第5次水質総量規制の在り方について  

(総量規制専門委員会中間報告)

中央環境審議会水質部会

総量規制専門委員会

 

総量規制専門委員会名簿

委員長

委 員

委 員

専門委員

専門委員

専門委員

専門委員

専門委員

専門委員

専門委員

専門委員
.

専門委員

専門委員

須藤 隆一

浅野 直人

清水  誠

稲森 悠平

岡田 光正

佐藤 和明

高橋 力也

鶴谷 廣一

中西  弘

藤井 國博

眞柄 泰基
.

宮崎  章

渡辺 正孝

東北大学大学院工学研究科教授

福岡大学法学部教授

日本大学生物資源科学部海洋生物資源学科教授

国立環境研究所地域環境研究グループ総合研究官

広島大学工学部教授

建設省土木研究所下水道部長

東京農業大学農学部教授

運輸省港湾技術研究所海洋環境部長

山口大学名誉教授

農林水産省農業環境技術研究所環境資源部長

北海道大学大学院工学研究科都市環境工学専攻
環境衛生工学講座環境リスク工学分野教授

工業技術院資源技術総合研究所水圏環境保全部長

国立環境研究所水土壌圏環境部長


目   次

 

T 水質総量規制の実施状況等について

.

1 水質総量規制及び富栄養化対策の経緯 

2 汚濁負荷量の推移及び対策の実施状況

.

(1)汚濁負荷量の推移

(2)各種対策の実施状況

3 指定水域の現況と水質の評価

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(1)水質の状況

(2)被害及び利水等の状況

(3)汚濁負荷量の削減による水質改善効果

4 指定水域の水質汚濁のメカニズム

.

(1)指定水域の水質に影響を与える要因

(2)水質予測モデルによる評価

U 第5次水質総量規制の在り方について  

.

1 指定水域におけるCOD及び窒素・燐の汚濁負荷量削減の必要性

2 第5次水質総量規制の位置付け

3 第5次水質総量規制における施策の基本的考え方

4 水質総量規制制度の実効性確保上の留意点

  〔図、表〕

 

 


 

T 水質総量規制の実施状況等について

1.水質総量規制及び富栄養化対策の経緯

 水質総量規制制度は、人口、産業等が集中し、汚濁が著しい広域的な閉鎖性水域について、生活環境保全に係る水質環境基準を確保することを目的として、当該水域の水質に影響を及ぼす汚濁負荷量の総量を一定量以下に削減しようとする制度であり、昭和53年に「水質汚濁防止法」及び「瀬戸内海環境保全特別措置法」の改正により導入された。

 総量規制の対象となる指定水域及び指定地域(指定水域の水質の汚濁に関係のある地域)並びに指定項目(汚濁負荷量の削減対象項目)は政令で定められることとされている。本制度に基づき、昭和54年以来4次にわたり、CODを指定項目とした総量規制が実施されており、その指定水域は、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海とされ、また、これら指定水域への流入域である20都府県の関係地域が指定地域とされている。毎次の総量規制において国による総量削減基本方針が定められ、これに基づき関係都府県の総量削減計画が策定され、規制手段を含めCOD削減のための幅広い施策が総合的かつ計画的に講じられてきた。

 現在進められてい髑謔S次の総量削減基本方針は、平成7年度を初年度とし、平成11年度を目標年度としたものであり、第3次までの実績の上に立って、より一層CODの削減を進めるべく、海域ごとの目標年度における発生源別、都府県別の削減目標量と、汚濁負荷量の総量の削減の方途が定められている。この第4次総量規制の在り方を巡っては、中央環境審議会において、CODの環境基準の達成を果たすためには、陸域から流入するCODのみならず、対象水域内において栄養塩である窒素・燐により増殖する植物プランクトンによる有機汚濁(内部生産)を抑制する必要性があるとの議論がなされ、総量規制の指定項目に窒素・燐を加えることの妥当性についても審議されたところである。しかし、平成7年当時は、次に述べるように窒素・燐に係る対策の枠組みの整備が緒についたばかりであったことなどもあり、慎重な審議の結果、直ちに総量規制を適用することには時期尚早として見送られた経緯がある。 

 いずれにせよ、今日までのCODによる汚濁の状況をみると全般的にはほぼ横ばいであり、指定地域内の社会経済活動が増大したことを考えれば、総量規制の効果を評価し得るものの、環境基準の達成状況を向上させるには、なお一層の努力が必要とされている。

 一方、指定水域においては、富栄養化対策としての窒素・燐の削減への取り組みが順次進められてきた。具体的には、瀬戸内海については「瀬戸内海環境保全特別措置法」に基づき昭和55年度から燐について、そして、平成8年度からは窒素についてそれぞれ関係府県が削減指導方針を策定し、削減指導が行われてきた。また、東京湾及び伊勢湾では、昭和57年度から関係都県により策定された富栄養化対策指導指針に基づき、窒素・燐の削減指導が行われている。

