環境省自然環境・自然公園特定外来生物等の選定について

第4回 特定外来生物等分類群専門家グループ会合(魚類)議事録


1. 日時 平成17年7月13日(金)15:00~17:30
2. 場所 経済産業省別館10階 1014会議室
3. 出席者  
   (座長) 多紀 保彦
   (委員) 北田 修一
細谷 和海
櫻井  博
村田  修
   (環境省) 名執野生生物課長
上杉生物多様性企画官
中島自然ふれあい室長
長田移入生物専門官
   (水産庁) 丹羽生態系保全室長
5. 議事  
【環境省 長田専門官】 それでは大体時間となりましたので、特定外来生物等分類群専門家グループ会合(魚類)の第4回会合を開催したいと存じます。
 まず最初に、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきたいと思います。今回も資料が多くて恐縮なんですが、順番に確認をさせていただきたいと思います。
  資料の一番上から順番にご説明させていただきたいと思いますけれども、議事次第が1枚ございまして、その次が資料一覧、それから委員名簿、その次が右肩にお示ししてありますが、資料1-1、第二次以降の特定外来生物等の選定の作業手順、資料1-2、外来生物の特徴と第二次選定に際しての留意点(魚類)、資料1-3が今後の検討の進め方について、資料1-4、特定外来生物に選定することが適切と考えられる外来生物(魚類)に係る評価の理由(案)、資料1-5が特定外来生物に選定することが適切と考えられる外来生物(魚類)に係る情報(案)、資料1-6が特定外来生物等の選定作業が必要と考えられる外来生物(魚類)に関し、想定される未判定外来生物及びその他種類名証明書添付生物の対象のリストでございます。ここまでが資料1関連です。
 続きまして資料2-1、要注意外来生物リストの再整理・活用の方針について。資料2-2、横長で要注意外来生物のリストになっております。それから資料2-3、要注意外来生物に係る情報及び注意事項(案)、詳しいところの資料でございます。それから資料2-4は特定外来生物をはじめとする外来生物の取扱いに関する普及啓発の考え方について(案)。資料2-5は1枚のペーパーですが、ブラウントラウトの利用実態について。それから参考資料1が6月9日の専門家会合の議事概要です。参考資料の2は、この魚類会合の前回の議事概要になります。さらに参考資料3としまして、魚類学会から特定外来生物等の選定に関する意見として出てきたものをお配りさせていただいております。資料としては、あとは机上に冊子で特定外来生物被害防止基本方針をお配りしております。もし、資料に不備がございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、議事進行につきましては、前回同様多紀座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【多紀座長】 委員の先生方、関係者の皆様、きょうはお忙しいところありがとうございます。これからは座ってやらせていただきます。
 
 お手元の議事次第にありますように、本日の議事のメインは特定外来生物等(魚類)の選定についてということでございます。ただいま専門官からもお話がありましたように、魚類についてはこれまで3回論議を重ねてまいりました。前回では特定外来生物の魚類の選定作業の進め方や、どんなものを対象とすべきかということについて論議をいたしました。そして、そのような魚類グループの検討結果を6月9日に全体会合でも報告して議論をされて、中間的な整理が行われたところでございます。
 ということで本日は、まず全体会合の結果を簡単に事務局からご説明をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【環境省 中島室長】 はい、それでは説明をさせていただきます。資料の後ろの方に参考資料1というものがございます。第4回特定外来生物等専門家会合、6月9日の専門家会合の議事概要でございます。全体会合では、まず要注意外来生物リストの再整理・活用の方針についてということで、後ほど詳しくご説明いたしますけれども、第二次選定にあわせて整理をしようとしております要注意外来生物リストの考え方について、少し説明をして議論をいただきました。
 その後、各分類群ごとにそれぞれ座長の先生から、それぞれの分類群で議論のあったことをご報告をいただきました。魚類につきましても多紀座長から幾つかの点について報告をいただいております。めくったところ、後ろの方ですけれども、魚類につきましては検討対象種を3つのカテゴリーに分け、候補種としてカダヤシほかスズキ目10種が入っていると。これらについて温帯域に生息して釣りの対象になっていること。国によっては輸入が制限されているところもあるというようなこと。それから、その内、そのスズキ目10種の内、マーレーコッドとゴールデンパーチの2つについては輸入が少ない、あるいは緊急性が低いといったご指摘。それからオーストラリアではレッドリストに入っているというお話がありまして、事務局に整理をお願いすることとしたということ。それからブラウントラウトにつきましては北海道に定着をしていて、指定すべきであるという意見があったと。これについては利用の実態に関する情報収集を求めるという点。
 それから要注意のリストに入っていないんですけれども、カラドジョウについて検討すべきではないかという意見がありまして、情報収集、整理することとしたというような点についてご報告をいただきました。
 各分類群ごとの報告の後で全体の意見交換がございまして、そのときは緑化植物の扱いについてのお話がしばらくありましたのと、それ以外では既に蔓延している生物についてどのように考えるべきかということで、アメリカザリガニ等を例にとってさまざまな議論が交わされたところであります。
 簡単でございますけれども、前回の6月9日の第4回全体会合のご報告でございました。

【多紀座長】 はい、どうもありがとうございました。特に何か補足とかご質問等がございましたら、お願いいたします。

(なし)

【多紀座長】 よろしゅうございますね。
 それでは、本日のメインに入ります。今の報告にもありましたけれども、これまで幾つかの指摘というか宿題のようなものがありました。それらの指摘を踏まえまして、魚類グループとしてこれから二次に向けて最終的な整理をしていきたいと思っております。そこでまず、特定外来生物の指定候補、未判定外来生物、そして種類名証明書添付生物につきまして、上記の指摘、宿題の検討を含めまして、事務局としてどのように整理をしたかということをご説明お願いしたいと思います。

【環境省 中島室長】 それでは資料1-1から資料1-6までを一括して説明をさせていただきます。
 まず資料1-1でございますが、特定外来生物等の選定の作業手順ということで、今回特に変更等ございませんけれども、選定に関する基本的な資料ということで、ここにつけさせていただいております。
 それから資料1-2でございますが、外来生物の特徴と第二次選定に際しての留意点(魚類)ということでございまして、前回、資料として提出をさせていただいたものでございまして、これについては特に変更点はございません。
 それから資料1-3でございますけれども、これにつきましては前回の会合の際の意見を踏まえまして、下の着目点の真ん中あたりの○でございますが、一部変更しております。「野外に遺棄されやすい性質(観賞の対象として利用され、かつ、大型化することや寿命が長いこと)」の後に「容易に繁殖すること」というのを付け加えております。以上が資料1-3でございます。
 それから資料1-4でございます。今回、第二次の特定外来生物に選定するべきと考えられる外来生物のリストを1枚の紙にまとめております。前回の魚類グループ会合におきまして事務局の案として提出をいたしましたもののうち、ご指摘がございましたマーレ-コッドとゴールデンパーチを抜いたものが、今回ここに提出しております第二次の魚類の特定外来生物の選定対象の案ということでございます。カダヤシでございますけれども、評価の理由としては、繁殖力が旺盛であり、日本でも都市近郊の水田や用水路などに定着してメダカを駆逐しており、今後もさらに分布を拡大するおそれがあるということで挙げております。続きましてケツギョですが、東アジア原産の比較的大型になる魚食性淡水魚である。低水温に耐えることが可能で、繁殖力が旺盛であるということで、全国の湖沼に侵入すれば在来生物に大きな影響を及ぼすおそれがあるというふうに評価をしております。次にコウライケツギョでございますけれども、これもケツギョと全く同じような評価をしております。それからストライプトバス。温帯域に生息し比較的大型になる魚食性淡水魚であり、世界各地で本種の導入後に在来生物に影響を及ぼしている可能性が指摘されている。北アメリカ原産であるために冬の低水温に耐えることが可能で、繁殖力が比較的強い。全国の湖沼・河川に侵入すれば在来生物に大きな影響を及ぼすおそれがあるという評価をしております。ホワイトバスもほぼ同様の評価をしております。ヨーロピアンパーチ、パイクパーチ、それからノーザンパイクにつきましても、これはヨーロッパ原産ということでございますけれども、同じような評価をしています。マスキーパイクにつきましては北アメリカ原産ですが、上の数種と同じような評価をして、全国各地の湖沼・河川に侵入すれば定着して大きな影響を及ぼすおそれがあるということで。この合計9種類を第二次で特定外来生物に選定するのが適切ではないかということであります。
 それぞれの種につきまして、資料1-5でございますけれども、それぞれの種ごとに、これまで収集いたしました被害の実態あるいは被害をもたらすと考えられる要因等につきまして、種ごとの情報を整理した案でございますけれども。前回、提出をしておりますので、今回は評価の理由のところを先ほど読み上げましたけれども、評価の理由のところだけ前回の資料と変わっているということで、説明を省略させていただきたいと思います。カダヤシ以降、この資料につきましては前回と基本的には同じ資料とお考えになっていただきたいと思います。
 それから資料1-6でございますけれども、先ほどの9種類を特定外来生物として指定した場合に、それぞれ、特定外来生物と同様の生態を持つと思われる生物ということで未判定外来生物を指定する。それから特定外来生物と形が似ているということで、種類名証明書添付生物というものを指定することになるわけですけれども、それぞれの案をこの一覧表にまとめております。カダヤシを特定外来生物に指定した場合の未判定外来生物につきましては、カダヤシ属でカダヤシと同様の生態を有するものとして1種類を未判定外来生物にしてはどうかということでございます。それから種類名証明書添付生物につきましては、カダヤシと未判定外来生物の種類、計2種類という案でございます。それからケツギョとコウライケツギョにつきましては同じ属でございまして、特定外来生物を除くケツギョ属全種を未判定外来生物にすべきということでありますが、これにつきましては既に第一次のときに未判定外来生物に指定済みであります。種類名証明書添付生物につきましてもケツギョ属全種ということですが、これも第一次の時に指定済みであります。ホワイトバスとストライプトバスの2種につきましても未判定外来生物、それから種類名証明書添付生物、それぞれ第一次のときに指定済みでありますが、狭義のモロネ属の種類と。モロネ科の全種ということで整理をしてあります。それからヨーロピアンパーチとパイクパーチにつきましては、特定外来生物のパーチ科の4属全種ということで14種類ですが、これにつきましても第1回の指定のときに指定済みであります。種類名証明書添付生物につきましても、特定外来生物と未判定外来生物の合計16種類が証明書添付生物ということで指定済みであります。それから特定外来生物を除くサンフィッシュ科全種ということで、この28種類についても未判定外来生物として既に指定済みであります。種類名証明書添付生物につきましてもサンフィッシュ科、アカメ科、ナンダス科の全種ということで指定済みということになっております。それからペルキクティス科の4属、マーレーコッド、ゴールデンパーチを除く4属ということで、これにつきましても13種類が未判定外来生物に第一次のときに指定済みであります。種類名証明書添付生物につきましても同様でございます。それからノーザンパイクとマスキーパイクにつきましては、パイク科のEsox属ですが、特定外来生物を除くEsox属の全種ということで3種類。ノーザンパイクとマスキーパイクと同様の生態を有する魚類ということで、今回未判定外来生物に指定してはどうかということであります。種類名証明書添付生物につきましては、この属の全種類ということで5種類を証明書添付生物にしてはどうかということでございます。
 資料1-6が、特定外来生物を9種類指定した場合の未判定外来生物と種類名証明書添付生物の案ということでございます。以上でございます。

