本文へジャンプ
HOME外来種について要注意外来生物リスト昆虫類 一覧>詳細

要注意外来生物リスト:昆虫類(詳細)
要注意外来生物リスト:昆虫類(詳細)

クワガタムシ科 サカイシロテンハナムグリ チャイロネッタイスズバチ
ナンヨウチビアシナガバチ アフリカミツバチとその交雑個体群
(アフリカ化ミツバチ)
ホソオチョウ
アカボシゴマダラ

●被害に係る知見が不足しており、引き続き情報の集積に努める外来生物
クワガタムシ科(Lucanidae)に関する情報
●原産地と分布:
 全世界に約1200種が知られている。Dorcus属の他、ニジイロクワガタPhalacrognathus、 キンイロクワガタ属Lamprima、ツヤクワガタ属Odontolabis、ノコギリクワガタ属Prosopocilus、ホソアカクワガタ属Cyclommatus(インドシナ等)などが代表的なペット甲虫として輸入されている。
●定着実績:
 各地で逸出や意図的な放虫由来と考えられる成虫が発見されているが、野外での繁殖に関する確かな情報はない。また、大阪府茨木市では野外でタイワンオオクワガタの幼虫が確認されている。
●評価の理由
大量の個体が愛玩用に輸入・販売され、一般家庭にも浸透しており、低年齢層の飼育者も多い。野外での逸出個体の発見があり、遺伝的攪乱も懸念されるが、実証的データは不足している。今後の被害知見の充実とともに、遺棄をしないための普及啓発等が重要である。
●被害の実態・被害のおそれ
 生態系に係る被害
在来種との雑種形成により、遺伝的固有性の破壊が懸念される種がある。戻し交雑(雑種と在来クワガタムシとの交雑)によりおこる遺伝的攪乱も懸念されるが、野外における確実な交雑個体の発見は2例のみで、いずれもF1(一代雑種)で終わっており、これらが野外での交雑結果か、交雑個体の逸出かはっきりしない。
在来種との競合により、在来種の生態的地位を脅かすことが懸念される。
熱帯産の種でも日本で定着する可能性が指摘されている。
寄生性のダニの侵入による在来種への影響が懸念される。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
熱帯に生息する種でも、日本の冬季に越年可能と考えられるものがある。
大型の種は、餌場やメスをめぐる競合の上で在来種より優位であると考えられる。
寄生性のダニが複数種侵入しており、そのうちイトダニ科の1種が、病原をもたらしたと考えられる飼育個体の死亡例も報告されている。
(2)社会的要因
ペットとして2004年のカブトムシ、クワガタムシの輸入総数は年間100万頭を超えており、毎年相当量が流通していると考えられる。
簡単に入手できるので、放棄、逸出個体の定着が懸念され、意図的と思われる放虫・遺棄個体が見られるケースもある。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
多くの種のオス個体は二次性徴で大顎が発達する。他のコガネムシ上科甲虫とのメス個体も含めた区別点は触角第1節が長く、それ以降の節から膝状に曲がることである。
在来のクワガタムシとの形態的な区別が難しいものもあり、特にメスによる同定は困難な場合がある。
●その他の関連情報
輸入国において捕獲、輸出が禁止されている種が国内で流通している実態があり、国際的な問題を含んでいる。
ペットとして家庭で飼育されていることが多く、子供を含め幅広い飼育者層を持つ。
●注意事項
野外で確認される個体は遺棄か逸出によるものである可能性が高い。飼育に関するマナーの向上が特に重要である。
安易な飼育・購入等による遺棄が生じないよう販売に係る事業者等を中心に、適正な飼育に関する普及啓発を飼育者に対し積極的に進めていく必要がある。
●主な参考文献
(1) 荒谷邦雄 (2002) クワガタムシ科における侵入種問題. 昆虫と自然,37(5): 4-7.
(2) 荒谷邦雄 (2003) クワガタムシ・カブトムシにおける移入種問題. 滋賀県琵琶湖博物館企画展示資料: 94-97.
(3) 荒谷邦雄 (2003) ペットとして輸入される外国産コガネムシ上科甲虫の影響. 森林科学, 38: 21-32.
(4) 荒谷邦雄 (2005) 最近の外国産クワガタムシ、カブトムシ事情. 昆虫と自然, 40(4): 27-32.
(5) 五箇公一・小島啓史 (2003) クワガタムシ商品化がまねく種間交雑と遺伝的浸食. 昆虫と自然, 38(3): 6-12.
(6) 五箇公一・小島啓史 (2004) 外国産クワガタムシの生態リスクと外来生物法, 昆虫と自然, 39(11): 29-34.
(7) Goka et al. (2004) Biological invation caused by commercialization of stag beetle in Japan. Global Environmental Research, 8(1): 67-74.
(8) トラフィックイーストアジアジャパン (2004) カブトムシとクワガタムシの市場調査. 34pp. トラフィックイーストアジアジャパン.


