環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第8回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類等陸生節足動物)議事録


 
1. 日時 平成26年10月8日(水)14:00~15:30
2. 場所 一般財団法人 自然環境研究センター 7階 会議室
3. 出席者  
   (座長) 石井  実
   (委員) 荒谷 邦雄
五箇 公一
森本 信生
小野 展嗣
平井 規央
         
   (環境省) 関根外来生物対策室長
谷垣外来生物対策係長
服部外来生物対策係員
   (農林水産省) 森山大臣官房環境政策課課長補佐
宮田生産局畜産振興課技術第2班課長補佐
4. 議事  

【環境省 服部外来生物対策係員】 ちょっと定刻より早いのですが、皆さんお揃いのようですので、これから第8回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類等陸生節足動物)を開催したいと思います。
進行を務めさせていただきます私、環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室の服部と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。
開会に当たりまして、外来生物対策室長の関根より御挨拶申し上げます。

【環境省 関根外来生物対策室長】 どうも失礼いたします。本日はお忙しいところ、御出席いただきましてありがとうございます。
外来生物法に基づく特定外来生物ですけれども、これは法律が制定されました平成16年以降、112種類を指定してきております。今後の特定外来生物の指定につきましては、現在、作成を進めております(仮称)侵略的外来種リストの結果も踏まえて全体的な検討をしていきたいと考えているところでございますけれども、本日はそれに先立ちまして、長崎県の対馬への侵入が平成24年に確認されておりますツマアカスズメバチを特定外来生物に指定することについて御議論いただければと考えております。
今回、ツマアカスズメバチを早急に指定しようとする背景でございますが、侵入の確認以来、対馬の中で急速な分布の拡大が見られているということ、さらには、対馬で盛んなニホンミツバチによる養蜂への影響が懸念されていることなどから、対策の強化について地元から強い要望があるということが背景としてございます。現在も長崎県や対馬市と協力いたしまして、モニタリングの実施をしているところでございますけれども、特定外来生物としての法的な位置づけをした上で、本格的な防除にも着手をしていきたいと考えているものでございます。どうぞ御議論のほど、よろしくお願いいたします。

【服部係員】 前回の第7回会合は平成18年4月に開催されていまして、間もあいていますし、新しく委員になっていただいた先生もいらっしゃいますので、改めて皆さんの御紹介をさせていただきたいと思います。
先生方、向かって右手の荒谷先生から順番に御紹介させていただきますので、お願いします。
九州大学大学院の荒谷先生です。
続きまして、国立科学博物館の小野先生です。
国立環境研究所の五箇先生です。
大阪府立大学大学院の石井実先生でございます。
続きまして、畜産草地研究所の森本先生。
大阪府立大学大学院の平井先生。
なお、本日、委員として御就任いただいております愛媛大学の吉冨先生におかれましては、所用のため御欠席との御連絡をいただいております。
続きまして、環境省と農林水産省及び事務局の出席者を御紹介させていただきます。
順番に農林水産省の森山補佐のほうからお願いします。

【農林水産省 森山環境政策課課長補佐】 農林水産省大臣官房環境政策課の森山と申します。よろしくお願いいたします。

【農林水産省 宮田畜産振興課技術第2班課長補佐】 同じく農林水産省の生産局畜産部畜産振興課の宮田です。よろしくお願いいたします。

【環境省 谷垣外来生物対策係長】 環境省外来生物対策室の谷垣と申します。よろしくお願いいたします。

【事務局 石塚】 事務局を務めさせていただきます自然環境研究センターの石塚と申します。よろしくお願いします。

【事務局 邑井】 同じく自然環境研究センターの邑井と申します。よろしくお願いいたします。

【服部係員】 報道関係の方がいらっしゃいましたら、冒頭のカメラ撮りはここまでになりますので、御協力お願いいたします。
続きまして、お手元の配付資料の確認をさせていただきます。一番上に会議の題名を書いた議事次第がありまして、その裏側が資料一覧になっていますので、そちらをお手元に御確認いただければと思います。その次の資料が座席表と委員名簿がありまして、資料1としてツマアカスズメバチに関する情報、ホチキスどめのもの。資料2が想定される未判定外来生物の例及びその他種類名証明書添付生物の例で1枚、参考資料1が特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律に基づく特定外来生物等の選定に係る学識経験者からの意見聴取要領、参考資料2で1枚紙の外来生物法の概要、参考資料3としまして法改正の概要、カラーの1枚紙です。参考資料4でホチキスどめの資料の特定外来生物被害防止基本方針抜粋です。資料5の特定外来生物等分類群専門家グループ会合資料(第二次選定時資料)となります。最後は1枚紙の参考資料6としまして国内におけるツマアカスズメバチ防除の取組状況。資料一覧にはないのですが、メインテーブルの皆様のお手元には、環境省の九州地方環境事務所で行いました平成25年度のツマアカスズメバチに関する調査の報告書がホチキスどめで1部と、カラー印刷の資料で、現在、特定外来生物及び未判定外来生物、種類名証明書の添付が必要な生物に指定されている生物のリストが配付されています。
資料の不備等はございませんでしょうか。もしありましたら、会議進行の途中でも結構ですので、事務局まで申し付けいただければと思います。
本日の検討会は公開で開催いたします。また、検討内容については議事録及び議事概要として環境省のホームページで公開いたしますので、その旨御承知おきください。
座長につきましては、これまでに引き続き石井委員にお願いしたいと思いますが、皆さんよろしいでしょうか。
(異議なし)

