法令・告示・通達

自然公園区域内における森林の施業について

公布日:昭和34年11月09日
国発643号

(各県知事あて国立公園部長通達)

 国立公園及び国定公園区域内における森林の施業については、従来林野庁との間にとりかわした数次に亘る覚書、取り決め等によりその取扱を定めてきたところであるが、今般、林野庁と協議して、これらを整理統一のうえ合理化し、かつ、自然公園法に基づく都道府県立自然公園区域内における森林の施業にも適用できるよう、別紙のとおり定めたので、今後、自然公園区域内における森林の施業については、左により取扱に遺憾なきを期せられたい。

別表
  自然公園区域内における森林の施業について

(昭和三四年八月一二日 国発第四六八号 国立公園部長照会)
(昭和三四年三四林野指第六、四一七号 林野庁長官回答)

   第一 国立公園及び国定公園

一 森林施業制限細目

 1 一般事項
  1.   (1) 国立公園及び国定公園区域内の森林の施業は、国有林野(公有林野等官行造林地を含む。以下同じ。)にあつては経営計画(公有林野等官行造林地施業計画を含む。以下同じ。)、民有林にあつては地域森林計画に基づき風致の維持を考慮して行わなければならない。
  2.   (2) 経営計画又は地域森林計画を定める場合は、原則として国立公園及び国定公園の特別地域、普通地域別に施業方法を定めるものとする。
 2 特別地域における制限

   特別地域内における森林の施業に関する制限は、国立公園計画及び国定公園計画において定める第一種特別地域、第二種特別地域及び第三種特別地域の区分(別紙)に従いそれぞれ次のとおりとする。
   ただし、第一種特別地域、第二種特別地域及び第三種特別地域の区分の未決定の特別地域内の森林の施業に関する制限については、林野庁長官と国立公園部長が協議して定めるものとする。

  (1) 第一種特別地域
  1.    (イ) 第一種特別地域の森林は禁伐とする。
         ただし、風致維持に支障のない場合に限り単木択伐法を行うことができる。
  2.    (ロ) 単木択伐法は、次の規定により行う。
    1.     A 伐期令は、標準伐期令に見合う年令に一〇年以上を加えて決定する。
    2.     B 択伐率は、現在蓄積の一〇%以内とする。
  (2) 第二種特別地域
  1.    (イ) 第二種特別地域の森林の施業は、択伐法によるものとする。
         ただし、風致の維持に支障のない限り、皆伐法によることができる。
  2.    (ロ) 国立公園計画に基づく車道、歩道、集団施設地区及び単独施設の周辺(造林地、要改良林分、薪炭林を除く)は、原則として単木択伐法によるものとする。
  3.    (ハ) 伐期令は標準伐期令に見合う年令以上とする。
  4.    (ニ) 択伐率は用材林においては、現在蓄積の三〇%以内とし、薪炭林においては、六〇%以内とする。
  5.    (ホ) 伐採及び更新に際し、特に風致上必要と認める場合は、国立公園部長は、伐区、樹種、林型の変更を要望することができる。
  6.    (ヘ) 特に指定した風致樹については、保育及び保護につとめること。
  7.    (ト) 皆伐法による場合その伐区は次のとおりとする。
    1.     A 一伐区の面積は二ヘクタール以内とする。
            但し、疎密度三より多く保残木を残す場合又は車道、歩道、集団施設地区、単独施設等の主要公園利用地点から望見されない場合は、伐区面積を増大することができる。
    2.     B 伐区は更新後五年以上経過しなければ連続して設定することはできない。この場合においても、伐区はつとめて分散させなければならない。
  (3) 第三種特別地域
  1.    (イ) 第三種特別地域内の森林は、全般的な風致の維持を考慮して施業を実施し、特に施業の制限を受けない(民有林にあつては、森林法第七条第四項第四号の規定に基づく普通林として取扱う)ものとする。
 3 特別保護地区における制限

