法令・告示・通達

浄化槽法の運用に伴う留意事項について

公布日:昭和61年01月13日
衛環3号

[改定]
昭和六三年 四月二〇日 衛浄第二九号
平成元年 七月四日 衛浄第三六号
平成八年 三月二九日 衛浄第二二号
平成一三年 九月二五日 環廃対第三七五号

(各都道府県・各政令市浄化槽行政主管部(局)長あて 厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)


 浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号。以下「法」という。)の施行については、別途厚生事務次官通知(昭和六十年九月二十七日付け厚生省生衛第五一七号)及び水道環境部長通知(昭和六十年九月二十七日付け衛環第一三七号)により指示されたところであるが、なお、左記の事項に留意して運用されたく通知する。

1 浄化槽の維持管理体制の強化について

  1.  (1) 浄化槽の機能を適切に維持し、その放流水の適正な水質を確保し、生活環境の保全及び公衆衛生上の観点から重大な支障が生ずることのないよう使用に関する準則、保守点検の技術上の基準及び清掃の技術上の基準を設定すること等により、維持管理体制の強化と整備を図ったものであること。
  2.  (2) 浄化槽管理者は、(1)の趣旨から、保守点検、清掃及び水質に関する検査等の措置をとることが、法第七条、第十条第一項及び第十一条等の規定により、義務付けられており、これらの措置が緊密な連携の下に実施されることにより、浄化槽の機能を適正に維持することができるものであること。
  3.  (3) 保守点検及び清掃を実施するためには、専門的知識、技能及び相当の経験を有する者が、専用の器具、機材を用いて行うことが必要であることから、浄化槽管理者は法第十条第三項により、保守点検については、浄化槽の保守点検を業とする者の登録制度が条例で設けられている場合にはその登録を受けている者に、登録制度が設けられていない場合には浄化槽管理士に、また清掃については浄化槽清掃業者に、それぞれ委託することができるものであること。
  4.  (4)  法第四十八条に基づく浄化槽の保守点検を業とする者の登録制度については、その円滑な運用を図るため、既に水道環境部長通知(昭和五十九年十二月二十二日付け衛環第一五五号)「浄化槽法第四十八条に係る浄化槽の保守点検を業とする者の登録制度の準則について」により指示したところであるが、いまだ登録制度を設けていない都道府県、政令市にあっては、浄化槽の保守点検を実施する者の実態把握に努められたいこと。
  5.  (5)  法第三十五条による浄化槽清掃業の許可については、改正前の廃棄物の処理及び清掃に関する法律第九条の考え方を承継しており、本許可事務は従来どおり市町村の団体事務であり、き束裁量許可であること。
  6.  (6) 処理対象人員が五〇一人以上の施設にあっては、法第十条第二項の規定に基づき技術管理者を置くことが義務付けられていること。技術管理者の資格は、環境省関係浄化槽法施行規則(昭和五十九年厚生省令第十七号。以下「規則」という。)第八条に規定するとおり浄化槽管理士の資格を有する者であり、かつ、処理対象人員が五〇一人以上の浄化槽の保守点検及び清掃に関する技術上の業務に関し二年以上実務に従事した経験を有する者又はこれと同等以上の知識及び技能を有すると認められる者であること。その資格は、保守点検及び清掃作業の直接の実施者というより、むしろ両業務を統括する者としての性格を有するものであること。
  7.  (7) 技術管理者は、施設ごとの専従を原則として、浄化槽管理者により任命されるものであるが、一日の作業時間内に巡回でき、かつ、実質的に施設の常時管理を果たし得ると認められる場合は、この限りでないこと。
        なお、地域的実情により技術管理者の確保が極めて困難な場合にあっては、当面、浄化槽管理者が一定の指揮命令権限を確保した上で、保守点検を委託している保守点検業者等に属する有資格者の中から任命することを妨げるものではないこと。

