1 日時 |
平成16年12月15日(金)14時~15時40分 |
2 場所 |
経済産業省別館1111会議室 |
3 出席者 |
(委員)五箇 公一(座長代理)、池田 二三高、小野 正人、桐谷 圭治、横山 潤 |
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(利用関係者)マルハナバチ利用普及会 光畑 雅宏、 米田 昌浩 |
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(環境省)野生生物課課長、生物多様性企画官、野生生物課課長補佐 |
(農林水産省)生産局野菜課課長補佐 |
4 議事概要 |
(光畑氏、事務局の順に資料を用いて説明)
〔セイヨウオオマルハナバチの取扱いについて〕
<在来種クロマルハナバチについて>
- 資料にある「乾燥花粉を補給すると活性が上がる」の「活性」とはどういう意味か。
- コロニーの訪花活性が上がるということで、花粉の供給により、活動する個体数が増えるという利用農家からの話がある。
- 明らかに自然分布がない沖縄でのネット展張率と野外での目撃例はどうか。
- 産地を選んで流通させている。はじめはネットの展張を確認してから販売していたが、取扱量が多くなってきたので現在は徹底したネット展張が行われているわけではない。少数の野外への逸出はあると思う。
- 利用期間が、クロマルハナバチ(以下クロマル)は40日から50日の間でいったん下がる理由は何か。2系統ある可能性はないか。まだ選抜研究の余地があるのではないか。
- 寿命が二山型に見えるという指摘だと思うが、これからデータを取って検証していく必要がある。こまめに世話をしている利用農家のハチは寿命が長くなる傾向がある。
- 使い続けている利用農家の方からは、だんだんよくなっているという声がある。累積選抜があると思う。
- 1999年から2000年の調査で、流通しているクロマルの遺伝的な多様度はかなり減っている。クロマルの流通量の増加は、セイヨウオオマルハナバチ(以下セイヨウ)の代替と考えられるのか。
- 一部代替である。セイヨウが外来種だからという理由ではなく、クロマルの特徴を気に入って利用している農家もある。
- 本州と九州のクロマルは遺伝子に違いがあることが分かっている。流通しているクロマルの採集地、生産地、輸入元の国はどこか。
- 1996年から3年間かけ、交尾して越冬後の創設女王蜂を1000個体弱採集した。主に長野県北部を中心に中国地方、関東北部も一部混入している。オランダのコパート社に送り、商業生産を開始した。1998年以降の女王蜂の追加はない。
- 限られた起源からの集団と見てよいか。
- そう考えてよい。
- 韓国・中国にも自然分布しているが、違いは分かっているか。
- 中国・韓国と共同研究をしている。サンプル数は少ないが、アメリカの遺伝学会誌に中国の人が発表した。大陸と日本のクロマルとでは遺伝子に若干の差がある。ただ、日本のサンプルは本州中部のもののみで九州のものが入っていない。
- クロマルはもともと種内で遺伝子差異の振れ幅が小さい印象がある。
<セイヨウオオマルハナバチ小グループ会合これまでの論点整理>
〔1.定着の実績〕
- 商品として流通している状況を考えると、定着していなくても常に供給されることでインパクトがある。
- 侵略的かどうかが問題である。
- 周辺に放出源がなく、飛来可能な範囲の外で、生活史が全うでき次世代の生産が可能であること、を定着の定義とすると、定着は起こっている。北海道の平取町ではここ2・3年で分布圏の拡大が起こっている。
- 次世代の生産をしているか否かが重要である。少なくとも北海道では野生の巣から次世代を生産した例がある。初夏に交尾をしたセイヨウが飛んでいることは間違いない。野外で生活史を一巡している。在来の植物、近縁のマルハナバチに負のインパクトを与えているかどうかは慎重に研究する必要がある。
- 越冬できているかどうか。見える範囲で生活史を完結しているという意味では定着している。
- 各立場からご意見を頂いたが、野外(ハウス外)でも生活環を完結させていることを結論としたい。
〔2.在来マルハナバチへの影響〕
[営巣場所を巡る競合]
