法令・告示・通達

産業廃棄物処理業者に対する業の許可の取消し等の指針について

  • 公布日:平成6年10月1日
  • 衛産94号

(各都道府県・政令市産業廃棄物行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長)
 産業廃棄物処理業者に対する不利益処分については、昭和五九年八月二三日付け衛産第二七号当職通知「産業廃棄物処理業者に対する行政処分の指針について」により運用願っているところであるが、今般、行政手続法(平成五年法律第八八号)及び行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成五年法律第八九号)が制定され、これにより廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四五年法律第一三七号)の一部が改正され、行政手続法の施行期日を定める政令(平成六年政令第三〇二号)の規定により本年一〇月一日から施行されることとなったところである。
 これにより、従前、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の規定により行われてきた不利益処分に関する手続きについて、行政手続法が適用されることとなったことから、昭和五九年八月二三日付け衛産第二七号当職通知「産業廃棄物処理業者に対する行政処分の指針について」の一部を左記のとおり改正することとしたので通知する。


 標題中「行政処分」を「業の許可の取消し等」に改め、本文中「以下「法」という。」を削り、「第一四条第八項で準用する第七条第一一項」を「第一四条の三において準用する第七条の三及び第一四条の六の規定」に、「行政処分」を「業の許可の取消し等」に改め、「法施行後かなりの(中略)指摘されていることにかんがみ」及び「なお、昭和五三年六月七日(中略)問六〇を削除する。」を削り、別添「産業廃棄物処理業者に対する行政処分の指針」の全部を次のように改める。

別表
   産業廃棄物処理業者に対する業の許可の取消し等の指針

Ⅰ 本指針の対象となる処分について

 一 処分の定義及び範囲

  1.   (一) 行政手続法において、処分とは「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定義されており、その具体的な内容は文言上は必ずしも明確でないが、これは、最高裁判決で述べられている「公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によって、国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律的に認められているもの」を指すものとされている。すなわち、行政手続法の施行により、処分の概念及び範囲が変化するものではない。
        廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)に規定されている処分としては、例えば、産業廃棄物処理業の許可(第一四条)、廃棄物処理施設に対する改善命令(第一五条の三)、措置命令(第一九条の四)等がある。
  2.   (二) 上記の処分のうち、本指針が対象とするものは、廃掃法第一四条の三において準用する第七条の三又は第一四条の六の規定に基づき、産業廃棄物処理業又は特別管理産業廃棄物処理業の許可を取り消し、又は事業の全部又は一部の停止を命ずる処分(以下「業の許可の取消し等」という。)である。
        これらは、不利益処分(行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分)に当たるものであり、行政手続法第三章の規定が適用される。
  3.   (三) 特に「取消処分」に着目すると、講学上は「行政行為の取消し」と「行政行為の撤回」とに区別して議論されている。前者は、行政行為時の瑕疵を理由とするが、後者は、行政行為時以降の事由を理由とする。また、効果面でみても、前者が行政行為時点にさかのぼって効力がなかったものとされるのに対し、後者は撤回時点から効力がなくなるものとされる。
        具体的に廃掃法上の産業廃棄物処理業の許可で考えると、そもそも許可時点で許可基準に合致していなかったにもかかわらず許可した場合には、許可の「取消し」が可能となり(もっともⅥ・1・(二)で触れるように取消権の制限の問題はある。)、他方、許可時点では許可基準に適合していたにもかかわらず、許可後に違反行為が行われ、当該者に今後も許可を与えておくことが適当でないと認められる場合には、許可の「撤回」が行われるのである。すなわち、「取消処分」の中でも本指針が対象とするものは、講学上の「行政行為の撤回」に当たるものであり、講学上の「行政行為の取消し」とは区別して考える必要がある。
        なお、講学上の「行政行為の取消し」については後で触れることとする。

 二 処分の目的

  1.   (一) 業の許可の取消し等は、産業廃棄物の不適正処理に起因する生活環境保全上の支障を生じるおそれのある状態を将来にわたって除去し、公衆衛生の向上を図るという法目的を達成するための一般的予防目的を有する。すなわち、許可という形で一般的な禁止を解除した後、その者に引き続き許可を与えていくことが適当でなくなった場合に、許可の取消し等により産業廃棄物を扱えないこととし、もって法目的の達成を担保しようとするものである。
  2.   (二) 業の許可の取消し等はこうした一般的予防目的を有するとともに、現実には、処分の名あて人に対する制裁としての機能をも有している。ただし、もっぱら制裁を目的とするのではなく、これを通じて廃棄物の適正処理という法目的を達成するために必要な制裁である。

