法令・告示・通達

南極地域の環境の保護に関する法律第四条第一項の規定に基づく南極地域の環境の保護のために配慮しなければならない基本的な事項

  • 公布日:平成9年10月8日
  • 環境庁告示56号

 南極地域の環境の保護に関する法律(平成九年法律第六十一号)第四条第一項の規定に基づき、南極地域の環境の保護のために配慮しなければならない基本的な事項を定め、同条の施行の日から施行する。
 南極地域においては、千九百六十一年に領土権の主張の凍結、軍事利用の禁止、科学的調査の自由とそのための国際協力の推進等について定める南極条約が発効し、以来科学観測の場として利用されてきた。南極地域は人類の活動による破壊や汚染の影響をわずかしか受けていない地球上に残された最大の原生地域であり、地球環境のモニタリングの場等としてかけがえのない価値を有している。一方、近年においては基地活動や観光利用による環境影響の増加も懸念されており、人類共通の財産としての南極地域の環境の保護が国際的に要請されてきた。
 このため、千九百九十一年には、南極地域を平和及び科学に貢献する自然保護地域として位置づけ、その環境の包括的な保護を図るための環境保護に関する南極条約議定書(以下「議定書」という。)が採択され、そこにおいて、南極地域における活動を計画する際の環境影響評価の実施、動植物相の保存、廃棄物の適切な処分等の幅広い義務が規定されたところである。
 本事項は、南極地域の環境の保護に関する法律(以下「法」という。)第四条第一項の規定に基づき、議定書の的確かつ円滑な実施を図るため、南極地域活動を主宰する者及び南極地域活動の行為者が南極地域の環境の保護のために配慮しなければならない基本的な事項を定めるものである。
1 南極地域の環境の保護は、南極地域活動計画を策定し、また南極地域活動をする際に考慮すべき基本的な事項であること。
2 1を踏まえ、南極地域活動計画を策定しようとする際には、当該南極地域活動計画に含まれる南極地域活動の南極環境影響を限定するように、また南極地域活動をする際には、当該南極地域活動の南極環境影響を限定するようにすることとし、このため、次に掲げる事項に配慮すること。
 (1) 南極地域活動は、次に掲げるものであってはならないこと。
  イ 南極地域の気候の自然な変動に影響を及ぼすおそれのある南極地域活動
  ロ 南極地域の大気の著しい汚染、水質の著しい汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質の著しい悪化を含む。)又は土壌の著しい汚染の原因となるおそれのある南極地域活動
  ハ 南極地域の大気の組成を変化させ、土地(海底を含む。)若しくは氷床の形質を著しく変更し、又は河川、湖沼等の水位若しくは水量に著しい増減を及ばすおそれのある南極地域活動
  ニ 南極地域に生息し、又は生育する動植物の種について、その種の個体の主要な生息地又は生育地を消滅させるおそれのある南極地域活動、種の存続に支障を来す程度にその種の個体の数を著しく減少させる南極地域活動その他のその種の個体の生息状態又は生育状態に著しく影響を及ぼすおそれのある南極地域活動
  ホ 南極地域の固有の価値であって重要なものを有する地域において、当該価値を著しく減ずるおそれのある南極地域活動
 (2) 南極地域活動計画は、その事前の評価が可能な十分な情報に基づき、当該南極地域活動計画に含まれる南極地域活動の南極環境影響についての判断をした上で策定すること。また南極地域活動は、その事前の評価が可能な十分な情報に基づき、当該南極地域活動の南極環境影響について判断した上で実施すること。このような判断に当たっては、次に掲げる事項を十分に考慮すること。
  イ 当該南極地域活動の時期、場所及び南極環境影響の程度
  ロ 当該南極地域活動の南極環境影響と当該南極地域活動の場所において過去にされた南極地域活動の南極環境影響及び当該南極地域活動と同じ時期にされる他の南極地域活動の南極環境影響との累積による南極環境影響
  ハ 当該南極地域活動が他の南極地域活動に有害な影響を及ぼすか否か
  ニ 当該南極地域活動の南極環境影響が著しいものとならないようにするための技術上及び手続上の措置が適用できるか否か
  ホ 南極環境影響が著しいものであることを特定し、及び南極環境影響が著しいものとなるおそれがある場合には早期に警告を与えるために南極環境構成要素の観測又は測定を行う能力の有無並びに当該観測又は測定の結果若しくは南極地域の環境に関する科学的知見の充実により必要となる当該南極地域活動の南極環境影響が著しいものとならないようにするための当該南極地域活動の実施方法の修正を行う能力の有無
  ヘ 南極環境影響が予想される事故に対し迅速かつ効果的に対応する能力の有無
 (3) 南極地域活動をする際には、当該南極地域活動の南極環境影響についての事前の調査、予測及び評価の結果を検証するとともに、当該南極地域活動の事前に予測されなかった南極環境影響を早期に探知するため、当該南極地域活動が影響を及ぼす南極環境構成要素の観測又は測定を定期的かつ効果的に行うこと。
3 科学的調査以外の南極地域活動に係る南極地域活動計画を策定し、また科学的調査以外の南極地域活動を実施しようとする際には、南極地域において行われ、又は行われることとされている科学的調査が優先して行われ、また南極地域の科学的調査をする地域としての価値が保護されるようにすること。
4 南極地域活動を主宰する者は、環境大臣の確認を受けた南極地域活動計画に含まれる南極地域活動の行為者に対し、法又はこれに基づく命令の規定に違反しないように必要な指導を行わなければならないこと。その際には、当該南極地域活動の目的、時期、場所及び実施方法、法により禁止されている行為の内容並びに環境大臣の確認を受けてすることができることとされた動物の採捕、生きている生物の持込み及び動植物の生息状態又は生育状態及び生息環境又は生育環境に影響を及ぼすおそれのある行為並びに南極特別保護地区への立入りがある場合にはこれらの目的及びその詳細な内容について、必ず説明すること。
5 南極地域活動の行為者は、法又はこれに基づく命令の規定に違反しないことはもとより、南極地域の環境の保護の観点から、自らの行為の南極環境影響をできる限り少なくすることに常に留意しつつ行動すること。

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