- 野外でのセイヨウによる巣の乗っ取りは全く不明だが、セイヨウは在来のマルハナバチよりも早く冬眠から醒めるため、営巣場所を占有してしまう。
- 営巣に適した空間は限られている。営巣可能場所を巡る女王間の争いは、在来種同士でもあるだろう。室内同様、野外でもセイヨウの数が増えるに従って、セイヨウと在来種での相互作用はあるだろう。
- 在来種同士でも営巣場所は早い者勝ちである。軋轢が強くなる点では同じ考であるが、もともと生息していなかった種が新たに加われば影響が起きると考えられる。
- 依然データは少ないが、営巣場所を巡る競合はあることを結論とする。
[餌資源を巡る競合]
- 過去の多くの事例は、社会性ハナバチが単独性ハナバチのニッチに入り込む事による問題であった。社会性ハナバチ同士での競合を研究するのは難しい。在来種同士の餌の重なり具合はそれほどでもないが、セイヨウと在来種はだいぶ重なっているので、競合するだろう。
- 一番判断が難しい。新女王から1コロニーができるのに、1.5~2.0kgの生花粉が必要である。その地域に利用可能な花粉がどれくらいあるか、余剰分でセイヨウが生活できるのであれば問題はないが。
- 農業生態系の中での植物は外来種が多い。それに対する選択性が高いのはセイヨウである。農業生態系の中では雑草になるので(植物量も少なく)、花粉は少ない。在来種が必死で生きている中、セイヨウが入ってくると問題になる。
- 特に北海道では在来種が豊富である。北海道は全域が過去の開拓による攪乱地のようなものであり、セイヨウが比較的入りやすくなっていたことも考えられる。北海道においては自然生態系に入り込んで行かない友考えられる。本州の自然林域では状況は違うだろうが、在来種がわずかに生息している中にセイヨウが入ってくると大きな問題になる。
- マルハナバチ対マルハナバチについてばかり議論されているが、他のハナバチ等への影響も評価する必要がある。
- 餌資源を巡る競合については意見が様々である。生息環境の不連続性があり、餌資源量の分布を勘案したうえでのリスク評価が必要であることを結論としたい。
[生殖攪乱]
- 交尾前の隔離機構(忌避作用)が働かないため、在来のマルハナバチとセイヨウの交尾がおこってしまう。一度セイヨウと交尾した在来種の雌は本来のパートナーの在来種と交尾する可能性が下がる事で影響がある。
- 室内レベルでの影響は確認されているが、野外では不明である。
- F1ができるかどうかで評価しがちだが、室内実験と野外では大きく違う。
- 逃げ出す個体が多いほど影響も大きい。
- 生息攪乱については、野外の確認はまだされておらず、不明であることを結論としたい。
[天敵・寄生生物]
- 在来種に寄生してるものの研究はあるか。逆にセイヨウにマイナスの影響があるのではないか。
- 輸入されたものへの評価が中心となっていて、在来種のパラサイトはポリプダニ以外未調査である。工場を壊滅させることと野外の個体群への影響は、同じではないと思う。飼育環境においてのパラサイトのコントロールは可能であろうと考えているが、野外でのリスクを考えなければならない。調査が必要である。
- パラサイトに関しては不明であることを結論とする。
〔3.在来植物への影響〕
- 調査したのは盗蜜についてだけであり、結実率の調査はしていない。完全に結実しないことは少ないと考えているが、影響はあるだろう。
- 確実に影響有りとするにはデータ不足である。要調査を結論とする。
〔4.ネット展張の実施状況と逸出防止効果および5.現場での利用状況・防除の取り組み〕
- 利用農家はこの議論の結果待ちで、ネットを新たに展張するだけのインパクトにはなっていない。
- リスク回避にはコストが必要であることを、予算確保に関して強調しておきたい。
- ネット展張のタイミングに関する広告、考慮が必要である。
- ネット展張に関しては、在来種の利用を考えてもネット展張が有効で重要であることを結論とする。
〔その他〕
- 今後の問題として在来種へのセイヨウオオマルハナバチからの置き換えが議題になるであろうと思う。この会議は国内移入を議論できる場ではないが、将来的には議論が必要であることを付け加えたい。
(事務局)次回の会合は1月12日に開催する。
(文責:環境省自然環境局野生生物課 速報のため事後修正の可能性あり)