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エコツーリズム推進法

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エコツーリズム推進に関する基本方針検討会(第4回)議事概要

1. 日時・場所
平成20年3月5日(水)10:00〜12:30
主婦会館プラザエフ 7階 カトレア

2. 出席者
<委員>
上野委員、上原委員、江崎委員、海津委員、楠部委員(代理出席)、齋藤委員、桜井委員、下村委員(座長)、鈴木委員、武川委員、中尾委員、真板委員、松田委員、横山委員
<関係省庁>
文部科学省生涯学習政策局社会教育課内山課長補佐、農林水産省農村振興局永嶋農村政策課長、国土交通省総合政策局観光資源課水嶋課長、環境省自然環境局桜井局長、環境省自然環境局総務課自然ふれあい推進室岡本室長

3. 議題
(1)エコツーリズム推進基本方針に対する提言について
(2)その他
 ・今後のエコツーリズム推進に向けての課題
 ・その他

4. 概要
 議題(1)について、事務局より説明を行い、その後、委員よりご意見をいただいた。
 概要については以下のとおりである。

(1)エコツーリズム推進基本方針に対する提言について
<第1章 エコツーリズムの推進に関する基本的方向>


「2(1)ア 自然環境の保全と自然体験による効果」において“自然の神秘”という表現があるが、このような科学的とは言いがたい表現は個人的には違和感がある。

環境教育分野では使用されており、現状のままとすることで了承を得た。

「3(1)ア 地域では」において、“新たな経済の仕組み”という記述があるが、それ以前に地域がエコツーリズムに関する取組みを事業として成り立たせていくという強い意識を持つ必要がある。

エコツーリズムに関する取組みを“事業”として位置づけると、観光事業者だけが取り組む旧来の取組みであると受け止められることが懸念される。エコツーリズムは、あくまでコミュニティが主体となって取り組んでいくものであるということが理解される必要もある。

地域で取組みを進めるに当たっては、まず地域にどのような資源があるのか見つけ出すことから始めるべきであり、観光旅行者に対しても、まず伝えたい魅力があることでガイド業が成り立つ。そのため、「3(2)重点的に取り組むべき当面の課題」としては「人材育成」よりも「地域への支援」を優先すべきである。意識としては順不同であっても、実際の読みやすさを配慮し、第1章3(2)「ア 人材育成」と「イ 地域への支援」の順番を入れかえてはどうか。

「3(2)ア 人材育成」に関しては、地域に支えられてこそガイドの育成が図られることから、「地域における人材育成への支援」を最初に記述してはどうか。

「3(2)オ 他施策との連携強化」において、4省で実施されている施策が記述されているが、別の観光の形態と連携するように読み取れる。実際には、ほとんど同様の内容のプログラムを実施しているにもかかわらず、グリーンツーリズムやブルーツーリズムなどさまざま名称が使用されているため、地域や参加者に混乱が生じているという現状がある。記述されている施策は、全てエコツーリズムを推進していくための施策でもあるという旨を追記してはどうか。また、今後は類似する取組みの名称を“エコツーリズム”と統一し、各省で協力して普及していくことを検討してほしい。

エコツーリズムに限らず、省庁ごとにそれぞれ異なる名称でありながら類似する事業が地域で実施されているという事態は現実的に生じており、国としても配慮していく必要性は認識している。ただ同時に、地域としても取り組むべき方向性を明確にし、名称にこだわらずさまざまな事業を活用していくことが現実的な対応ではないか。グリーンツーリズム、ブルーツーリズムなどはそれぞれの特徴を表している名称に過ぎず、どれを使用するかは基本的に地域で選択することである。

<第3章 エコツーリズムの推進全体構想の作成に関する基本的方向>


「3(3)ガイダンス・プログラム」について、ガイドからガイダンスを受けることが基本であり、補助的なセルフガイダンスについてはここまでの詳細な記述は不要ではないか。

さまざまな形態、レベルのガイダンスが必要であるという本検討会でのこれまでの議論を踏まえた記述であり、現状のままとすることで了承を得た。

<第5章 生物多様性の確保等のエコツーリズムの実施に当たって配慮すべき事項その他エコツーリズムの推進に関する重要事項>


「5 エコツーリズムの推進体制」において、国の役割として、より具体的な支援方策を記述すべきではないか。

第1章3(2)において、重点的に取り組むべき当面の課題を記述しており、本項では記述しないことで了承を得た。

<副題について>


「誰が、何を、どうするのか」が副題から読み取れることが望ましい。「地域と旅人が創る持続可能な地域と自然」としてはどうか。

自然を保全していくためにライフスタイルを変えていく新たな観念だということを伝えたい。「自然と文化の持続性を育む共生を目指して」としてはどうか。あるいは「自然と文化を守り持続性を育む旅の発展を目指して」としてはどうか。