【多紀座長】 はい、ありがとうございました。今のお話のように第二次として特定外来生物の魚類で指定の候補に挙がっておりますのは9種であります。前回からはマーレーコッドとゴールデンパーチが抜けております。オーストラリア産のこの2種が抜けた理由は、日本に入ってくる量が多くないということと、被害の状況が不明である(報告例がない)ということで、この2種は要注意種として見守っていくべきものであろうということになりました。さらにこの2種は、オーストラリアでは絶滅危惧種になっております。養殖もしておりますが、このような魚種を大量に積極的に輸入するのはいかがなものかということで、業界の協力も含めて、そちらの面からの努力もあわせて考えていきたいと思っております。
 ということで9種が指定ということになりました。未判定外来生物と種類名証明書添付の必要な生物の候補は資料の1-6にございます。
 ではこれから、ただいまのご説明と資料につきましてご検討願いたいと思いますので、まずは質問・コメント等ございましたらどうぞ。要注意の方は次に別途ご説明し検討をお願いします。

【北田委員】 この9種に特に異論があるわけではありませんが、この資料1枚で議論するわけですよね。ここには、この評価の理由というのが書いてあるわけですけれども、1番のカダヤシ以外は生態的特徴が書いてあって、これが全国の湖沼・河川等に侵入すると大きな影響を及ぼすおそれがあると書かれています。他の種も全部これ同じように、まとめてあるように思うんですね。これは、予見が書いてあるだけですが、この9種について、まず最初に導入の目的があったと思うんですよ。前回の資料のように観賞用とか養殖とか。やはり導入目的がここにあって、続いて現状を説明して欲しい。これでは全く現状わからないですよね。被害の概要というものが生態系で、どれも同じようなものが載っていて。これではこれを選定する理由として、外部から見たときには非常に不十分ではないかなという気がするんです。

【多紀座長】 ありがとうございます。事務局にお答え願う前に、私の方から一つ。その次に資料1-5というのがございますよね。それに各種について書いてある。そこに個表として、それぞれ評価の理由や現在の取り扱いなどが書いてあるんですが。ただ、資料1-4だけだと分かりにくい。もう少し説明力のあるものにせよというご意見は、もちろんありがたく承ります。

【北田委員】 これは、カダヤシ以外の全部って観賞魚でしたか。釣り目的の導入も入っているんですか。どれが遊漁で、どれが観賞魚かちょっともう一度教えていただけないですか。

【環境省 長田専門官】 すみません、恐縮ですが、資料1-5でちょっと確認をさせていただきたいと思うんですけれども。まず順番にご説明してまいります。カダヤシについてはご存じのとおり、日本にもうかなりの場所に入り込んでいるものでして、今、例えば観賞目的で輸入をされて来たりということはないですけれども、一部蔓延しているものですから観賞魚として国内での流通もあるということでございます。ちょっとその辺の記述が不足していれば、最終的に全体会合までの間にこちらで少し整理をして書き足していく必要があるかと思いますが。それからケツギョですけれども、ケツギョの場合は3ページの下にある社会的要因というところに、観賞魚として流通していると書いてありまして、基本的に現段階では観賞魚として流通をしているということですが、原産地では釣りの対象としても一部人気があったり、それから4ページのその他の関連情報のところにちょっと書いてありますが、高級中華食材として用いられることもあるということでございます。コウライケツギョにつきましても同じように、5ページの社会的要因のところに観賞魚として流通していると書いております。それから6ページの一番上のところに、韓国では釣りの対象魚として人気であると。それからもうちょっと下のところに、味は淡白で韓国では高級食材として利用されているということでございます。それから次のストライプトバスですけれども、基本的に観賞魚として積極的に利用されていることはないと事務局では認識しておりますが、8ページのところに少し書いてありますが、原産地などでは釣り魚として人気種であり、日本でも一部の管理釣り場で利用されているということでございます。ホワイトバスについても、原産地などでは釣りの対象魚として人気であるということ。それから近年、霞ヶ浦で捕獲されたということもありますので、全く日本に入ってきていないということではないですけれども、これも観賞魚として人気のある種ということではないと考えております。ヨーロピアンパーチですけれども、こちらは日本で一部観賞魚として流通していると、ちょっと12ページのところで触れております。11ページのところには、ヨーロッパなどでは釣りの対象魚として人気であると。それから食用になるということであります。パイクパーチにつきましても、ヨーロッパでは釣りの対象としては人気で、日本では一部で観賞用として流通しているということを14ページのところで触れてございます。ノーザンパイクにつきましても、欧米などでは釣りの対象魚として人気ということですね。それから漁獲もされているということ。それから次に出てきますマスキーパイクと一緒で、観賞魚としても一部流通があるということでございます。マスキーパイクも原産地では釣りの対象魚として人気があるということ。一応海外での利用のされ方とか、日本にどんな形で入って来ているかということは、ある程度こういう形で個表の中で説明をしているつもりでございます。

【多紀座長】 ここに挙げられたものは、カダヤシは別にして観賞魚としても入るし、釣りの対象としても輸入されます。昔は鑑賞魚といえば綺麗な小魚が主体だったんですが、今はナマズをはじめとしてこのような大物がどんどん入ってくる。ここにあげた魚種は、現に今まで入ってきたり、これからも入ってくる可能性があって、もし大量に入ってくると危険なものであるという意味で指定候補とさせたわけでございます。
 資料1-4は、これだけでは確かに北田委員がおっしゃるとおり分かりにくいので、できれば1枚でわかるようにこれから改良するということでよろしゅうございますか。

【北田委員】 結構です。

【多紀座長】 ほかにご意見。はい、櫻井委員お願いします。

【櫻井委員】 この未判定外来生物のところなんですけれども、カダヤシを除いて特定外来生物が該当する、入っている属または科で一応指定してあるんですけれども、カダヤシだけは1種だけしか指定されていないというのは、これはどういう理由なんでしょうか。

【環境省 長田専門官】 カダヤシについては、そのカダヤシと同属の種で、このGambusia holbrookiというものが海外でも侵略的なカダヤシ属の魚ということで、あっちこっちに導入されて問題になっておりまして、そういう知見をもとに判断をしているわけですけれども。カダヤシ属というくくりで見ますと侵略性が高くないものがたくさん含まれている可能性がかなりあると考えておりまして。カダヤシ同様に影響がある可能性が高いものとして、どういうくくり方ができるかということを事務局で検討しました結果として、この1種をとりあえず未判定の候補とさせていただきたいと考えました。例えば種類名証明書ですと形態的に似ているものということですと、もう少し広くとるという考え方もあるのかもしれないんですけれども。このカダヤシも未判定の候補になっているもう1種のカダヤシ属の魚も、基本的にはその観賞で入ってくる可能性は余りないだろうと。ヒアリング等もしたんですけれども、あまり魅力のある魚でないものですから、そういうようなこともありまして、観賞目的と意図的に利用されて入ってくる可能性が余りないものについては、種類名証明書の範囲も狭めにとっております。
 ほかの生物につきましては、第一次のときでも議論がされましたけれども、温帯域に定着が可能な魚食性の強い大型になる魚ということですと、日本の生態系の、淡水魚生態系を考えれば、そのこと自体が非常に侵略的である可能性を秘めているというご議論が一次選定の過程でもあったと思います。そういうことから未判定外来生物として、カダヤシと比べるとかなり広めの種を対象にとっているということでございます。

【櫻井委員】 趣旨はわかりました。そうしますと、カダヤシ以外のすべてのグループについては、基本的には被害の実態が一定程度出ている、明らかになっていると判断されているということですか。要は、余り被害が報告されていないものは一切入れていないということですよね、逆の言い方をすれば。それは確かなんでしょうかというのが1点と。
 あと、そのカダヤシ、今、捕食のことだけで、捕食というのは非常に目立ちますし、知見が得やすいと思いますので、確かに魚食性の魚を指定するというのは理にかなっていると思うんですが、それが激しい種間競争を起こす種が軽んじられるという理由にはならないと思うんですけれども。これは今後の話だと思いますが。当然、種間競争って比較的被害を科学的に実証することが難しい場合が多いんだと思うんですけれども、魚食性のものでしたら釣り上げて、どのくらい食われているのかと直接見られますけれども、行動の方になってしまいますので。そうしますと種間競争で影響があるものというのは、いつまでたっても指定されないおそれが出てきちゃうと思うんですけれども、それについてもご意見・お考えをお聞かせください。

【環境省 長田専門官】 種間競争についてのご指摘ですけれども、カダヤシはまさにその種間競争の問題で今回特定外来生物の候補になっておりますので、当然カダヤシと同様に種間競争で在来の貴重な魚類を駆逐するおそれが高いものについては、そのおそれがかなり高いのであれば特定外来生物の候補になり得ますし、そうである可能性があるということであれば未判定外来生物の対象になり得ると思いますけれども。基本的に事務局としては、きょうお配りした資料1-1が選定の作業手順ということになっておりまして、その中では選定に対する基本的な考え方を、その外来生物の被害防止の基本方針と、それに基づく作業方針として整理をしております。
 その中では、例えば資料1-1の5ページの真ん中の囲みをごらんいただければと思うんですけれども。その中に未判定外来生物の候補が何であるかということについて、基本方針の中で整理されていることを書いていますが。ある特定外来生物と似た生態的特性を有しており、その特定外来生物と生態系等に係る同様の被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物と。ちょっと回りくどい表現になっておりますが、これが今回カダヤシについては1種、その他の大型になる魚類については、これまで指定されていたもの等が候補になるというふうに考えております。その具体的な考え方としては、例えばその囲みの下にありますように、同属の種、同科の種について、その種の生態学的知見の多寡、その利用の実態、海外における被害の情報等により同様の被害を及ぼす可能性を検討すると。生態的な類似性については、生息・生育環境ですとか食性ですとか繁殖生態、分散能力の観点から、生態的な同位性や同じニッチェを占めるかどうか等について検討するというふうにしております。カダヤシ属の中にそういった可能性があるものが、ほかにある可能性はあると思うんですけれども、事務局の中で作業していく過程の中では、明らかにそういうものに該当するだろうと思われるものが、この1種あったということでございます。
 もう一つは、未判定外来生物というのは我が国に原則として入ってきていないものという定義になっておりますので、そういったことも考慮して、とりあえずこの1種を未判定外来生物の候補とさせていただいております。

【多紀座長】 ここにリストされているのはGambusia holbrooki 1種ですが、Gambusia affinis などこれから増える可能性があるのでしょうか。

【細谷委員】 先生方のおっしゃっていることはそれぞれに正しくて、私個人はこの処置はこのままでいいんじゃないかなというふうに考えます。といいますのは、Gambusia affinis なるグループは、そのガンブシア属の中、卵胎生の中でもかなり北の方にいて、一番ある意味で低温耐性が強いわけですから。ですから、その意味で我が国に入るとメダカと一番競合しやすいというふうに認識しているんですけれども。私の知る限りにおいては、長年これ2亜種に分けで、Gambusia affinis affinis とGambusia affinis holbrooki。これスペルあっていますかね、hoで。ちょっと気になるところですけど。そういうふうに2亜種にされていたのが、最近の新しい論文ではわかりませんけれどもholbrooki の方が種に格上げされて取り扱われているふうに理解しているところなんです。したがって、これは非常によく似た、本来は同種として扱われたグループですから、そのうち我が国に入ってきたものは、その片方のaffinis affinis だけであると理解していたんですけれども。となりますと、これは基本的に種のレベルで、1つの亜種が日本に入ってきて、もう1つほとんど区別できないものもいるよという意味合いであれば、未判定外来生物で位置づけておくことは理にかなったところではないかなと思いました。問題は、証明書添付のときに亜種まで落として分類ができるかどうかというところですが。いずれにせよ、それはaffinis としてしまえば税関のところでチェックがかかるわけですから、処置としてはこのままでいいんじゃないのかなという感じはするんですけれども。

