくしかない。やっても無駄だという議論ではなく、その中でできることを考えていただきたい。
(事務局)資料3-4の個々の種の被害について文献から頻用しており、大きなミスはないと思うが、その上で、飼養、流通の実態を次回の会議でみていただきたい。規制の考え方も御議論をいただきたい。
- 例えば、カミツキガメについては、動物愛護管理法の危険動物の規制がかかりはじめた時点で大量の放棄があって局地的な定着に結びついた。放棄されないまでも、持ち込まれる動物園や業者等がひしと受け止めてなんとか持ちこたえている。これらは既にキャパシティオーバーになっているので、特定外来生物に指定することでこれらが決壊したらどうなるのかを考えていく必要がある。また、危険動物の条例を定めていない都道府県がどういう動きをしているのか、こういうところが条例を定めようとしているのであれば、それに増して厳しい規制で締め上げることにどれだけのメリット、デメリットがあるのかを考える必要がある。次回は、今、どういうところでどういう規制をしているのか資料を作っておいてほしい。
(事務局)いろいろある動愛法の危険動物の中で、カミツキガメだけを何故ここに載せているのかというと、既に野外に定着しており、防除の観点から外来生物法の対象としていく必要があると考えたため。動愛法の危険動物となって、カミツキガメの飼養にブレーキはかかってきたと思うが、動愛法には防除の観点はない。
- 確かに放棄されて定着したものを防除するというについて動愛法は力が弱い。
- 本質的に、外来生物を逃がすということは、特定外来生物に限らず問題である(国内外来種の問題も含めて)。特定外来生物に限らず、外来種問題を広く国民に教育していくことが重要ではないか。
- 今までの話を聞いていると、みんな法律の議論に戻ろう戻ろうとしている。その中でミドリガメが対象から抜けているリストが落としどころ的に提示されたが、そもそも法律の有りように不備があると考えている中で、あと何十時間の間に何種かを決めなければいけないのだろうか。
(事務局)外来種の問題に100%この法律が対応しているとは考えていない。今回は、この法律の中で何をやるのかを議論して頂きたい。普及啓発を先にと分けられるものではなく、法律の施行自体が相当強烈な普及啓発のツールになると考えている。
- ご指摘の点は、法案の骨格を審議する審議会の時から大きな議論があったもの。その中で、象徴的なものをあげていくことが普及啓発の観点からも重要だということで理解した。種の選定もこれでおしまいなのではなく、どんどん見直しをやっていく。
- リストからは、アカミミガメ、ウシガエルが抜けているが、今回指定しなくても野放しのままではダメ。この問題については別途ワーキンググループを作って議論していくことを考えないのか。
(事務局)今回は流通や飼養の実態を比較的把握しやすいものを選んでいる。(その結果、今回漏れたアカミミガメ等について)引き続き議論する体制をどうすればよいのかについてはご検討いただきたい。一つは、このWGの下にサブWGを作って議論するというものと、もう一つは、事務局で調査なりを行い集まった情報をこのWGにお示しして御議論いただくというものが考えられる。事務局としては後者を考えている。
- 事務局で調査してもらって、その結果を受けてこのWGで議論したいと思うが。
- 賛成である。
(事務局より資料3-5について説明)
- カミツキガメについては4亜種と書かれているが、中米と南米のものは北米の2亜種とは別種扱いされている。中米と南米のものは、Chelydra属として未判定外来生物にしておかないと、別の種として入ってくる可能性がある。
- カミツキガメと同科のワニガメについては、しばしば間違えることがあるので、ワニガメについても種類名証明書は必要である。
- グリーンアノールに関連してアノール属の中では、キューバアノールが輸入されている。
- カミツキガメはChelydra spp.とでも書いておけば問題はないと考える。
- 分類学的な属を単位として未判定外来生物を指定するとのことだが、持ち込まれた結果、定着するかどうかもポイント。アノール属で完全に赤道直下に生息するものは、日本で定着するかどうかは分からない。労力のかけ方としては日本と気候風土が似た環境にある生物がまず対象となるべきであり、熱帯直下や砂漠に生息するものなどはアノール属でも未判定にしなくても良いのではないか。
- いろんな知見が必要になってくる。Taxonの周辺を選んではいるが、ニッチが競合するかどうかの方が重要。
(事務局)膨大な種がこの属に含まれており、限られた時間の中で、どのような環境に生息しているかなどを全て把握するのは難しい。同属のものは、未判定外来生物に指定しておいて、輸入届を受けてから個別に評価していきたい。また、Taxaではなく、こういうものは未判定外来生物にすべきという理由があれば、教えていただきたい。
- ヒキガエル属については種類名証明書を必要としているが、成体はそれでも良いが、オタマジャクシの状態で輸入されるとヒキガエル属以外のものとの見分けが難しい。
(事務局)見分けが付かないとすれば、どれくらいの範囲に証明書をつけさせることが必要なのか、知見を教えていただきたい。
〔個別の評価を実施する種について〕
- 法律の段階まで遡って問題があるとする意見がある一方で、実際の種の選定も進める必要もある。妥協案としてCITESの付属書の用に全国一律で規制が必要な生物として表に掲げたとしても、特定の地域での取組だけで良いようにできないだろうか。
(事務局)法制度上、取扱い上は、全国一律となる。特定外来生物とは別に要注意生物リストというものは作っていきたい。
- 特定外来生物に指定すると、飼育をやめる人がかなり出てくる。このため、引取施設を作るという話もあったが、実際の施行の時に引取施設ができていないと、(野外に遺棄されることから)こわくて指定することができない。
(事務局)引き取れる団体等を斡旋することはありえるが、引取施設を作ることは難しい。
- これくらいの個体数までなら引き取れるという数字は次回までに出せないだろうか。飼養者は、引き取られても殺されるのであれば、野外に逃がすという行動をとる。それが分からないと入れたときのメリットデメリットを議論することもできない。
- メリットデメリットが分からないものは継続審議とせざるを得ない。
- 今、飼っているものは引取をどうするかだが、一方、野外で定着しているものは駆除される。大量に引き取る場合は、水産加工処理場などに行わせる方が現実的かもしれない。
- ペットとして飼われていた個体についてはアニマルライツの問題があり、野外で定着しているものは防除として殺処分という2つの考え方があると考えて良いのか。
(事務局)現にペットとして飼われているものについても引取を大前提で考えているわけではない。現に飼っている人は、責任をもって飼ってくださいというのが基本。
- 原則論は全くそのとおり。しかし、この委員会では最終的な結果について責任をもたなければいけない。動愛法で危険動物になるというだけで大量に遺棄されたという事例があり、今回、予測できませんでしたとは言えない。現実的により良い結果を残すにはどうすべきかを考えていく必要がある。
- 小林雷太氏がカミツキガメの野外個体群について調査しているが、動愛法の危険動物の規制が始まったころ、カミツキガメの捕獲個体が大量に増えたが、その後減った。最近では段々捕獲個体が出てきており、外来生物法が施行されるということの影響がもう出てきているのではないかと思われる。着地の部分をうまくやらないといけない。ただ、カミツキガメは動愛法の危険動物の指定で既に輸入量は減っているし、もう捨てられる個体は既に捨てられているとも考えられ、指定することのメリットの方が大きいように思われる。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)