法令・告示・通達

道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進について

  • 公布日:昭和62年9月11日
  • 環大企451号

環境庁大気保全局企画課交通公害対策室長から都道府県、政令指定都市環境行政担当部局長あて

 自動車交通に起因する騒音の環境基準の達成状況は、交通量の多い幹線道路を中心とした道路周辺において、ここ数年顕著な改善の傾向がみられない状況にある。こうした状況にかんがみ、都道府県、政令指定都市が、関係機関と調整を図りつつ、地域における道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進を図る際の基本的考え方や手順、推進体制等を示すため、別添のとおり「道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進について」を取りまとめたので、貴管下の交通騒音が著しい地区がある場合における行政上の対応に当たつて参考にされたく通知する。

別添

   道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進について

1 総説

 (1) はじめに

   我が国では、高度経済成長の過程において都市地域への人口の集中及びモータリゼーションの急激な発展を見たが、それに伴い、自動車交通に起因する騒音等の公害が深刻な状況となつた。この背景としては、こうした騒音等の公害が国内の社会経済活動や国土利用のあり方と密接に関連する問題となつており、しかも我が国では国民生活や経済活動が極めて高密度に営まれているということなどが挙げられる。
   このような騒音問題に対しては、関係機関の努力により改善が図られているところであり、一定の成果を収めた地域もあるが、なお一層の対策を総合的に推進していかなければ問題解決が困難な地域も残されている。このため、環境庁においては自動車騒音の許容限度に基づく規制などの全国的な施策を推進してきており、今後とも自動車騒音低減のための所要の調査等を行つていくこととしている。一方、現実の公害は個々の地域において発生し、その態様は地域的な条件によつても差異がある。したがつて、具体的な地域における問題の解決を図るためには、各都道府県、政令指定都市(以下、「都道府県等」という。)が中心となつて、関係機関と意見を交換しその合意を形成しつつ、地域ごとの実効ある対策を取りまとめ、その計画的かつ総合的な推進を図ることが重要である。この場合、地域における自動車交通騒音等の実態を適切に把握し、その結果を関係行政機関の施策に反映させるよう努める必要がある。そのためには、まず関係機関からなる連絡会議もしくは協議会等(以下、「連絡会議等」という。)の場において、実態把握の結果を積極的に提供し、道路交通騒音に関するその他の情報を勘案しながら、対策について相互に連絡・調整を図ることなどが重要となる。こうした連絡・調整の結果、地域の状況により、各種対策が道路交通騒音防止のための「計画」という形で合意される場合や、「長期的な対策方針」若しくは「当面の対策の推進方策」といつた形にまとめられる場合等(以下、「計画等」という。)が考えられる。
   以下は、地域における連絡・調整を進めた結果、道路交通騒音防止のための計画等という形で合意され対策を実施する場合の手引きとするために取りまとめたものである。なお、実態の把握とその結果の提供、対策についての連絡・調整などを行う場合にもその考え方等について以下を参考とされたい。

 (2) 計画等の基本的考え方
  ・熟度及び内容
    計画は、その熟度、内容に応じて、①各種対策の実施可能性等を検討する段階(施策方針)、②10~20年の長期的視野から施策方針の具体的内容を構想として取りまとめる段階(基本計画)、③当面実施する対策等を明らかにする段階(実施計画)等が考えられる。この場合、前記の「長期的な対策方針」は概ね基本計画に相当し、「当面の対策の推進方策」は実施計画に相当すると言える。
    計画の立案に当たつては、関係機関と意見を交換しつつ、自動車交通騒音の態様、地域の将来のあり方等を踏まえ、公害防止の施策方針を明らかにし、それを実現するための基本計画、更に円滑かつ効果的に対策を推進するための実施計画を取りまとめることが望ましい。ただし、実際の運用に当たつては、各地方公共団体の地域特性等が異なることを考慮してその熟度、内容は弾力的に設定することとする。
  ・目標
    計画等を取りまとめる場合の長期的な目標は、沿道における自動車交通騒音による障害を解消することであり、環境基準が達成、維持される状態にすることである。しかし、対策の具体的な推進を図るためには、当面障害の著しい区間から対策に取り組むという方針で臨むことが現実的であり、地域の実状に応じて中間的な改善目標を定め、対策の推進を図ることが必要な場合もある。
  ・関係機関との連絡調整
    騒音公害が発現する際の主な要因としては、騒音の発生量を規定する「自動車及び交通流」、道路外への伝播量を規定する「道路構造」及び障害の程度を規定する「沿道土地利用状況」などの要因があり、公害防止のためには、各種の要因ごとの適切な対策を組合せ、全体としてバランスをとつて推進することが重要である。このため、各々の分野に責任を有する部局が連絡会議等を組織し、互いに連携し合意を形成しつつ道路交通騒音防止対策を取りまとめることが重要である。なお、環境部局は環境保全という共通の観点から、その調整、支援を行う。
  ・対象地域
    道路交通騒音防止対策は、遮音壁の設置のような局地的な対策だけでなく、交通流対策などのような広域的対応を要する対策が必要となる場合が多い。このような広域的な対策の検討に当たつては、局地的に問題が生じている区間の状況とともに、その区間を含む広域的な地域の状況をも勘案する必要がある。また、対策の優先性を考えて局地的な区間を抽出する際にも、広い地域の実態把握が欠かせない。このため、計画等の対象地域としては、都道府県等の全域とし、さらに騒音公害の状況に応じ、当面緊急に対策が必要な区間を抽出し、検討を行うのが望ましい。
  ・期間
    期間は、計画等の熟度、内容によつて異なるが、1~5年程度の場合から20年程度の場合までが考えられる。