【多紀座長】 はい、ありがとうございました。ほかに。村田先生どうぞ。

【村田委員】 私は余り淡水魚の知識がなくて申しわけないんですが。栽培漁業というんですか、そういうことの見地から少し眺めて見ますと、例えば資料の1-5、ケツギョの項で書かれておるように、先ほどもご説明がありましたように観賞魚だと。被害をもたらすよりは云々と、それは理解できる。それから社会的要因として観賞魚だと。ところで、次に高級中華食材として利用されておると。何かこれ相反するようなところが、この意味合いとしてあるんですが。害を与えておるんだと。しかし、高級中華食材としても取り扱われておるんだという、この辺の表現の仕方と言うんですか、一般にそれを理解する上においてね。というのをちょっと、もう少しご説明を願えたらと思うんですが。

【多紀座長】 村田委員は高級中華食材というと、これはいい印象にとらえるわけですか。

【村田委員】 ある意味では。

【環境省 長田専門官】 例えばケツギョの個表の構造でご説明申し上げますと、被害をもたらす要因に直接または間接に関係している可能性が高いものについては、個表の被害をもたらす要因というところの、生物学的要因と社会的要因というところに記述をしております。それ以外の情報で、この生物の特性を理解する上で参考になりそうだと事務局で考えたものについて、その他の関連情報に書いておりまして。一般的な利用に係る情報ですとか、その種が特別な特徴を持っている場合に書いておりまして。事務局としましても、高級中華食材として利用されていることがいいか悪いかという判断は、ここではしておりません。基本的に高級中華食材として中国等で用いられていて、我が国でもある程度用いられている可能性はあるんだけれども、生きたまま流通しているということになれば多少リスクがあるのかもしれませんが、そういう利用があるかどうかは、事務局では今のところ把握できていないということであります。

【櫻井委員】 高級食材として利用されているということは、多分マイナスの要因になるんだと思います。ということは、最近活魚でいろいろなものが輸入されていますよね、例えばシャンハイガニみたいな。ああいう形で外から高級食材ということで生きたままどんどん輸入される可能性もありますので、非常に怖いんじゃないかと逆に感じています。

【多紀座長】 としますと、むしろこれは村田委員に伺いたいんですが、食材として活魚輸入される可能性があるとか、されているとか、そういう言い方の方がもっと直接的でよろしいという意味にとってよろしいですか。

【村田委員】 前回もそういう意味だったと思うんですがね。

【多紀座長】 その辺、事務局の方で考えてください。それが活魚として入って逸出の可能性があるというようなニュアンスが、どこかに入った方がいいということですね。
 今の1-6までの資料の説明について、ほかにご意見ございませんでしょうか。細谷先生いいですか。

【細谷委員】 ブラウントラウト、次で。楽しみにしていますので。

【多紀座長】 では、第二次の選定の候補として特定外来生物と未判定外来生物と証明書添付生物、この資料にある形でもってまとめてよろしゅうございましょうか。よろしいですか。

(はい)

【多紀座長】 では、お認めいただいたということとします。どうもありがとうございました。
 それでは次に、今、細谷委員がおっしゃったような魚も入っております要注意外来生物のリストについてです。まずリストの考え方、それから候補種ごとについて注意すべき事項を事務局が整理しておりますので、これについてご説明をお願いしたいと思います。ではよろしくお願いいたします。