サカイシロテンハナムグリ(Protaetia orientalis sakaii)に関する情報
●原産地と分布
  台湾原産。サイパンとグアムに侵入定着している。
●定着実績:
 1976年頃台湾から沖縄島に非意図的に侵入したとされ、現在、沖縄諸島、宮古諸島、石垣島、大東島等に侵入・定着している。
●評価の理由:
在来種との交雑については、確からしい証拠が発見されたばかりで、より詳細な検討が必要。沖縄島の平地では在来種をしのぐ優占種となっており、競合による影響が懸念される。国内への侵入および各島への伝播は樹木等の移動に伴い、土中の幼虫が持ちこまれた可能性が高く、土の移動に注意する必要がある。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
現在、沖縄島において生息地域の広さ、個体数において、固有種の4種のハナムグリ(オオシマアオハナムグリ、リュウキュウツヤハナムグリ、リュウキュウオオハナムグリ、オキナワシロテンハナムグリ)をしのぐ優占種となっており、平地や都市周辺部において個体数が多い。このことから見て、在来種との競合が起こっていることが推察される。
沖縄島においてサカイシロテンハナムグリとオキナワシロテンハナムグリの中間的な個体が複数発見され、両者の交雑に基づく個体であると考えられることから、在来種への生殖攪乱の影響が懸念される。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的情報
オキナワシロテンハナムグリとの交雑によるF1と見られる個体が屋外で発見されており、生殖攪乱の影響が懸念される。また、別種リュウキュウオオハナムグリとの交雑のおそれも指摘されている。
オキナワシロテンハナムグリの交尾習性としてオスが群飛を行なうことが挙げられるが、オキナワシロテンハナムグリが減少し、その群飛が見られなくなっている地域で、交雑個体が見つかっている。このため、交雑個体は残されたメス個体とサカイのオスが交尾した結果である可能性が高い。
5月〜12月の間、活動している個体が見られ、在来のどの種よりも活動期間が長い。

 (2)社会的要因
園芸樹木の移動による分布拡大が懸念される。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
本種の別亜種としてシロテンハナムグリP. orientalis submarmoreaが本州〜口永良部島、トカラシロテンハナムグリP. orientalis tokaranaがトカラ列島に分布する。本亜種は体色が黒褐色〜赤褐色で安定し、金属光沢は鈍い。
●その他の関連情報
沖縄島以外の島にもオキナワと同種の別亜種が生息しているが、今のところ交雑に基づくものと考えられる個体は発見されていない。
●注意事項
・  今後、沖縄島の状況を追跡するとともに、他の島での本種の動向に注意することが重要である。
・  ハナムグリ類の異種間交雑については、これまでほとんど注意を向けられてこなかったが、今後は予防的な観点からも留意するべきで、安易な導入については注意する必要がある。非意図的な導入に関しては、植栽用等の樹木の移動に注意すべきである。
●主な参考文献
(1) 楠井善久. 1979. 近年人為的に沖縄県に侵入したと考えられるコガネムシ類について. 昆虫と自然. 14(5): 26-28
(2) 楠井善久. 2005. 沖縄のシロテンハナムグリ属における固有種と外来種の種間交雑について. 日本動物学会九州支部(第58回)・日本植物学会九州支部(第55回)・日本生態学会九州地区(第50回)・沖縄生物学会(第42回)合同沖縄大会プログラム・講演要旨集2005. P.42.
(3) 野林千枝 (2004) 沖縄島産シロテンハナムグリの変異. 鰓角通信(8):15-20.
(4) 酒井香・永井信二 (1998) 世界のハナムグリ大図鑑. 421pp. むし社.