 さらに、平成5年8月に環境庁は閉鎖性海域の窒素・燐に係る環境基準を設定し、平成7年2月には東京湾、伊勢湾及び大阪湾について環境基準の類型あてはめを行い、大阪湾を除く瀬戸内海の他の海域についても順次あてはめ作業が進められた結果、平成10年4月には指定水域の全水域について類型あてはめが完了した。

 これと並行して、平成5年10月からは「水質汚濁防止法」に基づく窒素及び燐の排水規制が実施されている。同時に、関係6省庁によって平成5年8月にとりまとめられた「海域の富栄養化対策の総合的推進について」に基づき、多岐にわたる窒素・燐の発生源からの汚濁負荷量を効果的に削減するための各般の対策が推進されてきているところである。

 以上のような対策の展開や今後の対策推進の必要性を考え合わせれば、閉鎖性海域の水質環境基準の確保を目指す総量規制制度は、従来の指定項目であるCODに加えて、富栄養化の原因である窒素・燐をも同時に視野に入れて本格的な検討を行うべき時期に至っている。したがって、本報告ではCODとともに、窒素・燐についても考察を加えた。

 

2.汚濁負荷量の推移及び対策の実施状況

 (1)汚濁負荷量の推移

@ COD負荷量
 CODの負荷量については、総量削減基本方針により削減目標量が設定されており、総量規制制度が開始された昭和54年度の実績値は、それぞれ東京湾では477t/日、伊勢湾では307t/日、瀬戸内海では1,010t/日であったが、平成7年度の実績値は、それぞれ東京湾では272t/日、伊勢湾では241t/日、瀬戸内海では735t/日であり、昭和54年度実績値を100とした指数で見ると、東京湾が57、伊勢湾が79、瀬戸内海が73となっている。また、第4次水質総量規制の目標年度である平成11年度の削減目標量は、それぞれ東京湾では263t/日、伊勢湾では229t/日、瀬戸内海では717t/日であり、昭和54年度実績値に対する指数で見ると、東京湾が55、伊勢湾が75、瀬戸内海が71となっている。一方、発生源別には3海域全体で平成11年度の削減目標量は、それぞれ生活系が632t/日、産業系が439t/日、その他系が138t/日で、昭和54年度実績値に対する指数で見ると、生活系が66、産業系が66、その他系が81となっている ( 表1及び 図1参照)。

 現在、第4次総量規制のもとで引き続きCOD負荷量の削減が進められているが、概ね平成11年度目標値程度にまで削減される見通しとなっている。

A 窒素・燐負荷量
 窒素・燐の負荷量については、関係都府県が定める富栄養化対策指導指針あるいは窒素・燐の削減指導方針に基づき目標の設定が行われている。
 まず、窒素の負荷量を水域別に見ると、平成6年度の実績値は東京湾が281t/日、伊勢湾が174t/日、瀬戸内海が737t/日であるのに対し、平成11年度目標値は東京湾では278t/日、伊勢湾は167t/日、瀬戸内海は722t/日となっている。

 また、窒素の負荷量を発生源別に3海域全体で見ると、平成6年度では生活系で447t/日、産業系で355t/日、その他系で389t/日であるのに対し、平成11年度目標値は生活系で444t/日、産業系で331t/日、その他系で392t/日となっている( 表2及び 図2参照)。

 次に、燐の負荷量を水域別に見ると、平成6年度の実績値は東京湾が23.0t/日、伊勢湾が18.5t/日、瀬戸内海が42.6t/日であるのに対して、平成11年度目標値は東京湾では22.0t/日、伊勢湾では17.1t/日、瀬戸内海では41.2t/日となっている。

 また、燐の負荷量を発生源別に3海域全体で見ると、平成6年度では生活系で37.2t/日、産業系で23.6t/日、その他系で23.3t/日であるのに対して、平成11年度目標値は生活系で35.4t/日、産業系で22.3t/日、その他系で22.6t/日となっている( 表3及び 図3参照)。

 現在、各種施策により窒素・燐の負荷量の削減が図られているが、概ね平成11年度目標値程度にまで削減される見通しとなっている

 (2)各種対策の実施状況

@ 生活系の汚濁負荷削減対策
 生活系の汚濁負荷削減対策としては、下水道等の生活排水処理施設の整備、し尿処理施設での処理の高度化の推進のほか、市民の協力を得たきめ細かい生活排水対策の推進等が進められてきた。

 東京湾地域では下水道の整備が順調に進み、下水道による生活排水処理の比率が約63%(平成元年度)から約75%(平成6年度)に増加している一方で、し尿処理場利用人口、浄化槽利用人口は減少傾向にある。伊勢湾地域においては、下水道整備が鋭意進められているものの、東京湾地域に比べてその速度は遅く、処理の比率は平成元年度〜6年度で5ポイント増加し約35%となっている。また、し尿処理場利用人口が年々減少する中で、浄化槽利用人口は増加傾向にある。瀬戸内海地域においては、下水道による処理の比率が平成元年度〜6年度で8ポイント増加して全国平均レベル(約51%)となる一方で、し尿処理場利用人口は年々減少し、浄化槽利用人口は横ばいで推移している( 表4参照)。

