法令・告示・通達

自然公園における利用者の安全対策について

公布日:昭和59年06月01日
環自企296号

(都道府県知事あて環境庁自然保護局長通知)
 自然公園の安全快適な利用の促進については、かねてより、種々の御配慮を煩わしているところであるが、近年、国民の良好な自然に親しもうとする気運が高まる中で、自然公園の利用者層の多様化等が進む一方、しばしば、自然公園内において人身事故の発生がみられるのは憂慮に堪えないところである。
 ついては、本年も本格的な利用シーズンを迎えたところであるが、自然公園における事故を未然に防止し、安全快適な利用を促進するため、左記の事項について、格別の御配慮をお願いする。
 その際、貴職の執行に係る公園事業について、配慮されることはもちろんであるが、特に貴管下の市町村及び公園事業者に対してよろしく指導願いたい。
 また、左記の措置又は指導監督を行つた後における状況を随時確認把握されたい。

一 事故防止協力体制の整備について

 (一) 危険箇所等の情報の収集、把握

   自然公園における利用者の安全対策を進めるに当たつては、自然公園の利用上の危険箇所の早期発見と迅速な対応が必要であるので、都道府県市町村の担当職員による状況の把握に一層留意されるとともに、自然公園指導員等による情報提供等の協力体制の確立に努めること。

 (二) 地元における事故防止協力体制の整備

   地元における事故防止協力体制の整備については、地元市町村・警察署・観光協会等の関係機関、関係団体の連携と協力が不可欠であるので、これらの関係機関等との連携を密にし、適正、安全な利用のための普及啓蒙活動、危険箇所における利用制限等の安全対策の迅速、かつ、実効的な実施のための地元協力体制の整備、強化に努めること。

二 公園事業に係る利用施設における事故防止について

 (一) 一般的事項

   公園事業に係る利用施設の設置に当たつては、設計、施工の段階で、利用者の安全を期するために十分な配慮がなされることは当然であるが、更に、供用後においても定期的に安全確認のために点検を行うものとし、特に利用シーズン前、豪雨、台風等の後及び積雪地域における融雪後においては、より一層慎重な点検を行うこと。
   また、必要があれば利用者の目に触れやすいところに、定員等の利用上の注意事項を標示する等により施設の安全な利用方法の周知徹底を図ること。

 (二) 道路(歩道)事業

   道路(歩道)事業に係る事故防止については、吊橋等の橋梁及び桟道等の構造物について重点的に点検を行い、その結果、更に詳細、綿密に調査する必要がある場合には、必要に応じ、利用の禁止、制限等のための応急的措置を講じた上、別途、専門的技術、知見を有する者に調査を委託する等安全の確認に万全を期すること。
   また、道路(歩道)に附帯する指導標、案内板、注意標識等の点検にも留意し、必要がある場合には臨時の指導標、案内板、注意標識等の整備を行うこと。

 (三) 公園事業に係る宿泊施設等における事故防止について

   宿泊、休憩所等宿泊休憩の用に供する施設及び野営場においては、消防署等関係機関と緊密な連絡をとり定期的に点検し、また利用者に対しては周知徹底を行う等により火災の発生を未然に防止するよう努めるとともに、食中毒、伝染病その他の事故についても、衛生等に関する関係機関と緊密な連絡をとり、その発生を未然に防止するよう努めること。

三 山岳地帯等の地域における事故防止について

 (一) 山岳地帯における事故防止

   山岳地帯における近年の事故の多くは、利用者の技量不足や、不十分な装備、無謀な登山計画等に起因するところが少なくないので、利用実態の把握に努め、バス、ロープウエー等の運輸業者、山小屋・旅館等の宿舎事業者に対し、登山装備の点検、悪天候時の計画中止又は変更等安全な登山等に配慮するようその周知方につき協力を求めるとともに、この面から、観光案内書等を通ずる啓蒙、広報活動を強化すること。

 (二) 火山地帯及び温泉地帯における事故防止

   火山の爆発による災害の生ずるおそれのある地域、硫化水素ガス等有毒なガスが発生するおそれのある地域、高温の熱水又は蒸気がゆう出又は噴出するおそれのある地域等については、既に立入禁止区域を設ける等の措置が講じられているところもあるが、今後とも気象関係者、火山研究機関、保健所等と連絡を密にして不断に状況を把握するとともに、必要がある場合は、事前の立入規制、立入禁止柵の設置、パトロールのための人員の配置等の事故防止措置をとるよう防災関係機関、警察、土地所有者等に要請すること。

 (三) 海浜等水辺地域における事故防止

   舟遊、水泳等の利用の行われる海浜、河川、湖沼等において、気象条件の変化等による水難事故の発生が懸念されるので、警察等の関係機関と緊密な連絡をとるとともに、利用者が事故の未然防止に十分配慮するよう当該地における公園事業執行者等にその周知方につき協力を求めること。