1 日時 |
平成17年11月18日(金)15時~17時 |
2 場所 |
経済産業省別館821会議室 |
3 出席者 |
(委員)土田 浩治(座長)、池田 二三高、小野 正人、五箇 公一、横山 潤 |
|
(利用関係者)マルハナバチ普及会 光畑 雅宏、米田 昌浩 |
|
(環境省)自然環境局長、野生生物課長、自然ふれあい推進室長、移入生物専門官 |
(農林水産省)生産局野菜課課長補佐 |
4 議事概要 |
- (自然環境局長)セイヨウオオマルハナバチは、特定外来生物の指定の検討の中で、詳細な調査が必要としてきたもの。年内に結論を得られるよう委員の皆様にも十分に議論を尽くしていただきたい。
〔マルハナバチに関する調査の結果概要〕
(事務局から資料1を説明)
〔2005年度のマルハナバチに関する調査結果について〕
(資料2に沿って、各調査の担当者から調査結果を説明)
- セイヨウオオマルハナバチの野外定着の可能性については、分子遺伝学的手法により極めて多くの野生巣が存在することが示唆された。
- 旭川地域における地理的分布実態調査からは、春に野外で越冬した女王が多数観察されるものの、その多くが営巣に成功したとはいえない。
- 鵡川町、小清水町などでは野生化範囲が拡大している。
- 大雪山国立公園を中心とした調査では、同国立公園内における発見例は無かったものの、国立公園の近くで確認されている。
- 在来のマルハナバチが、餌資源の比較的豊富な鵡川町において経年的に減少しており、餌資源よりも営巣場所をめぐる競合が原因となっていることが示唆された。
- 野外においては、セイヨウオオマルハナバチによる在来マルハナバチへの生殖撹乱の例は見出せなかった。
- マルハナバチのフェロモンを使った誘引トラップの開発については、フェロモンの成分は分かっているものの、その合成に時間がかかっている。
- 外国産系統の寄生ダニ(マルハナバチポリプダニ)に感染している在来マルハナバチがいる。商用コロニーから感染したものと考えられる。
- 在来植物への影響の例として、エゾエンゴサクの結果率を低下させていることが示された。
- 天窓へのネット展張はマルハナバチの逸出を防ぐのに効果的である。
- 薬剤を使わずに使用済みコロニーを処分する方法として、高温期はビニール袋に入れる方法、低温期でも有効な方法としては熱湯をかけるのが効果的である。
- 在来のマルハナバチであるエゾオオマルハナバチの商品化もすすめられている。一年中出荷できるようになるまでは最低3年ほどかかると思われる。
- DNAマップは作成中である。
(質問及び意見交換)
<定着の可能性・分布の拡大について>
- 商品由来のセイヨウオオマルハナバチが毎年放出され、しかも使用範囲が拡大している状態であり、定着と同等の効果がある。マングースのようにある特定地域に一回侵入したものが徐々に広がるケースとは性質が異なる。
- セイヨウオオマルハナバチが日本の自然林等まで分布域を広げるかは不明であり、時間をかけて明確にしなければわからない。現在は、農地など撹乱された箇所でのみ確認されていると思うが、このような地域の生態系まで守らなければいけないのか。
- 北海道の小清水町では、原生花園という日本の草原生態系に侵入しており、今後の動向に注目する必要がある。
- 国立公園の調査もしているが、公園内で発見された場合に環境省はどういう対応をするのか。
- (事務局)基本的には駆除していくということになる。今年の調査でも、見つけたら捕まえてもらうようお願いした。
- 標本がなく、発表もされていない目撃例は情報として信頼できない。
- (事務局)標本がある場合とない場合のデータを分けて整理し、次回に示したい。
- 国立公園に入ることが問題になるのは、セイヨウオオマルハナバチは生態系に被害を及ぼすという前提があるからか。それとも害が無ければ問題はないのか。
- 国立公園の中に入ることは特定外来生物への指定理由として加味されるのか。