 各地域においては、浄化槽について合併処理浄化槽の設置促進が図られCODの削減負荷に寄与するとともに、下水道の整備における富栄養化対策としての窒素・燐の除去率の向上を目指した高度処理の導入等が進められている。

 また、水質汚濁防止法に基づく生活排水対策重点地域の指定及び生活排水対策推進計画の策定が進んでいるほか、都府県が策定した生活排水対策に係る指導要綱等に基づく指導も行われており、それとともに住民に対する普及・啓発活動も幅広く行われてきた。その結果、流域ごとの住民の生活排水対策に関連する活動が盛んになっている。

 平成7年度の生活系のCOD負荷量の実績をみると、669t/日となっており、昭和54年度を100とした場合の指数は70である。この間、指定地域内の人口は約8%(約500万人)増加しており、これに伴い排水量が約14%増加しているが、排水濃度の大幅な低下により負荷量が削減されている。この削減分は雑排水による汚濁負荷の減少に対応しているが、このうちの大部分が下水道の整備及び処理水質の向上に伴うものとなっている。

A 産業系の汚濁負荷削減対策

 産業系の汚濁負荷削減対策としては、指定地域内事業場においては、排水処理施設の整備のほか、用水の合理化、製造工程・原料の変更等の工程内対策等が講じられている。

 指定地域内事業場における排水処理施設の整備状況を見ると、一般的に用いられる生物処理施設、凝集沈殿施設等のほかに、一部では砂ろ過、活性炭処理といった高度処理施設が設置されている。また、窒素・燐を排出する一定規模以上の工場・事業場について、排水処理施設の整備及び処理の高度化、原材料の変更等の工程内対策が推進されつつある。

 小規模・未規制事業場排水対策としては、地方公共団体における条例、要綱の整備、技術マニュアルの作成等により対策の推進が図られている。

 また、平成7年度の産業系の主な業種別のCOD負荷量の実績をみると、指定地域内事業場に係る製造業(主要6業種)が237t/日、下水処理場(産業系)が37t/日、小規模・未規制事業場が155t/日となっており、昭和54年度を100とした場合の指数は、製造業(主要6業種)では64、下水処理場では71、小規模・未規制事業場では80となっている(表5参照)。

 この間の指定地域内における産業の動向は、例えば製造品出荷額でみると約1.5倍となっているが、負荷量は排水濃度の低下と排水量の減少の両要因により削減されている。

B その他系の汚濁負荷削減対策

生活系、産業系以外の畜産排水や市街地等から降雨等により流出する非特定汚染源などのその他系の汚濁負荷削減対策としては、指導要綱等により畜産排水対策に係る指導、養殖漁場における給餌量の適正化、農地における施肥量の適正化等が進められている。また、各関係機関によって海域及び河川における底泥の除去、覆砂事業及び河川等の直接浄化対策の実施とともに、干潟等の沿岸生態系の保全・回復対策等が講じられている。

平成7年度のその他系のCOD負荷量の実績をみると、135t/日となっており、昭和54年度を100とした場合の指数は79である。この減少分は、主に豚、牛の飼育頭数の減少等に伴うものとなっている。

3.指定水域の現況と水質の評価

 (1)水質の状況

   @ CODの状況

 東京湾の水質を水域全体のCOD濃度(75%値)の平均値で見ると、長期的には改善傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、湾奥部で3〜5mg/L程度、湾央部では2〜3mg/L程度で、総量規制制度が導入された昭和53〜55年度当時の4〜6mg/L程度(湾奥部)、3〜4mg/L程度(湾央部)に比べて濃度が低下し、改善傾向が見られる。

 しかし、環境基準の達成率の向上までには至っておらず、達成率は60%強のレベルで、昭和54年当時からほぼ横ばいで推移している。類型別にみると、C類型は昭和53年度以降全ての水域で環境基準を達成しており、B類型は40%弱のレベルでほぼ横ばいで推移している。これに対し、A類型は全ての水域で昭和53年度以降未達成となっている。季節による水質の特徴をみると、夏季(7〜9月)は冬季(1〜3月)に比べ高い濃度となっている( 図4 図5及び 図6参照)。

伊勢湾では、水域全体のCOD濃度(75%値)の平均値を見ると、昭和59年度以降、長期的には改善傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、湾奥部で3〜5mg/L程度、湾央部では2〜3mg/Lの程度であり、昭和53〜55年度当時の水質と比べて三河湾を除き湾奥部中心に改善傾向がみられる。また、環境基準の達成率は、年度により変動があり、類型別に見ると、B類型の変動が大きく、これが環境基準の達成状況の変動の原因になっている。これに対し、C類型は全ての水域で環境基準を達成しており、A類型は昭和53年度以降ほぼ未達成で推移している。水質の季節変化を見ると、東京湾と同様、夏季に高い値を示している( 図4 図5及び 図7参照)。