チャイロネッタイスズバチ(Delta pyriforme)に関する情報
●原産地と分布
  南太平洋地域、東南アジア
●定着実績:
1990年に小笠原父島で確認されたのが最初の記録。その後分布を拡大し、小笠原父島、兄島、弟島で定着している。
●評価の理由
大型の捕食者で、小笠原で普通種となっており、在来の昆虫(特にチョウ目)への影響が懸念されるが、被害の実態は不明である。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
在来の昆虫への捕食による影響が懸念される。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
主に鱗翅類の幼虫を狩り、幼虫の餌として巣に運び込むため、在来のオガサワラシジミをはじめとするチョウや固有のガ類への影響が懸念される。

(2)社会的要因
日本への侵入は非意図的なものと考えられるが詳細は不明。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
体長約 28mm、前翅開幅50mmでドロバチ科の中では日本で確認されているもので最大。胸部、前伸腹節、腹部1〜2節が茶褐色、頭部、触角、脚部、腹部3〜6節は濃黄色、単眼域、後頭部、中胸盾板、小盾板、前伸腹節、腹柄基部及び後方部は黒色。
●その他の関連情報
小笠原に侵入した個体群は既知のどの亜種とも異なる特徴を持っているため、原産地は不明。
●注意事項
小笠原の周辺島嶼に分布が拡大しないよう監視できる体制を構築することが望ましい。
被害実態や分類に対する知見の充実が望まれる。
●主な参考文献
(1) Yamane, Sk. & H. Matsuura (1991) Establishment of Delta pyriforme (Fabricius) in the Bonin Islands, Japan (Hymenoptera, Eumenidae). Tropics. 1(2/3): 155-162.
(2) 山崎柄根・渡辺信敬・寺山守・長谷川英輔 (1991) 小笠原諸島の昆虫類の現況. 第2次小笠原諸島自然環境現況調査報告書 1990-1991. p. 197-205.


ナンヨウチビアシナガバチ(Ropalindia marginata )に関する情報
●原産地と分布:
 東南アジアに広く分布する。
●定着実績:
 火山列島硫黄島で1981年に生息が確認されて以来、定着し、現在は普通種となっており、全島に分布する。
●評価の理由
硫黄島では普通種で、捕食による在来昆虫への影響が懸念されるが、被害の実態は不明である。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
在来の昆虫への捕食による影響が懸念される。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
一般にアシナガバチ類は社会性を有する捕食性ハチで、高い捕食能力を持っている。
(2)社会的要因
硫黄島の物資は小笠原を経由することが多く、小笠原諸島への侵入が懸念される。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
日本産の多くの他のアシナガバチ類とは腹部第1節が細く、基半が柄状になることで区別され、同属のオキナワチビアシナガバチとは体の斑紋で区別できる。
●その他の関連情報
小笠原諸島には社会性を持った肉食性のハチは存在しないため、侵入した際には昆虫群集へ与える影響は大きいものと考えられる。
●注意事項
小笠原に侵入しないよう監視できる体制を構築することが望ましい。
被害に係る知見の充実、硫黄島における防除手法の検討が望まれる。
●主な参考文献
(1) 高橋秀雄 (2001) 火山列島硫黄島の蜂. げんせい, (76): 9-10.
(2) 寺山守 (2004) 硫黄島で得られた有剣ハチ類. つねきばち, (2): 1-5.