2 保守点検の実施について

  1.  (1)  保守点検は、法第二条第三号により浄化槽の点検、調整又はこれらに伴う修理をする作業であると定義されており、具体的には、浄化槽の単位装置や附属機器類の作動状況、施設全体の運転状況及び放流水の水質等を調べ、異常や故障を早期に発見し、予防的措置を講ずる作業であるが、これを定期的に実施することは、浄化槽の正常な機能を維持するために必要不可欠の業務であること。
  2.  (2) 法においては、すべての浄化槽について少なくとも毎年一回(規則で定める場合にあっては、規則で定める回数)定期的に保守点検を実施することが義務付けられているが、規則第六条により、処理対象人員又は浄化槽の種類及び処理方式ごとに定期的な保守点検回数を規定するとともに、規則第二条により保守点検の技術上の基準を、規則第五条により保守点検の記録の作成等をそれぞれ規定し、保守点検の適正な実施の徹底を期することとしたものであること。
  3.  (3) 規則第二条第六号及び第七号に規定する適正な溶存酸素量とは、接触ばっ気室にあっては室内均等におおむね〇・三㎎/L以上、接触ばっ気槽にあっては槽内均等におおむね一・〇㎎/L以上、ばっ気室にあっては室内均等におおむね〇・三㎎/L以上、ばっ気タンク、ばっ気槽にあってはタンク内又は槽内均等におおむね一・〇㎎/L以上、循環水路ばっ気方式の流路にあっては流路内均等におおむね一・〇㎎/L以上、回転板接触槽にあっては槽内均等におおむね一・〇㎎/L以上であること。
  4.  (4) 規則第二条第七号に規定する適正な混合液浮遊物質濃度とは、単独処理のものにあっては、混合液の三〇分間汚泥沈殿率がおおむね一〇%以上六〇%以下であること。また、合併処理のものにあっては、長時間ばっ気方式及び循環水路ばっ気方式の場合おおむね三〇〇〇~六〇〇〇㎎/L、標準活性汚泥方式及び分注ばっ気方式の場合おおむね一〇〇〇~三〇〇〇㎎/L、汚泥再ばっ気方式の場合、ばっ気タンクについてはおおむね一〇〇〇~三〇〇〇㎎/L、汚泥再ばっ気タンクについてはおおむね六〇〇〇~一万㎎/Lであること。

3 清掃の実施について

  1.  (1) 清掃は、法第二条第四号に定義されているとおり、浄化槽内に生じた汚泥、スカム等の引出し、その引出し後の槽内の汚泥等の調整並びにこれらに伴う単位装置及び附属機器類の洗浄、掃除等を行う作業であること。したがって、浄化槽内の汚泥、スカム等を浄化槽外に引出す行為を伴う作業は、清掃の概念でとらえるべきものであること。
  2.  (2) 浄化槽の清掃は、浄化槽の正常な機能を維持するために必要不可欠の業務であり、法第十条第一項の規定により、少なくとも毎年一回(規則で定める場合にあっては、規則で定める回数)清掃を実施することが義務付けられているが、全ばっ気方式の浄化槽については、特例的に規則第七条によりおおむね六月ごとに一回以上と規定されていること。
  3.  (3) 規則第三条により清掃の技術上の基準を、規則第五条により清掃の記録の作成等をそれぞれ規定し、清掃の適正な実施の徹底を期することとしたものであること。

4 清掃時期の判定等について

  浄化槽の清掃については、少なくとも毎年一回(規則で定める場合にあっては、規則で定める回数)実施することが義務付けられているが、汚泥の堆積等により浄化槽の機能に支障が生じるおそれがある場合には、清掃を速やかに行う必要があるものであること。
  なお、浄化槽の機能に支障が生じるおそれがあり、清掃を実施する必要がある場合としては、以下に列挙した状態が目安と考えられるので、保守点検業務と清掃業務の緊密な連携が保たれるよう指導されたいこと。