【服部係員】 御了承いただきましたので、以降の進行につきましては、石井座長にお任せしたいと思います。
それでは、よろしくお願いします。

【石井座長】 それでは、僭越ですけれども、司会進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いします。
18年4月に前回開催ということで、もう何と8年以上たったということですが、その間に外来生物法の改正等がなされております。これまでの経緯等について、まず御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【関根室長】 それでは、私から今御紹介いただきました法改正の関係、それから特定外来生物の指定に関する規定などについて御説明したいと思います。参考資料1をご覧いただけますでしょうか。
参考資料1が特定外来生物を選定する際の学識経験者からの意見聴取要領でございます。法律の中で特定外来生物を指定するに当たっては、環境大臣及び農林水産大臣は、指定に係る政令の制定又は改廃に関する立案において、学識経験者の意見を聞くということになっておりまして、その規定を定めたものでございます。
「第2 学識経験者の選定」がございまして、この規定により選定されております専門家の方々が、1枚めくっていただきますと特定外来生物等専門家会合委員名簿として記載させていただいている各分類群ごとの専門家の先生方になります。
戻っていただきまして、「第3 意見聴取の手続について」でございます。第3の3におきまして、「意見の聴取に際しては、関係する専門家から得た情報や知見を活用する」と規定をしております。これに基づきまして、それぞれの分類群ごとに専門家グループ会合を設置させていただいておりまして、本日の昆虫類等陸生節足動物に係るグループ会合も、これによりまして開催させていただいているものでございます。したがいまして、このグループ会合の意見を聴取させていただいた後、さらに先ほどの別紙の全体の専門家会合の意見をお聞きするという手続を経て指定をするということになってございます。
次に、参考資料2でございますけれども、外来生物法の概要でございます。左側の縦の列に「特定外来生物」とございますけれども、これは現在まで112種類を指定しております。その右側、真ん中の列に「未判定外来生物」がございますけれども、これは特定外来生物の近縁のものであって、特定外来生物と同様に生態系に係る被害を及ぼす疑いがあるものについて、これは属、あるいは科などの単位で指定しているものがほとんどでございますけれども、これについては輸入者に届出義務を負わせておりまして、その届けに基づいて特定外来生物に指定するかしないかを判定するということになっております。現在、112種類の特定外来生物のうち20種類がこの未判定外来生物から判定を経て指定されたものでございます。特定外来生物に指定されますのは、この未判定外来生物以外に、一番右側にあります指定されていない規制のないものから、必要に応じて主務大臣の判定を経て指定されるものもございまして、今回のツマアカスズメバチなどは、こちらのほうの流れの中で指定を検討していくものでございます。
「特定外来生物」の箱の下に書いてございますように、特定外来生物に指定されますと、飼養・輸入等の規制や、その下の箱に書いてございます国などによる防除を実施するということに法的な位置づけがなっております。
続きまして、参考資料3でございますけれども、平成25年に改正をいたしまして、今年の6月に改正法が施行されておりますけれども、その改正の概要でございます。
主に3点の改正を行ってございます。1つ目が、特定外来生物を人為的に交雑させて生じた生物、あるいは特定外来生物と在来種が交雑した生物についても、これまで法律の定義上、規制対象にできなかったわけでございますが、これについても特定外来生物に指定できることといたしました。2つ目として、従来の法律では、特定外来生物の放出が一律禁止となってございましたけれども、例えば特定外来生物の個体に発信機を取りつけて行動調査を実施するというような学術的な研究目的の場合においては、例外的に許可を得た上で放出ができるという改正を行っております。3点目といたしましては、輸入物資に特定外来生物が付着・混入している場合、これは主にアリなどの小さな特定外来生物でございますけれども、そういったものが発見された場合、これまでは行政指導で輸入者に消毒などを求めてきたところでございますけれども、今回の改正におきまして、法的な根拠を持って輸入者に消毒などの措置を命令できることといたしまして、こういった部分での規制の強化を図ったところでございます。
それから、参考資料4でございますが、再び特定外来生物の選定に関することでございます。法律に基づきます基本方針の中で、特定外来生物の選定に係る基本的な事項について規定をしてございます。1ページ目の第2の上から5行目ぐらいになりますけれども、特定外来生物の選定については、原則として種(亜種又は変種がある種にあっては、その亜種又は変種とする)を基本的な単位として行うものとし、必要に応じて属、科等の分類群を単位とするとしてございます。
下に参りまして、「1 選定の前提」でございますけれども、原則として、概ね明治元年以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を対象とするとしてございます。
イといたしまして、個体としての識別が容易な大きさ及び形態を有しているもの。それから、その下のエにもありますけれども、他の法令によって外来生物法と同等程度の規制がなされていると認められるものについては、特定外来生物の選定の対象としないこととしてございます。
「2 被害の判定の考え方」でございますけれども、3点ございまして、1点目が生態系に係る被害でございます。これについては、①から④に書いてございますが、①在来生物の捕食、②在来生物との競合による在来生物の駆逐、③植生の破壊等を介した生態系基盤の損壊、④交雑による遺伝的かく乱等の観点から選定することとしております。2つ目のイの人の生命又は身体に係る被害でございますが、新しく入ってきた外来生物で、危険の回避や対処の方法についての経験に乏しいため危険性が大きいものについて対象としております。ウの農林水産業に係る被害でございますが、これは単に農林水産物に対する食性があるというだけではなくて、重大な被害を及ぼすものを選定することとしてございます。
「(2)被害の判定に活用する知見の考え方」については、国内外の知見を活用して選定を判断するということを記載してございます。
「3 選定の際の考慮事項」でございます。考慮するべき事項といたしましては、科学的知見の現状に加えまして、指定された場合に適正な規制の執行体制が確保できるかどうかとか、社会的に積極的な役割を果たしている外来生物については代替物の入手が可能かどうかといった社会的・経済的な影響も考慮して選定していくこととしてございます。それから、先ほど種の単位を基本として選定するということを御説明いたしましたけれども、予防的な観点から有効かつ適切な場合には、属、科等の単位で選定するよう努めることとしてございます。それから、我が国で初めて確認された場合や侵入初期の場合において、飼養等の規制の導入又は緊急的な防除が早急に必要とされる際には、被害の判定に要する期間を極力短くするよう努めることとしてございます。
「4 特定外来生物の選定に係る意見の聴取」については、(1)は先ほど御説明いたしました学識経験者からの意見聴取でございます。(2)パブリック・コメント手続、(3)WTOの通報手続を経て指定されることになります。
3ページの下に「未判定外来生物」が4ページにわたってございますけれども、未判定外来生物につきましては、特定外来生物と似た生態的特性を有しており、同様の被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物について対象として指定を検討するとしてございます。原則として当該特定外来生物が属する属の範囲内で、種を単位として必要に応じて属、科等の分類群を単位として選定することとしてございます。
「(2)選定の前提」でございますけれども、原則として、我が国の野外で定着している、又は既に我が国に輸入されているものについては未判定外来生物の対象としないこととしてございます。それから、ここのエで書いてございますように、生態系等に係る被害を及ぼすおそれのある外来生物が我が国に導入されることを未然に防止するという予防的観点から、この未判定外来生物の指定についても積極的に選定するように努めることとしてございます。
「(3)選定に係る意見の聴取」については、特定外来生物と同様でございます。
最後の5ページの真ん中ほどに「種類名証明書の添付を要しない生物」とございます。これにつきましては、特定外来生物があって、その近縁の未判定外来生物があって、さらにその外側の話でございますが、特定外来生物や未判定外来生物と近縁の似たものがある場合には、輸入する際に特定外来生物や未判定外来生物に該当しないことを証明するための証明書を添付することを義務づけております。これは輸出国の政府機関等が発行するものでございます。ただ、明らかに特定外来生物でも未判定外来生物もないということが外見から容易に判別することができるものについては、その証明書の添付を要しないということを規定することができまして、これらの範囲につきましても、特定外来生物、未判定外来生物を指定する際に同時に調整することにしてございますので、本日この会合でも、この証明書の添付をどの範囲で義務づけるのが適当かということについても御確認いただければと考えてございます。
最後に、参考資料5でございますが、これは、平成17年、法律ができた直後でございますが、一次、二次にわたりまして相当数の特定外来生物を選定した際に、今後の選定の考え方ということで、専門家会合、あるいはグループ会合でおまとめいただいたものでございます。最後の8ページになりますけれども、昆虫類等陸生節足動物の今後の検討の進め方について、着目して検討する点といたしまして、このページの真ん中にございますように、在来生物と比べて繁殖能力が高いこと、生息場所の利用能力が高いこと、分布拡大能力に優れている、こういった点について着目して検討するということが、この当時、グループ会合で整理をしていただいているということでございますので、御参考にしていただければと考えてございます。
雑駁でございますが、私からの説明は以上でございます。