【環境省 中島室長】 それでは、ご説明したいと思います。まず、資料2-1でございますけれども、要注意外来生物リストの再整理活用の方針についてというペーパーでございます。
 要注意外来生物リストにつきましては、第一次の選定作業のときに149種類を掲げて、暫定版ということでまとめております。今回第二次の選定作業にあわせまして、以下の方針で要注意外来生物を再整理いたしまして公表したいと考えております。
 まず、そのリストの対象とする生物ですけれども、今回、第二次選定の検討の対象といたしました暫定版の要注意外来生物。それとIUCNと生態学会のそれぞれのワースト100のリストのうち、被害について文献等による指摘があるが、その科学的知見が不足しているもの、あるいは普及啓発を先行して実施すべきもの等、第二次の特定外来生物の選定の対象としなかったものを要注意外来生物リストの対象生物としたいということでございます。
 なお、国内外来種ですとか微生物、それから他法令による規制の対象種等、本制度の対象外である外来生物については、要注意外来生物のリストの対象外とすると。ただ、他法令の規制対象であっても注意喚起が特に必要なものとして指摘があったものについては、例外的にリストの対象に含めたいというふうに考えております。
 なお検討の過程で、我が国では被害を及ぼすおそれが高くないと判断されたものは、要注意外来生物リストの対象としないというふうに考えております。
 3番目ですけれども、これにつきましてはちょっと裏を見ていただきまして、今、申し上げました検討の対象種を検討の結果、特定外来生物とそれから対象外になる生物を分けまして、その残りはすべて要注意外来生物リストの中に掲載しようということでありますが、その要注意外来生物リストの中に4つのカテゴリーを設けまして、生物をその4つの箱に分類をして、要注意外来生物リストの中に入っているものが、それぞれの生物が持っている注意事項とか性質がわかりやすくなるようにしようということであります。
 1番目が被害に係る一定の知見はあり、引き続き指定の適否について検討する外来生物というカテゴリーであります。2番目が被害に係る知見が不足しており、引き続き情報の集積に努める外来生物ということであります。3番目に選定の対象にならないもので注意喚起が必要なもの、4番目は緑化植物のことですけれども、別途総合的に取り組みを進める外来生物ということで、一応この4つのカテゴリーに分けて、要注意外来生物をそれぞれのカテゴリーに分類をしようということであります。
 戻っていただきまして3番の一番下の方でございますけれども、被害に係る知見の充実度、それから利用実態の把握状況、それから周知すべき注意の内容や、あるいはその対象者というのは生物ごとに大きく異なるということで、すべての要注意外来生物について、これらの情報を情報票として作成して、ホームページ等を通じて広く周知することとしたい。それから生物群や利用形態に共通して配慮すべき事項についても取りまとめて、積極的に注意喚起を行いたいというふうに考えております。
 資料2-2でございますけれども、魚類の分類で要注意外来生物リストに載せるものということで、今回、検討の対象となったものから対象外とするものはないということで、特定外来生物として選定しようとするものを除いたものがここにございます。
 2つのカテゴリーに分けてございまして、上の方は被害に係る一定の知見はあり、引き続き指定の適否について検討する外来生物ということで、生態系等に対する被害については、文献等で一定の知見があると思われるものですが、それぞれさまざまな理由で今回第二次選定の対象にはしないというふうにしております。タイリクバラタナゴ、ニジマス、ブラウントラウト、カワマス、グッピーのこの5種類については、このカテゴリーに分類をしようということであります。下の方ですけれども、それ以外のソウギョから始まりましてマダラロリカリア、それから今回カラドジョウを付け加えておりますけれども、こちらの方につきましては被害に係る知見が不足しており、引き続き情報の収集に努めるものというカテゴリーに入れようかと考えております。
 資料2-3に、それぞれの種類ごとのこれまでの科学的な知見の状況ですとかをまとめた表がございます。前回も提出しておりますけれども、今回、要注意外来生物とする評価の理由というところと、それから具体的にどういったことを注意事項として世に知らしめていくべきかということについて、太字で表現してありますけれども、ざっとここの部分だけを簡単にご紹介していきたいと思います。
 まず、タイリクバラタナゴの評価の理由ですけれども、全国各地の池沼や水路、河川等に定着し、交雑による遺伝的攪乱等により、在来の亜種ニッポンバラタナゴを駆逐してきた経緯がある。現在ニッポンバラタナゴの生息地は極めて局所的に残存するのみである。観賞魚として人気種で多数の飼養者がおり、直ちに規制を行うと大量に遺棄が生じ、かえって被害が増大するおそれがある。形態的特徴のみでニッポンバラタナゴと識別するのは難しく、本種を選択的に防除することは非常に困難であるというふうに評価しております。
 それから次のページの注意事項でございますけれども、釣りや漁獲の対象となっているが、利用に当たってこれ以上の分布拡大が起こらないように細心の注意を払うことが望まれるという点。それから飼育場所から逸出した個体が野外に定着して、在来タナゴ類に影響を及ぼすおそれがあることに留意し、飼育に当たって野外への遺棄を起こすことがないよう、責任を持って飼育することが重要であるという点。それからニッポンバラタナゴについては、今後も細心の注意をもって生息地保全に努め、タイリクバラタナゴの侵入防止の監視も含めたモニタリングを継続していくことが重要であるという3点を注意事項として掲げてあります。
 続きましてニジマスでございます。評価の理由のところでは、海外ではほかのサケ科魚類を駆逐するなどの事例が報告されているということに触れております。それから国内ですけれども、長期にわたって盛んに放流されるとともに、現在、非常に広範に養殖、管理釣り場で利用され、遊漁等を目的として各地の多くの水域に導入されていると。今のところ北海道等の限られた地域でしか定着していないため、今後とも全国的な被害に発展する可能性は低いものと考えられるという評価をしております。
 めくっていただきまして5ページですけれども、注意事項のところは在来のサケ科魚類に影響を与える可能性が指摘されていることに留意し、養殖、管理釣り場、漁業権区域での利用に当たっては逸出しないよう適切な管理を行うことが重要であるということと。特に北海道では道内水面漁場管理委員会がニジマスの移植の可否について検討を継続しているため、利用に当たってこれ以上の分布拡大が起こらないように細心の注意を払うことが望まれるという点を掲げております。
 続きまして7ページ、ブラウントラウトでございます。評価の理由ですけれども、海外では、ほかのサケ科魚類を駆逐するなどの事例が報告されているということ。国内では養殖や管理釣り場で利用され、遊漁を目的として各地の水域に導入されており、特に北海道では多くの水域に定着していると。本州においては河川を含む5カ所の水域において漁業権が設定されているが、現在のところ被害は確認されていないとまとめています。それから北海道では捕食や競合・駆逐により在来生物相に多大な影響を及ぼしている可能性が指摘されており、これ以上の分布拡大を防ぐために内水面漁業調整規則により移植が禁止されているという点を加えております。
 それから注意事項ですけれども、捕食や競合・駆逐により在来魚類等に影響を与える可能性が指摘されていることに留意し、養殖や管理釣り場、漁業権区域での利用に当たっては、他水域への逸出を防ぐために、適切な管理を行うことが重要であると。特に北海道では内水面漁業で移植が禁止されているため、利用に当たってこれ以上の分布拡大が起こらないよう、細心の注意を払うことが望まれるということを指摘しています。
 次、カワマスでございますが、評価の理由のところは、海外では、これは先ほどと同じであります。国内での利用の状況でございますが、長野県、それから北海道の河川で交雑による遺伝的攪乱。それから競合・駆逐により在来のイワナ属魚類を駆逐しているとの報告があるが、被害の拡大は確認されていないということでまとめております。北海道の移植禁止についても触れております。
 それから11ページの注意事項ですけれども、これもブラウントラウトと同じように、影響の可能性が指摘されているということで、養殖や管理釣り場での利用に当たっては逸出を防ぐために適切な管理を行うことが重要であるという点と、それから北海道内では移植が禁止されているということについて触れております。
 続きまして12ページ、グッピーでございます。評価の理由ですけれども、沖縄島の河川や水路などでは競合によりメダカを駆逐している可能性が指摘されていると。それから観賞魚として人気種で全国的に多数の飼養者がある一方で、定着可能な水域は温泉地を除くと琉球列島等の亜熱帯域に限定されるというふうにまとめております。
 13ページの注意事項ですけれども、観賞魚として人気種、多数の飼養者、事業者が取り扱っているが、逸出した個体が野外に定着してメダカなどに影響を及ぼすおそれがあることに留意し、野外へ遺棄を起こすことがないよう適切な管理を行うことが重要であるということ。特に琉球列島や小笠原諸島等の亜熱帯域においては、細心の注意を払うことが望まれるという点を挙げております。
 以上が被害に係る一定の知見はあるけれども、今回は指定ではなくて引き続き指定の適否について検討する外来生物の5種類でございます。ソウギョ以下は被害に係る知見が不足しており、引き続き情報の集積に努めるものということであります。
 14ページ、ソウギョでございますが、こちらの評価の理由は、大量に放流された水域では、在来植物群落を壊滅させる事例も知られているという点と、釣りや水草除去のために放流されているが、繁殖が可能な水域は広大な下流域を有する利根川水系に限定されているというふうにまとめております。
 15ページの注意事項ですけれども、過剰に放流された水域では、在来植物群落を壊滅させる事例もある。事前に水域の特性、放流する量について事前に十分な検討を行うべきであるということ。それから絶滅のおそれのある水草類等が繁茂する場所では、安易な放流を行うべきではないということ。利根川水系等、広大な下流域を有する水域では定着するおそれがあるので、十分慎重に検討を行うべきであると。それから小型個体が観賞用で一部利用されているということでございまして、飼養に当たっては野外へ遺棄をしないよう、適切な管理を行うことが重要であるという点も指摘しております。
 アオウオでございますが、評価の理由。海外では在来生物相に影響を及ぼす可能性が指摘されているということですが、実態は不明であります。それから繁殖可能な水域は広大な下流域を有する利根川水系等に限定されているということでございます。
 注意事項ですけれども、一部で釣り対象魚として利用されていますけれども、これ以上の分布拡大を起こすことがないように、適切に管理をすることが望ましいという点と、広大な下流域を有する水域では定着をするおそれがあるので、十分に事前に検討を行う必要があるという点を指摘しています。
 続きまして18ページ、オオタナゴ、評価の理由でございますが、近年霞ヶ浦を含む利根川水系に定着・急増しておりますので、在来のタナゴ類を駆逐しているおそれが指摘されておりますけれども、被害の実態はなお不明であるということでございます。
 19ページの注意事項ですけれども、本種につきましては繁殖生態、食性等の基礎的な知見がほとんどないということで、在来タナゴ類に影響するかどうかという研究も行われていないというのが現状でございますので、これらの知見を蓄積していくべきだという点。それから本種の産卵母貝になる可能性があるイシガイ上科の二枚貝の移植を不用意に行わないようにしなくてはならない。特に唯一確認されておりますのはヒレイケチョウガイというものでございまして、これを他水域へ移植するときには、搬出の前にタナゴ類のいない場所で一定期間の蓄養を行うとか、あるいはタナゴ類の産卵期に移植は行わないというような方策を検討することが必要だという点を指摘しています。釣りや観賞用としての利用もふえつつあるということで、観賞目的での安易な飼養は控えることが望ましいというふうにまとめています。
 20ページのナイルパーチでございます。評価の理由ですけれども、熱帯・亜熱帯性の魚食性淡水魚でありまして、アフリカ各地に定着をして被害をもたらしているということでありますが、国内で可能性が想定されるのは琉球列島等のみです。ただ、今のところ琉球列島で定着し被害を及ぼしているかの判断をするだけの科学的知見はないというふうにまとめております。
 21ページですけれども、注意事項として観賞用として一部で利用されておりますけれども、野外へ遺棄を起こすことがないように適切な管理を行うことが重要であるという点を挙げていると。
 22ページ、タイリクスズキでございますが、評価の理由といたしまして、日本各地の沿岸域で定着し、在来のスズキ属魚類との競合、捕食等による在来生物相への影響が危惧されておりますが、被害の実態は十分に把握されていないということでまとめています。
 23ページの注意事項ですけれども、海域で生け簀を使って養殖されていますけれども、大量に逸出した場合は被害が発生する可能性が指摘されているということで、逸出が起こることがないように適切な管理を行うことが重要であるという点。それから学名の整理等の分類学的な再検討が急務であるとともに、競合・捕食等による影響について早急な知見の集積が望まれるという点を指摘しています。
 マーレーコッド、評価の理由ですが、オーストラリア産の比較的大型になる魚食性の淡水魚である。低水温に耐え、それから繁殖力が旺盛ということで、日本に侵入すれば定着して被害を及ぼすおそれがあると。IUCNのレッドリストに絶滅のおそれのある種として掲載されておりまして、大量に輸入される可能性は高くないだろうと。輸入の実態を含めて、被害を及ぼすおそれについて十分検討する必要があるというふうにまとめています。
 25ページの注意事項ですけれども、観賞魚としての流通がありますので、逸出防止についての留意事項。それからレッドリストに掲載されているということで、本来、輸入を慎むべきであるという指摘もございます。輸入販売等の関係者は、これらの点に十分に配慮することが必要であるという点を指摘しております。
 ゴールデンパーチでございます。これもマーレーコッドとほぼ同様の評価の理由としておりまして、注意事項も同じような記述をしてございます。
 それから28ページ、ナイルティラピアでございます。評価の理由、熱帯・亜熱帯性の雑食性淡水魚でありまして、沖縄で定着しております。在来魚類と競合している可能性が指摘されておりますけれども、被害の実態は十分に把握されていないというふうにまとめております。
 注意事項ですけれども、沖縄での被害の実態が十分に把握されていないということで、早急に科学的知見の集積が望まれるという点と、それから予防的観点から小笠原諸島等においては、これ以上の分布拡大を防ぐ必要がある。他水域への不用意な移植が起こらないようにすべきであるという点。それから一部で食用として利用されているということですが、飼養場所からの逸出で在来生物相に影響を与える可能性が指摘されておりますので、野外への逸出が起こらないように、適切に管理すべきであるという点を指摘しています。
 30ページのカワスズメでございます。これもナイルティラピアと同じ評価の理由としております。注意事項についても同様の注意事項を掲げております。
 32ページのカムルチーでございますが、評価の理由は、東アジア原産の魚食性淡水魚であって、全国各地の湖沼・河川に定着していると。ただ、最近では在来生物相を改変するような大きな被害は確認されていないというふうにまとめております。
 33ページ、注意事項でございますけれども、全国各地に定着し、特に霞ヶ浦等では昭和初期に一時的に急増したけれども、現在は安定期に入って、在来生物を改変するような大きな被害は確認されていないと。ただ、今後とも科学的知見の集積が望まれるという点。それから釣り魚用として利用されておりまして、飼養場所からの逸出、不用意な移植等がないように適切な管理を行うことが重要であるという点を指摘しております。
 35ページのタイワンドジョウでございます。これにつきましても同様でございますが、西日本の水域を中心にして定着しているということですけれども、被害の実態は不明であるというふうにまとめております。注意事項のところでも、今後とも科学的知見の集積が望まれるという点と不用意な移植をしないように、適切な管理を行うことが重要であるという点を指摘しております。
 37ページ、コウタイでございます。これにつきましても同様ですけれども、石垣島、大阪府の一部などで定着していますけれども、被害の実態は不明であるというふうにまとめております。注意事項のところも、今後とも科学的知見の集積が望まれる点。それから飼育場所からの逸出、不用意な移植がないように、適切な管理を行うことの2点を挙げております。
 それから39ページ、ヨーロッパナマズでございます。評価の理由ですが、ヨーロッパ諸国では在来生物に影響を及ぼすおそれがあると指摘されていますが、被害の実態は十分に把握されていないというふうにまとめております。注意事項のところも、先ほどと同様に科学的な知見の集積が望まれるという点と不用意な遺棄、逸出が起こらないように適切な管理を行うことが重要であるという2点を挙げております。
 それから41ページ、ウォーキングキャットフィッシュでございます、熱帯・亜熱帯性の雑食性の淡水魚で、海外では在来生物相に影響を及ぼす可能性が指摘されているということですが、在来生物相を改変させるような大きな被害は確認されていない。国内で定着の可能性が想定されるのは琉球列島等の亜熱帯域に限られるというふうにまとめております。
 42ページの注意事項ですが、科学的な知見の集積の点、それから飼育に当たって野外へ遺棄を起こすことがないように、適切な管理をすることが必要である。特に琉球列島では普及啓発を徹底する必要があるというふうにまとめております。
 43ページ、マダラロリカリアですが、評価の理由、海外で在来生物相に影響を及ぼす可能性は指摘されているものの、被害の実態は明示されていない。現在、沖縄島の河川に定着しておりますけれども、被害の実態は十分に把握されていないというふうにまとめています。
 44ページの注意事項ですけれども、科学的知見の集積の点、それから野外に遺棄しないように適切に管理をすべきである点、それから沖縄で定着している河川から他水域へ不用意な移植が起こらないよう対策を講じるべきであるという点について指摘しております。
 最後に前回会合で指摘がございましたカラドジョウでございます。これにつきましては、原産地中国、朝鮮半島等ということで、田んぼの生き物調査の結果によれば、少なくとも17県で生息が確認されているという実績があるようでございます。評価の理由ですけれども、国内の用水路などに広く定着し、在来のドジョウと競合する可能性が指摘されているものの、被害の実態は不明であるというふうにまとめさせていただいております。
 被害の実態・被害のおそれですが、水田近くの用水路などのドジョウとともに生息しているということで、在来のドジョウと競合する可能性が指摘されております。
 それから社会的要因のところで、食用を目的に輸入されたドジョウに混入していたものが遺棄されて定着した可能性が指摘されておるということでございます。
 その他関連情報では、近年カラドジョウやドジョウと異なるタイプのドジョウ属魚類が茨城県で採取されているということであります。
 注意事項でありますが、これにつきましても科学的な知見の集積の点、それから食用のドジョウに混入していたらしいということでございますので、食用の外来魚を生きたまま遺棄したり、野外に逸出する可能性の高い場所で蓄養することがないように、適切な管理を行うことが重要だという点と、これ以上の分布拡大を防ぐために、定着している用水路等からほかの水域へと不用意な移植が起こらないように対策を講じるべきであるという点を指摘しております。
 続きまして資料2-4でございます。特定外来生物をはじめとする外来生物の取扱いに関する普及啓発の考え方について(案)というものでございます。今回、要注意外来生物リストを作成して公表していくということで、要注意外来生物について普及啓発をどんどんしていこうということでございますが、まず特定外来生物につきましても要注意外来生物と同様に積極的に普及啓発を進めるべきであるということで、一応それらをまとめた考え方の紙を作成いたしました。
 まず、特定外来生物ですけれども、外来生物法に基づき適正に取り扱う必要があるため、輸入販売等を行うさまざまな関係者に対して統一の趣旨を徹底する。あるいは申請手続等の具体的な規制の内容について理解を得る必要があります。特に愛玩目的の飼養者に対する効果的な普及啓発が重要であるということで、業界団体、それから地方公共団体の協力を得ながら、ペット販売店、飼育専門誌を通じた情報提供、普及啓発に努めるなど、積極的に普及啓発を進めていきたいと考えております。
 それから要注意外来生物ですが、要注意外来生物については引き続き科学的知見の集積、それから利用に関する実態把握を進めつつ、適正な利用に向けた関係者への普及啓発を行う必要があります。
 なお、生物ごとに知見の充実度あるいは利用実態の把握状況等が異なっておりますので、すべての要注意外来生物について被害の実態、利用に係る情報、注意すべき事項を含む種別の情報票を、今、資料2-3でご紹介いたしましたものですが、これを作成し、ホームページ等を通じて広く周知することとしたいということであります。
 それから3番ですけれども、生物群や利用形態に共通して配慮すべき事項ということで、専門家会合における検討の結果を踏まえまして、生物の種に着目するだけではなくて、特定の生物群や利用の形態に共通して一定の配慮が必要な事項については、インターネットのホームページや、それから関係事業者団体等を通じた配慮の要請を積極的に行っていきたい。多様な関係者が、それぞれ具体的に何をなすべきかについての普及啓発を推進していきたいということでございます。
 別紙の例を参照とあります。めくっていただきまして別紙がございます。生物群や利用形態に共通して配慮すべき事項の例として、ペットとして外来生物を飼育するすべての方にとか、それから観賞魚を飼育する方に、等々の項目で今、案を作成しております。外来生物を飼育する際のさまざまな留意点、生物ごとに留意すべき点、あるいは利用形態ごとに留意すべき点等をまとめて、これにつきましても特定外来生物あるいは要注意外来生物リストとともに普及啓発を努めてまいりたいと考えておりまして、これにつきましてもご意見を賜れば幸いというふうに考えております。