  •  (ア) 流入管きょ、インバート升、移流管、移流口、越流ぜき、散気装置、機械かくはん装置、流出口及び放流管きょにあっては異物等の付着が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴う異物等の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (イ) スクリーンにあっては、汚物等の付着による目詰まり又は閉塞が認められ、また、砂溜り及び沈砂槽(排砂槽を含む。)にあっては沈殿物等の堆積が認められ、かつ、それぞれ収集、運搬及び処分を伴う汚物等及び沈殿物等の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (ウ) 多室型一次処理装置、多室型腐敗室及び沈澱分離室にあっては、スカムの底面が流入管下端開口部からおおむね一〇cmに達したとき、又は汚泥の堆積面が流出管若しくはバッフルの下端開口部からおおむね一〇cmに達したとき。
  •  (エ) 二階タンク型一次処理装置にあっては、スカムの底面が沈澱室のホッパーのスロット面からおおむね一〇cmに達したとき、又は汚泥の堆積面がオーバーラップの下端からおおむね一〇cmに達したとき。
  •  (オ) 変形二階タンク型一次処理装置及び変形多室型腐敗室にあっては、スカムの底面が流入管下端開口部からおおむね一〇cmに達したとき、又は汚泥の堆積面がオーバーラップの下端からおおむね一〇cmに達したとき。
  •  (カ) 沈澱分離槽、嫌気ろ床槽及び脱窒ろ床槽等一次処理装置にあっては、流出水の浮遊物質等が著しく増加し、二次処理装置の機能に支障が生じるおそれがあると認められたとき。
  •  (キ) 散水ろ床型二次処理装置及び散水ろ床の散水装置、ろ床、ポンプ升及び分水装置にあっては、異物等の付着が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴う異物等の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (ク) 流量調整タンク又は流量調整槽、中間流量調整槽及び凝集槽にあっては、スカムの生成が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴うスカムの引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (ケ) 平面酸化型二次処理装置の流水部にあっては、異物等の付着が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴う異物等の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (コ) 単純ばっ気型二次処理装置にあっては、著しい濁りが認められ、かつ、流出水に著しい浮遊物質の混入が認められたとき。
  •  (サ) 地下砂ろ過型二次処理装置のろ層にあっては、目詰まり又は水位の上昇が認められたとき。
  •  (シ) 二階タンクの消火室にあっては、スカムの底面が沈殿室のホッパーのスロット面からおおむね三〇cmに達したとき、又は堆積汚泥の堆積面がオーバーラップの下端からおおむね三〇cmに達したとき。二階タンクの沈殿室にあっては、スカムの生成が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴うスカムの引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (ス) ばっ気室にあっては、三〇分間汚泥沈殿率がおおむね六〇%に達したとき。
  •  (セ) 汚泥貯留タンクを有しない浄化槽のばっ気タンク、流路にあっては、混合液浮遊物質濃度が長時間ばっ気方式及び循環水路ばっ気方式の場合おおむね六〇〇〇㎎/L、標準活性汚泥方式及び分注ばっ気方式の場合おおむね三〇〇〇㎎/L、汚泥再ばっ気方式の場合、ばっ気タンクについておおむね三〇〇〇㎎/L、汚泥再ばっ気タンクについておおむね一万㎎/Lに達したとき。
  •  (ソ) 汚泥移送装置を有しない浄化槽の接触ばっ気室又は接触ばっ気槽にあっては、生物膜が過剰肥厚して接触材の閉塞のおそれが認められたとき、水流に乱れが認められたとき、又は当該室内液又は槽内液にはく離汚泥若しくは堆積汚泥が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴うはく離汚泥等の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (タ) 回転板接触槽にあっては、生物膜が過剰肥厚して回転板の閉塞のおそれが認められたとき、又は当該槽内液にはく離汚泥若しくは堆積汚泥が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴うはく離汚泥等の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (チ) 変則合併処理浄化槽にあっては、前置浄化槽から後置浄化槽へ流入する水の中に著しい浮遊物質の混入が認められるなど、後置浄化槽の機能に支障が生じるおそれが認められるとき。
  •  (ツ) 重力返送式沈殿室又は重力移送式沈殿室若しくは重力移送式沈殿槽及び汚泥貯留タンクを有する浄化槽の沈殿池にあっては、スカムの生成が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴うスカムの引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (テ) 別置型沈殿室及び汚泥貯留タンクを有しない浄化槽の沈殿池にあっては、スカム及び堆積汚泥の生成が認められ、かつ、収集、運搬及び処分を伴うスカム及び堆積汚泥の引き出しの必要性が認められたとき。
  •  (ト) 汚泥貯留タンク及び汚泥貯留槽にあっては、汚泥の貯留が所定量に達したと認められたとき。
  •  (ナ) 汚泥濃縮貯留タンク及び汚泥濃縮貯留槽にあっては、スカム及び濃縮汚泥の生成が所定量に達したと認められたとき。
  •  (ニ) 消毒室、消毒タンク及び消毒槽にあっては、沈殿物が生成し、放流水に濁りが認められたとき。

5 放流水の目標水質について

  浄化槽の放流水の水質については、保守点検と清掃の緊密な連携を前提として、従前の考え方を承継しており、浄化槽の構造基準に定められた放流水の生物化学的酸素要求量の日間平均値を管理目標としていることに変更はないものであること。

6 水質に関する検査について

  1.  (1) すべての規模の浄化槽の浄化槽管理者は、法第七条及び第十一条の規定に基づき、指定検査機関による水質に関する検査を受けなければならないが、法第七条に基づく水質に関する検査は当該浄化槽が適正に設置されているか否かを早い時期に確認するために、また、法第十一条に基づく水質に関する検査は保守点検及び清掃が適正に実施されているか否かにつき判断するために行うものであること。
  2.  (2) 本検査は浄化槽工事、保守点検、清掃等と緊密な連携の下に適切に実施されていることが、当該浄化槽の機能を適切に維持し、施設の保全を図る上で不可欠であることから、指定検査機関との連絡を密にし、生活環境保全上等の観点から判断して必要性が高い地域に重点的に周知徹底を図るなどして、計画的かつ可及的速やかに検査受検率の向上を図られたいこと。
  3.  (3) 浄化槽は、その構造、設置及び維持管理が適正であることによりはじめてその機能が十分に発揮されるものであるので、浄化槽の放流水の適正な水質が確保できない原因がその構造又は設置に起因するものと認められる場合は、その構造又は設置について所管する部局に対して所要の改善指導を行うべき旨要請する等関連部局と十分連携を保って、浄化槽行政の円滑な推進を図られたいこと。