アフリカミツバチ(Apis mellifera scutellata)とアフリカ化ミツバチ(Africanized honey bee)に関する情報
●原産地と分布
  アフリカ大陸サハラ砂漠以南の東側、標高500〜1500m程度の森林が原産。ブラジルに移入され、ヨーロッパ系ミツバチとの亜種間交雑個体がアフリカ化ミツバチ"Africanized honey bee (AHB)" と呼ばれ、南米の低・中緯度地域と中米および北米に定着。米国では現在も分布を拡大中。
●定着実績
日本への侵入・定着の例はない。
●評価の理由:
アフリカミツバチそのものについては、被害の事例についての知見が不足しているとともに、他の亜種との識別は難しい。海外では、交雑種AHBの個体群が問題となっているが、わが国の環境で本亜種が日本の養蜂で使用されているセイヨウミツバチの亜種と交雑した場合に、ブラジルのように強い攻撃性を発揮するかについては十分な検討が必要。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
在来のハチとの餌資源(花蜜)や営巣場所をめぐる競合を生じる可能性がある。

人の生命・身体に係る被害
海外では、AHBの巣を刺激した場合、集団で人や家畜を襲い、長時間にわたり攻撃を行なうとされている。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
営巣場所は、岩の割れ目や樹洞などの自然構造物の他、多くの人工構造物を利用するなど、他のセイヨウミツバチ亜種よりも営巣場所の利用範囲が広く、営巣場所をめぐる在来種との競合が懸念される。
高温の環境下での活動能れているため、琉球列島や小笠原等に侵入した際には在来のハチ類との競合の影響が危惧される。
通常養蜂に用いられるセイヨウミツバチ等のヨーロッパ系のミツバチに比べ、攻撃性がたいへん高く、大群でしかも長時間にわたり攻撃することから、人や家畜を死にいたらしめることがある。
日本で養蜂に利用しているセイヨウミツバチとは同種の亜種であり、交雑が可能。

 (2)社会的要因
ブラジルでは、熱帯に適応したミツバチとして意図的に導入され、現在の問題の端緒となった。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
他の亜種との形態による識別は困難。原名亜種A. m. mellifera,、イタリアンA. m. ligustica等ヨーロッパ系の亜種と比較すると、体が小さい等の特徴があるが、単一の特徴での区別は難しく、複数の形質の計測値を多変量解析することにより正確な識別が可能。
米国等では交雑個体群の正確な同定には遺伝子解析も用いられている。
セイヨウミツバチApis melliferaには24の亜種があり、日本で利用されるのは主にヨーロッパ原産のイタリアンA. m. ligustica、カーニオランA. m. carnica及び両亜種の雑種である。熱帯アフリカ産には8亜種があり、本亜種はその一つ。以前はブラジルに導入されたものは、A. m. adansoniiとされていたことがあるが、詳細な解析により、A. m. scutellataであることが判明している。
●その他の関連情報
物理的に直接に巣を刺激する以外に、巣の周辺の大きな音や強い匂いに反応して攻撃を開始することが知られている。
本亜種が生産するブラジル産プロポリスが健康食品等として注目を集めており、日本では国土が狭いこと等から現実的ではないと考えられるが、プロポリス生産のための安易な導入がなされぬよう注意が必要。
現在、国際的にミツバチの生産・輸出体制があるのは、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、スロベニアだが、現在日本への輸出を行っているのは、十分な輸出検疫体制が確保されているハワイとオーストラリアのみである。
ミツバチは、家畜伝染病予防法による規制の対象種であり、疾病として、腐蛆病、バロア病、チョーク病、アカリンダニ症、ノゼマ病が規定されている。動物検疫における輸入規制の対象となる種は、ミツバチ属Apis全てであるが、現在のところ輸入禁止の措置を取っている国はない。
本亜種が侵入した場合、日本で利用されている亜種との交雑を防御するため、もしくは交雑した場合の被害防止策への支出等に多大なコストが生じる可能性がある。
ブラジルでは、AHBは、導入したアフリカミツバチがセイヨウミツバチの別亜種と交雑し、これまでアフリカミツバチが生息していなかった地域の環境条件と併せて凶暴性をもたらしたと考えられており、日本の環境において同様の被害が発生するか予測することは難しい。
●注意事項
 本亜種の養蜂目的での輸入はないと考えられるが、今後とも予防的観点からもアフリカ産の8亜種のうち本亜種又は本亜種の交雑個体の安易な輸入がなされぬよう注意が必要。
●主な参考文献
(3) Camazine, S. et al. 1988. The Africanized Honeybee. American Scientist. 76: 465-471.
(4) Rinderer, T. E. et al. 1993. Africanized bees in the U.S. Scientific American. 269: 84-90. (邦訳:T.E.リンダラー他(石井実訳), 1994. 米国に進入したキラービー. 日経サイエンス2月号.)
(5) Ruttner, F. 1987. Biogeography and taxonomy of honeybees. 284pp. Springer-verlag.
(6) Winston , M. L. 1992. Killer bees: The Africanized honey bee in the Americas. 162pp. Harvard University Press.
<website>
(7) IUCN-ISSG HP http://www.issg.org/database/species/ecology.asp?si=325&fr=1&sts=
(8) invasivespecies.gov. HP (リンク集) http://www.invasivespecies.gov/profiles/afrhonbee.shtml
(9) STING SHIELD Corporation http://www.stingshield.com/index.html


