□自然公園の今後のあり方のTOPに戻る□

第8回自然公園のあり方懇談会(H16.03.09)議事要旨


 中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会「自然公園のあり方に関する中間答申(H14.1.29)」において継続審議事項とされた課題について意見交換等を行うために開催した、第8回「自然公園のあり方懇談会」の概要についてお知らせします。


懇談会の概要
 中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会「自然公園のあり方に関する中間答申」Ⅱ(2)「自然公園の課題」において示された課題の中から、具体的検討課題をくくり出し、順次議論を深めるとともに、小委員会報告ないし答申を取りまとめる際の「柱」づくりを目指した検討を行うもの。
開催日時:平成16年3月9日(火)14:00~16:00
開催場所:露山会館 うめ・さくら
議題   :自然公園の位置づけと保護管理費用の負担

 

自然公園のあり方懇談会委員
氏名 所属 出欠
渡辺 修 (財)休暇村協会理事長 出席
安達 瞳子 花道家 出席
磯部 力 東京都立大学法学部教授 出席
岩槻 邦男 放送大学教授 出席
大沢 雅彦 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 出席
岡島 成行 大妻女子大学教授 欠席
栢原 英郎 (社)日本港湾協会理事長 出席
川名 英子 (財)生協総合研究所客員研究員 出席
熊谷 洋一 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 出席
瀬田 信哉 (財)国立公園協会理事長 出席
立花 直美 武蔵野美術大学造形学部建築学科教授 出席
服部 明世 大阪芸術大学環境計画課学科教授 出席
速水 亨 (社)日本林業経営者協会副会長 出席
森本 幸裕 京都大学大学院地球環境学堂教授 出席
和里田 義雄 (財)河川環境管理財団理事長 出席

 

事務局による第7回あり方懇談会の中間整理に基づく説明、自然公園の位置づけと自然公園における保護管理費用の負担について説明を受けての議論の概要は以下のとおりです。
 議事要旨(資料一覧へ)
自然公園の位置づけについて
「離島振興法」と「自然公園法」との関係で、離島振興法において自然公園法の運用にあたっては離島振興計画へ適切な配慮を行うとの規定があるが、その他の各種振興法においてはどのような取扱となっているか。また、「適切な配慮」とは実際にどのように運用されているのか。
(事務局)明文化されているのは離島振興法のみ。しかし、他の振興法等においても今後議論となってくると思われる。配慮については、離島振興法における振興計画の作成のサイクルと自然公園法における公園計画の見直しのサイクルを合わせること等により、双方の目的を満たすよう調整することや、例えば廃棄物処分場の設置等本土であれば許可にならないようなものについては、特例措置をとるなどを考えている。
「保護」と「保全」という言葉の使い分けが理解しづらい。自然環境の保全は、自然公園よりも広い範囲を対象とするものだが、列島全部で見てみると、自然公園の方が圧倒的に多くて、自然環境保全地域はわずかである。また、自然環境保全法と自然公園法は住み分けをしているということだが、自然環境をどうするのかという観点から、自然環境の保全、保護、活用の言葉遣いを見直していただきたい。
自然公園における保護管理費用の負担について
管理経費については、どれだけ地元が潤っているかを分析すれば、地元や業者が儲かっているというプラスの面が出てくると思われる。
国・地方公共団体・個人利用者が享受する利益に応分の負担をするのは筋道だが、固定資産税などの負担が民間業者にはあることから、何らかのインセンティブが必要である。尾瀬において東京電力が実際に保護管理事業に取り組まれているのは、どのようなインセンティブによるものか。
(事務局)東京電力は、山小屋を経営し客を呼び込んで事業を行う者としての側面も有しているが、自然保護のシンボルの地における土地所有者としての公益性を理解して取り組みをおこなっていると聞いたことがある。
民間企業等が費用負担を考えるとき、固定資産税等がかなり負担となっている事例を聞く。相続税、分割相続により緑地の減少、都市環境を悪化させている仕組みもあると思う。自然公園でも普通地域において、同様なことがあるのではないかと考えられるが、租税特別措置は行われているのか。
(事務局)普通地域では、税の優遇措置はない。しかし、里地里山の保全は大切なテーマであり、今後取り組んでゆかなければならない課題と認識。
「自然公園の効用とその受益範囲」の資料で、科学的データの蓄積や芸術・文化の醸成といった点について、個人が単純に受益者と設定されるだけでは国家的利益がカウントされない。これらの評価については、自然公園に行かない人でも受益者となりうることを考慮されたい。
(事務局)この評価はあくまでも試案として作成したもので、今後ご指摘を踏まえ、改善してゆくものと考えている。
今回の説明は、中長期的な仕組み作りを目指すものと理解するが、問題意識の中心部分をクリアにする必要がある。また、現在は古典的公共概念・公共事業から新しい公共概念・公共事業を実現しようとする転換期にあると思うが、事務局としては、自然公園の有する公共性を古典的な費用負担につなげようとしているのか、それとも非権力的作用による新しい公共性概念を持ち出したいのか。
(事務局)自然公園に誰がどのような価値を認めどのような負担を負うべきか、特定のコストを負担する範囲、国と地方との関係等について幅広く考えてゆきたい。これまでの自然公園は国と地方公共団体が共に支えてきたもので、分担の議論が少なかったことは事実。昨今の地方分権・地方財政のひっ迫等を機に整理をする必要がある。
自然環境保全法的な考えに立って、自然公園の枠を超えた形で考えて欲しい。従来の自然公園の枠組みを超えた検討をお願いしたい。
環境価値の分類については、地球環境全体を考えるべきで、生物多様性の重要性を主張する環境省が、これを利用価値・非利用価値に分類してしまうのは残念。利用・非利用に分類できないところに環境の価値がある。
森林の価値を評価する際にもベネフィットとコストで処理するが、適切に表しきれない。しかし、自然公園でこのような評価をする必要はあると感じている。自然環境や生物多様性が保たれていることを数値化して積極的にアピールし、ベネフィットがなにかを示してあげないと、負担者側に積極性が出てこない。
国有林における取り組みの現状について。
森林の価値を評価する際にもベネフィットとコストで処理するが、適切に表しきれない。しかし、自然公園でこのような評価をする必要はあると感じている。自然環境や生物多様性が保たれていることを数値化して積極的にアピールし、ベネフィットがなにかを示してあげないと、負担者側に積極性が出てこない。
その他
自然公園内の森林と公園外の森林との違いが、景観的にも明確にできるとよいと思う。国立公園における森林管理ガイドラインがいるのではないか。なお、民間では森林認証制度が動いてきており、人工林においてはその管理の基準や指標がいろいろと出てきている。

 

問い合わせ先
環境省自然環境局国立公園課(大代表03-3581-3351)
課長 笹岡 達男 (内線6440)
課長補佐 河本 晃利  (内線6445)

(以上、委員発言の順不同、文責:事務局)