【石井座長】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問等あったらお願いします。初めて参画されている委員もおられますので、どこからでも御質問いただけたらと思います。いかがでしょう。
よろしいですか。それでは議題に入っていきたいと思いますけれども、1番目ですが、ツマアカスズメバチについてということで、資料1と資料2に基づいて事務局から御説明をお願いいたします。

【谷垣係長】 それでは、資料1、資料2、それから参考資料6も使いまして、今回の指定を考えているツマアカスズメバチについて、私から御説明させていただきます。
まず資料1をご覧いただければと思います。今回、特定外来生物に追加指定すべきものとしてツマアカスズメバチVespa velutinaを考えているところでございます。それに関する情報をこの資料1にまとめてございます。
原産地としましてはアフガニスタンからインド、ブータン、中国、東南アジアにかけてとなっておりまして、定着実績ですけれども、国内では、先ほどから話がありますとおり長崎県の対馬で発見されています。2012年に初めて生息が確認されまして、昨年、2013年に北部を中心に巣が見つかりまして定着が確認されています。これまでの聞き取りなどからすると、2011年にはもう既に侵入していた可能性があるのではないかと言われています。日本以外では、韓国、ヨーロッパ、これはフランスから周辺の国に向けて拡大をしているものですけれども、外来で定着が確認をされているところでございます。
今回指定する評価の理由としましては、拡散スピードが速いということが1つあります。外来で定着が確認されている韓国では、年間10㎞から20㎞、ヨーロッパでは単純計算で年間100㎞の速さで分布を拡大しているということが報告されています。メインテーブルの方には、お手元に平成25年度の報告書をお配りしていますけれども、韓国とかヨーロッパでの分布については、報告書の13ページで、白黒で見づらいかもしれないのですけれども、分布図も入れてありますので、ご覧いただければと思います。韓国では釜山で確認をされている状況も地図でご覧になれるかと思います。
それから、資料1ですけれども、少ない個体数(新女王)が侵入することによって容易に定着し、分布を拡大する可能性が高い。対馬に侵入が確認されているVespa velutina Lepeletierの亜種については、フランスや韓国に侵入しているのと同じ亜種Vespa velutina nigrithoraxで、インド、中国の南部、ブータンに分布しているものと同じ種類であることが判明しています。
影響としましては、在来スズメバチとの競合や、昆虫類を主に食べますので捕食による他の昆虫類への影響等生態系に係る被害のおそれがある。あとは、ほかのスズメバチ類と同様という点はあると思うのですが、人の刺傷とか、ミツバチの捕食による養蜂業への影響が懸念されているという状況でございます。
個別の情報について、「被害の実態・被害のおそれ」ということで下にまとめておりますけれども、「(1)生態系に係る被害」としては、侵入した韓国の釜山市では、ツマアカスズメバチの侵入によって、在来のケブカスズメバチが激減している。その結果としてツマアカスズメバチが最優占種になっていることが報告されています。これも先ほどの報告書の16ページに環境別の形で、侵入前、侵入後のツマアカスズメバチとほかの種構成の様子がグラフにされていて、ご覧になることができます。それから、影響を受けて減ったと言われているケブカスズメバチについては、日本でも北海道に生息する種類で、本州にも生息するキイロスズメバチの亜種であり、日本においてもそういった影響が出る可能性はあると考えています。
食性は主に昆虫類(ミツバチ、アシナガバチ、毛虫、チョウ、ハエ、トンボ、クモなど)であるということが言われておりまして、生態系の上位に属する広食性の捕食性天敵であるため、生態系への影響が大きい生物であることが考えられています。
「(2)農林水産業に係る被害」で、海外では、養蜂業への影響も報告されているところです。韓国では、2~3週間のうちにミツバチが消滅したという報告、中国では、ツマアカスズメバチがトウヨウミツバチよりもセイヨウミツバチの巣を好んで襲っている。セイヨウミツバチはトウヨウミツバチのようにツマアカスズメバチの攻撃に対して対抗手段を持たないために被害が出ているのではないかという報告があります。なお、既に日本で定着している対馬では、トウヨウミツバチの亜種でスズメバチに対抗する手段のあるニホンミツバチの養蜂が行われている。対馬以外の本土では、主にセイヨウミツバチによる養蜂が行われているという情報がございます。
「被害をもたらす要因」としては、競合するスズメバチ類の減少を引き起こす可能性がある。それから、先ほど申し上げたとおり強力な上位捕食者であるということ、分布が拡大した場合、養蜂業への影響が懸念されるということが考えられます。
導入の経路ですけれども、中国からフランス、韓国への導入は、輸出した物資の輸送に伴って定着したのではないかと言われているところです。
近縁種、類似種についてですけれども、今回、指定を考えているツマアカスズメバチVespa velutinaについては、14亜種に分けられています。東南アジアの島ごとなどに亜種が分けられているような状況と認識しています。先ほど申し上げたとおり、対馬で確認されたものは韓国、フランスに侵入したものと同亜種、日本にはほかに同属の在来種としてオオスズメバチなど7種が既に分布しているという状況です。
形態ですけれども、体長は分布域によってかなり差があるということで、ヨーロッパ、東南アジアのデータが載っていますけれども、場所によってもかなり差があると報告をされています。
生態ですけれども、営巣場所については、女王バチは越冬後、単体で茂みや低木の中、土の中の閉鎖的な環境において営巣を開始し、コロニーが大きくなると働きバチとともに樹木の上部に引っ越しをする。対馬においても、樹木の上部にかなり大きくなる巣をつくっている状況が確認されているところです。韓国では、マンションの壁などに営巣しているという例も報告されています。
その他の関連情報ですけれども、1つ目は、分布の拡大のスピードが速いということ、それから、韓国の釜山では、都市部に近いほどツマアカスズメバチの生息割合が増加するということが報告をされているところです。
対馬の状況を御紹介いたしますと、参考資料6に今の取組状況をまとめております。2012年に生息が初めて確認されまして、2013年には次々と巣が発見をされている。生態系への影響に加えて、現地で行われている養蜂業への影響とか、刺されるという被害についても懸念がされている。実際に今、国、県、対馬市の連携で分布の調査とか効果的な防除手法の検討や実際の防除が実施されているところです。
平成26年9月までの状況としましては、報告書をお配りしているように、環境省による調査、分布の状況把握とか防除手法の検討をしています。対馬市においては、トラップ調査をするなどしてモニタリング調査も今年は実施をしています。これも、今まだ速報しか出ていないのですけれども、北部のあたりに生息がかなり集中をしている、南部のほうでは見つかっていないという状況になっているようです。対馬市においては、巣の撤去、駆除を実施しておりまして、昨年度は56カ所確認して24カ所の巣を撤去している。平成26年度には、今年度に入ってから新たに77カ所確認されて、55カ所の巣の撤去がされているという状況です。巣の見つかった場所については、報告書の22ページにポイントを落としたものを示しております。今年新たに見つかったポイントが落ちていないのですけれども、かなり北のほうに集中してあるということがご覧になれるかと思います。高所作業車などで撤去をしているのですけれども、人家に近い場所ではなかなか撤去できていない状況があると聞いています。
今後の調査の計画ですけれども、環境省ではモニタリング調査とか研究機関と連携して薬剤防除についての検討とか、対馬と物の流れがある船が着いている港でのモニタリングなど、侵入状況の調査を実施しているところです。県においても生息状況の情報収集とか対馬市がする巣の撤去に対しての補助を実施して注意喚起をしているところでございます。
資料2に戻りまして、今回の指定の範囲について御説明をさせていただきたいと思います。
今回の指定としましては、特定外来生物にはツマアカスズメバチVespa velutinaで、先ほど亜種nigrithoraxが日本では見つかっているということですけれども、こちらで調べた限りでは亜種の特異性、これがほかの亜種とかなり異なるという情報が見つからなかったものですから、あるいは亜種がかなり細かく分類をされていますので、その同定とか輸入の際に種類名証明書などが必要になってくること、こちらとしても同定をして、それが規制の対象なのかどうかを見分ける必要があるということを考えると、亜種での指定ではなくて種ツマアカスズメバチVespa velutinaとして指定することが実効性があると考えているところです。
被害の概要としましては、先ほど生態系に関わる被害、農林水産業(養蜂業)への被害、人的被害などが懸念されると申し上げたところですが、競合や捕食による生態系的な被害や、農林水産業については、養蜂への影響は、ほかの在来のスズメバチでも確認されていますので、外来のものによる甚大なるという評価が少し難しいのではないかと事務局としては考えております。人的被害についても、在来のスズメバチについても同様にありますので、今回の指定の要件としましては、「生態系に関わる被害」ということでの選定が適当ではないかと考えているところです。
それから、輸入する際の事前の届出が必要になる未判定外来生物については、スズメバチが意図的に導入されることが想定しづらいものでもありますので、今回、種としてツマアカスズメバチを指定するのにあわせて、属での未判定外来生物の指定は余り適当ではない、法的な効力が余り伴わないのではないかということを考えまして、未判定外来生物には指定を考えていません。
種類名証明書については、仮にスズメバチの仲間も含めて輸入するということが発生した場合に、見分けることが容易になるように、という趣旨のものです。ほかの例を見ましても、同属のようなものを種類名証明書添付にするのが通例ですので、スズメバチ属全種を種類名証明書添付が要るということで考えているところです。
このあたりの指定の範囲につきましても、もし御意見がありましたら御議論いただければと思っているところです。
こちらからは以上です。

