法令・告示・通達

第四次鳥獣保護事業計画を樹立する場合の基準について

公布日:昭和51年08月16日
環自鳥120号

(各都道府県知事あて環境事務次官通達)
 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正七年法律第三二号)第一条ノ二第一項に基づく基準が別冊のとおり定められたので、遺憾のないようされたい。
 以上、命により通達する。
    第四次鳥獣保護事業計画の基準
第一 計画の期間
  計画の期間は、昭和五二年四月一日から昭和五七年三月三一日までの五年間とする。
第二 鳥獣保護区の設定及び特別保護地区の指定並びに休猟区の設定並びにこれらの整備に関する事項
 一 鳥獣保護区の設定
   鳥獣保護区は、次の区分に従つて設定するものとする。
  (一) 地帯区分により設定する鳥獣保護区
   ア 森林地帯
    (ア) (イ)に規定する場合を除き、林野面積がおおむね10,000ha(北海道にあつては、20,000ha)ごとに300ha以上の鳥獣保護区(以下「森林鳥獣生息地の保護区」という。)を一箇所設定する。
    (イ) 樹種、林相、林令を異にする各種の森林を包括し、かつ、質量ともに多彩な鳥獣が生息する場所のうち、必要な地区について、10,000ha以上の鳥獣保護区(以下「大規模生息地の保護区」という。)を設定する。
      この場合には、隣接の都府県と協議の上、二都府県にわたり計画して差支えないものとする。
   イ その他の地帯
    (ア) 干潟、湖沼、湿地等であつて、鳥類の集団渡来地のうち必要な地区について、鳥獣保護区(以下「集団渡来地の保護区」という。)を設定する。
    (イ) 島しよ、草原等であつて、鳥類の集団繁殖地のうち必要な地区について、鳥獣保護区(以下「集団繁殖地の保護区」という。)を設定する。
    (ウ) 鳥獣の誘致地区(都市における生活環境の改善のため、鳥獣を誘致することが必要であると認められる地区)について、鳥獣保護区(以下「誘致地区の保護区」という。)を設定する。
  (二) 地帯区分にかかわらず設定する鳥獣保護区
   ア 絶滅のおそれのある鳥獣又はそれに準ずる鳥獣の生息地であつて、その鳥獣の保護上必要な地区について、鳥獣保護区(以下「特定鳥獣生息地の保護区」という。)を設定する。
   イ 小・中学校が設置する野鳥愛護地区について、鳥獣保護区(以下「愛護地区の保護区」という。)を設定する。
 二 特別保護地区の指定
  (一) 特定鳥獣生息地の保護区については、全箇所について広範囲に特別保護地区を指定するように努めるものとする。
  (二) 大規模生息地の保護区、集団渡来地の保護区及び集団繁殖地の保護区については、全箇所につき、鳥獣の保護繁殖のために必要と認められる中核的地区について、特別保護地区を指定する。
  (三) 森林鳥獣生息地の保護区については、その箇所数の二分の一以上につき、それぞれの面積の一〇分の一以上の地区について特別保護地区を指定する。
  (四) 愛護地区の保護区及び誘致地区の保護区については、必要と認められる地区について特別保護地区を指定する。
 三 休猟区の設定
   休猟区は、可猟地域に一箇所当たり、1,500ha以上の面積規模をもつて分布にかたよりがないように配慮して設置する。また、休猟区面積の合計は、可猟地域の面積全体のおおむね三分の一になるよう努めるものとする。
 四 鳥獣保護区の整備に関する事項
  (一) 鳥獣保護区内には、自然条件を勘案して、それぞれの鳥獣保護区の設定目的を達成するため、必要な給餌及び給水施設の設置、食餌植物の植栽、営業材料の供与等の保護措置を講ずるものとする。
  (二) 鳥獣保護区の整備は、年度別設置計画を定めて、鳥獣保護区設定後おおむね三カ年で完了させるものとする。
第三 鳥獣の人口増殖及び放鳥獣に関する事項
 一 鳥類
   鳥獣保護区のうち、キジの生息適地であつて、その増加を図るため必要と認められる箇所については、設定年度に繁殖に必要なキジの種鳥を放鳥し、休猟区のうちキジの増加を図る必要が認められる箇所については、毎年一箇所当たり五〇羽以上のキジを放鳥する。
 二 獣類
   ノネズミ又はノウサギによる造林木等の被害激甚地区については、イタチ又はキツネを必要に応じ放獣するものとする。
第四 有害鳥獣の駆除に関する事項
 一 鳥獣による被害発生予察表の作成
   過去五年間の鳥獣による被害の発生状況及び鳥獣の生息状況を検討し、鳥獣の種類別、四半期別及び地域別に鳥獣による被害の発生予察表を作成するものとする。
