法令・告示・通達

鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律の施行について

公布日:昭和53年08月23日
環自鳥116号

(各都道府県知事あて環境事務次官通達)
 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律が、第八四回国会において成立し、昭和五三年六月二〇日に法律第七六号をもつて公布され、その一部は同年七月二〇日から施行された。
 また、その施行に併せて、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令の一部を改正する政令(昭和五三年政令第二九二号)、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行規則の一部を改正する総理府令(昭和五三年総理府令第三四号)及び狩猟鳥獣の種類を定める件ほか七件の告示(昭和五三年七月環境庁告示第四二号から第四九号まで)が公布施行された。
 我が国の鳥獣行政の基本法である鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律は、大正七年に狩猟法として制定されて以来既に六〇年近くの年月を経ており、その間、本法が鳥獣保護及び狩猟の適正化に果たしてきた役割は少なからざるものがあるが、最近においては、国土の開発等に伴い鳥獣の生息環境及び狩猟の実態が大きく変ぼうし、これらに対応した制度の改善が各方面から強く要請されていた。
 今回の改正は、このような事態にかんがみ、鳥獣保護の充実、狩猟者資質の向上及び秩序ある狩猟の確保を図ることを目的として行われたものである。改正事項のうち特に緊急を要する特別保護地区における規制強化、銃猟制限区域の新設、法人に対する鳥獣捕獲許可制度の導入、特定の捕獲手段の特例(麻酔銃等)等の事項については、本年七月二〇日から施行された。
 貴職におかれては、改正後の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(以下「新法」という。)の適正かつ実効性ある施行について万全を期するため、左記事項に十分御留意の上、遺憾のないよう特段の御配慮を煩わしたく、命により通達する。
 なお、新法中狩猟免許制度の改善、猟区制度の充実、輸入規制の強化等の規定は、昭和五四年四月一六日から施行されるものであり、これらについては、別途通達する。