【石井座長】 ありがとうございました。資料1と資料2、参考資料を用いてツマアカスズメバチに関して御説明いただきました。
それでは、ツマアカスズメバチの取り扱いについて検討したいと思います。要は資料2ですけれども、事務局としては、特定外来生物に指定するということでございますけれども、御意見、御質問があったらお願いいたします。

【荒谷委員】 これまでの知見で構わないので、このツマアカスズメバチのもともとの原産国は東南アジアの国々というのに対して、ヨーロッパで結構定着していますよね。となると、例えば素人考えですが、寒さに強いのかとか、そういうことを含めて、割と北の地域で定着している理由とか考察が過去の知見であればお教えいただきたい。

【谷垣係長】 原産地では標高が割と高いところに分布している。香港では低地で分布をしているという情報もありますので、標高的な要件もあるのではないかとは思います。

【五箇委員】 対馬では12月ぐらいまで活動しているんですね。だから、耐寒性が結構強くて、社会性昆虫はむしろ寒さに対する適応力が強いですね。営巣して集団で生きるという意味では、夏の気温さえ確保できれば、しかも、単独で女王越冬しますから、地中に入って凍結深度さえしのげれば生き延びられるという意味では、緯度は余り関係なく定着が可能になってくる種になってきます。

【小野委員】 事前に伺ったことは大分クリアされていたので余り申し上げることはないのですが、2点あります。まず、対馬に入ったというのは人為的じゃないという判断でよろしいんですね。つまり、人が持ってきたんじゃなくて釜山から虫自体が飛んできたということ。
もう1つは、物すごい分布拡大能力のある亜種だということですが、フランスは中国から輸入されたものに付いていてきたという証拠があるみたいだけど、釜山もひょっとすると自然分布の範囲内に入る可能性があるかなと思って、どうして今まで分布拡大能力があるものが、雲南省あたりから東へ来なかったんだろうと思ったんですね。途中調査が足りないのかどうか。もとからひっくり返しちゃうと申しわけないのですけれど、ただ、私も恐らく韓国には人為的に入ったんだとは思います。日本に来たのは、多分飛んできたんですよね。ですから、その辺の文言ですね。
それともう1つ、ツマアカスズメバチというのは種の和名ですか。それとも亜種の和名ですか。種全体の和名ということでよろしいですか。

【谷垣係長】 はい。亜種には和名がついていないと思います。

【小野委員】 わかりました。そうすると、種を指定するということは、全亜種をからめ捕るという判断でよろしいですか。

【谷垣係長】 はい。

【石井座長】 ここは結構難しいところで、分散能力が高い、今回の場合も朝鮮半島から対馬に自力で飛んできたということになってくると、そもそも韓国は自然分布域内ではないか。そこから自力で飛んできたら対馬だって自然分布域かもしれないということになってしまって外来生物の定義から外れてしまうことになるんですね。重要なポイントかと思うので、まず事務局から。

【谷垣係長】 こちらの見解としてですけれども、韓国では中国からの物資に付いて入ってきたのではないかという見解が示されているようです。韓国から対馬にはどういうふうにして入ったのかは、まだそこまでの具体的な証拠は何もないのですけれども、1つは、北部にも釜山から入っている船がある。例えば高速船のような形で着いているものはある。仮に飛んできたという可能性も否定できないと思うのですけれども、韓国への分布が外来であるということであれば、仮に韓国からツマアカスズメバチが飛んで渡ってきたということであっても外来という定義で特に問題はないのではないかとか考えています。