【水産庁 丹羽室長】 水産庁でございます。この後、資料2-5に基づきまして、前回、これも委員の先生方からブラウントラウトの利用実態について、もうちょっと調べるようにということで作成した資料でございます。前回会議から1カ月強というようなことでございまして、まだ調査中というところもございますが、調べた範囲をご報告したいと思います。
 生産量等ということで、生産量につきましては、これ米印ついておりますが、養鱒業者からの聞き取り等から推定したということでございまして、あくまで推定値でございますが100トン程度だろうということでございます。それから経営体数、これはまだ調査中でございます。それから活魚としてといいますか、要は釣り魚として出荷されているということでございまして、通常でいう食用で冷蔵して出荷するとか、そういうようなことはほとんどないという理解をしております。それから放流量、これは2番に書いてあります漁業権免許状況というところでございますが、この場所で放流されているもの、平成16年度約11万尾ということでございます。それから漁業権数は、これも今言いました2番であります栃木、神奈川、山梨、大阪府、この中で栃木県が2カ所、中禅寺湖と鬼怒川でやっておりまして、その件数で4府県5件という形でございます。それから管理釣り場等ということで、これも私どもの団体等ございませんので、ガイドブックとかウェブサイト、そういうところから情報を検索いたしまして、全体で266カ所の調べがついたわけですが、その中でブラウントラウトを扱っているというところは122カ所あったということでございます。
 それから2番は、先ほど言いましたような漁業権設定の状況ということでございますが、付加的につけておりますのは年間遊漁者数ということで、これはブラウントラウトだけの遊漁ということではなく、ほかの魚も含めての数でございますが、中禅寺湖のところで1万7,000人。それから鬼怒川9,000人、芦ノ湖、4万4,000人、それから桂川、1万2,000、芥川、1万1,000という数字が報告されております。
 それから3番目、最後でございますが、これは実際に利用されている生産者、それから漁業権漁業の漁業者、それから管理釣堀業者等から直接意見を聞いたところをまとめたものでございますが、内容的にはほぼ同じでございまして、いずれもブラウントラウトが非常に遊漁者から人気がある魚種であるということで、ニジマスとともになくてはならない魚であると。当然そういう利用実態があるので、生産者もその需要に応じて生産をしているというようなことでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。

【多紀座長】 どうもありがとうございました。
まず、資料2-2の一覧表をもとに全体を眺めますと、事務局でいろいろと検討した結果、2つのグループに分けております。上の5種は被害に係る一定の知見もあるので、要注意魚種として引き続き指定すべきかどうかを検討していくべきものです。下にある方は、知見等が十分ではないので、引き続き今後も資料を収集していこうというものでございます。ここには、先ほどの特定外来種候補からは外れましたマーレーコッドとゴールデンパーチ、それに前回ご指摘がありましたカラドジョウも入っています。そこには温帯性で被害拡大のおそれがあるもの、温帯性であるが、かなり昔に導入されて既に安定期に入っているもの、熱帯性であって地域的に帰化するおそれのあるもの、さらに海産魚の類、将来的には養殖等の目的で入ってくるようなものが含まれております。
 以上の中でまずマーレーコッドとゴールデンパーチはよろしいと。カラドジョウも、要注意に入れておいて資料を収集するということでよろしいと思います。そこで2-2の表の上の5種について意見を出していただいて、それをまとめて検討していきましょう。
 まずブラウントラウトについて。前回病気でご欠席の村田委員の他の3委員は特定外来種に指定すべきではないかというご意見でして、あと利用の実態等を水産庁にお調べ願うということで、きょう保全室長の方からご報告があったわけです。まず、これについて最初に議論をしたいと思います。
 ブラウントラウトの論議をするときに、実験で言えばコントロール――対照群のような存在がニジマスですよね。ニジマスとあわせて考えてみたときにどうだというような視点でも結構です。まずは細谷委員、いかがですか。

【細谷委員】 前回、私から申し上げたことは議事録に書いてありますので、なるべく重複しないようにお話ししたいと思います。ただし、資料の中で、もう一度整理の意味合いで、事務局がご用意いただいた2-3の7ページと8ページをすり合わせながら、もう一度私の主張を整理したいと思います。
 ブラウントラウトそのものが評価の理由の中で、これは資料2-3の7ページになりますけれども、海外の事例で、サケ科を駆逐するなど事例が既に報告されているということと、国内においては北海道にも多くの被害がなされているということ。それから被害の実態のおそれというところになりますと、激減や在来生物の急変が北アメリカやニュージーランドで既に報告されているという、このことがあります。それから繰り返しになりますけれども、被害をもたらす要因。事務局サイドは生物学的な要因として幾つか挙げられていますが、そのうちの上から2つ目、それから下から2つ目ですね。これは北海道の事例の被害状況でございますし、それから座長がご指摘になりましたニジマスとの比較においても、競争力があることが実証されているということでございますので、例えば8ページ、繰り返しになりますけれども、そのほかの関連情報でIUCNの「世界の侵略的外来種ワースト100」の中にも述べられていますし、それから生態学会の「侵略外来種ワースト100」に入っていると。現状を考えた場合に、きょうの全体のカテゴリー、これは特定外来種も含めてすべてリセットかけ直して、私の視点は、切り口は被害実態があるかないか。これ国内外も含めてですね。そうしますと、もう明らかに国内外を問わず被害実態がある状況の中で、これを指定しないと視点自体が崩れてくる。そういうふうに考えております。もちろん漁業の遊漁として人気があるということは理解いたしますけれども、その辺は前回も申し上げましたけれども、生物多様性条約の締約国であるということと、それから生物多様性条約国家戦略の中の水産庁の役割を考えたときに、どのように説明されるのか。この辺を考えた場合、やはり要注意から格上げして、前回の指摘になりますけど、特定外来種にすることが理にかなうのではないかと、そういう整理の仕方でございます。

【多紀座長】 ありがとうございます。一部前回と重複するかもしれませんが、ほかの委員からぜひ。

【北田委員】 特にブラウントラウトだけということではないのですが、今、全体リセットかけたらというご指摘もあったんですけど、前回にも申し上げたように、この整理自体、区分自体がよく理解できないんです。といいますのは、今、被害の知見があるなしで、これを分けておられるわけですね。こういう整理ももちろんあるんでしょうが、例えばこの下の方に書いてある知見が不足の6種類、ナイルパーチ、マーレーコッド、ゴールデンパーチ、ヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュ、マダラロリカリアの6種類は被害の知見は不足しているんですけれども、これ国内外の知見だと理解しています。知見は不足しているんだけども、日本には主に観賞魚等で入っている。これらの種類と、今回特定外来生物に指定されようとしているカダヤシ以外の種類の違いがよくわからないんです。予防原則で、さっきの9種のうち8種については入れられていると思うんですけども、こういう原則に立ちますと、この下の方に入っている今申し上げた6種も、どうして特定外来生物に入らないのかなと思うわけです。
 それから、今の6種類以外の上の段の5種類は、これすべて定着実績ありなんですよね。下の段の、ナイルティラピアとカワスズメ以外は定着実績ありなんですよ、さっきの6種除くと。だからもう日本にも定着しているわけですね。部分的にあるなしというお話もあるんですけれども、基本の思想がどうかですよね。この法律は外来種が入ってきて、日本の生態系に被害が起こると困るから、予防原則を含めてストップしていきましょうということで大変結構だと思うんですけれども、生態系被害のない外来種はないと思うんですね。被害がわからないから、それを調べてわかるまで待つんだというのは、違うように思うんですね。すでに、この特定外来種9種はそういう予防原則で入ってくるわけですから。これが指定されるんだったら、他の種類もではないかという気がします。産業と絡む実態もありますので、すぐにはできないということは理解していますが、この分け方そのものが理解できない整理のされ方になっていて、私は定着の実績ありなしでやっていただくべきではないかと思うんですね。その上で、どのぐらい危ないかで特定に挙げるかどうかを判断するのが良いと思うんですね。あとは、今のブラウントラウトのように漁業権があったり、社会的なベネフィットも結構あって、どちらをとるかという話ですよね。このブラウントラウトの利用実態を見て、これが生態系の保全と比べて、ベネフィットをとるべきなんだということになれば、これは指定されないわけだけれども、この程度の限定されたベネフィットだったらダメですよねという話になれば指定されることになるのではないですか。
 ブラウントラウトについては、今情報が提供されたわけですけれども、5つの漁協ですぐに漁業権を無くすことはすぐには無理ですよね。だけども、やはり外来種の法律ができて、多様性国家戦略というものがあるんだから。今回の法律では特定外来種を対象にしていますが、本来外来種全体は今後入れていかないというのが基本にあるとは思うんですよ。そういう方針に立つと、順次これをどんどん指定していくということだと思うんですね。
 だから、より実態の、定着実績のあるものから順番に上に上げていくというのが基本だと思います。でも、既に定着実績がない種類が今回候補になっていますから、その原則がわからないと申し上げているのです。

【多紀座長】 ここで一委員としての私の理解を申し上げます。まず、もちろん実績主義です。定着の実績があるものを指定する。それから、定着の可能性が非常に大きいというのも私はありだと考えます。まだ移入していなくてもですね。そこが我々の専門性であり、そのあたりを判断するのがこの小委員会だろうと僕は思っております。
 もう一つのはかりである被害の大きさというのはなかなか難しいですよね。食害だけではなくて生態的圧迫、競合、遺伝的攪乱、判定が難しいところでね。予防原則も慎重な検討を必要としますが、私自身は予防原則もありと考えます。例えば温帯性で魚食性の魚種で釣魚あるいは観賞魚で入ってくる可能性が高いものは、波打ち際でブロックしなければならないと思うんです。
 ですから今の北田委員の意見のように、このリストではそのあたりのクライテリアがすっきりしていないことは確かです。数値で表せないものが多くて困っているんですけども。

【北田委員】 きょうの資料の下の段を急に指定することにはならないわけですけれども、今日指定しようとしている観賞魚と、さきに申し上げたような種類とどう違うんですかと外部から意見があるのではないですか。

【多紀座長】 これも事務局に伺いたいんですけど、例えばソウギョとかアオウオとかはもう外してもいいんじゃないかと、私は個人的に思っています、そのようなことを今日決めるのか。これからどのような段取りで検討を進めていくのか、その辺はいかがでしょうか。