瀬戸内海では、水域全体のCOD濃度(75%値)の平均値を見ると、ほぼ横ばいで推移している。大阪湾等の湾奥部においては、近年(平成7〜9年度)3〜5mg/L程度で、昭和53〜55年度当時に比べて改善傾向が見られる。また、環境基準の達成率も、全体としてはほぼ横ばいで推移しているものの、類型別に見ると、C類型は昭和53年度以降ほぼ環境基準を達成しており、B類型は80%強で推移しているのに対し、A類型は昭和63年度以降達成率が低下傾向にある。水質の季節変化を見ると、他の水域と同様に夏季に高い値を示している( 図4 図5及び 図8参照)。

A 窒素・燐の状況

窒素について、東京湾の水質を水域全体の平均値で見ると、長期的には改善傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、湾奥部で1〜2mg/L程度、湾央部では0.6〜1mg/L程度であり、富栄養化対策指導指針による削減指導開始以前の昭和53〜55年度当時の1.2〜2mg/L程度(湾奥部)、0.8〜1.2mg/L程度(湾央部)に比べて若干濃度が低下し、改善傾向が見られる( 図9及び 図10参照)。

伊勢湾では、水域全体の平均値で見ると、概ね横ばい傾向にあり、近年(平成7〜9年度)は、湾奥部で0.4〜0.6mg/L程度、湾央部では0.3〜0.4mg/L程度である。なお、湾奥部では削減指導開始以前の昭和53〜55年度当時の水質と比べて若干悪化している水域も見られる( 図9及び 図11参照)。

 瀬戸内海では、水域全体の平均値で見ると、長期的には改善傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、特に大阪湾の湾奥部で0.8〜1.0mg/L程度、湾央部で0.4〜0.8mg/L程度で、53〜55年度当時の0.8〜1.2mg/L程度(湾奥部)、0.6〜0.8mg/L程度(湾央部)に比べて若干濃度が低下し、改善傾向が見られる( 図9及び 図12参照)。

 次に、燐について、東京湾の水質を水域全体の平均値で見ると、長期的には改善傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、湾奥部で0.08〜0.2mg/L程度、湾央部では0.04〜0.08mg/L程度で、富栄養化対策指導指針による削減指導開始以前の昭和53〜55年度当時の0.1〜0.2mg/L程度(湾奥部)、0.06〜0.1mg/L程度(湾央部)に比べて濃度が低下し、改善傾向が見られる( 図13及び 図14参照)。

伊勢湾では、水域全体の平均値で見ると、おおむね横ばい傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、湾奥部で0.04〜0.06mg/L程度、湾央部では0.03〜0.04mg/L程度で、削減指導開始以前の昭和53〜55年度当時の水質と比べて湾奥部で若干悪化している水域も見られる( 図13及び 図15参照)。

 瀬戸内海では、水域全体の平均値で見ると、おおむね改善傾向にある。近年(平成7〜9年度)は、大阪湾の湾奥部で0.06〜0.08mg/L程度、湾央部で0.03〜0.06mg/L程度で、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく削減指導方針が策定された昭和55年度当時の大阪湾の湾奥部0.1〜0.12mg/L程度に比べて濃度が低下し、改善傾向が見られる( 図13及び 図16参照)。

なお、窒素・燐の環境基準の平成9年度の達成率を見ると、東京湾では水域全体で50%、伊勢湾では29%、瀬戸内海では環境基準の類型あてはめがなされている大阪湾を含む15水域で80%となっている。類型別に見ると、東京湾においてはU類型及びV類型での達成率は0%であるが、W類型では75%であり、伊勢湾においてはU類型及びV類型での達成率は0%であるが、W類型では100%である。また、瀬戸内海においてはU類型の達成率では78%、V類型では80%、W類型では100%となっている。すなわち、3水域いずれにおいてもU類型、V類型、W類型の順で達成率が高くなっている。

 (2)被害及び利水等の状況

 水質汚濁による海域利用上の障害の発生状況を計る一般的な指標としては、赤潮や貧酸素水塊の発生とそれによる漁業被害等への影響がある。 

 赤潮の発生状況については、東京湾においては東京都等の調査結果によれば、夏季には湾奥部ばかりでなく湾央部に至る広域で、ほぼ慢性的に赤潮の発生が報告されている。伊勢湾においても愛知県等により赤潮の調査が行われており、東京湾と同様に夏季に広域的かつ慢性的な赤潮の発生が報告されている。瀬戸内海においては、水産庁による経年的な調査結果があり、それによれば、これまでのピークであった昭和50年代前半の発生件数に比べれば減少はしているものの、近年においても年間100件前後の赤潮の発生が確認されており、平成9年の発生件数はそれ以前の10年間に比べて増加傾向が見られている。特に、大阪湾、播磨灘、周防灘等の水域での発生頻度が高くなっている( 表6参照)。