 三 処分の形態

  1.   (一) 業の許可の取消し等は、その性質及び過去の処分例からみると、廃掃法又は廃掃法に基づく処分に違反する行為(以下「違反行為」という。)をした者に対するもの、廃掃法第七条第三項第四号イからチまで(以下「欠格条項」という。)のいずれかに該当するに至った者に対するもの及び休眠業者に対するものに大別することができる。
  2.   (二) 第一及び第二のケースについては、どの程度の内容の処分が適当であるかということが主たる問題となる。他方、第三のケースについては、どういう状態であれば休眠業者であると判断するのか、また、業の許可の取消しをどのような手続きで進めるのかが主たる問題となる。

 四 その他

   処分は、通常、参考に示した原則に支配されると言われているので、業の許可の取消し等を行うに当たっては、これらの原則に留意する必要がある。

Ⅱ 違反行為をした者に対する業の許可の取消し等

  1.  一 不利益処分については、行政庁は、「不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」を定めるよう努めなければならないこととされている(行政手続法第一二条)。
       これに関し、違反行為をした者に対する業の許可の取消し等については、処分の類型化が大きな意味を持っている。すなわち、「ある種の行為については、この程度の処分」という目安を示すことにより、恣意的な判断を排し、統一性のある処分が確保されることになる。
       しかし、このような目安は、廃掃法については、違反行為の態様、生活環境への影響が多種多様にわたること、処分という手法が産業廃棄物処理業者による産業廃棄物の適正処理の確保にとって極めて有効な手段の一つであること等から、何をもとに軽重を決めるかという技術論とともに、それがあまりに硬直的に運用された場合、処分がその有効性を失うことになりかねないという問題がある。特に、現在、いわゆる点数制を採用している都道府県等においては、その運用が硬直化しないよう常に処分の内容の具体的妥当性をチェックしておく必要がある。
       ここでは、基本的な考え方を示すこととする。
  2.  二 業の許可の取消し等に当たっては、(一)違反行為の態様及び(二)産業廃棄物処理業者の対応等を考慮して処分内容を決定すべきである。
    1.   (一) 違反行為の態様
      1.    ① 違反条項の軽重等
        •     ・ 罰則が一応の目安となる。ただし、第一四条第八項違反のように罰則による担保ではなく、業の許可の取消し等その他の処分による担保を予定している条項があることに注意する必要がある。
        •     ・ 違反行為が同一の条項に係るものであっても、その内容により処分の内容が異なり得る。
        •     ・ 違反条項の中には、処分基準違反のように改善命令等の担保措置を有しているものがあるが、これは業の許可の取消し等とは別の法的手段であるので、違反事実に対する業の許可の取消し等の検討と併せて、被害の拡大を防止するために、当該措置をとっておくことが適当である。
      2.    ② 生活環境保全上の支障の有無、その軽重
        •     ・ 人の健康に係る支障が生じた場合には、極めて重い処分が可能である。
    2.   (二) 産業廃棄物処理業者の対応等
      1.    ① 過去に刑罰や処分を受けたことがあるか否か、また、その内容
        •     ・ 過去、別の違反行為について刑罰又は処分を受けたことがある場合は、業の許可の取消し等の中でも重い処分をすることが可能である。
        •    (注)行政指導に対する産業廃棄物処理業者の対応は、処分の内容の軽重を考える際の参考とはなるものの、処分の理由となる事実とすることはできないことに留意する必要がある。
      2.    ② 原状回復等の有無
        •     ・ 生活環境保全上の支障を除去するための措置の内容の如何によっては、処分の内容の軽重について加味することが可能である。

Ⅲ 欠格条項に該当するに至った者に対する業の許可の取消し等

  産業廃棄物処理業者が、欠格条項のいずれかに該当するに至った場合には、業の許可の取消し等を行うことができるが、この場合にも、欠格条項のどの条項に該当するかにより、どの程度の処分をするかどうかについて基準を定めておくことが適当である。

Ⅳ 休眠業者に対する業の許可の取消し

 一 休眠業者の定義

   休眠業者とは、所在が不明な業者又は事実上産業廃棄物処理業を廃止している業者をいう。

 二 休眠状態である旨の判断

   休眠業者であるかどうかについては個別の判断によらざるを得ないが、一つの目安としては、次のいずれかに該当する状態が少なくとも一年間継続しており、かつ廃掃法施行規則第一四条第八項の規定に基づく報告がない場合には休眠業者と判断することが可能である。