【石井座長】 この辺について議論したいと思います。

【五箇委員】 今御指摘があったように、自然分布域が特定できていないので、それは追ってこれからも大陸のほうも含めて分布域の情報を収集するとともに、釜山から対馬へのルートに関しては、もちろん偏西風に乗ってきたりとか、自力で飛んで来たりという説もあるのですけど、一方で、今のところ対馬における自然巣の分布そのものは対馬の北方のほうに偏っています。エリアそのものから見ると船で入ってきている可能性も否定はできない。南への分布がまだ非常に限られているということがあって、北に集中しているということは、そこが分布中心になるとすると、港からの侵入が捨てがたい仮説になってくるわけです。今、事務局からも説明があったように、観光船の往来が非常に激しいんですね。特に2010年以降、観光客が非常に増えている、観光船の数も増えているということで、現在、1年間に11万人ぐらい韓国の方が上陸されている。人口2万の島に、実に5倍近い韓国の方が往来しているという状況の中では、特に単独越冬で単独営巣するという種なので、交尾済みの越冬女王が1匹でも入ってきてしまうと簡単に定着ができるということから考えると、人為的な部分も否定はし切れないというか、可能性としては十分に考える必要がある。現状では、事務局からの説明があったように、これは外来種と定義して、なおかつ、今、対馬にしか入っていないという状況では、できるだけ対馬で封じ込めることが得策であろうということから、一旦ここは外来種と定義して、できるだけ駆除する方向に持っていきたいというのが考え方としてはあると思います。

【小野委員】 わかりました。多分自然分布だとすると、もうとっくの昔にこっちまで来ているだろうということで、私も今御説明を伺っていて、人為的に入ったという判断でよろしいのではないかと思います。

【荒谷委員】 済州島では見つかっていません。自然分布だと済州島が組み合わせで入る場合が多いんですよね。済州島は大体ワンセットで入りますから、済州島にいなくて、韓国釜山と対馬ということになると、ますます人為分布の可能性は高いですね。

【五箇委員】 2010年以降に釜山で急激に発生が確認されているというのは、韓国内でも情報ソースになっているので、韓国そのものも恐らく侵入分布であろうと考えられると思います。

【石井座長】 ということですが、この点について、ほかに御意見はございますか。

【平井委員】 自然分布域がまだわかっていないということですけれど、ほかに大陸から、例えば沖縄とか、そういうルートで入ってくることも考えられるのかということが1点。
先ほど対馬での分布が北に偏っているという話がありましたけれど、報告書の22ページにプロットが打ってあります。25年度のもので、25年度が先ほどの説明だと56カ所で、今年は77カ所で増えているというお話があったのですけれど、この分布自体は変化しているのかどうかという点を教えていただけますでしょうか。

【谷垣係長】 対馬での分布についてですけれども、今年トラップを仕掛けてモニタリング調査をしています。その結果としても、基本的にこの22ページに点が落ちているようなところに集中しています。これは巣を見つけた場所ですので、モニタリングをした結果だと、もう少し内陸部の森のようなところでもトラップにはひっかかってきていることにはなるのですけれども、中央部のくびれたところから下でのトラップでのモニタリング結果は出ていないですね。

【平井委員】 「ヨーロッパでは単純計算で年間100㎞の速さ」とあるのは、これは人為的な移動を含むということでしょうか。

【谷垣係長】 文献情報でしかないのですけれども、川の谷筋に沿って広がっているという報告もあるようですね。そういう地形的な影響もあるかと思います。

【平井委員】 韓国で遅いのも地形的な影響でしょうか。それとも、防除が行われているので遅いということがあるのでしょうか。

【事務局】 韓国で官からツマアカスズメバチ自体を積極的に防除しているという情報は、今回では見つからなかったのですね。ただ、注意喚起のようなものは韓国の環境省のようなところからも出されていて、そこのソースだと、最初は釜山からどんどんと広がっていて、ちょうど朝鮮半島の東側へ向かって北上する形で分布は広がっているようです。ただ、明確な分布ラインは引かれておりませんで、確認されたポイントがそういうところに落ちているということです。ただ、こちらの報告書の13ページに示してある図2-3-2に書いてある論文の分布図よりも西側ではなくて北上するような形で分布が広がっているという情報は得ることができました。(論文の分布図の)South Koreaと大きく書いてある上のGang-wonと書いてあるところぐらいまで今は分布が広がっているそうです。

【石井座長】 よろしいでしょうか。一般に外来生物は最初のころは分散の速度が遅くて、次第に加速するということがあるかと思うのですけれども、対馬の場合は最大3年目ぐらいと想定される分布初期という扱いになるかと思います。
私のほうから、例えば船で釜山から対馬に運ばれたということであったら、釜山から船が日本に来ているのは本土側もあると思うのですけれども、なぜ対馬だけなのかというのがちょっと難しいと思うのですが、この辺は何か御意見はございますでしょうか。

【五箇委員】 対馬に行かれた方はよくわかると思うのですけど、森も非常に深くて、ニホンミツバチも非常にたくさんいる上に、クワガタ、カブトもたくさんいるというぐらい樹液もたっぷりあって餌に困らない。スズメバチ自体も非常に豊富です。多様性もすごく高くて密度も高い。この小さな島で狩りバチが非常にたくさんすんでいけるという環境自体が、多分ツマアカスズメバチも入ってきてすぐに定着できる環境がすんなり整っていたのではないか。本土だと港から森までの距離を考えると、入り込むにはなかなか時間がかかるかもしれないという意味では、対馬の場合は自然環境が、むしろ受け皿としてツマアカスズメバチにとっては非常にフィットネスが高かったんじゃないかと考えられます。
あと、先ほどの分布拡大の件に関して、対馬もこの分布図自体を見ていただくと、南でも除去されています。この青い点は除去済みの巣のマークで、1年、2年の間に南のほうまで入ろうとする。入ろうとはするが、おっしゃるとおり見つけては落としちゃっているから、その捕獲圧自体が効いている可能性はあるかと思います。

【石井座長】 ありがとうございます。
もう1つ確認ですけど、谷垣係長が言われたことで、仮に韓国の分布が自然分布だとしたらですけど、そこから日本に来たら外来生物。これは正しい? 韓国の釜山にいるのが自然分布だとして、そこから自力で。そこのところがポイントなんだけど、2つに分けて、韓国の釜山にいるのが自然分布である場合、もともと釜山にいるものが韓国にとって外来生物であったと考えた場合に、両方とも自力で来たということを想定したら事態は変わりますか。自然分布だったら、自力で来たら対馬にいるものは外来生物ではないと考えるか。

【五箇委員】 同じような意味で、例えばセイヨウオオマルハナバチのときも少し議論になったのが、あれが北方四島にもともといたら在来種になっちゃうんですよね。そういう事態になったらどうするんですかということが一度質疑になったことがあって、そのときは、撤回というかリバーシブルはある。これは特定外来生物として指定するけれども、その後の科学的な知見の蓄積によって、場合によっては白紙に戻ることもあり得る。今のところ、そういうことは実際に起こっていることではないのですけど、昆虫学そのものの進歩で分布そのものの情報の詳細がわかってくれば、そういう事態は起こり得るだろうと理解しています。このケースに関してもそうなってくるのかなと思うのですけど、どうですか。その辺を整理だけしておいていただければと思います。