 東京湾における青潮(貧酸素水塊:夏季において底質中の有機物の濃度が高まりその分解に伴い、水中の溶存酸素の大量消費が起こり、酸素量が極めて少ない水塊が発生するもの。海上からこの水塊を見ると青みがかっているためこの名がある。別名苦潮。)については、東京都等の調査によれば、毎年数件の発生が確認されている。また、愛知県の調査によれば、三河湾における苦潮についても毎年数件から十数件程度の発生が報告されている( 表6参照)。

 赤潮又は貧酸素水塊による水産生物への被害状況を経年的に見ると、平成元年以降はやや低減傾向にあるものの、最近では若干ながら再び増加している。また、平成元年から8年の間に全国で報告された水産障害のうち、被害額で見れば、赤潮では約6割が、また、貧酸素水塊ではほぼ全てが、総量規制に係る指定水域で発生している。なお、貧酸素水塊による被害については、養殖漁業ではなく天然の海産物に与える被害の比率が高い。特に、東京湾においては、夏季に湾奥部から中央部にかけて広範囲な貧酸素水塊が形成され、底生生物の生息が困難な状況になっており、健全な生態系の保全及び水産生物の健全な再生産を維持するためには、一層の水質の改善が必要となっている。

 海域の水質保全の必要性は、漁場としての重要性にとどまらない。近年は親水機能を併せ持った港湾の建設、海浜空間の住宅、公園としての利用が進み、身近な親水空間としての湾岸域の価値が益々高まっている。また、国民の親水意識の高まりにつれて、人工渚の建設も進み、海水浴、プレジャーボート、釣り等の海洋性レクリエーションの需要の増大が見られ、それに伴い、良好な水域環境の確保が重要な課題となっている。こうした状況の中で、現在の水質汚濁は以上のような親水機能や海洋性レクリエーション機能に社会的便益の損失をもたらしているとみなすことができる。

 (3)汚濁負荷量の削減による水質改善効果

 指定地域において各種の対策がそれぞれの分野で実施され、汚濁負荷量の削減のための努力が払われた結果、COD及び燐については各水域とも着実に汚濁負荷量が削減されてきている。また、窒素については、東京湾、伊勢湾においては汚濁負荷量が削減されてきているが、瀬戸内海においては削減に係る対策の取り組みが遅れたこともあり、汚濁負荷量は横ばいの状況となっている。

CODの汚濁負荷量と海域のCOD濃度の推移との関係について見ると、負荷量の削減率が大きい東京湾及び大阪湾においては依然として汚濁の水準は高いものの、負荷量の削減に応じてCOD濃度が低下する傾向が見られるの対し、両湾に比べて削減率が小さい伊勢湾及び大阪湾を除く瀬戸内海については、COD濃度の改善の傾向は必ずしも顕著ではない。しかしながら、三河湾を除く伊勢湾においても湾奥部の高濃度の領域においては改善傾向が見られる水域が多い。

 次に、窒素・燐の汚濁負荷量と海域の窒素・燐濃度の推移との関係について見ると、窒素については、負荷量の削減率が比較的大きい東京湾では、水質は改善傾向にあるが、削減率のあまり大きくない伊勢湾では、水質は横ばいで推移している。また、負荷量が横ばいである瀬戸内海については、水質はここ数年若干改善傾向にあるが負荷量との明確な関係は得られていない。一方、燐については、負荷量の削減率の大きい東京湾及び瀬戸内海では、水質は改善傾向であるのに対し、削減率があまり大きくない伊勢湾では、水質は横ばいで推移している。

 当該水域は、我が国の人口の約半分を抱え、製造品出荷額においては約6割弱を占めている人口と産業の集中地域であり、これまで一貫して経済・社会活動が活発に展開されてきた地域である。こうしたなかで、水質を今日の状況に保持し得たのは、これまで進められてきたCODに係る4次にわたる総量規制の実施や、関係都府県による窒素・燐に係る削減指導及び平成5年度から実施されている排水規制等の施策が水質悪化抑止の効果をもたらしたことによるものと判断される。

 

4.指定水域の水質汚濁のメカニズム

 (1)指定水域の水質に影響を与える要因

 指定水域の水質汚濁の状況を見ると、有機汚濁の指標であるCODの環境基準の達成率は満足できる状況になく、また、赤潮、貧酸素水塊といった富栄養化に伴う環境保全上の問題が発生している状況にある。

 指定水域の有機汚濁は、海域に流入する有機汚濁と内部生産に由来する有機汚濁の双方によって形成されている。また、この富栄養化の主要な要因として窒素及び燐が指摘されている。すなわち、窒素・燐濃度が高くなれば、植物プランクトン量の指標であるクロロフィルa濃度及びCOD濃度が増加し、透明度及び夏季底層の溶存酸素量が極端に低下し水質悪化を招くというように、窒素・燐濃度と海域の関連する水質指標との間には一定の量的関係が認められる。