2 計画等の取りまとめの手順

 (1) 対象地域の実態把握

   対策の取りまとめに当たつては、まず都道府県等の区域の中で騒音対策を重点的に講ずべき区間の優先度を把握したり、全域に共通する対策を検討するために、その全域の実態把握が必要である。
   この段階では、自動車交通騒音の実態、交通特性(交通量及び自動車起終点の状況)及び交通体系の整備状況の概要、人口や土地利用の状況などについて情報を収集、整理し、併せて、これまで講じられてきた対策についても調査する。

 (2) 対策区間の抽出と周辺地域の設定

   都道府県等の全域の実態把握を踏まえ、対策を講ずる必要性の高い道路区間(対策区間)を抽出するとともに、対策区間での対策を検討する上で一体的にとらえておく必要のある地域(周辺地域)を設定する。

  ・対策区間の抽出
    対策区間の抽出に当たつては、住民等からの苦情の有無に加え沿道における路側騒音値、沿道の土地利用や人口の集中状況等を総合的に検討する必要がある。また、市町村、対策実施の主体となる関係部局及び対策実施により影響を受ける関係機関等の意向を十分把握し、合意形成を図つていく必要がある。
    対策区間として抽出する区間の延長、箇所数は特に制約されるものではないが、具体的な取組の可能性を考慮しつつ、当面特に優先度の高い範囲に絞つておき、対策の進捗に応じて順次拡大していくことが現実的と考えられる。
  ・周辺地域の設定
    周辺地域の設定は、交通流の適切な誘導等対策区間を含んだその周辺の地域で進めるべき対策を念頭において行う。一般的には、対策区間を有する市町村及びこの市町村を含み一体の都市圏を形成する範囲とすることが適切である。
 (3) 対策区間及び周辺地域の現況、将来動向の把握

   対策区間及び周辺地域における具体的な施策方針等の検討の基礎とするため、騒音の実態、道路、交通、沿道土地利用等の現況、将来動向を更に詳細に把握し、各々の問題特性を明らかにする。

  ・騒音
    対策区間及び周辺地域の騒音状況を代表すると思われる地点を中心に、実態調査等により騒音の実態を把握する。必要がある場合には、騒音の経年的な変化や時間的な変化、道路構造や沿道の土地利用状況に応じた騒音の面的な広がり、鉛直方向への広がり等についても調査する。また、沿道住民の意識を把握するため、最近5年間程度の苦情、陳情等の実態も併せて調査する。
  ・交通
    対策区間及び周辺地域内の幹線道路の代表箇所における交通量を車種別に把握すると同時に、時間別変化及び経年的変化についても把握する。また、必要に応じ、自動車起終点や走行速度、信号処理等の交通状況についても調査するとともに、交通量の将来動向に係る資料を収集する。
  ・道路
    道路については、道路区分、道路構造等を明らかにするとともに対策区間の道路構造の改善のための計画や周辺地域内における道路網の整備計画の有無についても把握する。また、対策区間を含む周辺地域内の幹線道路が担つている役割についても調査する。
  ・沿道
    沿道については、人口の集中状況や経年的な変化、都市計画の状況等を把握する。対策区間においては、沿道における建物用途の状況などを詳細に把握する。
    また、沿道における環境整備上有効と考えられる土地区画整理事業や市街地再開発事業等の面的整備事業、都市公園整備事業、物流関連施設の立地等の各種事業について計画の区域、事業内容、進捗状況等を把握する。このほか、対策区間の沿道における市街地の性格、今後の沿道の環境整備の方向を明らかにするための調査に努める。
 (4) 施策方針の検討

