環境省自然環境・生物多様性外来生物法資料等特定外来生物の選定(専門家会合資料・議事録等)

第6回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(哺乳類・鳥類)議事概要


1 日時 平成25年3月25日(月)14時00分~15時00分
2 場所 一般財団法人 自然環境研究センター 9階 大会議室
3 出席者(敬称略) (委員)石井 信夫(座長)、小林 正典、羽山 伸一
  (環境省)外来生物対策室長、外来生物対策室長補佐、外来生物対策室係長
(農林水産省)農業環境対策課長補佐、林野庁研究・保全課長補佐
 
4 議事概要

(事務局より挨拶)
 これまで座長に選出されていた村上委員が、本日欠席のため、村上座長から指名された石井委員が座長を務めることを事務局から提案し、了承された。

【未判定外来生物について、未判定外来生物の輸入届出の概要】

(事務局から資料1、資料2及び資料3を説明)

(事務局)未判定外来生物は、外来生物法第21条に基づき、輸入にあたってはあらかじめ届出が必要とされ、届出があったときは、届出を受理した日より六ヶ月以内に、当該種について生態系等に係る被害を及ぼすおそれがあるか否かの判定し、届出者に通知しなければならない。今回輸入の届出のあった種は、特定外来生物に指定されているクリハラリスと同属のフィンレイソンリスで、入手国はタイとなっている。なお、届出の概要については、資料3のとおりである。

(議論は特になし)

【フィンレイソンリスに関する情報】

(事務局から資料4を説明)

(事務局)フィンレイソンリスは、すでに特定外来生物に指定されているクリハラリス(亜種:タイワンリスを含む)と同属のハイガシラリス属に分類されている。国内での定着事例は知られていないとされているものの、タイワンリスと思われていたものの中に本種と思われるものが確認されたとする情報もあるのでここに追加したいと考えている。海外ではシンガポールやイタリアで定着が確認されている。原産地では多様な森林環境に生息しており、生息地選択の幅が広い。イタリアの定着地では冬季の平均気温が10℃程度であり、国内でも温暖な地域に入った場合は定着の可能性が高いと考えられる。系統的に特定外来生物に指定されているタイワンリスと近縁であり、生態的特性が類似しているため、同様な生態系への被害(在来リスとの競合など)が予想される。また、食害による果樹への被害や樹皮はぎによる林業への被害、電気ケーブルをかじるなど工業製品への被害が確認されている。メスの性成熟時期が早く、年に1~2頭出産するため個体群増加率は高いと考えられる。現状で、国内では1動物園でのみ飼育されており、それ以外では未判定外来生物に指定される以前に個人が輸入したものが飼育されているという情報がある。以上のことから、野外放逐された場合、国内でも温暖地域を中心に定着のおそれがあり、植物や昆虫類などへの食害や、在来リスやと鳥類とのニッチ重複による競争排除、果樹や林業への被害が予想された。

(委員指摘事項)

○影響をもたらしている要因の(1)生物学的要因の2ポツめ。年1~2頭を出産となっているが、出産数というか生育子数若しくは巣立ち数(巣の中で何頭産んでいるかわかんないので)なのではないか、これが年複数回あるならば個体数増加率が高いといっても正しいが、年1~2頭出産では増加率が高いとは言えないであろう。
○その他の関連情報の2ポツめ。ノミやダニなど寄生微生物を数種類持ち込み、というのは、ノミやダニにバクテリアがついてくるということなのではないか。ノミやダニそのものであるならば、寄生微生物という表現ではなく外部寄生虫とすべきである。
○被害の実態・被害のおそれの(1)生態系に係わる被害の2ポツめ。冬季の平均気温が10℃程度のイタリアで定着ということだが、飼育的には温度設定が難しく、温度を保たないと繁殖はもとより活かしておく部分はかなり難しいとリスをやっている人間から聞いたことがある。
○平均気温よりも最低気温のほうが重要なのではないだろうか。
○イタリアでの定着地はどのあたりなのか。
→南方の地域と記述されている。(事務局)
○暖かい地方でないと定着は難しいだろう。関東だとぎりぎりだと思われる。ただ、環境には慣れるためそのあたりは注意が必要であろう。
○特定外来生物のタイワンリスも三浦半島付近では、最初ほとんど増えなかった。それが、ここ20年ぐらいで爆発的に増加した。何か順化が起こったのではないだろうか。
○説明するときの理由部分をもう少し詳しくした方がよいであろう。できうることならば、個体群増加率が高いという部分について、もう少し具体的な数値を挙げる。若しくはイタリアでの定着個体が年に何回繁殖するといった情報を加えた方が参考になるであろう。
○本会合としては、資料4に理由を少し加えていただいて、生態系に係る被害を及ぼすおそれがあるとして特定外来生物に指定すべきという結論にしたいと思うがいかがか。

(一同了承)