- (事務局)国立公園に入ること自体が被害になるということや特定外来生物の指定要件になるということではない。しかし、大雪山国立公園に見られるような高山帯のお花畑の維持などに影響があれば、生態系への影響があることになる。これらの地域は、特別保護地区となっており、基本的に他地域から動植物が侵入することは排除するようにしている。
- (事務局)特定外来生物に指定する際の被害の判定については、在来種やその個体群、在来生物相の群集構造、種間関係などを著しく変化させ、又はそのおそれがあること、としている。人の手が入っている箇所においても、在来の生態系に大きな影響が及ぶのであれば、生態系への被害とみなされる。
- 人工的なところであろうが、自然生態系であろうが、在来の生物相に著しい影響があれば侵略的または害があるということでよいか。(→よい)
<資源をめぐる競合>
- 営巣場所を巡る競合に関して、アシナガバチは、未交尾のメスが巣を作らず、他のメスの巣作りを手伝う例が知られているが、マルハナバチにはこういうことはないのか。
- マルハナバチはほぼ100%交尾している。交尾をしている2頭のメスが同じ巣穴で巣作りをしている例もあるが、極めて稀なケースと考えられる。
- マルハナバチの営巣場所が限られている中、営巣が排他的であるならば、将来的に個体数は安定するのではないか。
- セイヨウオオマルハナバチの方が在来マルハナバチより早く冬眠から覚め、先に営巣場所を押さえてしまうので、セイヨウオオマルハナバチの数は今より安定するかもしれないが、在来マルハナバチは減少するだろう。どこか別の場所に在来マルハナバチが移動して増えているという可能性はあるが、少なくとも現在の鵡川町はエゾオオマルハナバチの住める所ではなくなっている。
<寄生生物>
- ヨーロッパから出荷されるセイヨウオオマルハナバチの寄生ダニへの感染率は近年大きく減少しているが、国内メーカーから出荷されるセイヨウオオマルハナバチにはまだ外国産系統の寄生ダニに感染しているものがある。野外における水平感染の経路は不明である。
- 日本にも同種の寄生ダニがいるが、外国産系統のダニは遺伝的に異なり、ハチへの影響が異なることも考えられる。
<種子繁殖への影響>
- 資料1でエゾエンゴサクの結果率への影響調査から、「在来植物の繁殖に悪影響をもたらすものと結論された」としてあるが、すべての在来植物に影響があると誤解されてしまう。「エゾエンゴサクの繁殖に悪影響をもたらすものと推論された」若しくは「在来生物の繁殖に悪影響を与える例が示された」という記述の方が正確ではないか。
- エゾエンゴサクは、栄養繁殖しないのか。また、結果率が89%や76%に低下したということがどの程度影響があるのか。
- エゾエンゴサクはほとんど種子繁殖であり、結果率の低下は影響が大きい。
- その他の訪花昆虫はいなかったのか。
- 今回の調査では、訪花昆虫の9割以上が在来マルハナバチかセイヨウオオマルハナバチであり、他はビロードツリアブとハエ類のみだった。
<その他>
- 使用済みコロニーの熱湯処理は残酷に思えるが、薬を使わず、人間に害を与えず、簡便に誰にでも実施できる方法として示した。
- 処理に薬剤を使用する場合、農業害虫でも衛生害虫でもない状態なので、農薬取締法の適用はないはず。関係法令の整理が必要。
- 誘引トラップはモニタリングには使えるかもしれないが、防除目的に使用するのは無理だと思う。
- 誘引トラップは、ハウスの中に入れ、ネットとあわせて生殖個体の逸出を防ぐひとつの手法として着目している。
〔今後の検討の進め方について〕
- (事務局)(資料3に沿って今後の進め方を説明)
- 今回の議事内容に「管理体制の検討」とあるが何を指すのか。
- (事務局)ネット展張方法など、今回報告された事項である。
- 本日は、被害知見が十分示されたと思うが、次回は本日指摘のあった事項に関する説明資料を準備してもらい、小グループ会合としてまとめの議論をして結論としたい。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)