 指定水域のCOD濃度の経月変化を見ると、年間変動が大きく、夏季に高くなり冬季に低くなっている。この変動は、基本的には内部生産の量に対応していると考えられる。

 指定水域の内部生産の寄与率を△COD法(COD濃度の年間最小値からの増加分を内部生産COD量と仮定する方法)及びクロロフィルa法(クロロフィルa濃度とCOD濃度の関係から内部生産COD量を推定する方法)により算定した結果によれば、水域によって差はあるものの、全CODに占める割合は年平均で約4割程度である。季節的に見ると、内部生産が活発になる夏季においてその寄与率は年平均よりも高くなっている。

 また、植物プランクトンの増殖と窒素・燐濃度の関係をみると、指定水域における窒素と燐の比(以下N/P比という。)は、季節的に変動しており、また、発生する植物プランクトン体中のN/P比もその種によって相当の幅があることから、一定の関係は見いだせない。このため、窒素又は燐のいずれか一方のみが植物プランクトンの増殖に影響しているとはいえない状況にある。

 さらに、底泥からのCOD及び窒素・燐の溶出も指定水域の水質に影響を及ぼすが、底泥そのものが基本的には陸域から流入する汚濁負荷の結果として存在することも考慮する必要がある。これまでの調査・研究報告によれば、指定水域の底泥からのCOD及び窒素・燐の溶出量の陸域負荷に対する比率は、10%から25%程度である。

これらのメカニズムを踏まえると、指定水域のCODによる水質汚濁改善のためには、内部生産を抑制するために、窒素・燐の汚濁負荷の削減が必要といえる。なお、指定水域におけるCODの構成を推計した結果では、バックグラウンドが約3〜4割、陸域からのCOD負荷によるものが約2〜3割程度、内部生産によるCODが約4割となっており、CODの抑制を図るためには、陸域から流入するCODの削減と併せて窒素・燐の負荷量を削減することが効果的であると考えられる。

 

 (2)水質予測モデルによる評価

 COD及び窒素・燐の汚濁負荷量の削減が、各指定水域の水質改善にもたらす効果を推定する手段の一つとして、水質シミュレーションによる予測が利用されている。こうしたシミュレーションは、COD及び窒素・燐の汚濁負荷量の削減に伴う水域の水質濃度の変化、特にCOD濃度に関して、窒素・燐の削減に伴う内部生産に由来するCOD濃度の変化についての傾向を把握するのに有用である。今回用いられたシミュレーションモデルでは、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海について夏季を対象に計算を行ったところ、流動状況、水域の水質濃度等について良好な現況再現が得られ、また、内部生産CODの寄与率についてもΔCOD法等により得られている結果とほぼ一致する結果が得られている。

 このモデルを用いて、COD及び窒素・燐の流入負荷量をそれぞれ削減した場合における各水域の水質濃度の予測を行った結果、流入負荷量の削減率に応じて水域のCOD及び窒素・燐濃度がそれぞれ低下し、これに伴い環境基準達成地点数も増加することが確認された。さらにCODについては、CODと併せて窒素、燐を削減した場合において、COD濃度が一層低下することがわかった。すなわち、CODと併せて窒素・燐を削減した場合のCOD濃度の低下は、CODのみを削減した場合に対して約1.5〜3倍になるという結果が得られている。

 

 

U 第5次水質総量規制の在り方について    

1.指定水域におけるCOD及び窒素・燐の汚濁負荷量削減の必要性

指定水域における水質の状況及び利水上の障害の状況等をみても、今後とも一層の努力を払い、これらの水域における水質の改善を図っていくことが必要である。

これまでCODについては、4次にわたる総量規制の実施により、着実に汚濁負荷量の削減が図られてきた。また、依然として雑排水による負荷量の占める割合が高い状況にあることから、今後においても生活系における対策の一層の推進による削減が見込まれるところである。しかしながら、現状ではCODの環境基準の達成率ははかばかしい改善を見るまでには至っておらず、内部生産に由来する有機汚濁が少なからぬ比率を占めていることを考えあわせると、CODの汚濁負荷量の削減だけをもって、CODの環境基準の達成を図ろうとすることは、すでに限界にきていると言わざるを得ない状況にある。

 また、窒素・燐については、関係都府県で策定されてきた富栄養化対策指導指針等に基づき、それぞれの海域において削減指導が行われるとともに、環境基準の設定及び類型あてはめ、さらには、水質汚濁防止法に基づき一定規模以上の工場・事業場に対する排水規制が導入されるなど、各種の改善対策が実施されてきた。しかしながら、窒素・燐の環境基準の達成率は満足できる状況ではなく、加えて、赤潮等による水産生物への被害も依然として深刻な状況にある。これらのことから、各種対策の効果を見極めつつ、窒素・燐の環境基準の達成に向け、水質改善努力を一層促進することが必要な状況にある。