  1.   (一) 許可を受けた者の所在が不明で、住所、事務所、事業場のいずれへ文書を送付しても返送されること。
  2.   (二) 産業廃棄物処理業を遂行しうる施設がなく、施設を確保する計画もないこと。
       (注)前記(一)又は(二)の状態が一年間継続していることを把握するため、各都道府県等において、調査、報告徴収等の実績を累積しておく必要がある。

 三 手続

  1.   (一) まず、第一四条の五第三項により廃止届の提出を求め、又は第一八条の規定により必要な報告を求める。次いで、これに応じない場合に通常の処分手続に入る。この場合の処分理由は、廃止届出義務違反又は報告義務違反であり、処分内容は許可の取消しである。
  2.   (二) 行政手続法に基づき必要となる聴聞の通知は、必要な事項を行政庁の事務所の掲示板に掲示することにより行い、以後の聴聞手続については、当事者欠席の場合の取扱いにより行うこととなる。

Ⅴ 処分の手続

 一 一般的手続

   業の許可の取消し等を行うに当たっては、一般的には次のように手続を進めるのが適当である(休眠業者に対する許可の取消しについては、Ⅳで述べた点にも留意する必要がある。)。

  1.   (一) 処分の理由となる事実の検討
        業の許可の取消し等の名あて人となるべき産業廃棄物処理業者(以下「対象業者」という。)が行った違反行為の内容又は対象業者が欠格条項に該当する事実の内容について検討する。なお、違反行為が継続している場合には、業の許可の取消し等の手続と並行して当該行為の中止を指導する等の措置を執る。
  2.   (二) 処分内容の検討
        処分の理由となる事実に照らして妥当な処分の内容(例えば、許可の取消し、一四日間の事業停止)を検討する。
  3.   (三) 厚生省との協議
        処分の内容が均衡を欠くこととならないよう厚生省と協議する。
  4.   (四) 関係都道府県等との調整
        対象業者が他の都道府県知事又は保健所を設置する市の市長(以下「都道府県知事等」という。)からも許可を受けている場合又は違法行為が管轄外の違法行為に関連している場合には、関係する都道府県又は保健所を設置する市(以下「都道府県等」という。)と処分の内容及び時期について調整する。同一の行為については、各関係都道府県知事等が同一の処分を行うことが望ましい。
  5.   (五) 聴聞又は弁明の機会の付与
        業の許可の取消し等を行おうとするときは、行政手続法に基づき、聴聞又は弁明の機会の付与を行う。
        許可の取消しを行おうとするときは聴聞、事業の停止を命じようとするときは弁明の機会の付与であり、その手続の概要は以下のとおりである。
    1.    ① 聴聞又は弁明の機会の付与の通知
           対象業者に対し、予定される処分の内容及びその根拠法令、処分の原因となる事実のほか、聴聞手続の場合には聴聞の期日及び場所並びに聴聞担当部局の名称及び所在地等、弁明の機会の付与の手続の場合には弁明書の提出先及び提出期限を文書により通知しなければならない。
    2.    ② 聴聞の実施又は弁明の機会の付与
           対象業者に対し、聴聞手続の場合には期日における口頭審理を行い、弁明の機会の付与の手続の場合には原則として弁明書及び有利な証拠の提出を受けることになる。
           なお、聴聞手続の場合には、聴聞の期日に先立って、主宰者の決定、文書閲覧の機会の提供等を行わなければならない。また、聴聞の主宰者は、聴聞の期日ごとに聴聞調書を作成するとともに、聴聞終結後速やかに報告書を作成し、両者を併せて行政庁に提出しなければならない。
  6.   (六) 処分内容の再検討
        行政庁は、聴聞手続を行ったときは聴聞調書及び報告書の内容を参酌した上で、弁明の機会の付与の手続を行ったときは弁明書及び有利な証拠の内容を検討した上で、(五)①で通知した処分の内容が妥当であるかどうかを再検討する。この段階で必要に応じ、厚生省と再協議する。
        この場合、聴聞又は弁明の機会の付与の手続における相手方の意見を考慮した結果、処分の内容を軽減することは問題ないが、聴聞又は弁明の機会の付与の通知後に判明した新たな事実をもとに処分の内容を変更する場合には、手続をやり直す必要がある。
  7.   (七) 処分の決定
        処分の内容を決定する。
  8.   (八) 処分の通知
        処分の内容、処分理由及び根拠条項等を文書により処分の名あて人に通知する(事業停止処分にあっては、具体的に事業停止期間を指定することが必要である。また、複数の都道府県知事等が行う場合には、なるべく時期を合わせることが望ましい。)。その際、行政不服審査法に基づく教示を行う必要がある。なお、通知を行った後、事業が停止又は廃止されていることを立入検査等により確認する必要があることは、当然である。
  9.   (九) 厚生省への報告、都道府県等への連絡
        処分を行った旨を厚生省に報告するとともに、都道府県等に連絡する。内容は(a)事実の概要、(b)処分理由、(c)処分内容とし、公文で行う。