【環境省 中島室長】 まず特定外来生物の指定種の案と、要注意外来生物の種類に差が余りないのではないかというご指摘なんですけれども、我々事務局の考え方といたしましては、資料1-1に選定の作業手順というものをきょうの資料としてつけておりますけれども、この2ページ目の一番上に、先ほど北田委員からは特定とついているけれども、基本的にはすべての外来生物をというお話がございましたが、一応法律の趣旨は、外来生物すべてということではなくて、その中で在来生物の種の存続または我が国の生態系に関し重大な被害を及ぼし、または及ぼすおそれがあるものを、ここまでちょっとかみ砕いてしまっていますけれども、特定外来生物の指定の要件と現在まで考えてきたところでありまして。1から4までの状況がもたらされるかどうかを検討して、その状況が既に発生していると、あるいはそのおそれが非常に高いものを特定外来生物の候補種とするという考えでございます。ですから定着しているかいないかというところは、とりあえずこの検討の中では、指定するかしないかの直接的な判断理由にはならないということであります。
 我々としては、重大な被害なのかどうかというところで、温帯性かつ魚食性の、しかも大型のというくくりで、それに該当するものは、この重大な被害を及ぼすその在来生物の種の絶滅をもたらす、あるいはそのおそれがあると、もしくは地域的な個体群の絶滅等に結びつく可能性を魚の性質として持っているのではないかというふうに考えて、それらを未定着のものも含めて、特定外来生物の候補種の案として挙げているということでございます。
 今回、要注意外来生物リストの下の方に入っております幾つかの種につきましては、一つは魚食性ということではなくて、定着はしているものの競合・駆逐という被害の性質上、余りはっきりとした被害がこれまで出ていないといったものが多くて、重大な被害というふうに言い切るにはちょっと知見が足りないのではないかと我々としては考えた次第であります。

【多紀座長】 ありがとうございました。横から入りましてごめんなさい。それからもう一つ、熱帯性の魚種で地域的に定着の可能性があるものがありますね。例えば沖縄のマダラロリカリアとか。このような魚をどう取り扱うのかと。地方自治体の条例などで対処できるのか、その辺を検討していただきたいと思います。
 ここでは再生産をしているのかどうかというのをどのように綿密に判定するかという問題もありますけれども。地域性の問題について、事務局いかがでしょうかね。例えば沖縄県のみで定着が考えられるもの等の処置については。

【環境省 中島室長】 先ほどの資料1-1の作業手順に戻りますと、指定をするかしないかの判定基準のところで、重大な被害を及ぼし、または及ぼすおそれの中で、在来生物の地域的な個体群の絶滅というものも掲げているところでありまして、日本の中で全国的な被害でなくても、ある地域でこういった被害をもたらすおそれがあるものは、この重大な被害に該当する可能性があるという考えであります。
 ただ、一方で、例えば熱帯魚が沖縄地域のみにしか定着しないとわかっていて、かつ本土においてたくさんの個体が飼養されているといったときに、野外に逸出しないように防がなければはいけない、実質的な規制の効果は沖縄にしかかからない。本土でたくさんの飼養者が飼っているところでは、規制がかかっても、その規制については実はそれほど実態的な意味を持たないといったようなことがございまして、このあたりは非常に厳しい規制がかかるものですから、規制によって遺棄のおそれがあるといったようなことも含めまして、少し慎重に考えなくてはいけない問題かなというふうには考えてはおります。

【櫻井委員】 今の論法はおかしいんだと思います。何がおかしいかと言うと、日本の気候帯というのは少なくとも冷温帯から温帯と亜熱帯みたいな、それぞれファウナが違うわけですね、ファウナ・アンド・フローラが。どれが大事だとか、どれが軽んじられるとか、そういう話じゃなくて、逆に言えば今日本国じゅうをカバーするような外来生物は基本的にいないんじゃないですか。ブラックバスだって北海道の方では非常に定着しにくいはずですし。ですから日本全国をカバーするかしないかとか、地域に対して被害があるとか何とかというような基準では物が進まないんだと思うんですが。

【環境省 中島室長】 すみません、私ちょっと誤解されたかもしれませんけれども。先ほど資料1-1のところで、地域的な個体群の絶滅というものも、今回の特定外来生物の指定に関して重大な被害を及ぼすかどうかの基準になっているということですので、地域的にしか被害を及ぼしていないものについても該当する可能性があるというふうに申し上げたんですけれども。

【櫻井委員】 該当する可能性があるという言い方されましたけれども、それだと全国的なものだって同じですよね。何で地方の、例えばうんと狭いところ。例えば小笠原の陸上生物で固有種って非常に多いですよね。例えば昆虫なんかもう非常に高い固有種です。あの島1つだけで変なものが入って被害を受けちゃった場合は、それは島1個ですから余り被害とは考えないということに通じませんか、今の論法ですと。

【環境省 中島室長】 すみません。私が申し上げたいのは、被害のところではなくて、指定をすることによってさまざまな規制がこの法律によってかかりますが、その規制について社会的な部分、我々としますと法令事項の部分ですけれども、そこのところで理解がきちっと得られるかどうかとか、規制によってかえって悪影響が出るんじゃないかというようなことを考える必要があるということであります。

【環境省 長田専門官】 少し個別の種について補足をさせていただきたいと思うんですけれども。今の櫻井委員のご指摘も、被害をどういうふうに判断するのかというご質問だと思うんですが、先ほどの北田委員のご発言にもありましたように、被害に係る一定の知見があるのか、被害に係る知見が不足しているのかというのを事務局として判断したものを今回要注意リストの資料の案として掲げてあります。北田委員から具体的な種の名前が挙がりましたので沖縄を例にとりますと、事務局としては、グッピーは被害に係る一定の知見はあると考えていて、ナイルパーチ、ヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュ、マダラロリカリアについては、被害に係る知見が不足しているんではないかというふうに考えております。具体的に言いますとグッピーにつきましては、今沖縄に広く定着しておりまして。沖縄の場合、例えばメダカが在来の地域個体群として絶滅のおそれのある個体群になっていますが、実際に競合・駆逐をしてグッピーがかなりの範囲に分布をしているということがございますので、グッピーについては沖縄で被害に係る一定の知見があると判断をしております。例えばナイルパーチ、ヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュ、マダラロリカリアについて、当然被害の一定の知見が今後出てくる可能性はあると考えておりますが、現段階で沖縄の淡水魚の生態系を考えると、非常に貧弱な淡水魚相であって、これらの種が沖縄に定着し始めていることによってどういう影響が生じているのかというのが十分にわからないと判断しておりまして。琉球大学の立原先生等にも事務局としてはお話をお伺いをしているんですが。今のところはグッピー、タダヤシ以外については、沖縄においてこの外来淡水魚が入ったことによる被害の実態というのが十分にわかっていないんだと。例えば、ほかにも沖縄に入っているものでカワスズメ等ございますけれども、カワスズメが入ってくれば在来のフナなどは影響が受けるかもしれないというような話もございますけれども、そこの実態についてもよくわからないし、沖縄のフナが影響を受けるということが生態系の被害として重大かどうかということも、事務局として判断をしていかなければならないと思っております。ほかのヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュ等についても定着を始めていることは問題だと思いますし、熱帯魚自体が沖縄に入って野外に遺棄されたものが定着していること自体は問題だと思うんですが、これらの種がその生物相として、特に沖縄に大きな被害をもたらす性質を持っているのかどうかというのは、事務局としては今の段階では情報が不足していると判断していまして、その普及啓発の資料等の中では熱帯魚全般に係る配慮事項として、特に沖縄等で定着しやすい場所では十分な配慮が必要だということは、あわせて整理をしておりますけれども、被害に係る知見としては今申し上げたような判断をしております。

【櫻井委員】 あと、先ほど自然ふれあい推進室長さんがおっしゃられましたけれども、沖縄だけで問題になって、本土では実質的には問題になっていないようなものだと、野外に遺棄されるおそれがあるということでなかなか指定が難しい、ちょっと躊躇する部分があるということは、ほかにもそういうような事例があった場合、要はこの法律では対処できないということなんでしょうか。

【環境省 中島室長】 今度は指定をしないということではなくて、指定をすることによって、さまざまなことが問題として発生する可能性があるので、それについてあらかじめよく慎重に検討をするなり、課題を解決していかないといけないのではないかということであります。慎重に考えていかなくてはいけないと思っているということです。

【櫻井委員】 慎重に考えなくちゃいけないとは思いますけれども、最終的には指定するか指定しないかに分かれるわけですよね。特に問題になるのは、要は産業との兼ね合いが、ブラックバスのときもかなり問題になったと思うんですけれども。例えばある地域では定着していないから当然飼っていてもいいけれども、ある地域は被害が大きいからやめましょうというような生物はいっぱいいますので。それをカバーするのは、この法律の構造的には無理ですよね。違うんでしょうか。

【環境省 中島室長】 法律としては、どの場所で被害が出たにしても、日本の国土のどこかで被害を出していれば特定外来生物と指定する可能性は当然あるということでして、ただ、先ほど私が申し上げたのは、指定をすることによってさまざまな課題といいますか問題が出てくるものについては、あらかじめそれについて慎重に考えて手を打っていかなければいけないということであります。必ずしも指定しないということではないので、そこは理解をしていただきたいと思うんですけれども。

【多紀座長】 一番最初の親会議でも質問したんですけど、地域個体群的な考えはあるのかと聞いたら、やっぱりないと言うんですね。私自身個人的には、こんな極論を言ったらかえって揚げ足とられますけれども、アメリカでフロリダとアラスカを同一に論じていいのかと。日本は小さな国ですが、やはり地域性というものはあるんじゃないかと。沖縄なら沖縄、北海道なら北海道で、効力のある方策がとられるという前提において、全国で網かけなくてもいいものがあるのではないかと。この法律はそうでないということになると、私も困ってしまうのですが。細谷委員あたり、その辺いかがですか。

【細谷委員】 私も基本的には櫻井委員と全く同じ意見でして、例えばブラウントラウトの話になりますけれども、ブラウントラウトが現状では北海道でとどまっているから様子を見てみましょうというのは、おかしな話ですね。基本的にはニジマスよりも冷水性が大きいわけですから北海道しか住めないわけですよね。そうしますとブラキストン線を越えているわけですから、旧北区のシベリア亜区の生物地理学的な特性が一気に失われていくということですので、これは国家財産としての喪失ということになりますのでね。そのレベルにおいては、おのずと国家の目標と生物地理学的なサブディビジョンがほぼ一致するということですので、その辺は無理がないんじゃないかなと思うんですけれどね。ただ、一つ一つの地域性をとらえてくるとなると、おのずとドメスティックな問題に踏み込まざるを得ないんじゃないかなと。国内の水平移動の問題であるとかというところの、生物学的な問題とは違う対外国という視点、この法律の趣旨に合うか合わないかはちょっと判断が難しいかなと思います。
 先ほどのルールアウトする、そのリセットをかけたときに、これは私の一つの今までの物の考え方で、先生方がおっしゃるようにいろいろな視点であいまいさは残るんですが、これは私の一つの視点で、もちろん生物学的に定着するかしないかの視点がございますが、社会的な情勢を考えたときに、さっき特定外来種に指定されたものの背景は、社会的な背景の最大の要因は遊漁にあると私は考えています。遊漁による外国産種の投入を非常に大きな要因と社会的背景として考えております。ですから今日挙がってきたもの、カダヤシ以外はすべて外国の遊漁対象種で、現状ではペットとして輸入されていますけれども、我が国の釣り人はそれを導入することを標榜してはばからないという現状がございますし、これはもう古くから、これを入れたいという人が何人も出てきていますから。そういう点でおのずと魚食性にならざるを得ない。遊漁対象種ですから、おとなしい草食魚を導入するとはとても思えませんから。ですから結果的には、いろいろな外来種の影響ございますけれども、魚食魚という視点が挙げられるんじゃないかなと。結果としてこういうふうになったのじゃないかと、自分では整理はついているつもりです。