●選定の対象とならないが注意喚起が必要な外来生物
ホソオアゲハ(ホソオチョウ)(Sericinus montela)に関する情報
●原産地と分布
  ロシア東部、中国、朝鮮半島。
●定着実績
1978年に東京で確認されて以来、分布域は拡大し、これまでに関東、近畿の他、岐阜、岡山、山口、福岡で確認されている。
●評価の理由
             在来種のジャコウアゲハとの食草をめぐる競合が懸念されている。植物防疫法で輸入が禁止されており、これらの法令を遵守するとともに、放蝶に由来すると考えられる分布拡大を防ぐ普及啓発が必要。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
幼虫期における在来種ジャコウアゲハとの競合のおそれがある。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
本種の幼虫はマルバウマノスズクサとウマノスズクサを基本的な食草として利用しており、在来種ジャコウアゲハとの競合が懸念される。オオバウマノスズクサがある場合にはジャコウアゲハはオオバウマノスズクサを利用するが、ウマノスズクサしかない地域では、両者が同じ資源を利用することになり、競合がおこると考えられる。

(2)社会的要因
日本への侵入、定着及び分布拡大の多くは人為的な放蝶行為によるものと考えられている。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
アゲハチョウ科ギフチョウ属の1属1種のチョウ。春型では全体に白い翅色を持ち、夏型は黒色と黄色を呈する、上記の特徴と長い尾状突起を持つ点で類似する種はない。
●その他の関連情報
本種はもともと飛翔力の乏しい種類で特にメスは食草ウマノスズクサの群落からあまり離れることがない。このような種が各地に分布を拡大している背景には意図的な放蝶行為が繰り返されていることが示唆される。
京都府の木津川堤防における調査では、本種の個体数がピーク時でジャコウアゲハの10〜30倍にも達している。また、ジャコウアゲハのみしか生息していない区域に比べ両者が生息している区域ではジャコウアゲハの生息密度が低いことが指摘されている。
関東地方等では本種はジャコウアゲハと基本的に別の食草を利用しており、あまり競合していないという報告もある。
植物防疫法に基づく検疫有害動物として輸入が禁止されている。
●注意事項
植物防疫法に基づく検疫有害動物として輸入が禁止されている種であり、国内で意図的に放蝶して野外への定着を試みる行為は、被害の予防の観点からも、厳に慎むべきである。
●主な参考文献
(10) 福田晴夫他 (1983) 原色日本蝶類生態図鑑(U). 保育社. 325pp.
(11) 藤井恒 (2002) ホソオチョウ. 日本生態学会編「外来種ハンドブック」地人書館. P. 157.
(12) 桜谷保之・菅野格朗 (2003) 京都府木津川堤防におけるホソオアゲハの生態―特に在来種ジャコウアゲハとの比較―. 巣瀬司・枝恵太郎共編「日本産蝶類の衰亡と保護 第5集」日本鱗翅学会, p. 181-184.
(13) 小路嘉明 (1997) 持ち込まれたホソオチョウ. 日本動物百科第9巻昆虫U平凡社, p. 33.