これらの状況を踏まえれば、窒素・燐の一層の削減を推進することは、窒素・燐の環境基準の達成を加速することに併せ、CODに係る環境基準の達成に向けたより効果的な施策の選択であると考えられる。また、その着実な推進を図るならば、長期的にはCODの環境基準及び窒素・燐の環境基準の達成率の大幅な向上につながるものと考えられる。このことは、指定水域における水質汚濁メカニズムを踏まえた水質予測結果からも裏付けられる。

 以上のことから、第5次水質総量規制においては、CODの削減と併せ窒素・燐のより効果的な削減を図ることが求められているものである。

 

2.第5次水質総量規制の位置付け

 水質総量規制制度は、指定水域の水質保全を目的として、国が策定した総量削減基本方針に基づき、指定水域に面した地域のみならず、その水域に関係する内陸部も含めた地域が一体となって、下水道の整備等の事業の実施、総量規制基準による汚濁負荷量の規制、小規模事業場等の対する汚濁負荷削減に係る指導の実施等の施策を総合的かつ計画的に推進する制度である。

 指定地域において、CODのみならず窒素・燐とを併せた総合的な削減を図るためには、特に窒素・燐の汚濁負荷量を効果的に削減するための枠組みが必要である。これまで窒素・燐に関しては、各水域における削減指導等に続き、水質汚濁防止法に基づく排水規制、さらには一部都県による上乗せ規制が実施されてきているが、発生源が多岐にわたっていることもあり、工場・事業場規制のみによっては十分な効果は期待できないものと考えられる。したがって、窒素・燐の削減のための各種施策を総合的に推進することが必要となっているが、その際、総量規制制度の特性を活かした対応は極めて有効であると考えられる。

 さらに、窒素・燐の削減は、当該環境基準の達成のみならず、CODの環境基準の達成にも不可欠な対応であることから、CODの総量規制制度の実効確保に資するためにも、窒素・燐につき総量規制制度のもとで計画的に削減を図ることが適当であると考えられる。

 これらのことから、第5次水質総量規制においては、従来のCODに加えて、新たに窒素・燐を総量規制の対象項目として指定することが適当である。また、窒素・燐に係る指定水域及び指定地域については、窒素・燐の環境基準の確保を図るとともに、COD及び窒素・燐とを併せた一体的な削減対策を推進することによりCODの環境基準の確保を図る観点から、CODに係る指定水域及び指定地域と同じとすることが適当である。さらに、目標年次については、段階的に実効性を伴う削減を図る観点から、4次にわたる総量規制の実績等を踏まえ平成16年度を目標年度とすることが適当である。

 

3.第5次水質総量規制における施策の基本的考え方

 第5次総量規制においては、COD及び窒素・燐の汚濁負荷量の削減を図るための各種施策の推進が必要であるが、特に新たに対象とする窒素・燐については、発生源が多岐にわたることから、その汚濁負荷の実態に応じた削減努力を促し、各種対策を推進することが重要である。

 総量規制制度における削減目標量については、人口及び産業の動向、汚水又は廃液の処理の技術の水準、下水道の整備の見通し等を勘案し、実施可能な限度における対策努力を前提に定めることとされている。そのため、第5次における削減目標量の設定に当たっては、COD及び窒素・燐の汚濁負荷量の削減に係る技術的水準の現状及び今後の見通し等を踏まえるとともに、これまでとられた対策努力、対策の難易度や費用対効果も勘案し、全体として効率的な削減が図られるよう生活系、産業系及びその他系の汚濁源に係る各種施策について十分な検討を加えることが必要である。

この観点から、まず、CODについては、生活系排水の汚濁負荷量に占める割合が大きいことから、下水道等の生活排水処理施設の整備を中心として一層の対策の推進を図る必要がある。また、産業系排水については、排水水質の実態、これまでの4次にわたる総量規制において実施されてきた削減対策等を勘案した上で、一層の汚濁負荷量の削減を図ることが適当である。なお、新増設の工場・事業場については、最新の技術による対応等により、できるだけ抑制を図るための措置を講じることが適当である。

 次に、窒素・燐については、各種施策の進捗により、削減対策が社会的にも定着しつつあるが、新たな総量規制のもとで、まず、各般の施策の総合的、計画的な実施の枠組みづくりとその定着化が必要である。生活系排水対策としては、市民の深い理解と協力のもとでの生活排水処理対策の一層の推進、下水道等における処理の高度化の推進等が重要であり、その計画的推進を図ることが必要である。また、産業系排水については、CODと同様の考えにたち一層の汚濁負荷量の削減を図ることが適当であるが、昨年10月の水質汚濁防止法に基づく暫定排水基準の見直しによる汚濁負荷量の削減の効果等を見極めつつ検討することが必要である。なお、窒素・燐の汚濁負荷量の測定方法については、汚濁負荷量が的確かつ効率的に把握できるよう、自動計測器の現場における適用性等を十分検討し設定することが必要である。その他系については、CODに比べ非特定汚染源などの汚濁源の占める割合が高いことから、その汚濁負荷量の的確な把握に努めるとともに、その発生特性を踏まえた対策のきめ細かい検討が必要である。なお、窒素のうち、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素については健康項目として水質環境基準が定められ、現在排水規制等の検討が進められているが、このような関連する施策との連携を図ることも必要である。