【北田委員】 そういうご説明があればわかるわけです。私は何も全部この法律で禁止するとはもちろん考えていません。特定という意味も理解しているつもりなんですけどね。この表が知見のありなしになっていて、定着云々ではないというお話だったですが、お話を伺っていますとリスクで評価しているということですね。下に比べて上の方がリスクが大きいと判断されているわけですね。要注意種については、そういう理解でよろしいですか。

【環境省 中島室長】 はい。

【北田委員】 そうすると、今のこの第二次の特定外来生物に選定されようとする案の方は、これは今、細谷委員も言われたようにリスクが高いということなんですよね。だから今回はこっちが挙がっていると。要注意の方は上の方に書いてある種類がリスクが高いということなんですね。リスクの大きさで整理していただいたらわかりやすいですね。

【環境省 中島室長】 リスクの意味が我々考えているものと違うかもしれませんけれども、我々、生態系等に対して重大な被害を及ぼしているのか、あるいはそのおそれがあるのかということで、今被害を及ぼしていなくてもそのおそれがある、つまりリスクがあるものを含めて考えているということであります。要注意外来生物リストの上の方にあるものについては、そのおそれが、あるいはその実態があると我々としては考えている。その下の方のものについては、重大な被害を及ぼしているというところまではいかない、あるいは及ぼすおそれがあるというところも、はっきりはまだ科学的知見として言えないのではないかということで、下の方に入れているという趣旨でございます。

【北田委員】 被害の知見があるなしということではなくて、知見がなくても今回の第二次特定外来生物の選定はリスクが大きいから、こちらに挙げているわけですよね。

【環境省 中島室長】 海外における知見というものは、それぞれ今回特定外来生物に選定しようとする種類についてあるというふうに考えております。国内での定着あるいは被害についての知見というものはなくても、海外における知見はあるというふうに我々としては整理しているところです。

【北田委員】 ご苦労されているのはわかるんですけれども、最初に申し上げたように、この資料1-4にしても、何が評価の理由なのかがわからないわけですよ。だから、この委員会として何を根拠にこれを決めたのかということが問われますね。ですから、そこがはっきり出るような整理をしていただければありがたいと思うんですよね。

【多紀座長】 実績があるなしと知見があるなしとでは、違うわけですよね。日本で実績がなくても、被害のおそれの大きいことが科学的に予測され、しかもその被害はマグニチュードの大きいものであるという判断によって特定外来種にしたと考えてよろしいわけですよね。要注意の方も同様のクライテリアに従って整理をしていけばいいわけでしょう。

【北田委員】 私は細かい魚種別の情報を知っているわけじゃないわけです。これをどうしますよという議論をしろと言われても、どの程度危ないのかというのが資料にないとわからないわけです。議論のしようがないので、そういう整理をぜひしていただきたいなということを申し上げているのです。

【環境省 中島室長】 資料1-4の特定外来生物の一覧表の評価の理由のところが、もう少し個表にまとめた部分の被害に係る知見等、それからそのおそれ等についてわかりやすく表現をするという趣旨だと思いますので、そのように少し工夫をしたいと思います。

【多紀座長】 この資料1-4の表現はこれから手直しするということで、第一段階の特定外来生物の指定はご承認願えたということです。問題は要注意の生物リストですよね。委員によって個々の種についてはいろいろと意見があるだろうと思います。この魚類グループの委員会は、きょうこれが最後ですので、今日いただいたいろいろな意見を踏まえて、事務局で再検討して、もう一遍リストをつくって、私がそれを見ます。そして、それを委員の先生方にメールなり何らかの方法でごらん願って、その上で決定するということは可能でしょうか。

【環境省 中島室長】 最終の全体専門家会合が8月5日に予定されておりますので、それまでにそれぞれの会合の資料の修正を図ることはできると思います。

【多紀座長】 問題点はいろいろあって、今の地域性の問題もその一つですね。これはかなり理論的に整理しなければならないものだと思います。
 それからもう一つは、さらに特定種とすべきではないかというもの。ここで前回からその意見が多かったブラウントラウトについて検討したいと思います。その他のオオタナゴ、ナイルパーチ、タイリクスズキ、ヨーロッパナマズ、ウォーキングキャットフィッシュ等については、まだ十分な情報がないので引き続きこのまま要注意に入れておくことになりますが、ブラウントラウトだけはこの席で論議しておく必要があるだろうと思います。まず水産庁からお願いします。

【水産庁 丹羽室長】 どうも水産庁でございます。先ほど細谷委員から国家戦略というような話も伺いました。私ども水産庁ということで、ご承知のとおりに水産動植物の保護というような担当をしていますが、やはり漁業関係というところになりますので、新生物多様性国家戦略において、水産動植物の保護のための移入種対策という項目があるんですけれども、そこのところの書きぶりは、近年急速に生息域を拡大し、食性、再生産力等の特性から在来生態系や水産資源に大きな影響を与える外来種を対象として、生息域の拡大の防止及び生息数の減少を図ることを基本に諸施策を推進すると、こういうような書きぶりになっております。そういった観点から近年急速にというような話で、それはブラックバス、ブルーギル等が念頭にあるということでございます。このブラウントラウトにつきましては、これはもう委員の方々ご承知のとおり、明治時代に入ってきたということになっており、また、きょうご議論がありましたように、いろいろな被害事例が海外でもある。それから北海道でも漁業被害があるというのは認識しております。北海道について言えば、資料でも触れられておりますように、北海道の漁業調整規則の方で移植の禁止という形で対応し、また駆除もやられるというような話になっておりまして、その対策をとっているというのが実態なわけでございます。それから、本州における水産業の被害等は報告されていないというのが私どもの認識でございますので、そういった意味からいけば、このブラウントラウトは水産庁の判断としては利用していくという範疇に入ろうかと思います。
 ただ、先ほどありましたように、被害等があるところもございますし、今回のリスト自体、つまり今日の二次指定で指定をするかどうかというところは、前回の会議から1カ月強しか経っていない話でございますし、漁業者等も全くこの件について(環境省から)話等を聞いている話でもございませんし、なかなか今日のところで結論を得るというのは難しいんだろうというふうに思っております。その点につきましては環境省の方にも伝えているところでございます。
 したがいまして、ここの要注意で引き続き適否については検討するというところで、私どもの方も了解しているというような状況になっています。前回の委員会で、全員が指定すべきというようなことを、座長はおっしゃられましたけれども、私の理解は今回で二次指定は無理だなというようなご意見もあったと記憶しておりますし、先ほど北田委員も今回はというようなお話をされたと理解しておりますので、二次指定のところはやはり時間的に困難ではないかというふうに思っております。
 以上です。

【多紀座長】 はい、ありがとうございます。では細谷委員。

【細谷委員】 恐らくは今水産庁さんから指摘されたように、国家戦略の中で在来生物、生態系を重視し持続的な漁業を図ると。特に外来種に対して慎重な態度をとって水産庁が漁業を進めるという点では、全くそのとおりでございます。
 翻って参考資料の2を見ていただけますでしょうか。論議の効率化を図るために私ども最初に言質をとったわけですが、議事概要の第二次以降の特定外来生物の選定の作業手順について、これは一次選考の反省を踏まえて私、言質をとったわけです。○の2つ目でございますけれども、資料3の選定の考慮事項に対して、第一次の反省を込めて、生態系に係る被害の防止を第一義にするというコンセンサスがあったかと思います。さらに社会的なもの、経済的なものをとって、それに従となるという視点で論議を進めてきたと思うんです。きょうは確かに水産庁さんから新たな資料を出されてきましたけれども。それと生態系のバランス等を考えた場合、北海道が主たる分布域であるにもかかわらず、現状が具体的に水産庁の展開の中で100%遊漁が対象で、今までに駆除に成功した事例が北海道でないということ。それからブラウントラウトに対して防除あるいは管理技術が社会的にも確立していないということをかんがみれば、これは論議の余地がないのかなというふうに考えております。

【多紀座長】 はい、ありがとうございました。北田委員は今の話どうでしょう。

【北田委員】 私、前の会議のときに、これは漁業権も設定されているので、急に特定外来種に挙げるのは難しいんじゃないか、情報もないしどちらがいいかという議論もできないので、もう少し情報を集めて議論したらどうですかという話はしたんですね。きょうは二次の外来生物指定のこの案は、これで私は結構かと思いましたが、この要注意外来種リストの中から今回二次に入れるかどうかの議論になるとは思っていなかったわけです。事前にそういう説明もなかったし。今日は、ここからブラウントラウトを今回二次に入れるかどうかが議題になっているわけですか。ブラウントラウトを挙げなくて良いとは申し上げていないんですけれども、きょうは議論しないと理解していたんです。

【多紀座長】 そうでうすか。私は前回に引き継いで議論するものと思っていました。

【北田委員】 私は、今日はブラウントラウトについては、二次の方に挙げるかどうかという議論はしないと思っていました。

【多紀座長】 いや、この資料2-2の魚種の中で前回一番議論があったのがブラウントラウトであって、(特定すべきという)かなりはっきりした意見がありましたよね。ということで、それを受けて今日それを論議しようと。特にブラウントラウトだけというのではなくて、要注意生物について特定種に指定すべきかどうか、即断はできなくても検討はすべきであろうと。

【北田委員】 私が誤解していたようです。途中で全体の話になりましたので。きょうはブラウントラウトについて、今回の二次に入れるかどうかが議題になっているということですか。

【多紀座長】 いや、もう時間がありませんので、次に積み残すということになるんだろうと思うんですけれども、事務局どうですか。

【環境省 長田専門官】 ちょっと誤解があるといけないので、きょうの会議の資料で何を先生方に問うているかということをもう一度ご説明させていただきたいんですけれども。
 今回、前回の検討を受けて、事務局として再検討すべき部分について再検討した結果として、二次選定の全体像と要注意外来生物リストの案をお出ししてご意見をお伺いしているということでして、その中で前回ご指摘があったものとして、例えばマーレーコッド、ゴールデンパーチについては、特定にするほど知見がなくて輸入もほとんどないのではないかとか、カラドジョウについては情報を集めて事務局として整理をしてほしいとかいうご意見をいただいていて、ブラウントラウトについては利用の実態も含めて、指定の方向性も含めて、再度事務局で整理をしてほしいと言われたと認識しておりまして、それらの整理を、ほかの種もご指摘ありましたけれども、全体について整理をした結果として改めてお出しした資料が、例えば資料2-2ということになっております。資料2-2にある種のうち、前回ご指摘をいただいたものについて、こちらで作業も含めてやった結果について、改めてご意見をお伺いしているということです。

【北田委員】 そういうことだと理解して、全体の議論を進めるのに、何がこの整理のポイントになっているのかわからないという話をしたわけです。そして、判断基準はどうもリスクになっているということがわかってきたわけです。リスクだったらブラウントラウトが一番上の方にあるべきですよね。現在でも大分上にありますけど、こういう現状なんですかね。

【環境省 長田専門官】 並びは分類です。

【北田委員】 この並び方を分類で並べてもしょうがないと思うんですよ。リスクでいかないと。今回はこれ一番上にあるから、ブラウントラウトについてきょうそういう議論をしましょうということであれば、それはもちろん皆さんおっしゃると思うんですけど。全体が議題になったので、私はそういうふうに理解して意見を申し上げたんですけど。
 ブラウントラウトの漁業権は今5漁協ありますけれども、この漁業権の免許の期限はいつごろまであるんでしょうか。

【水産庁 生態系保全室長】 平成25年ということで、この前に免許切りかえがあったということでございます。

【多紀座長】 いや、もし私の不手際があったら謝りますが、前回の議事録にもあるように、ブラウントラウトは重点的に論議をすべきであり、水産庁さんにも資料の提出をお願いし今回この資料が出てきたので、それについて今伺ったわけです。リストの本質的な内容は委員会での検討を経なければ変えられず、今日はその時間がありません。資料2-2はこのままということになると思いますが、事務局どうでしょうか。

【環境省 中島室長】 表現ぶりですとか、そういったところであれば、これから先の全体会合までに修正することは可能と思いますけれども、どこに入れるべきかというような基本的な部分については、できればきょう決めていただきたい。

【多紀座長】 先ほどの資料のように、書き方の変更等はできるが指定のことについては変えられないということですね。
 すみません、時間もありませんので、細谷委員、お願いします。

【細谷委員】 恐らく対象とすると世界中の外来種すべてについて論議せざるを得なくなってくるということですけど、逐次するとして、あと私個人はもう少し各論についてお話していただけたらなと思っていました。具体的には、今後の宿題になろうかと思いますけれども、特にレイクトラウトですね。要注意の対象種としてレイクトラウト、これの特に外国における事情をぜひとも調査していただきたいと思いますし、同時にガーパイク類、特にアリゲーターガー、それからロングノーズガー、スポッテッドガーの繁殖状況も含めた国内の状況ですね。事例が少しずつふえていますので、こういったものを次回以降の宿題として事務局でお調べいただけたらというふうに思います。

【多紀座長】 ついでに申し上げますと、例えばガー、アミア類、これは日本魚類学会の要望書の中にも入っていますが、遺棄事例はかなりあります。ただ、繁殖事例等が今のところない。これからはそのあたりの資料を集めてもらいたいと思うんですが、どうですか。

【細谷委員】 スポッテッドガーについては兵庫県から、これはインターネットの情報で資料でいただきましたけれども、幼魚がとれているということですので、スポッテッドガーについてはですね。ですから繁殖という視点を全面に出すのなら、ますます注意していく必要はあろうかと思います。

【多紀座長】 繁殖が一番クリティカルなところなので、その辺のデータがあれば、ぜひと思いますよね。

【細谷委員】 それからレイクトラウトについてはアメリカのイエローストーンで厳重な法的な処罰事例ございますので、そういったものも今後宿題で調べていただきたいなと思っております。

【村田委員】 この特定外来生物の分類ということで、いろいろと定義づけられた分類ということになるんですけれども、栽培漁業の観点から見た場合、もちろん定着だとか、あるいはまた定着したことによって在来生物に被害を与えたりとか、当然そういうことは調査していかないといけないことではあるんですが。ここで一つ、やはり防疫と言うんですか、疾病、病気の問題ですね。それを一つ対象に。これはトータル的な、特異的にその病気がこの魚類にというのもあろうかと思いますが、やはり外国からの直接輸入ということに対する魚類の防疫、その辺の情報の収集というのが一つ今後必要であろうなと。栽培業業からの観点からです。

【多紀座長】 事務局、本法との接点はどういうことになりますか。

【環境省 中島室長】 輸入された魚類が在来の魚類とほかの生物、野生生物に影響を与えるおそれがあるというような情報であれば、今回我々が対象としているこの法律の特定外来生物の指定の理由になり得るものになるかと思いますので、それについては、水産関係では別にまた後で補足をいただきたいと思いますけれども、我々の観点でそういった事例があるかどうかということも、少し気をつけて見てみたいと思います。

【水産庁 丹羽保全室長】 外国の魚類の疾病ということでいきますと、水産資源保護法と持続的養殖生産確保各法関連で指定をするという制度はございます。

【多紀座長】 サケマスなんか随分ありますよね。

【事務局】 この制度では指定をしないといけないと思うんですが、その疾病をですね。サケマスであればEHN(流行性造血器壊死症)ウイルスによる疾病とか、そういうのがあると思いますが、今のお話は非常に全般的な病気ということなので、その辺、現在の制度では特定という形のものがつく必要があるかと思うんですが。お答えになっているかどうかわからないんですが。

【多紀座長】 はい、ありがとうございました。ほかにこの際。

【北田委員】 今の村田委員のお話と関連することですけれども、この中でタイリクスズキだけが海産の養殖魚なんですよね。これが、今のような問題がもちろんあるんでしょうけど、これが逃げたり卵を産んだりしていますし、一部定着もしているわけですよね。こういう外国からのものを導入してまで養殖する必要があるかという意見もあります。こういうものを今の防疫と関連させて、水産庁がこれからどのように対応していかれるか、そこは大事なところだと思うんです。ですから今後の宿題という面では、この海産魚の外国産種魚の輸入による養殖を防疫とセットで考えていただけるといいかと思うんですよね。

【多紀座長】 これは水産庁と環境省にもお願いしたい。特にタイリクスズキなどは、種がわからないと法律的に指定できないというような問題があり、ほかにもいろいろと問題点も出てくるだろうと思いますので、その辺も広いスタンスで将来お願いをしたいと思います。
 議には「その他」がありますが、それも含めて何かございますか。
 では、非常に不手際で申しわけありませんでしたが、結論的に言いますと特定外来種のリスト、それから未判定、種類名証明のものと、それから要注意外来種のリストは、今回の案のままでここではお認めいただいたということにさせていただきます。ただし北田委員等から発言ありました表現等については、こちらでできるだけ改善いたしまして、それをさらに委員の方々からご意見を伺った上で、最終的には8月の親委員会に持ち出したいと思いますが、よろしゅうございますか。
 櫻井委員、何か最後に一言。

【櫻井委員】 蒸し返すようで申しわけないんですが、ブラウントラウトは結局この席ではどういう扱いになるんでしょうか。
 あと、今後これ以上議論の余地があるんでしょうか。要は水産業との兼ね合いの部分しかもう残ってないんじゃないかと思うんです。それからもう問題になっています免許が発行されている4県、ここはもともとほとんど在来種がいなかったような湖で、影響のないような湖ですね。結局問題になっているのは北海道でして、北海道の場合は漁業調整規則で禁止されていると言いますけれども、結局ブラックバスと同じ構造で禁止はされても拡大は抑えられないという状況になっているわけですよね。ブラックバスが指定されたら、もう自動的に私なんかブラウンは指定されるものだと思っていたんですが。もし議論の余地があるとしたら、どういう余地があるのかはっきりさせていただいた方がいいんじゃないかと思ったんですが、いかがでしょうか。

【多紀座長】 これは当然これからも三次、四次もありまして続けるものだと理解しております。
 それから一部の委員はブラウントラウトはブラックバスと同じで指定すべきだという見解であると同時に、漁業権の問題があってまだ最終的な判断を出していない方もいらっしゃるわけですよね。ですから当然これから論議すべきことであって、最終的にはこの小委員会は小委員会として、被害とか生物学的な見地からの意見はまとめられると思うんですよね。それ以上どうなるか、私は今何とも言える立場ではありません。

【細谷委員】 そうすると今日、ブラウントラウトの扱いは、私たちはあれなんでしょうかね。要注意外来種としてコンセンサスが得られたという。

【多紀座長】 コンセンサスというより、このままのリストで認めて、ただし付記がありますよね。前のブラックバスと同じでもって、すぐにでも入れるべきだという声があったということは。納得いかないですか。

【細谷委員】 そうですね。リストの中にとどめておくことは、私は同意することはできません。

【多紀座長】 そうしますとリストから外して。

【細谷委員】 特定外来種に。

【多紀座長】 特定外来種にする。

【細谷委員】 はい。

【多紀座長】 細谷委員はそういうご意見です。ほかのお三方はいかがですか。
 

【北田委員】 もう議論の機会は今日で終わりということなんですけど。この委員会はきょうで終わるのでしょうか。

【多紀座長】 きょうで終わりです。ただし来年度というか、三次はあるわけですよ。三次指定、四次指定。

【北田委員】 それはいつごろの予定ですか。

【環境省 名執課長】 一次指定については、6月1日にとにかく法を施行しなければいけなかったということで、非常に短期間で議論をしていただきましたので、引き続き半年遅れで二次指定について議論していただいたところでございますけれども。引き続き三次、四次という議論もちろんやっていただくんですけれども、一次、二次のインターバルより若干空くかなというふうには思っているところでございます。あと今回魚類は、特にブラウントラウトについていろいろ意見を出されたわけですけれども、ほかの分類群でも特に次回以降重点的に検討を続けるべきだというご指摘を受けている種が幾つかございますので、そういうところからまず勉強を始めながら、三次指定に向かっていきたいというふうに思っているところでございます。

【多紀座長】 ほかの委員はいかがでございますか。細谷委員は今指定すべきであると。

【櫻井委員】 私も被害は明らかだと思いますので、すぐ指定すべきだと思っております。

【多紀座長】 じゃあ、北田委員と村田委員。

【北田委員】 私は知らなかったんですけど、さっきおっしゃられた、もともと影響がないところに漁業権が免許されているのですね。そうすると北海道に限定して好ましくないことが起きているということですよね。私は日本全体カバーしないといけないとは思わなくて、地域限定でも被害があれば指定すべきとのご意見には賛成ですけど、今日ここで決めるのは、全然議論していないので、ちょっとできないと思うんですよ。良し悪しじゃなくて。平成25年までの漁業権の問題どうするかとかの議論もなしに、拙速にここで結論を出せる状態ではないと思います。もう一度あらためて議論していただけるんであればありがたいと思います。

【多紀座長】 北田委員は先ほどからの一連の発言でも、きょうそこまで議論するとは思っていなかったということもあって、きょうこれだけの議論ではという。指定するしないは別にしてね。もっと論議してから決定すべきであると。

【北田委員】 議論する必要は認めますし、やらなければいけないです。でも、5時回ってからこれをどうしようかというんだと、もう会議の時間がという話になりかねないので、今日はできないんじゃないかなと思うんですけど。

【多紀座長】 はい、わかりました。

【村田委員】 私も北田委員と同じような意見なんですが。やはりその重要性というのはここで終わってしまうんではなくて、先ほど言われたように三次になるのか、あるいはまた別途そういう会議が行われるのか、その会議というものの重要性と、それからそういう会議を早急に行うということを要求したいというふうに思います。

【多紀座長】 はい、ありがとうございました。ということで、お二人はきょうの議論だけで指定は無理であろうというご意見で、他のお二人は今指定すべきであるということです。事務局にはなるべく早く本種について論議をする機会をつくっていただきたい。
 ここで私の考えを言いますと、委員会としては指定すべきであろうと。そして後は行政当局にお任せする。お任せするというよりも、手に委ねざるを得ないというのが私の考えです。
 もう5時半になりました。不手際ですみません。よろしゅうございましょうか。
 では、最後に事務局からお願いします。

【環境省 名執課長】 本日大変お忙しいところ時間を超過して熱心な議論をしていただきましてありがとうございました。きょうの魚類グループでの議論の結果につきましては、多紀座長とも相談いたしまして、できるだけ正確に、8月5日にございます全体の専門家会合に報告していきたいというふうに考えております。
 一部資料につきまして、どういう観点から評価しているのかというのがわかりづらいというところにつきましては、事務局でできるだけ努力して資料を直していきたいと思っておりますけれども、ぜひ先生方にもそれをもう一度ごらんいただいて、できるだけわかりやすい正確な資料にして全体会合に持っていけたらと思っているところでございます。
 それから最後に非常に議論していただきましたブラウントラウトの扱いについても、多紀座長からお話のあったとおり、全体会合には特に重点的に議論を行うべき種ということでご報告することになるんだと思いますし、そのための議論もできるだけ早い機会に始められるように努力したいというふうに思っております。一応、一次、二次と非常に忙しくご検討いただいたわけですけれども、先生方には今後、三次、四次と引き続きいろいろな点でご協力いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

【多紀座長】 長時間ありがとうございました。不手際で申しわけありません。以上をもちまして第4回の魚類のグループ会合を閉会いたします。どうもありがとうございました。