○それでは、フィンレイソンリスを特定外来生物に指定するという結論とする。

【特定外来生物ジャワマングースの種名変更について】

(事務局から資料5、資料6及び資料7を説明)

(事務局)現在、特定外来生物には「ジャワマングース」が指定されているが、最近の研究で従来、「ジャワマングース」のシノニム若しくは亜種とされていたフイリマングースが別種であるいう見解が定着した。そのため、指定についても整合性を取るべきと考えられることから、現在、ジャワマングースとされているものの種名をフイリマングースに変更することに加えて、ジャワマングースについても従来通り、特定外来生物に指定することを提案していきたいと考えている。資料5として、ジャワマングースがフイリマングースに整理された経緯を示した。資料6として、フイリマングースに関する情報(案)として個票を整理した。これについては、参考文献としてジャワマングースが特定外来生物に指定された当時の個票を掲載したが、基本的にはこの個票に記載されている情報が、そのままフイリマングースの情報として整理されたものに該当する。そのため、生態に係る被害や影響に関する部分は同様の内容となっている。新しい点としては、原産地が資料5の文献を参考として整理した点と定着実績については、その後の新知見として鹿児島県鹿児島市への定着に関する情報を加えた。また特徴ならびに近縁種、類似種についての部分で、本種の方が、ジャワマングースよりもやや小型である点を記載した。資料7としては、これまでのジャワマングース情報がフイリマングースの情報に該当することとなるため、個別の情報は少なくなっている。ただ、評価の理由としては、フイリマングースと近縁であり、最近まで同種として扱われていたという点を考慮して評価を行っており、原産地と定着実績を整理し、特徴ならびに近縁種、類似種については、ジャワマングースの方がやや大型であるとして記載した。結論としては、両種ともに特定外来生物として指定していくべきものと考えている。

(委員指摘事項)

○資料6、影響をもたらしている要因の(2)社会的要因。山田氏著による「日本の外来哺乳類」にはハブだけでなく、ネズミの駆除も目的であったと書かれていたと記憶しているが。
○導入について、ネズミの駆除目的があったかどうかについてははっきりしない。導入理由としてはっきりとわかっているのは、導入したところに施設を作る計画があったときにそこにハブが沢山いるのでこれを何とかしたいとしてマングースを導入したという理由。ただ、これだけとも言い切れないので、「ハブの駆除を目的」を「ハブの駆除を主な目的」と記述すべきと思われる。
○沖縄でマングースフェンスを設置したことで、在来のネズミも行き来できなくなって減ってしまったということを聞いた覚えがあるが。何年か前、種の保存法会議のヤンバルクイナについての部分で出たものと記憶している。
○ケナガネズミは樹上性のためフェンスが障害となって移動できないということは考えにくい。また、オキナワトゲネズミについては、フェンス設置地点には生息が確認されていないのでこちらについても考えにくい。イノシシなどは移動阻害があるかもしれない。
  (※この点について当日欠席委員から後日指摘あり。下記補足参照)
○資料6、影響をもたらしている要因の(1)生物学的要因の3ポツ。「食物に対する選択性が小さく」という部分が表現として気になった。ここは食べ物の選り好みをしないと言う意味だと思うので、「選択の幅が広い」というような表現の方が良いであろう。全体として、根拠となる文献が示されていないので、出来る限り示してもらいたい。
○本会合としては特定外来生物ジャワマングースをフイリマングースというように名称変更することについて了承し、ジャワマングースについては引き続き特定外来生物に指定することを結論としたいと思うがそれでよろしいか。

(一同了承)

○それでは、特定外来生物ジャワマングースの名称をフイリマングースに変更し、ジャワマングースも引き続きに特定外来生物に指定するという決議とする。

【その他】

(事務局)今後の日程ということで説明させていただく。本日ご指摘頂いた点を反映した資料を用いて、4月上旬をメドに専門家会合の全体会合を書面などにより開催する。その後、WTO通知通報手続を行い、5月にフイリマングースおよびフィンレイソンリスの追加のパブコメをして、7月くらいには政令指定の閣議決定行いたいと考えている。1月22日に届出を頂いているので、7月中旬までにはそれらの閣議決定、政令指定を行って、届出者に生態系への被害がある旨の通知をしたいと考えている。以上

(※補足:当日欠席委員からの指摘)

○山原(やんばる)南部のマングース移動防止フェンスは、マングースが付近の木やフェンスに付いたツタなどを利用しないよう管理されているため、ケナガネズミも隣接する木を伝ってフェンスを越えるようにはなっていないだろうとのこと。逆に、ケナガネズミが移動できるようであれば、フェンスの管理を強化する必要がある。ケナガネズミなどの在来種がさらに回復し移動阻害が懸念される事態になったときには、まずモニタリング、次に人的移動の可否、さらに木の高い枝をむすぶ移動路を設置する等の対策も必要になる可能性もある。