【谷垣係長】 多分、その後に在来だということがわかれば、その後の科学的知見ということで特定外来としての扱いを変えるということはあり得ると思います。

【五箇委員】 ですよね。規制解除になっちゃうということですよね。

【小野委員】 それで最初に、種として指定するのか、亜種として指定するのかと僕はお伺いしたんだけど、今の議論は亜種の話なんですよね。種として指定しようとしているということは、生態系に係る被害を予見してということでよろしいんでしょうか。つまり余り具体的にすると、種として指定するという整合性がないような印象を受ける。もし具体的に本当に日本に入ってきた個体群を駆除したり追い出すということなら、亜種として指定したほうがいいんじゃないかと思ったんですがね。

【石井座長】 ちょっと混線ぎみで、亜種の問題もあるのですが、事務局何かありますか。

【事務局】 韓国のツマアカスズメバチの状態ですけれども、韓国自体はツマアカスズメバチが入る前にある程度スズメバチ相は把握されていて、それが2003年の発見から急速にツマアカスズメバチが広がった。そして釜山では、巣の除去依頼が来たうちの4割ぐらいはツマアカスズメバチというふうに非常に急激にその種類が増えている。そういう状況を考えると、在来であれば、今ごろは当然韓国のスズメバチ相のメンバーとして普通に認識されていると考えるのが普通で、2003年以降から広がったというところを見ると、ツマアカスズメバチ自体が韓国にもともと在来であったというのは、状況からは考えにくいという気がいたします。分布自体もツマアカスズメバチの亜種で捉えますと、nigrithoraxの分布は中国も一応入っているのですが、中国は非常に広いですから、それが中国の南部からどこまで広がっているかというのは、目録からは拾うことはできなかったという状態で、まだ分布が不明瞭という言い方をしています。ただ、ブータンとかインドの北東部から南部だと、その亜種がそのまま韓国に自然分布しているというのは少し考えにくいような気もいたします。

【石井座長】 順番にいきましょうか。そしたら、韓国の釜山に侵入して分布拡大中のものは、韓国において外来生物ということにしましょう。これはよろしいですね。そこから日本にどうやって来たかという問題が次ですけれども、これまでの議論では、自力で来た可能性もあるけれども、やはり船とともに来たと考えるのが妥当であろうというところですが、この点はいかがでしょうか。そのようなことでよろしいですか。

【荒谷委員】 もしかしたら余り伺うとやぶ蛇になるかもしれませんが、例えば遺伝的な解析から、大体どれくらいの個体数が入ってきたとか、あるいはいつごろ入ってきたとか、もしそのような裏づけがとれるデータが今の時点であればお教えいただきたいのですけれど。

【五箇委員】 京都産業大学の高橋先生が調べておられまして、ヨーロッパのケースは1個体1コロニーからスタートしているという非常に遺伝的な範囲の幅が狭かったのに対して、対馬は10以上は入っているのではないか、これはまだ発表されていないデータなので余り詳しくは言えないのですけど、複数入っているというのもあったので、付着で入るにしては数が多過ぎるのではないかということから、偏西風に乗って幾つかの個体が入ってきているという説が出されているということがあります。

【荒谷委員】 母集団になり得る韓国のほうの遺伝的な解析のデータはないんですね。

【五箇委員】 まだそれは出ていないですね。正直なところ、遺伝解析だけから語るのはちょっと難しいと思います。おっしゃるとおり、釜山の侵入集団の母数がどうなっているかというところと、侵入するチャンスの問題ですよね。さすがにヨーロッパだと遠いところだから1匹、2匹という話になるかもしれないけど、これだけの近距離だと、人為的だとしても相当な数が入る可能性はありますから、それだけから人為か自然かを類推するのはなかなか容易ではない。洋上に網でも張って飛んでくる可能性を具体的な証拠としてキャッチできれば一番いいんでしょうけど、ここは想定リスクとして、人為というものもインクルードして考えておく必要はあるだろう。先ほど言ったように、そうだとすると、もうちょっと南のほうにもばらけて入っていてもいいんじゃないか。非常に北の海岸線沿いから集中的に分布が拡大しているという状況から考えると、偏り自体も説明するとするならば、人為は捨ててはいけない要素になってくるだろうと思います。ひょっとすると両方あるかもしれないので、そこはもう混線してくるとは思うんですけれども、そこもおいおい証拠を集めていくしかないと思いますね。

【荒谷委員】 御参考になるかわかりませんけど、韓国のものが自然分布かどうかということに関連して言うと、先ほど申し上げたように済州島で全然出ていないということだったら、まず人為分布だと思うんですね。というのは、例えば台湾から飛んで済州島とか韓国の沿岸部という分布をする虫は結構いる。中国の内陸とか中国の沿岸は気温が異様に下がるとか乾燥するので分布はしないけれども、結構暖かい沿岸部だけ残っているパターンはあるので、必ずしも間の中国は埋まらなくても自然分布というパターンは多いんですけれども、済州島がひっかからない場合には、まず人為分布の確率が高いと思います。
それともう1つは、これは僕の東南アジアのときの経験ですが、こいつらは時々ライトトラップに来るんですよね。走光性が若干あるみたいで、そういう意味では、最近、船の明かりに飛んでくる虫が船の航路で広がるという話が出ていますので、そういった意味でも、これは人為的な、特に航路による広がりというのは考えられるのではないかという気がいたします。

【石井座長】 ということですが、この辺について、まだ御議論があったらお願いします。

【森本委員】 侵入経路ですけれども、韓国とかフランスでは「物資」とありますけれども、具体的にどんなもので入ってきたかというのは推定されているのでしょうか。

【谷垣係長】 これも文献情報ですけど、フランスでは陶器に入ってきたんじゃないかという情報があるようです。韓国は木材に付いたんじゃないかということは言われています。

【森本委員】 陶器というのは、その隙間に入ったということ、それともクッションとかそんなふうな感じなんですか。

【五箇委員】 鉢植えのポットにくっついてきた。要は植物体だと思ったほうがいいですね。

【石井座長】 想定されるのは、冬に単独で女王が越冬するのでしょうけれども、単独の女王の越冬している木材とか植木鉢で一緒に運ばれた。荒谷委員が言われたのは、それとは別に活動期であっても船の光等に来るということもあるのかなということですかね。
ほかはいかがでしょうか。

【森本委員】 今後のことかもしれないのですけど、鉢植えのポットとか木材とかは対馬から本土に物資としては移動していますか。

【五箇委員】 しています。ちょっと心配されているのは、木材自体が対馬から福岡に結構入ります。ただ、釜山からの木材ではなさそうだというのは、木材が入る港と観光船が入る港が違っていて、観光船が入るのが北部中心で、木材がたしか東側の海岸線のほうで、ツマアカスズメバチ自体はそっちがレアなので、木材自体が直接の搬入経路ではなさそうだとは、今のところ推定されているという状況ですね。ただ、島内で蔓延してしまって木材にくっつくと本土に入る可能性が高くなるので、そのリスクは懸念されるという状況にあるということです。御指摘のとおり、対馬から福岡への木材なり物資の移送はかなりあるという状況にあります。

