第10回特定外来生物等分類群専門家グループ会合（昆虫類等陸生節足動物）議事概要

４　議事概要
１　日時	平成２８年１２月２１日（水）１６時～１７時５０分
２　場所	環境省１９階　第２会議室
３　出席者（敬称略）	委員）石井実（座長）、荒谷邦雄、小野展嗣、五箇公一、平井規央、森本信生、吉冨博之（環境省）自然環境局野生生物課長　植田、外来生物対策室長　曽宮、外来生物対策室長補佐　立田、外来生物対策係長　若松（農林水産省）大臣官房政策課環境政策室課長補佐　高濱、消費・安全局植物防疫課調査官　岩井、消費・安全局植物防疫課国内検疫班　住田

〔今回指定の考え方について〕

特に意見はなし。

〔特定外来生物等（昆虫類等陸生節足動物）の選定について〕

＜マルバネクワガタ属の９種＞

（荒谷委員）「マルバネクワガタ属の９種」はいわゆるマキシムス種群と呼ばれるものだが、種群を明確に定義した文献がないため、対象となる種名を挙げている。
（環境省）グループが明確に定義できて、その全種にリスクがあることが明らかになった場合にはグループ単位での指定を考えてもよいと思う。
（吉冨委員）在来種とよく似ている種もいるようだが、流通・販売されている個体が外国産の種かどうかの識別はできるのか。
（荒谷委員）大型の個体であればかなり明確に区別がつく。小型個体と雌は同定が難しいものもあるが、現在、バーコーディングやＤＮＡレベルでの同定ができる。
（五箇委員）現状として、分類が不安定であるということはどの分類群にも共通することである。現在の学名に準じ、種名で指定するのが法的に最も妥当ではないか。分類が変わった時には、その都度見直しすることはできる。

＜クビアカツヤカミキリ＞

（五箇委員）各地で同時多発的に発生している。成虫の飛翔により分散する可能性が高いので、早く指定して注意喚起しモニタリングを急ぐことが重要だと考える。
（荒谷委員）クビアカツヤカミキリの防除方法は確立されつつあるのか。
（五箇委員）カミキリムシ用の殺虫剤はあるが、基本的には直接かけるもの。他に天敵の昆虫寄生菌もあるが、成虫に接触感染させるものとなる。被害木の伐倒、焼却が一番効果的だが、難しい場合もある。有効な防除手法はすぐにでも並行して開発していく必要がある。
（森本委員）特定外来生物と植物防疫法との仕分けはどのように整理されるか。植物　　防疫法による緊急防除は考えられないか。
（農林水産省）サクラのほかモモの果樹でも発生が確認されており、防除実施の必要性を認識している。都道府県を対象に本種の発生状況調査、防除を要請する通知の発出を行っている。また関係機関と連携して防除対策の検討を進めているところである。
（石井座長）緊急防除は、法的にはどういった条件の時に実施できるのか。
（農林水産省）基本的には輸入を禁止している病害虫など、重要性、経済的な影響や効果も含めて検討する。
（五箇委員）特定外来生物に指定すると、植物防疫法から外れるのではないか。
（環境省）現在、植物防疫法に基づく検疫対象だが、農業被害への対策のみが対象となる。外来生物法では生態系の観点から、法規制により分布拡大を抑制し、農業部分は今後も植物防疫課と連携できればと考えている。
（小野委員）食害樹種として、普通の林にはどのぐらい入るものなのか。
（荒谷委員）今は寄生しやすいサクラが多いため、そこに入っているだけで、かなりの範囲の広葉樹を食害すると思われる。
（五箇委員）被害のほとんどがサクラで、街路樹、公園、私有地など所管がまちまちになり、薬剤の使い方も変わる。指定後のハンドリングが大変になる懸念がある。
（吉冨委員）被害の多いソメイヨシノが生態系の一部といえるかどうか。
（五箇委員）日本独特の文化、景観に対して被害を及ぼす害虫と位置付ければ侵略的外来種という解釈はできると思う。
（石井座長）文化財保護なども関係するので、文化庁にも入ってもらいたい。

＜アカボシゴマダラ＞

（石井座長）奄美大島の愛好家が自宅飼育した外来亜種の標本を販売したことがある。これが放虫された場合には、すぐにでも奄美諸島の固有亜種との交雑が起こりうる。
（五箇委員）指定した場合、定着個体を薬剤等で駆除することになるのか。
（石井座長）薬剤を用いるとオオムラサキなどの絶滅危惧種にも影響がある。保全したい場所に対して、何かするということになる。
（環境省）今回の指定は、未定着亜種の侵入の未然防止が一番の狙い。
（石井座長）本種は現在４亜種に分類されており、今回、種アカボシゴマダラ（奄美亜種は除く）として指定することで、今定着している名義タイプ亜種以外のものもブロックするという考え方である。
（石井座長）『マルバネクワガタ属の９種、クビアカツヤカミキリ、アカボシゴマダラの計11種を、「評価の理由」に基づき、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある生物として、特定外来生物に指定するべき』との結論とする。（一同了承）
（荒谷委員）海外で意図的に交雑された個体も今回の指定の対象になり得るのか。マルバネクワガタはそのような交雑個体が作られて販売される可能性がある。
（環境省）外来生物法では、交雑個体を規制する場合は別途指定する必要がある。
（石井座長）情報収集のうえ、深刻な危険性があることが判明した場合には、交雑個体も追加指定を検討する。

〔その他〕

（荒谷委員）ムシャクロツバメシジミは生態系被害防止外来種リストには未掲載だが、どのように対応していくのか。発生地で防除活動をおこなったものの、分布拡大しているという指摘もある。
（環境省）まずはリストへの掲載を検討し、普及啓発を図りたい。リストの更新のあり方についても別途検討していきたい。