以上のことを踏まえ、第5次水質総量規制においては以下に例示する生活系、産業系、その他系に関する施策等について、関係者、関係機関等の十分な協力を得つつ推進することが必要である。

@ 生活系排水対策

・ 水質汚濁防止法に基づく重点地域の指定等による生活排水対策の推進

・ 下水道等の生活排水処理施設の整備の促進及び処理の高度化の推進

・ 生活系の指定地域内事業場に係る総量規制基準の適切な設定・強化

・ 単独処理浄化槽の合併処理浄化槽等への転換の促進

・ 窒素・燐の除去効率の高い合併処理浄化槽の普及促進

・ 浄化槽の適正な維持管理の一層の推進

・ 家庭からの汚濁負荷の削減のための普及啓発

   A 産業系排水対策

・ 産業系の指定地域内事業場に係る総量規制基準の適切な設定・強化

・ 下水道の整備の促進及び処理の高度化の推進

・ 窒素・燐の排水対策を含めた技術マニュアルの整備等による小規模・未規制事業場対策の推進

   B その他の対策

・ 農地、山林等からの汚濁負荷の特性を踏まえた負荷量削減対策の推進

・ 環境保全型農業の展開や家畜糞尿の適正管理の推進

・ 養殖漁場における改善対策の推進

・ 合流式下水道の改善等による都市地域の非特定汚染源対策の推進

・  底質の改善対策の推進

・ 河川等の直接浄化対策の推進

・ 干潟等沿岸生態系の保全・回復の促進

 なお、COD及び窒素・燐の汚濁負荷量の発生源の割合が、例えば東京湾においてはいずれの項目とも生活系排水の割合が高くなっているなど、各水域によって異なっていることを踏まえ、各種施策の重点化を図る等、地域特性に応じた効率的な取り組みが推進されるよう検討を行うことも重要である。

以上の点を踏まえ、今後の総量規制基準の設定等を行うにあたっては、技術水準等の評価について専門的立場からの意見を十分踏まえつつ検討が行われるとともに、総量削減基本方針の策定に向け、関係機関及び関係者の十分な理解と協力を得て、実効性のある対策が展開されるよう検討することが重要である。

 

4.水質総量規制制度の実効性確保上の留意点

  水質総量規制制度の実効性を高めるためには、指定水域に流入する汚濁負荷量の削減のみならず、汚濁負荷の原因となる産業経済活動や国民生活活動全般についても視野に入れた対応が求められていると言えよう。また、実効性の確保に当たっては、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海という我が国の代表的な閉鎖性海域における開発、利用状況の変化についても十分留意する必要がある。

 まず、今回新たに水質総量規制の対象とする窒素・燐については、3海域における負荷実態をみると、海域毎の特性を有しつつも生活系、産業系、その他系のそれぞれが負荷要因となっている。したがって、窒素・燐による水質汚濁問題に対しては、これを踏まえた対応が求められる。言うまでもなく、窒素・燐は社会、経済活動を支える基礎的な資源であるが、これらは肥料、工業薬品等の原料としてあるいは食料品や飼料として大量に輸入され、関連する産業活動に伴う排水として、また、食料の生産、供給システムにおける循環の過程での土地系や畜産系などのその他系の汚濁負荷として、さらには、食物の消費の結果、生活系の排水として環境中に排出されている。この点を踏まえると、窒素・燐による環境汚染問題の根本的解決に向け、窒素・燐の循環の確保、回収利用の促進を念頭に置いた国民経済社会全体としての取り組み、特に、環境にやさしい資源利用の在り方を踏まえた取り組みが求められていると言えよう。この観点から、第5次水質総量規制のもとでの各般の施策の展開においても、窒素・燐のリサイクルの促進等につながるような十分な配慮が重要である。

次に、指定水域における大型開発プロジェクトの実施等により、流動状況や沿岸生態系に変化がもたらされ、それに伴い水質汚濁機構が変化することが考えられる。指定水域の水質改善を図っていくためには、沿岸生態系の持つ水質の浄化機能を適正に保つことや、海水の一層の滞留を引き起こさないような対応が重要と考えられる。したがって、水質シミュレーションの活用等により、これらの影響を的確に予測、評価するとともに、水質の状況や、汚濁負荷の削減に伴う水質改善効果についても適宜検証していくことが必要と考えられる。

これらの点も含め、より広くわかりやすい形での情報提供を行い、幅広い国民の十分な理解と協力のもとに、指定水域の水質保全に関する各種施策の展開を図ることが重要である。

 


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