【谷垣係長】 この報告書の21ページに、どういった港と取引があるかというのは書いてあります。

【石井座長】 大分整理されてきたと思います。韓国のものは韓国において外来生物で、対馬に来た経路についても人為の可能性はかなり大きいということですね。
もう1回しつこいですけど、韓国は韓国にとって外来種だとして、そこから自力で日本に飛んできた場合、例えばそれが100%だとしたら、特定外来生物には指定できないかどうか。

【関根室長】 これはあくまで日本に入ってくる国境を越えるところが人為であるということが前提になりますので、韓国で外来生物であるから、日本も似たようなものであるというのは、あくまで参考情報です。ですから、今御議論いただいた中では、韓国から対馬に入ってきたルートとして人為というものがかなり可能性があるというところがよって立つところになります。

【荒谷委員】 気になさることはわかるのですけれども、先ほど五箇委員が言われたように、この段階では特定外来生物で僕はいいと思うんですね。もしそれが100%自然分布で来たとしても、今、対馬の養蜂の方がいろいろな不安を抱えておられるという現実もありますので、立場としては特定外来生物という形で処理をして、もし科学の知見によって、韓国からは100%自力で来たということがわかれば、例えば改めて外すという対応もあり得るということで、僕はこの場は、正直、特定外来生物ということで進めていただいていいのではないかと考えます。

【石井座長】 多分自然分布域かどうかというところが核心の議論なので、この辺は御異議ないでしょうか。かなりの確率で釜山から、韓国からは人為的に対馬に運ばれてきて、それで分布拡大しているということが考えられるということですね。

【荒谷委員】 これもまた僕の経験で恐縮ですけれども、スズメバチは客船のごみ箱にアイスクリームとかが捨ててあったり甘いものがあったりすると、結構紛れて来るんですよ。普通、そういう物資を運ぶ船で来るという発想で見ると、何で客船が行き来するところのほうがむしろ定着するんだという話になりますけれども、鹿児島の離島で最近調査していて思うのが、ごみ箱のアイスクリームのカップの中に入っていて、そういう経路の拡大もあり得るので、客船で運ばれるというのは、先ほどの光の点とあわせても結構あり得るのではないかと経験上思います。

【石井座長】 そのケースの場合は、働きバチは繁殖できないから、女王バチが春に繁殖を始めたときに、そういうものに紛れて来る可能性もあるということですかね。
この議論は、ほかはよろしいでしょうか。
では、そういうことになりますと、次は、もう既に議論はできているんですけれども、日本国内における被害ということで、先ほどあった参考資料4の基本方針にありますように、生態系に係る被害、人の生命又は身体に係る被害、それから農林水産業に係る被害というような基準がございますけれども、事務局としては生態系に係る被害を重視して特定外来生物にしたいということでございます。この辺について議論をお願いしたいと思います。いかがでしょう。もう事務局の御提案のとおりということで、既に生態系に対する被害が出ていると認定してよろしいでしょうか。

【荒谷委員】 生態系に係る被害ということで、例えば同属というか、非常に近縁なスズメバチ同士の競合とかももちろんあると思うのですけれども、データもないし、私自身もこのハチについては、対馬で実体で見ていないので何とも言えないんですけど、樹液はクワガタ、カブトムシから始まって1つの生態系をつくるような、順位関係があるような状態の1つの世界をつくり上げるので、そういうところに違うハチが入ってくると、そういうのが崩れる。人間生活に全く関係ない世界ではありますけれども、そういった意味での生態系の被害は、広い観点で見た場合にはあり得ると思います。

【石井座長】 ということで、事務局御提案のとおり、「生態系に関わる被害」を重視して、ここは特定外来生物にする。
もう1点残っているのが、小野委員の言われている種としていくのか、それともnigrithoraxという亜種を指定するのかということですけど、まず、特定外来生物に亜種を指定することができるかどうか、環境省、いかがでしょうか。

【谷垣係長】 基本的には種がベースになっています。ただ、これまでの例で見ますと、例えばヘビのタイワンスジオなどは亜種で指定をしているということはあります。ただ、基本的には種レベルですので、これがほかの亜種と比べても、この亜種しか被害を与えないんだということで、特異性があるということであれば亜種に限るということもあるとは思うのですけれども、種としてほかのものと類似の生態を持っていて、被害の可能性もあると判断できるのであれば、あとは先ほど申し上げた法の施行の実効性という面から、種として指定するほうが妥当とは考えています。

【石井座長】 ということで、亜種ではなく種として指定したいということでございますが、この点、いかがでしょう。小野委員、よろしいですか。

【小野委員】 それで結構だと思います。
それと、先ほどお話に出た現地で研究されている上野さんの観察は大変参考になると思います。今この状況で急いで対応したほうがいいと私は思います。

【五箇委員】 環境省として指定しますから生態系被害を重視するという立場が建前上必要になってきますが、一番懸念されるのが、ここの報告書にもありますけれども、セイヨウミツバチに対する攻撃性は非常に強いだろうということです。実際、ニホンミツバチ自体もう既に襲われてはいると上野先生から報告されていて、蜂球はするんですけれども、攻撃方法が従来のスズメバチと違うらしいんですね。徘徊して帰ってくるミツバチを捕って食べちゃうから、シグナルが巣に届かないので、蜂球という対抗措置をとらぬまま、どんどんワーカーが捕られ続けて、最終的に巣が崩壊してしまうという攻撃方法をとる。逆に言うと、セイヨウミツバチは、もっと悲惨にやられる可能性が高いだろう。養蜂業そのものに対する影響がかなり大きくなってくる可能性が非常に高いと考えられます。そういう意味で、本土決戦じゃありませんけど、何とか対馬で食い止めてしまいたいというのが島民皆さんも含めて実情ということはあると思いますので、一層ここは強く何とかリストリクションを早めていただければと考えています。

【小野委員】 被害の概要のところに農林水産上のことも書かないでいいのかしら。

【五箇委員】 書いていいです。

【小野委員】 農水省の方も来ていらっしゃいますけど。

【宮田課長補佐】 先月、九州大学の上野先生と現地を訪問し分布状況等を確認しました。飛来状況を見るとやはり営巣の多い北部に多く、中部はそれほど来ておりませんでした。上野先生は、ニホンミツバチへの被害について、南部においても蜜量が少ないことなどからツマアカスズメバチによる被害との因果関係は明らかではなく、間接的なものではないかとのご指摘でありました。

