法令・告示・通達

温泉法施行に関する件

公布日:昭和23年08月25日
衛発14号

(各都道府県知事あて厚生次官通達)

 温泉に関する従来の都道府県令が、新憲法の施行に伴ってその効力を失うこととなったのに際し、今般温泉法が制定公布され、温泉の保護とその利用の適正とを図ることとなったが、温泉はわが国天与の資源として極めて重要なものであり、その活用如何は国民の保健休養に至大の影響を及ぼすのみでなく、これに伴う利害関係は極めて複雑なるものがあるので、下記事項御留意の上、本法の運営に遺憾なきを期せられたく、命により通知する。

1 本法の目的

  本法の目的とするところは、温泉の保護と温泉利用の適正化とによって、公共の福祉の増進を図ることにある。
  従って温泉の保護に急なるあまり、徒らに既得権者の擁護に堕し、却って本法の趣旨を没却することのないように留意すると共に、温泉の利用については十分科学的基礎に立脚して、公衆保健上の指導に遺憾なきを期せられたい。

2 温泉の保護

  温泉の掘さ〈、〉く〈、〉増掘等の許可については、利害関係の極めて複雑微妙なものがあるので、必ず温泉審議会の意見を聞くこととし、その取扱の慎重を期することとしているが、不許可の処分に際しては、既存の温泉への影響の有無を調査するのみならず同時に公益を害する虞の有無も十分検討した上措置をされたい。

3 温泉の利用

  温泉利用の合理化は、温泉の成分の科学的な分析検査に基礎を置き、適正な医学的指導に俟たねばならないので、温泉利用施設の管理者に対しては常にこの点に留意し、公衆衛生上の指導に遺憾なきを期せられたい。

4 本法の民主的運営

  本法の運営を民主的ならしめるため、温泉審議会の制度と公開による聴聞の制度とを設けられているが、前者については特にその構成に関し公正を旨とし、苟くも一方に偏することのないように留意されると共に、後者については、許可の取消等の処分を受けようとする者をして、有利な証拠を提出して弁明する機会を与えようとする本制度の趣旨を十分達成し得るよう運営に遺なきを期せられたい。