 二 有害鳥獣の駆除についての許可基準の設定
   鳥獣による被害の発生予察、駆除の実績及び農林作物の状況を勘案して、鳥獣の種類別に捕獲許可の基準を設定するものとする。
 三 駆除隊の編成指導
   イノシシ、クマ、ノウサギ、その他の鳥獣による農作物の被害が激甚な地域については、その地域ごとにあらかじめ駆除隊を編成するよう指導するものとする。
 四 鳥獣による被害の防除方法の確立
   鳥獣による農林作物等に対する被害の防除について効果的な方法を確立するものとする。
第五 鳥獣の生息状況の調査に関する事項
 一 都道府県内に生息する鳥獣の種類、分布状況、生息数の推移等をは握するために、次の調査を実施するものとする。
  (一) 市町村別分布調査
    おおむね市町村を単位として生息する鳥獣の種類、出現の時期等を明らかにする調査を行う。
  (二) 環境別増減調査
    鳥獣の生息環境ごとに調査地を定めて、鳥獣の増減を明らかにする調査を行う。
  (三) 都道府県民の鳥獣等保護調査
    都道府県民の鳥獣(鳥獣保護思想の普及の一環として、都道府県民の象徴として定められた鳥獣)及び都道府県の文化財に指定されている鳥獣について生息状況及び保護対策を明らかにする調査を行う。
  (四) 狩猟対策基礎調査
    狩猟鳥獣について地域別に生息状況を明らかにする調査を行う。
 二 鳥獣保護区、休猟区、捕獲禁止区域について設定効果を測定するための調査を実施するものとする。
第六 鳥獣保護事業の啓蒙に関する事項
 一 愛鳥週間の活用
   鳥獣保護思想の普及徹底を図るため、愛鳥週間を活用し、探鳥会、講演会、食餌植物の植栽、印刷物の配布、スライド、映画フイルムの貸付け等の行事を積極的に実施するものとする。
 二 鳥獣保護センターの設置
   鳥獣保護思想の普及啓蒙のため、都道府県に一箇所以上を目標として、鳥獣保護センターを設置するものとする。
 三 愛鳥モデル校の指定
   鳥獣保護思想の普及の一環として、小、中学校四〇校につき一校の割合で愛鳥モデル校を指定するものとする。
   なお、愛鳥モデル校においては、付属施設として野鳥愛護地区を鳥獣の生息状況に応じ設定するものとする。
 四 法令の普及徹底
   鳥獣に関する法令のうち、鳥獣捕獲の規則の制度(かすみ網、とりもち等の使用規制を含む。)及び鳥獣飼養許可制度等、特に都道府県民一般に関係ある事項については、都道府県広報誌、ポスター、パンフレツト等により、その周知徹底を図るものとする。
 五 その他鳥獣保護思想の普及
   以上に掲げる事項のほか、鳥獣保護思想の普及を図るため、年間計画をたて、鳥獣保護団体の育成指導、スライド、映画フイルム、展示品の巡回貸付け等を行うほか、毎年一回鳥獣保護実績発表大会を開催するものとする。
第七 鳥獣保護事業の実施体制の整備に関する事項
 一 鳥獣行政担当職員
   鳥獣行政担当職員の設置は、鳥獣保護事業計画の内容、鳥獣の生息状況、狩猟免許者数等を勘案して行い、鳥獣保護事業の実施に支障のないようにする。
   なお、行政効果を高めるため、鳥獣行政担当職員を対象として研修を行い、専門的知識を習得させるものとする。
 二 鳥獣保護員
   鳥獣保護員の総数は、市町村数に見合う数を目標とし、その配置については、鳥獣保護区の数、狩猟免許者数、取締り実施の状況、鳥獣保護思想の普及の現況等を勘案して行うものとする。
 三 取締り
  (一) 狩猟の取締り(かすみ網、とりもち等を使用する違法捕獲の取締りを含む。)は過去五年間の違反状況の分析の結果に基づき月別重点事項を定めて行うものとする。
  (二) 鳥獣の輸出入業者、飼鳥関係者、加工業者、食品関係者等を対象とし、鳥獣及びその加工品を含めて、流通段階における取締りを計画的に実施するものとする。
  (三) 取締りに必要な機動力(動力式舟艇を含む。)を整備するほか、緊急取締りに対応して鳥獣行政担当職員及び鳥獣保護員の動員体制を整備するものとする。
第八 その他鳥獣保護事業の実施のため必要な事項
 一 狩猟関係の調査
   狩猟の適正化は、鳥獣保護と表裏一体であることにかんがみ、狩猟の実態をは握する調査を実施し、適切な猟法の制限、銃猟禁止区域の設定、乱獲防止等の措置を講ずるものとする。
 二 猟区の設定
   猟区の整備拡大を図るため、市町村長に対して猟区設定のための指導を行うとともに、都道府県みずからも猟区を設定するよう努めるものとする。
   なお、猟区の管理運営の指針を明らかにするため、放鳥を主体としたモデル猟区を一箇所以上設定するものとする。