事務局案では「たび」とひらがなで表記されているが、漢字で記述してはどうか。

旅の語源は諸説あり、さまざまな概念を包括し、かつ新たな概念であることを示すことを意図してひらがなの表記としたことを説明。


以上、提言の内容に関する指摘事項については、座長に扱いを一任し、事務局及び関係省との調整の上で修正したものを本検討会における提言とすることで委員の了承を得た。

(1)その他
<今後のエコツーリズム推進に向けての課題並びにコメント>
【地域への支援】


これから取組みを進める地域が、先進的な地域に追随できるよう、今後開催されるセミナーなどでは、地域における実践者を講師として招聘することが重要である。

エコツーリズムを事業として成立させるために、自然を対象とした旅行を取り扱っている旅行会社から商品の作り方などを学ぶことも必要である。
【人材育成】

今の人材育成システムには技術伝達のノウハウはあるが、さらに次の世代の人材を育成していく指導者・啓発者を育てていく仕組みがない。

例えば、環境省のエコインストラクター人材育成事業の修了者は、地域のコーディネーターとして活躍することが最も期待される人材である。各省庁のコーディネーター育成事業と、呼称を統一するなどして、啓発者を育てていく仕組みとして足並みを揃えてはどうか。

コーディネーターとなる人材に各省庁の様々な事業に関する情報を集めることで、地域で柔軟に利用できるようになるのではないか。また、このような公の会議に地域のコーディネーターを招集できれば彼ら自身のスキルアップにもつながる。
【国の役割】

地方自治体が疲弊している現状では、エコツーリズムに取り組もうとする地域に対して財政措置などの具体的な国の支援が必要である。

今後は、現場ごとにさまざまなニーズが発生することが予想される。エコツーリズム推進法の活用を促すためにも、地域に対して、財政面、精神面などさまざまな支援が必要となる。

地域の環境特性を的確に把握することは地域にとって難しいため、国としても調査等を実施して地域の環境特性を把握し、その情報を提供していくことが重要である。

国の調査は、全国レベルの自然環境保全基礎調査等を実施しており、都道府県が実施している調査等も参考となりうる。それらを参考にしつつ、現場レベルの調査やモニタリングは地域で行っていく必要がある。
【啓発・普及】

エコツーリズムへの参加は興味を持つ人にとどまり、一般には理解が広まっていないのが現状である。今後開催されるシンポジウムなどには専門家だけでなく、有名人を講師として招聘するなどにより広く普及させていくことも必要ではないか。

エコツーリズムの考え方を地域と旅行者を結ぶ旅行業者にも普及していく必要がある。その為には、優良な取組み事例を広く伝えていくことが必要である。エコツーリズムという名称で行われる取組みに限らず地域で取り組まれる旅行の形態がエコツーリズムの概念と合致するものとなることを期待する。

エコツアーという名称でさまざまな形態の商品が展開されているため、地域や参加者に混乱が生じている。エコツアーの認知度は一般にはまだまだ低く、地域の魅力も十分に伝わっていないため、今後は広報に力点をおく必要がある。
【その他】

エコツーリズムに関する取組みが経済的な仕組みに必ずしも結びついていないことが懸念される。

本提言では、地域のさまざまな主体が新たに力を合わせる仕組みを示すことができた。エコツーリズムの取組みは、国の補助金だけに頼らず本来の意味での自治を作っていくものだということをPRしていく必要があり、自立的に取組みを進めていくためには、事業の収益を地域に還元する仕組みが必要である。

行政は担当者の異動等により持続的に取組みを進めていくことが難しく、いかに民間が主導して進めていけるかが次の課題となる。地域の人が牽引していくような仕組みが必要となる。

法の成立等によりエコツーリズム推進のための地域の枠組みが確立された。次の段階としては、経済的な仕組みを保持しながら、観光旅行者と地域が自然環境等の価値を共有する場をどのように作るかが課題となる。

団塊世代の退職や、「子ども農山漁村交流プロジェクト」の実施など農山漁村を取り巻く状況は新たな段階に入ってきている。今後は、地域活性化に具体的に役立つ展開を考えていきたい。グリーンツーリズムとエコツーリズムとの連携により農山漁村が活性化することを期待する。

本提言で都道府県の役割が明確に示されたことを評価したい。

多くの地域がエコツーリズムを進めることにより、結果的に質の高い取組みを展開する地域が残っていくことが期待される。

<各省コメント>


学校教育の体験活動という切り口で各省との連携により事業を進めているところ。

これまでグリーンツーリズムの取組みの実績ある地域は「子ども農山漁村交流プロジェクト」にもすぐに対応できている。エコツーリズムにおいても地域において実践を重ねていくことが必要である。

平成20 年度に国土交通省内に新設される観光庁にコンサルティングの機能を充実させていくこととしている。

エコツーリズムはライフスタイルや地域のあり方をどのように変えていけるかという試みのひとつだと考えている。4省が所管する法律であるということも大きな特徴であるが、本検討会の各委員を始めとする関係者とも本提言のキーワードでもある「つながり」を深めながらエコツーリズムを推進していきたい。

<座長総括>


さまざまな立場の委員からの意見を踏まえ、バランス良くまとまった提言とすることができた。

都市から地方への経済的な循環を促す新たな仕組みづくりや、いかに国民に普及・啓発できるかといった点が今後の課題として挙げられる。多くの人にわかりやすく浸透させるため、今後は、認定地域の愛称やロゴを公募するなどにより国民に広く認知されるような広報の手段を検討していく必要がある。