1 日時 |
平成16年11月19日10時~12時15分 |
2 場所 |
経済産業省別館第827会議室 |
3 出席者 |
(委員)村上 興正(座長)、石井 信夫、石田 健、小林 正典、羽山 伸一 |
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川本 芳(霊長類関係)、池田透(アライグマ関係) |
(利用関係者)大矢秀臣 |
(環境省)生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)生産局農産振興課技術対策室長 |
4 議事概要 |
(事務局より資料を用いて説明し、質疑応答。)
(委員からの主な意見)
〔特定外来生物の選定の進め方について〕
- (資料2-2 第2 3選定の際の考慮事項について)随時選定していくとされているが、今後のスケジュールはどのようなものか。
(事務局)未判定外来生物を輸入したい人からの届出があれば、その都度評価を行っていくことが必要。また、今回は第一陣の指定であり、情報不足のもの、利用実態の把握が必要なものについて、これらが分かってから随時選定していくこととなる。
〔哺乳類・鳥類に係る選定の考え方について〕
- 資料3-3は、つまり、知見のあるものは指定の検討を行う、知見の十分でないものは知見の収集につとめていくということ。
〔個別の評価を実施する種について〕
(資料3-4について事務局より説明)
(タイワンザル等のマカク属について川本委員より資料を用いて説明)
- マカク属とニホンザルの交雑については、和歌山が有名であるが、青森と千葉房総半島においても既に交雑の事実が確認されている。房総半島では2代以上交雑が続いている。事務局資料は修正が必要。
- 野外ではないが、マカク属間での交雑事例は海外でも多数ある。
- 交雑事例ではないが、国内で外国産マカク属が定着した事例はある。伊豆大島ではタイワンザルが野生化し、3000頭が生息。農業被害を出すため、年200頭が駆除されている。伊豆半島の大根島でもタイワンザルが野生化しているが、遊覧船が来て餌をまいている。
- マカカ属でもアッサムモンキーは、アカゲザルと区別が難しく、取り違えるケースが多い。種類名証明書の添付の有無の判断については、系統だけで判断しない方が良い。
- 交雑が危険なのであれば、マカク属3種だけに限定するのではなく、属全体に網をかけたほうが良い。
- マカク属については、種の単位ではなく、属で広く網をかける方が区別しやすいのではないか。
- 和歌山県で防除したタイワンザルを調査した結果、年間の繁殖率は13%あることが分かった。これはニホンザルよりも高い。交雑個体はハイブリッドブレークダウンがおき、在来種より繁殖率が低下すると考えていたが、実際には在来種より非常に高い。和歌山県が防除の取組を今年でやめるというが、この繁殖率の高さからみても、やめるのは危険である。
- 交雑の事実があるものでも、実験室内で起こっているだけのものであれば、未判定外来生物に指定しておけば良いのではないか。
- 種類名証明書には、DNA鑑定を行わせることはできないのか。
(事務局)証明書の発行は、各国政府次第であるので、出せる国は出せるだろうが出せない国には求められない。税関審査ではDNAまで見留事は想定していない。
- 霊長類で輸入されているものの99.9%は実験動物用。ペット用はほとんどない。以前、ガイアナからリスザルが輸入されてきたが、平成15年度には輸入量ゼロとなった。サルの輸入検疫がスタートしたこと、動愛法の危険動物に指定されたことで、ペットとして飼うのは難しくなっており、ペット用の輸入量はない。財務省と厚生労働省のサルの輸入統計の数値が異なっているのは、動物検疫所で死んだ個体については、通関しないため、財務省の統計にはのらない等の理由によると思われる。
- リスザルについては、随分以前から伊豆半島で定着しているとの情報がある。
(アライグマについて池田委員より説明)
- アライグマには、酪農地帯を核として定着し、繁殖拡散する北海道タイプと市街地を核として定着し、繁殖拡散する鎌倉タイプがある。
- 2歳のメスの繁殖率は96%と高率で、一度に平均4頭の子供を産む。天敵がいないことを考慮すると極めて高い繁殖率であり、今対策を講じなければいけない。
- 原産地であるアメリカでの報告では、アライグマはエッグイーターとして有名だが、アライグマの影響を受けない鳥類はいないだろうと書かれている文献もある。
- ドイツでも野生化しているが、推定生息数は10万から100万頭という驚異的な数字。日本でも、ここまで増加する可能性があるため、爆発的に増加する前に早く手をうつべきである。
- 特定外来生物は、種のレベルで指定するのか、それとも属といった大きな単位や、逆に亜種など種内のレベルでも指定できるのか。
(事務局)基本方針の第2の特定外来生物の選定に関する基本的な事項の中で、「原則として種(亜種又は変種がある種については、その亜種又は変種とする。)を単位として行うものとし、必要に応じ、属、科等一定の生物分類群を単位とする」と規定されている。
- 特定外来生物を選んでいくが、選ばれなかったものについては、未判定外来生物に指定されるか、又は無罪放免のものが出てくる。これらの選定作業の手順とか関係性について説明がほしい。
(事務局)資料3-3にあるとおり、今回特定外来生物の選定に漏れたものについては、引き続き知見を収集する必要のある種として整理したい。
- 哺乳類でここに取り上げた10数種以外のものについて、何故、今回見送ったのかを説明をしておくことが必要ではないか。
(事務局)今回、リストアップされているのは、資料3-3に示されている既存の知見において、被害があるということが示されているかどうかの観点、資料2-2に示されている適正な規制の実施体制の確保の可能性の検討や、規制の効果についての検討から絞り込んだもの。要注意リストといったものの整備をやっていく中で対応したい。
