1 日時 |
平成17年12月8日(木)10時30分~12時 |
2 場所 |
三田共用会議所D・E会議室 |
3 出席者 |
(委員)石井 実、梅谷 献二、小倉 勘二郎、小野 展嗣、桐谷 圭治、五箇 公一 |
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(セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合座長)土田 浩治 |
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(ヒアリング対象者)寺山 守、辻 端樹、山根 正気 |
(環境省)野生生物課長、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
4 議事概要 |
〔セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて〕
(事務局から資料1-1および1-2を説明)
- 今回新たに生殖撹乱の知見として、野外において在来マルハナバチの受精嚢から、セイヨウオオマルハナバチの精子が検出された。
- 資料1-1に在来マルハナバチが低地ではかなり衰退していると予測されているという記述があるが、これは類推であって、科学的データの有無を確認していただきたい。無いのであれば、この文章は削除したほうが良い。また、「実験室において」の部分について、野外においては、エゾオオマルハナバチおよびオオマルハナバチの2亜種でセイヨウオオマルハナバチの精子が確認されているので、「オオマルハナバチ」を加えていただきたい。
- 在来のマルハナバチが衰退しているという科学的なデータあるいは根拠があるのか。
- (事務局)確認し、特に科学的なデータがないということであれば、全体会合までの間に訂正、削除したい。
- 特定外来生物に指定したうえで、条件を満たせば飼養できるということか。
- (事務局)本法律の基本方針として、学術研究などと共に、生業の維持の目的で、確実に管理されており、許可を受けたものに関しては飼養を認めることとしている。
- これをもって、セイヨウオオマルハナバチを特定外来生物に指定するということでよろしいか。(→よい。)
〔セイヨウオオマルハナバチに係る未判定・種類名証明書添付生物について〕
(事務局から資料1-3を説明)
- 分類学の発展につれ、種や亜種の範囲は見直されることがあるので、その際には環境省の方でも柔軟に再度検討していただきたいという提案をしている。クロマルハナバチをオランダで量産し、再輸入しているが、原産国は日本であり、日本においても種類名証明書を発行できるように配慮が必要である。また、在来種の利用についても研究者側も議論・検討する必要があると思われる。しかし、マルハナバチそのものの分類や分布を考えたときに、国境で区切る在来種という枠組みで議論することに限界があり、本法律の範疇ではないが、今後、随時議論すべきであるということは指摘しておきたい。
- 分類学的な変更がある際に検討が必要であるが、その状況について誰が把握するのか。監視、チェック機関が必要ではないか。
- (事務局)問題が起きた場合には、本会合において議論していただくこととしたい。
〔アシナガキアリ・ツヤオオズアリの取扱いについて〕
(事務局から資料2-1、2-2について説明)
(寺山委員から資料2-3について説明)
- アシナガキアリ:生態系の撹乱、カイガラムシ・アブラムシの保護による農業への影響、家屋への侵入(家屋害虫・不快害虫)、硫黄島への侵入は戦後。
- ツヤオオズアリ:アフリカ起源説の根拠は不確かである。雑食性で種子も食べるので、植物への影響の可能性もある。カイガラムシ・アブラムシの保護による農業への影響。小笠原での発見は2000年。硫黄島への侵入は戦後。
- アシナガキアリの火山列島への侵入とツヤオオズアリの小笠原父島への侵入について、どのような経路や方法が考えられるのか。
- 火山列島では戦後、米軍の物資の移動が自由であった。あくまでも推測ではあるが、米軍の物資に付帯して侵入した可能性が考えられる。父島のケースでは、JA倉庫の外の周辺にのみ確認されるので、物資とともに入った可能性が高いと考えられる。
(辻委員から別配布資料について説明)
沖縄島における2種の分布状況と生態系への影響の実態について
- 両種ともかなり古くから生息しているらしく、外来種であるという明確な証拠はない。
- 自然林内には侵入していない。
- 他種のアリに対する競争排除は見られない。
- 他のアリが排除されないことから、その他の生物への影響も少ないと推測される。
- 特定外来生物に指定したときに防除できるかが疑問である。既に特定外来生物に指定されたアカカミアリが、非意図的に国内に入ってきているとの報道があった。
- (事務局)福岡のアカカミアリ発見事例については、特定外来生物に指定したことによって水際で発見でき、適切な対応ができた例と考えている。これは指定の効果であると考えている。
- これら2種は、受精した女王が飛び、分布を広げるのではなくて、バディング(女王アリが働きアリを引き連れてコロニーを分割すること)で拡大するのか。
- バディングで増殖しているが、羽を持っており、筋肉もあるので、場合によっては飛ぶ可能もあると考えている。
- 東南アジアを調査してきて、経験的にこれら2種は海洋島以外では侵略的にならないのではないかと考えている。つい最近、香港にヒアリが入って猛烈に広がっている。これは、台湾に入る可能性もある。事務局の基本方針の説明によれば、そこから自力で八重山諸島に入ってきた場合には、本法律では外来生物にならないことになるのではないか。法律の根本的な問題点を感じる。
- 保全生物学的に考えると、台湾から八重山諸島へ自力で入ってきたとしても人為が関与している場合には、外来生物であると考えられるのではないか。
- 小笠原などへの侵入をどうやって防ぐのかということを考えると、あらゆるアリが潜在的に非常に危険である。指定することのメリットとデメリットを考えたうえで、指定の適否を考えた方がよいのではないか。
- 小笠原のような特別の場所については、そもそも別途検討すべきではないか。
- アリの意図的な導入は少ないが、最近ペット化もされている。鹿児島市内の個人が沖縄産のアリのコロニーをネット販売しているという話もある。研究目的で飼養する場合、蔓延している場所でもそうでないところでも同様の規制がかかる。また、一定の規制がかかると在野の研究者の研究が困難になり、研究が遅れることが予想される。
- 原案通りこの2種を特定外来生物に指定するのか、もう少し時間をかけて検討すべきか。
- 検討を進めていく上で、外来生物を既に入っている種とまだ入っていない種に分けることができ、後者であれば予防原則を優先させ国外知見に基づき検討をすることができる。しかし、今回のケースはすでに沖縄で定着しているもので、そこで実際の被害が出ているのかを検証する必要がある。一定の科学的データが出てきている中ではこれを無視するわけにはいかないのではないか。
- 特定外来生物に指定された場合、飼育は許可されるが、野外において捕獲したものを移動させて再び放つことは例外なく禁止になる。個体数推定のためのマークリキャプチャーや取り除き、付け加えといったこともできなくなる。また、許可申請についてはアルゼンチンアリといったアリ類は個体数ではなく、コロニー単位にすべきという意見もある。
- 今回の指定は見送るほうが良いと考える。
- 指定することにより、監視の目が強まれば、小笠原での侵入を阻止できる可能性も高まるという面もあるのではないか。現状では、沖縄では被害がない可能性があるということだが、今回は見送って今後検討するということでよろしいか。
- 研究のデータが付け加わったときに、新しい知見を取りまとめながら、随時本会合で検討するべきではないか。小笠原については法律以前の問題で、侵入すれば多くの生物が侵略的になる。
- 今回議論になったアリ2種については、指定を見送ることを今回の結論とする。知見の集積があれば、随時本会合で検討したい。
〔普及啓発のキャンペーンについて〕
(事務局より説明)
- (事務局)小笠原については、外来生物法の指定種かどうかに関わらず、世界遺産の候補地として外来生物対策を進めていく。また、国内外来種については、自然公園法施行令の改正による国立公園での規制が開始されることになっている。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり))