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 特定外来生物の解説

特定外来生物の解説


セイヨウオオマルハナバチ

和名
セイヨウオオマルハナバチ
科名
ミツバチ(Apidae)
学名
Bombus terrestris
英語名
Large earth bumblebee
原産地
ヨーロッパ。日本へはオランダ、ベルギー、イギリス、イスラエル等から、コロニー(女王を中心とする家族)単位で輸入される。
特徴
胸部・腹部のそれぞれが鮮やかな黄色と黒色の縞模様で、腹部の末端は白色を呈する。この斑紋は、女王・働きバチ・雄バチでほとんど差がない。
日本在来のマルハナバチ属は15種が分布する。このうち、セイヨウオオマルハナバチに類似する白色部を持つ種に、道東にのみ生息するノサップマルハナバチが知られ同定に注意が必要。 マルハナバチの中でも、花資源をめぐる競争や女王蜂の活動開始時期が早いことによる営巣場所をめぐる競争、高い増殖能力等大きな競争力をもつと言われている。
定着実績
1991年に静岡農業試験場で試験導入されたのち、輸入が本格化した。
1996年春に、北海道で本種の女王による野外越冬がはじめて確認され、自然巣も発見された。 現在までに、27都道府県で本種が目撃されており、周囲にトマト温室等のない場所でも本種が目撃されている。北海道・日高地方や千歳川流域におけるモニタリングでは確実な定着増加が報告されている。
平成21年度までに個体が確認された地点図
被害状況
■生態系に関わる被害
  • 北海道での調査研究では、類似した営巣場所要求性をもつと言われており、在来のマルハナバチ全般(特にエゾオオマルハナバチ)との競争が懸念されている。マルハナバチ類は、しばしば巣の乗っ取りを行うが、本種も実験室において、在来種の女王を刺殺して乗っ取りを行った例が報告されている。
  • 在来マルハナバチでも盗蜜行動は見られるが、セイヨウオオマルハナバチは短舌であり、盗蜜を頻繁に行うために、野生植物の種子生産を阻害すると言われ、エゾエンゴサクの種子繁殖の阻害が確認されている。
  • 在来のマルハナバチ類は、生息場所の喪失や分断化等により、低地ではかなり衰退していると推測され、サクラソウ等の野生植物の種子生産に影響をもたらしていると言われており、本種がさらに在来マルハナバチ類を圧迫することにより、野生植物の健全な繁殖を損なうおそれが指摘されている。
  • 北海道・日高地方や千歳川流域でセイヨウオオマルハナバチとの置き換わりが生じて、特にエゾオオマルハナバチの明確な減少が確認されており、鵡川町の5-7月の調査では、2003年から2005年にかけてエゾオオマルハナバチの観察比率が1/10以下、観察数が1/15以下に減少している。
  • イスラエルでは、本種が侵入した地域において花蜜資源の独占により、ハナバチ相全般が著しく衰退した例が報告されている。
  • 実験室において在来種のオオマルハナバチ、エゾオオマルハナバチやクロマルハナバチに対する交尾行動を示していることが報告されており、DNA解析により野外でのオオマルハナバチ、エゾオオマルハナバチとの交尾も確認されている。
  • 輸入されたセイヨウから内部寄生性のヨーロッパ系統のマルハナバチポリプダニが報告されていることから、在来のマルハナバチに疾患を生じさせることが懸念される。
取扱い上の注意
マルハナバチ類はミツバチなどに比べるとおとなしいハチであるが、素手で触ると針で刺すこともあるので、取り扱いには留意が必要。
備考
現在、トマトの施設栽培においては、栽培面積の約4割で本種が利用されており、年間約7万コロニーが流通・利用されている。
その他、なす、いちご等で利用されている。
小規模だが屋外における桜桃・リンゴ・ナシ・ウメ等の果樹の受粉にも利用されていた。
ハウスの開口部にネットを張ることにより、逸出防止が可能である。
在来マルハナバチの増殖技術も確立しており、商品化も行われている。
カナダ、アメリカ合衆国では、輸入禁止措置が取られており、在来種を利用している。
本種の導入により、トマトを中心とした施設栽培において労力の軽減、ホルモン剤の代替等に大きな役割を果たしている。

※ 通称につきましては、必ずしも正確なものではない可能性もありますので、ご注意ください。
※ 被害状況につきましては、代表的な事例を挙げています。


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