法令・告示・通達

自然公園法の一部を改正する法律及び自然公園法施行規則の一部を改正する省令の施行について

公布日:昭和46年06月30日
国発383号

厚生省大臣官房国立公園部長から各都道府県知事あて
 自然公園法の一部を改正する法律(昭和45年法律第140号)は、昭和45年12月25日公布され、自然公園法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和46年政令第189号)によつて、昭和46年6月24日から施行されたところであり、また自然公園法施行規則の一部を改正する省令(昭和46年厚生省令第17号)は、昭和46年6月22日公布され、同月24日から施行されたところであるが、次の事項に留意のうえ、この施行に遺憾のないように措置されたく通達する。
 なお、この通達においては、自然公園法(昭和32年法律第161号)を「法」と自然公園法施行規則(昭和32年厚生省令第41号)を「規則」と略称することとする。
第1 改正の趣旨について
  今回の改正法の趣旨は、すぐれた自然環境の重要性にかんがみ、その保護と適正な利用並びに国立公園等の区域内における公共の場所の清潔の保持に関する国等の責務について規定するとともに、湖沼等の水質が、風致又は景観の構成要素であることを明らかにし、これを維持するため汚水等の排出を規制する方途を講ずることにより、自然公園の保護の徹底を期するものとしたものであること。
第2 改正の内容
 1 自然環境の保護に関する国等の責務について
   国、地方公共団体、事業者及び自然公園の利用者は、すぐれた自然環境が、国民の健康で文化的な生活において不可欠であることを認識し、それぞれの立場から自然公園の保護とその適正な利用が図られるよう努めなければならないものとして、自然公園における国等の責務を明らかにしたものであること。
 2 国立公園等の区域内の公共の場所における清潔の保持について廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第5条においては、道路、園地等の公共の場所の管理者に、その管理する場所の清潔の保持の責務を課しているところがあるが、公園内の公共の場所は地域が広大で、かつ主として地域住民以外の者の利用に供される場所であるので、これら公共の場所の管理者のみが清潔の保持に当たることとすることは必ずしも実態に即しないことを考慮して、国、地方公共団体は公共の場所の管理者とともに清潔の保持に当たることとしたものである。この趣旨に沿い、国においては、昭和46年度において環境浄化対策費補助金について予算措置を講じたところであるが、貴都道府県におかれても積極的に施策を講ずるとともに管下市町村に対し適切な措置を行なうよう指導されたいこと。
 3 湖沼又は湿原並びに海中公園地区への汚水等の排出の規制について
  (1) 湖沼等の指定について
    湖沼又は湿原への汚水等の排出に対する規制は、公園計画において規制を行なうべきものとして定めた湖沼又は湿原について、厚生大臣が指定して行なうこととしたが、この指定は特別地域又は特別保護地区にあつて風致又は景観上重要な湖沼又は湿原について早急に行なう予定であること。
    国定公園において規制を行なうべき湖沼又は湿原がある場合には、公園計画に定める必要があるので、すみやかに公園計画の策定につき申し出られたいこと。
  (2) 許可の権限について
    国立公園の特別保護地区内の湖沼又は湿原にかかる汚水等の排出の許可及び海中公園地区における汚水等の排出の許可については厚生大臣が行ない、自然公園法施行令第25条の規定により都道府県知事にその権限が委任されている国立公園の特別地域内の湖沼又は湿原にかかる汚水等の排出及び国定公園の区域内にかかる汚水等の排出の許可は都道府県知事において行なうものであること。
  (3) 規制範囲について
    海中公園地区については汚水又は廃水の排出は、改正法の施行と同時にすべての地区において規制が行なわれることとなるが、特別地域又は特別保護地区の湖沼又は湿原については、厚生大臣の指定によつて規制が行なわれることになるものであること。
    なお、当該湖沼又は湿原の指定により、当該湖沼等ならびにその周辺1キロメートルの区域内であつて、流水が当該湖沼及び湿原に流入する水域又は水路への汚水又は廃水の排出について規制が及ぶこととなるものであること。
  (4) 規制の対象となる排出行為について
   ア 「排水設備を設けて汚水又は廃水を排出する」とは設けられた排水設備から汚水又は廃水を排水することをいい、この場合の排水設備とは例えば浴室、厨房の排水溝、敷地内の溝等をいうものであり、規制を「排水設備を設けて」排出する行為に限定したのは、日常生活や事業等に伴う継続的な排出行為を規制し、非継続的又は一時的な行為に伴う汚水等の排出行為を規制対象から除外する趣旨であること。
     また、これらの排水設備を設ける行為が、法第17条第3項第1号、第18条第3項第1号又は第18条の2第3項第1号の規定に該当する場合には、別途許可を要することとなるから留意すること。
   イ 排出行為は、汚水等が排水設備が設けられている施設及び当該排水設備の敷地の外へ流出する地点で行なわれるものとし、敷地外において直接に水路等に流入するか、地面を自然に流下し水路等に流入するかについては問わないものであること。
   ウ 排出の許可を受けた後に、汚水等の質又は量が著しく変化した場合には、許可を受けた排出行為とは異なる行為となるので、許可にあたつては許可に条件を附する等の方法で許可の内容を明らかにし、その範囲を越える排出が行なわれる場合には、改めて許可の申請をするよう指導するものとすること。
   エ 土地改良事業、治山事業、林道の開設事業、漁港の整備及び修築に関する事業、河川工事、砂防工事、海岸保全施設に関する工事、地すべり防止工事及び急傾斜地崩壊防止工事にかかる一時的な行為に伴う汚水等の排出行為は排水設備を設けてする排出に該当しないものとして取扱うものとすること。
  (5) 既着手行為の取扱について
    国立公園若しくは国定公園の特別地域若しくは特別保護地区において湖沼若しくは湿原が指定された際若しくは海中公園地区が指定された際現にこれらの湖沼等に汚水等を排出している場合又は今回の改正法が施行された際現に海中公園地区において汚水等を排出している場合は、許可を要しないで、その排出を継続することができるものであること。ただし、これらの指定又は改正法施行の後、汚水等の質量が著しく変化した場合には、新たに許可を要するものとなるものであるので、法第17条第4項、第18条第4項又は第18条の2第4項の規定に基づき、既に着手している排出行為の内容を届け出させ、その現況について充分に把握しておく必要があること。
  (6) 公園事業に伴う汚水等の排出の取扱について
    公園事業の執行に伴う汚水等の排出については、今回の改正法による規制の適用はないが、いやしくも公園事業が、湖沼等の汚濁の原因となることのないよう監督する必要があるので国定公園における公園事業の執行者に対しては厳正な指導を行ない、必要な場合には自然公園法施行令第17条の規定に基づく改善命令によりその実効を確保されたいこと。
第3 許可を要しない行為について
  改正法により一定水域への汚水又は廃水を排出する行為を許可制にかからしめて規制することとなつたことに関連して、規則第12条、第13条、第13条の2を改正し、許可を要しない行為を追加したものであること。