第一 狩猟鳥獣の捕獲禁止、鳥獣保護区の設定等の手続
  許認可等の整理合理化のため、都道府県知事が行う狩猟鳥獣の捕獲の禁止又は制限及び鳥獣保護区の設定については、環境庁長官の承認を得ることとされていたが、環境庁長官への事前の届出に改められた。これらの措置は、その地域における農林水産業に対する影響も考えられるので、鳥獣行政担当部局は、農林水産担当部局との事前の調整を十分行うとともに、地方農政局長及び営林局長の了解を得て行われたいこと。
第二 特別保護指定区域
 一 指定の目的
   改正後の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行令第七条の三第一項の規定により、環境庁長官(都道府県知事が指定する特別保護地区にあつては都道府県知事)が指定する区域(以下「特別保護指定区域」という。)は、特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律(昭和四七年法律第四九号)第二条第一項の特殊鳥類その他の絶滅のおそれのある鳥類及びニホンカワウソ等の絶滅のおそれのある獣類の生息地並びにウミスズメ等の集団繁殖地の保護を目的として設けられるものであり、これらの貴重な鳥獣は国において一元的に保護することが望ましいものであることにかんがみ、特別保護指定区域は、原則として、環境庁長官が設定する鳥獣保護区の特別保護地区の区域内に指定するものとすること。
 二 土地所有者の同意等
   特別保護指定区域内においては、動植物の採取又は捕獲、火入れ又はたき火、車馬の使用その他の日常的に予想される行為が許可の対象とされることから、当該区域内の土地所有者又はその土地を権原に基づき利用する者の生活に大きなかかわりがあるので、区域及び期間の指定に当たつては、前記の者の同意を得るものとすること。
   なお、河川法(昭和三九年法律第一六七号)第三条第一項の河川等その管理を行う者が定められているものについては、その管理者の同意を得るものとし、また、この指定は、鳥獣行政担当部局と農林水産担当部局との事前の十分な調整を経て行うものとするほか、許可に当たつても農林水産業との調整を十分図ること。
 三 区域指定の周知徹底等
   特別保護指定区域に生息する貴重な鳥獣の保護については、地域住民、関係行政機関等の協力が不可欠であるので、その指定がなれたときは、関係行政機関に連絡するとともに、改正後の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律施行規則(以下「新規則」という。)第一三条第四項の規定に基づき特別保護指定区域の区域及び期間を告示するとともに新規則第四一条第五号に定める標識を区域界と道路の交差する箇所等に設置するなど、地域住民等への周知徹底を図るほか、当該指定区域における取締り、指導等による管理を強化すること。
第三 特別保護地区における規制の強化
  新法第八条一八第七項の規定による条件は鳥獣の保護繁殖を図る上で必要最少限のものとし、農林水産業との調整を十分図るとともに、河川工事等の施行のもつ公共性をも十分考慮すること。また、新法第八条一八第八項の規定による中止命令、現状回復命令等により鳥獣の生息環境の速やかな回復を図るため、特別保護地区内における取締体制を強化し、違反行為の早期発見に努めるとともに、中止命令等の制度の適正を期すること。
第四 銃猟禁止区域
  新法第一〇条の規定により、銃猟禁止区域の設定は期間を定めて行うこととされたので、既設の銃猟禁止区域のうち、期間の定めのないものがある場合には、速やかにその存続期間を定め告示すること。
第五 銃猟制限区域
 一 区域の設定
   新法第一〇条の規定により、都道府県知事は、休猟区解除地、湿地帯のカモ猟場等での狩猟解禁直後等における集中銃猟に伴う事故の発生を未然に防止するため、期間を限つて銃猟制限区域を設けることができることとされたが、この区域の設定に当たつては、狩猟鳥獣が高密度に生息している場所、交通の便がよく多数の狩猟者の入猟が予想される場所、農林水産業者の狩猟期間中における作業が予想される場所等であつて銃猟による事故が多発するおそれのある区域について行い、その存続期間についても、危険予防の観点から適切なものとすること。
   なお、銃猟制限区域の設定は、集中銃猟による危険予防のためのものであることから、この設定に当たつては市町村長及び都道府県警察本部等の意見を十分考慮すること。
 二 銃猟承認についての基準
   都道府県知事が行う銃猟制限区域内の銃猟に関する承認については、新規則第一九条の基準に従い、設定予定区域の地形植生状況等を勘案して、銃猟を行う者の数を定めること。
第六 法人に対する鳥獣捕獲許可
  有害鳥獣駆除等を責任ある者の指揮監督の下に広域的かつ効率的に行うため、新法第一二条第二項後段の規定により国、地方公共団体又は環境庁長官の定める法人に鳥獣捕獲等の許可を行う場合には従事者証を交付することとされたが、これらの法人にする許可に際しては、法人が鳥獣捕獲等に従事する者各人に対し捕獲期間、捕獲の方法、捕獲鳥獣名及びその員数について指示し、それを遵守させる体制を確立し、許可違反が発生しないよう指導すること。
第七 捕獲手段の制限の特例
  新法第一五条ただし書の規定により環境庁長官の許可を受けた場合には劇薬、毒薬等を使用して鳥獣を捕獲することができることとされたが、これは、他に適当な代替手段がなく、かつ、捕獲の目的となる鳥獣以外の鳥獣を無差別に捕獲するおそれがなく、また、捕獲に伴う二次被害の発生の防止措置がとられていることなど、劇薬、毒薬等の使用に伴う危険の防止が十分確保されている場合に許可されるものであり、麻酔銃の使用以外の捕獲手段については、当庁とその必要性、安全の確保について事前に協議すること。
第八 有害鳥獣の駆除許可
  許認可等の整理合理化のため、新規則第四条の規定により、ダイサギ、チユウサギ及びコサギ(以下「シラサギ」という。)並びにオナガ及びノヤギについては都道府県知事がその捕獲の許可を行うこととされたが、このうちシラサギについては、天然記念物の地域指定を受けているもの、生息地が限られているもの等があるのでシラサギに係る有害鳥獣の駆除許可事務処理に当たつては特に慎重に対処すること。
第九 罰則の強化
  新法第二一条から第二三条までの規定により罰金の最高額が引き上げられたが、このことについては貴管内の地方公共団体等の広報誌等を通じて関係者に対し十分周知徹底を図ること。