- 要注意リストを公表する。これが、第二陣、第三陣の指定種になる可能性が高い。
(事務局)哺乳類は数が限られているのでなんとかなるかもしれないが、他の生物分類群では数が多すぎてそれらすべてに選定されなかった理由を記すのは困難。資料3-3の内容を充実させることで、これを選定されなかったものの理由に換えたい。
(事務局)要注意リストは作成するが、ホワイトリストを作るつもりはない。
- ホワイトリストとブラックリストでは、行き着く先は同じだが、プロセスは違う。
- 外来生物法は、結果としてブラックリスト方式になってしまったので、ホワイトリストに近づけた運用をすべき。マカク属については、野外ではないとは言え、これだけ交雑の報告があるのであれば、属全体を特定外来生物に入れることが科学的に合理的ではないか。
- 三宅島に導入されたイタチは、群集構造を大きくかえてしまった。チョウセンイタチなどについても議論する必要があるであろう。
(鳥類について石田委員より説明-非公表資料を使用(委員にのみ配布)-)
- 筑波山などでは、確認された野鳥の半分以上がソウシチョウに置き換わってしまったところもある。
- 精度のあらいラインセンサスの結果ではあるが、ソウシチョウが増加するにつれウグイス、シジュウカラ等が減少したとの報告もある。
- 外国産メジロ(亜種レベルで在来メジロとは異なる)は、在来メジロとの野外での識別は容易であり、税関でも大きさを見ればすぐに判断できる。外国産メジロについては、科学的なチェックを進めていく必要がある。
- インドクジャクが南西諸島の小さい範囲でだが、野生化し、在来の小動物や種子を捕食している。小動物や種子が食べられても被害は顕在化しないが、大きな影響が出ているかもしれない。
- 鳥類では、メジロ(亜種)、ソウシチョウを含めたガビチョウの仲間、インドクジャクは入れたいと思うが、その可能性はあるのか。
- ここでは、可能性の議論をするのではない。次回は、これらについて具体的なデータを示していただきたい。事務局と共同で、哺乳類と同じような資料を作って議論した方が良い。
- ソウシチョウについて生物相そのものが入れ替わっているのは大きな問題。ソウシチョウが入ってくる前のデータと比較はできないのか。
- 前のデータは取られていない。また、環境変化の影響もある。(ソウシチョウを競合する)ウグイスが生息するササの藪は、シカに食べられてなくなってきている。環境が変わる中で、外来種に駆逐されれば影響が大きい。鳥類について全くリストアップされていないことには強い危機感を持つ。
- 鳥類についてはデータ不足。次回に資料を作ってもらって検討したい。
- 鳥類の輸入について、ガビチョウ等中国からの輸入は皆無に等しくなっている。鳥類の輸入実態はだいたい分かっているので次回にお示ししたい。
- 少しでも輸入されてしまうと遅いので、あらかじめチェックできるようにしたい。
- 来年9月1日から感染症法の関係で、哺乳類、鳥類については輸入が届出制になる。国内に入ってきている哺乳類・鳥類は何か、詳しく分かるようになる。また、この議論は、国内に入って定着しているものをどうするかではなく、意図的導入に対してどうするかの議論ではないのか。
- 国内外来種問題は、個別の法律で対処するということで整理されている。ここでは、海外から入ってくるものについて検討する。
(事務局)メジロについては、鳥獣保護法において輸入に際しての輸出国の許可や飼養等の許可が必要となっており、外来生物法と鳥獣保護法との関係について省内で整理が必要と考えている。インドクジャクについては、沖縄で問題になっているとの報告は知っているが、一方、本州では、放し飼いしているところが多いが問題があるとは全く聞いていない。もっと被害についての情報を集めていくことが必要と考えている。
- 資料3-5についても説明してもらい、議論してほしい。
(事務局より資料3-5について説明)
- 種類名証明書と鳥類については、次回議論することとしたい。資料3-4のリストに載っている種については、第一陣の指定としてこれで良いか。
(事務局)マカク属の3種以外で余り情報がないものは、未判定外来生物に指定することを考えている。これで輸入は止まるので、個別には輸入の届出があってから評価を行っていくこととなる。
- 未判定外来生物は届出が出てから半年で評価しないといけない。時間がないのが非常に気にかかる。あらかじめ情報を集めるなど準備をしておかないといけない。
- 霊長類については、現状で、何が輸入されているのか分かっているのか。
- アフリカからのサルの輸入は禁止されている。最近では動物園に入れるためにアイアイを特別許可を取って輸入した例がある程度。
- 法律と法律との棲み分けがあるのは理解しているが、輸入メジロの取り扱いについて、鳥獣保護法は国内個体を保護するのに役立つのは分かるが、生物多様性保全の観点からは、外来生物法で取り扱うことの方が重要ではないかと思う。国内のメジロを飼うために、外国のものを輸入して、その輸入証明書を国内のものにつけて飼い、輸入したものは野外に逃がしていると聞く。外来生物法で規制すべきである。
(事務局)鳥獣保護法にも生物多様性保全の観点は入っている。内部でも鳥獣保護法での輸入規制の実効性を高めていけないか検討していきたい。
- (資料3-4に関し、)あまりデータがないチョウセンイタチ、ミンクの問題について、かなりの影響が考え
られるが、次回までに情報を集めて、検討していただくことはできる。要注意リストにのせて限られた期間内で情報はあつまるだろうか。
- チョウセンイタチ、ミンクは要注意リストには絶対に入ると思う。
- 次回までに実験動物、動物園動物、ペット動物についてヒアリングをすべきと考える。方法や人選については事務局とも相談して考えたい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)