【小野委員】 ありがとうございました。わかりました。

【石井座長】 ありがとうございました。そうしましたら、資料1の「評価の理由」というところが特定外来生物としてのこの会合の意見ということになるのですが、考え方として、これでよろしいですか。この中には、在来スズメバチとの競合、一番下にミツバチの捕食による養蜂業への影響は書いてあるということですので、これでいいですね。
ほかはいかがでしょうか。

【荒谷委員】 うろ覚えですけど、参考文献のところで、Tanさんのは、もう1つ前の2005年のところにもっとストレートにセイヨウミツバチに対するアタックの話が書いていませんでしたっけ。同じNaturwissenschaftenの文献ですけど、2007年の前に2005年を出しています。雲南大学の方だと思うのですけれども、もう少しストレートにセイヨウミツバチに対するアタックがきつくて、そのために回復が遅れるという結論を書いていたような気がするので、そのあたりを入れてもう少しセイヨウミツバチに対する影響は深刻であるという強調の仕方はできるかと思います。

【石井座長】 文献をもう少しフォローしてくださいということですね。

【谷垣係長】 情報は確認します。

【石井座長】 ほかはいかがでしょうか。
次に、資料2にある未判定外来生物のところですけど、このケースの場合、未判定外来生物は特に指定しないという事務局側の御提案ですけれども、それでよろしいでしょうか。これは、それでいいですね。
(異議なし)

【石井座長】 ということで、未判定外来生物は特に指定しないということですね。
もう1つ、種類名証明書添付について、スズメバチ属全種ということで、これも妥当かなと私は思いますけど、いかがでしょう。よろしいでしょうか。
(異議なし)

【石井座長】 ほかに何か御意見はございますか。

【荒谷委員】 この特定外来生物法の場合、駆除がセットでついてまいるわけですけれども、今回このツマアカスズメバチに対する駆除の具体的な方策とか、今現在やっていることとか、少し御説明願えますか。

【五箇委員】 対馬ではスズメバチの駆除業者に入ってもらって巣を撤去するという方法を今ずっととっています。環境省の受託で国立環境研究所で検討を進めているのは、ベイト剤、薬剤入りの肉団子を持って帰らせて巣ごと崩壊させるという方法を今検討しているということです。この方法自体はハワイでイエロージャケットの侵入に対しての防除策としてとられたことがあって、文献も出ているんですけれども、非常に効果が高い。使用する薬剤はフィプロニルという薬です。こういったものを利用するということを今検討しているところです。ただ、先ほど御指摘があったように、樹液が豊富でアミノ酸がたっぷりあるものですから、肉に対する要求度が非常に低くて、どっちかといったらカルピスとか液体のほうによく寄ってくるというのがわかってきているので、今いろいろと方策を考えているところです。そういった形で駆除手法自体も、今開発を進めているという状況にあります。

【荒谷委員】 それに関して、このコンパスさんの調査報告書を見て思ったのですけど、対馬の場合はスズメバチその他の樹液の中心はクヌギ林ではなくて海岸のタブ林なんですよね。だから、トラップを仕掛けるにしても、駆除をやるにしても、里山環境のクヌギ林だけじゃなくて、沿岸部のタブの林を重点的にやったほうが、より効果が上がるのではないかという気がいたします。

【石井座長】 それ自体は興味深いですね。タブが樹液を出す。

【荒谷委員】 タブは樹液をいっぱい出すんです。南の島ではタブがポイントです。

【石井座長】 それはなかなか興味深い。これは事務局側としても確認をしておいていただきたいと思います。 特になければ、どうもありがとうございました。
それでは、当グループ会合といたしましては、ツマアカスズメバチ、これは種ですけれども、これを資料1の「評価の理由」に基づきまして、生態系に係る被害を及ぼすおそれがある生物として特定外来生物に指定したい、そのような結論にしたいと思います。よろしいでしょうか。
(異議なし)

【石井座長】 では、どうもありがとうございました。
それでは、議題(2)はその他となっておりますが、まず事務局、何かございますでしょうか。

【谷垣係長】 この後のスケジュールについて、簡単に概要だけ御説明をさせていただきますけれども、本日、ツマアカスズメバチを指定ということでグループ会合の御結論をいただきましたので、この後すぐに全体の専門家会合に意見聴取をさせていただきます。基本的に今回この1種だけですので、文書での意見聴取をさせていただいて、早急に指定の手続に入っていこうと思います。10月中旬から11月中旬ぐらいにかけてパブリック・コメント、それから2カ月間必要なWTOへの通報などを済ませまして、年内ぐらいには政令の公布などというふうに進めて、ほかの省令とか告示の整備も必要ですので、そういったことをした上で、春前には施行ができると、その後の防除にも効果的なのではないかと考えています。
あと、別件になるのですけれども、以前に別途検討を進めている侵略的外来種リストにつきましても皆様の御意見聴取をさせていただきまして、ありがとうございました。近いうちにこれについても学会等に情報提供とか、あとのリスト会議、パブリック・コメントの手続もしていきたいと思っておりますので、また、そちらについても、どうぞよろしくお願いいたします。こちらについては御報告までです。

【石井座長】 ありがとうございました。その他ということですので、委員の皆さんから何か特にあれば。

【荒谷委員】 特定外来生物絡みであればと思うのですけど、いい機会だったのでお伺いいたしたかったのですけれども、種類名証明書を添付する場合、種類証明書を発行できる機関が、政府機関という言い方でネットを見るといろいろ挙げられていますけど、あれが決まっている根拠と申しますか、見ていると実効性がないような機関が決まっていたり、あるいは実はもっとこういう機関のほうが、実際問題、昆虫関係の研究者も多くてきちんと見ていただけるという機関があるんだけど、それを新たに加えていただきたい場合とか、どういうやり方があるのか、私も不勉強ですけれども、そのあたりを教えていただきたい。

【谷垣係長】 政府機関については、ホームページ上で例示をしているものがあるんですけれども、これでなければだめだということではないです。研究機関とか外国の地方政府の場合は、環境大臣が、ここはいいですということで決めないといけませんので、そういう情報があれば、いただければ検討はできるかと思います。

【荒谷委員】 幾つかそういうところがあって、国によっては、国の中でまだそれが決められていないところがあったりするものですから、海外調査から帰ってくると非常に困ることがある。今例だとおっしゃったのが、あれしか駄目だと思い込んでいらっしゃる現場の方もいらっしゃったりするものですから、正直、非常にトラブったことがあります。

【谷垣係長】 国の政府機関の発行であれば、ホームページにのせていないものでも、有効な場合があります。

【荒谷委員】 わかりました。ありがとうございます。

【石井座長】 ほかは何かございますでしょうか。
では、特にないようでしたら、予定されていた議事はこれで全て終了ということで、事務局にお返しいたします。

【服部係員】 石井座長、ありがとうございました。
それでは、以上をもちまして第8回特定外来生物等分類群専門家グループ会合(昆虫類等陸生節足動物)は閉会といたします。本日は熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。