   特別保護地区内の森林の施業に関する制限について、厚生大臣はそれぞれの地区につき農林大臣と協議して定めるものとする。

 4 普通地域内における制限

   風致の保護ならびに公園の利用を考慮して施業を行うものとする。

二 特別地域内の森林の施業に関する手続

 1 民有林
  1.   (1) 国立公園の特別地域(第三種特別地域を除く。)内の民有林の施業に関し、都道府県知事が地域森林計画を編成するに当つては、あらかじめ森林施業制限細目に基づく森林計画区ごとの特別地域の施業要件を定め、九月末日までに厚生大臣に提出してその承認を受けるものとする。
        地域森林計画の変更により特別地域の施業要件を変更する場合には、その都度これを厚生大臣に提出してその承認を受けるものとする。
  2.   (2) 国定公園の特別地域(第三種特別地域を除く)内の民有林の施業に関し、都道府県知事が地域森林計画を編成するに当つては、森林施業制限細目に基づく森林計画区ごとの特別地域の施業要件を決定するものとする。
 2 国有林野
  1.   (1) 国立公園の特別地域内の国有林野の施業に関し、経営計画を編成するに当つては、自然公園法第四〇条第一項の規定に基づき、林野庁長官はあらかじめ当該地域の経営計画編成方針につき厚生大臣に協議するものとする。経営計画編成方針を変更する場合も同様とする。ただし、すでに協議済の経営計画と著しい変更のない場合は厚生大臣に通知することをもつてこれにかえるものとする。
  2.   (2) 経営計画に基づく自動車道及び事業所の新設のうち、国立公園の第一種特別地域及び第二種特別地域について、厚生大臣が風致維持又は公園利用上特に必要があると認め前号の協議の際林野庁長官に要望したものについては、当該工事に着手するにあたり、林野庁長官はその実施計画につき当該要望事項を充分考慮するものとする。
  3.   (3) 国定公園の特別地域内の国有林野の施業に関し、経営計画を編成するに当つては、自然公園法第四〇条第一項の規定に基づき、営林局長はあらかじめ当該地域の経営計画編成方針につき都道府県知事に協議するものとする。経営計画編成方針を変更する場合も同様とする。ただし、すでに協議済の経営計画と著しい変更のない場合は都道府県知事に通知をもつてこれにかえるものとする。
  4.   (4) 経営計画に基づく自動車及び事業所の新設のうち、国定公園の第一種特別地域及び第二種特別地域について、都道府県知事が風致維持又は、公園利用上特に必要があると認め前号の協議の際営林局長に要望したものについては、当該工事に着手するにあたり営林局長は、その実施計画につき当該要望事項を充分考慮するものとする。
  5.   (5) 前一号及び三号によつて編成された経営計画に基づいて営林局署が行う行為については、厚生大臣又は都道府県知事に協議又は通知を要しないものとする。

   第二 都道府県立自然公園

 都道府県立自然公園内の森林の施業については、国立公園及び国定公園の場合に準じて取扱うものとし、国有林野については、営林局長と都道府県知事が協議して定めるものとする。

 特別地域は第一種、第二種、第三種に区分しその取扱は左による。

  1. (一) 第一種特別地域は、特別地域中で風致維持の必要のもつとも高いもので、特別保護地区についで公園の核心的な景観の地域である。その取扱は極力現在の景観の保護を図ることとし、原則として公園計画で決定された施設のみが許容される地域である。ただし景観に及ぼす影響が極めて軽微な行為は場所によつては許容される。
  2. (二) 第二種特別地域は、風致維持の必要度の中位のものであつて、風致維持が効果的に行われるよう規制を図り、産業開発その他の行為については風致維持上必要ある場合は制限を加えることがある。ただし産業的利用との間につとめて調整をはかる。
  3. (三) 第三種特別地域は、特別地域中では風致維持の必要度が比較的少ない地域で、風致上の規則を行うにあつては、特に景観に重大な影響を及ぼすと思われる顕著な行為を規制し、通常の産業行為は原則として許可されるものである。