   (注)(一)、(二)、(六)及び(七)は、都道府県等における作業であるが、その内容を文書にして記録しておくことが必要である。

 二 事実認定の方法

   業の許可の取消し等を行うに当たっての事実認定の方法及び材料としては、次のようなものがある。

  1.   (一) 報告徴収・立入検査
        事実上のものでもよいが、法律上のものの方が望ましい。
  2.   (二) 対象業者からの文書
        処分に至るまでの過程において提出された文書である。なお、業務実績報告書もこの中に含まれる。
  3.   (三) 対象業者から提出された意見及び有利な証拠
        聴聞又は弁明の機会の付与の手続の過程で提出されたものである。
  4.   (四) 判決文
        裁判所が刑事罰を科す旨を決定した文書である。

Ⅵ その他

 一 虚偽申請等に係る許可の取消しについて

  1.   (一) Ⅰで述べた講学上の「行政行為の取消し」の例として虚偽申請等に基づく許可の取消処分がある。すなわち、実態としては許可基準に適合していないにもかかわらず、虚偽申請のためにこれに気付かず、許可を与えた後、申請内容が許可基準に適合しない旨が発覚した場合には、「行政行為の取消し」が可能である。
  2.   (二) 講学上の「行政行為の取消し」については、「取消権の制限」の問題があるが、虚偽申請に基づく許可の場合には、通常は、この制限は問題とならない。ただし、発覚した段階において既に許可基準を満たしている場合には取消しができなくなることがあるので慎重な対応が必要である。なお、取消しができない場合には十分な監視指導を行っていく必要があり、さらに、後に別の違反行為について当該者に処分を行う場合には、虚偽申請に基づき許可を取得した事実を考慮すべきである。他方、取消処分を行った後、許可を取り消された者から再度許可申請があった場合には、欠格条項に該当する場合があるので、慎重な対応が必要である。
  3.   (三) なお、虚偽申請の内容が欠格条項に係るものである場合には、錯誤による無効な許可であるので、さかのぼって許可を取り消すこととなる。
  4.   (四) 本件処分の実施の手続は、Ⅴの一の一般的手続に準じて取り扱うこととなるが、慎重な取扱いが必要であるので、特に取消処分の検討段階で厚生省と協議するのが適当である。
        なお、許可の取消しの根拠は、廃掃法第一四条の三において準用する第七条の三又は第一四条の六の規定ではないことに留意する必要がある。

 二 行政不服審査等との関係について

   業の許可の取消し等は、行政不服審査法に基づく不服申し立ての対象となり、通常、厚生大臣に対する審査請求という形を取る。行政不服審査においては、処分の適法・違法の問題のみならず、当・不当の問題も審査されるので、不当な処分である場合には取り消されることもあり得る。なお、聴聞を経てなされた処分については、原則として異議申し立てはできないが、審査請求については制限されない。
   また、業の許可の取消し等は、行政事件訴訟法に基づく処分の取消しの訴えの対象ともなり得るが、この場合には、処分の当・不当の問題は審査されない。

       処分に関する基本的原則

一 法律による行政の原則

  処分は、私人に対して、その意思にかかわらず一方的に不利益を課する行為であるから、法律に根拠を有する場合に限り、かつ、法律及び法律に基づく命令の定めるところに従って行わなければならないとされている。

二 営業の自由の尊重

  処分に当たっては、営業の自由を十分に尊重しなければならないとされている。

三 平等原則

  処分に当たっては、何らいわれがなく特定の者を差別的に取扱い、不利益を及ぼすことのないようにしなければならないとされている。

四 比例原則

  処分の内容は、違反行為の態様等に比例していなければならないとされている。

五 責任原則

  違反状態の発生について責任を有する者のみが講学上の警察権を発動されるとされている。

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