アカボシゴマダラ※(Hestina assimilis)に関する情報  (※在来亜種H. a. shirakii を除く。)
●原産地と分布
  中国、朝鮮半島、済州島、台湾。

定着実績
1998年に神奈川県藤沢市で確認されて以来、発生は続き、分布域は拡大している。2004年には藤沢市、横浜市、鎌倉市、逗子市、葉山町、綾瀬市、大和市、茅ヶ崎市で確認されている。
●評価の理由
在来種のコマダラチョウとの食草をめぐる競合が懸念されている。植物防疫法で輸入が禁止されており、これらの法令を遵守するとともに、放蝶に由来すると考えられる分布拡大を防ぐ普及啓発が必要。
●被害の実態・被害のおそれ
生態系に係る被害
幼虫期における在来種ゴマダラチョウとの食草をめぐる競合のおそれ。
現在は未侵入であるが、環境省レッドリストで準絶滅危惧のオオムラサキの生息地に侵入した場合、オオムラサキと食草をめぐって競合する可能性も考えられる。
●被害をもたらす要因
(1)生物学的要因
本種の幼虫は食樹エノキの枝の分岐、幹上でも越冬するため、落葉で越冬するゴマダラチョウ幼虫よりも早く新葉に到達し、到達した葉上で台座を作りその位置を占めることができるため、アカボシゴマダラの方が優位ではないかと推察されている。
アカボシゴマダラ同士の観察では、先に新葉に到達した個体がいる場合、後からやってきた個体が反転して去ってしまう行動が観察されており、ゴマダラチョウとの間でもそのような行動が見られる可能性もあるが、実態は不明。

(2)社会的要因
現在定着している地域では1997年以前にはまったく確認されていなかったので、侵入、定着は人為的な放蝶行為によるものと考えられている。
●特徴ならびに近縁種、類似種について
同属で在来種のゴマダラチョウとは後翅の亜外縁に赤色の紋を持つことで区別される。白化型では赤紋が消失するが、黒色部分が少なく、ゴマダラチョウとの区別は容易。また、奄美大島、徳之島に産する亜種shirakiiとは春型など低温期に白化型がでることや、後翅の赤紋の色彩、形状が異なる。
●その他の関連情報
1998年に最初に確認されてから、着々と分布を拡大しているので今後の動向に注目が必要。
埼玉県でも1995年に数例が観察されている。埼玉での確認は1年限りのものであったが、これも意図的な放蝶に由来するものと考えられている。
●注意事項
植物防疫法に基づく検疫有害動物として輸入が禁止されている種であり、国内で意図的に放蝶して野外への定着を試みる行為は、被害の予防の観点からも、厳に慎むべきである。
●主な参考文献
(14) 岩野秀俊 (2005) 神奈川県におけるアカボシゴマダラの分布拡大の過程. 昆虫と自然, 40(4): 6-8.
(15) 福田晴夫他 (1983) 原色日本蝶類生態図鑑(U). 保育社. 325pp.
(16) 中村進一 ・菅井忠雄・岸一弘 (2003) 神奈川県におけるアカボシゴマダラの発生. 月刊むし, (384): 38-41.
(10) 中村進一 ・菅井忠雄 (2005) 神奈川県におけるアカボシゴマダラの発生(2). 月刊むし, (409): 94-97.