   施策方針の検討に当たつて、都道府県等の全域を対象とする場合は、低騒音車の普及や、広域的な交通流対策等主として自動車及び交通流の分野での対策が考えられる。また、自動車が極めて高密度に利用されている大都市地域においては、物流の合理化や公共交通機関の利用を促進することにより自動車交通総量の抑制を図ることなども検討する必要がある。
   対策区間を対象とする場合は、対策区間や周辺地域の現況及び将来の動向を踏まえ、交通流、道路構造、沿道土地利用等各分野での対策をバランスをとつた形で実施することについて検討することが重要となり、こうした検討に当たつては、対策区間の道路が本来有すべき役割(道路機能)について認識しておく必要がある。現実には、本来の道路機能と実際の道路の利用形態とが十分合致していない場合もあり、そうした場合には現実に即した対応が必要であるが、本来的には望ましい交通体系に適切に位置付られた道路機能と、それにふさわしい周辺土地利用形態という一連の関係が考えられ、交通流、道路構造、沿道土地利用等各分野での対策もこうした一連の関係を配慮したうえでバランスよく推進することが重要である。
   すなわち、道路は、交通機能の観点や都市基盤を形成する観点から道路機能別に階層的に構成されており、各階層の道路が質、量ともに適切な交通を処理し、それらが有機的に結ばれることにより全体として望ましい交通体系、都市構造を形成していくことを目標としている。道路交通の質や量は、道路機能によつてある程度規定され、また、その交通の質や量に応じて望ましい沿道の土地利用を考えることができる。道路機能をもとにいかにして交通の質や量の適正化を図つていくか、いかなる方向で沿道の土地利用を整備していくか等は、道路計画、都市計画上の課題として検討されることが多いが、各種の公害防止対策の施策方針を取りまとめる上でも重要であることから、道路機能について十分認識し、施策方針の検討を進めることが適切である。
   したがつて、施策方針の取りまとめに当たつては、連絡会議等で、地域の特性、望ましい道路交通体系、対策区間の道路機能や沿道状況等を考慮し、既存の道路計画、都市計画等を念頭に置きつつ、取りまとめに向けて関係機関が相互に意見の交換を行うものとする。
   また、道路網整備等道路建設にあつては、適切に環境影響評価を行い、公害の未然防止に努めることが重要であり、こうしたことも施策方針の段階から注意する必要がある。

 (5) 計画等の取りまとめ

   騒音対策を着実に推進するため、施策方針の具体的内容等を各種対策毎に検討し、10~20年という長期的視野から基本計画として取りまとめることが望ましい。計画等の取りまとめに当たつては、連絡会議等において、道路計画、都市計画等を基礎として対策相互の関連を考慮しつつ、関係機関が相互に意見の交換を行う。
   基本計画において定める各種対策、事業は、その実施主体が多岐にわたることや、それらの実施に要する期間に差異あることが予想され、その総合的な推進には多大な努力が必要である。一方、これらの対策、事業は、その実施に当たり相互に関連する事項が多いだけでなく、対策の効果をより有効に発揮させるためには、関連する対策、事業を有機的に組み合わせて実施する必要がある。したがつて、対策を円滑かつ効果的に推進するために、連絡会議等で道路計画、都市計画等の計画をもとに各種対策、事業相互の調整等に配慮しつつ、当面実施できる対策、事業を適宜実施のための計画等として取りまとめるべく意見交換を行うことが望ましい。
   また、連絡会議等において、各種対策、事業の進捗状況を相互に把握し、適宜、適切な連絡・調整を図るため、各年度毎に実施した対策及び次年度実施する予定の対策等を整理することが望ましい。

3 推進体制

  道路交通騒音防止のための対策を計画的総合的に推進するための計画等を取りまとめるには、関係機関からなる推進組織を確立することが極めて重要である。計画等に係る基本的事項については、この推進組織を通じ関係機関が意見交換を行い合意形成を図ることが重要であり、また施策方針に示された個別対策等の具体化に当たつては、必要に応じ推進組織のもとに更に対策部会等を設け調整を図ることが望ましい。
  このため、都道府県等の各関連部局、関連市区町村、県警察本部、道路管理者、地方運輸局や必要に応じ学識経験者、関連業界などからなる連絡会議等を組織し、若しくは、既に同趣旨の組織がある場合にはそれを活用して、騒音対策の推進を図る。

4 その他

  計画等を取りまとめた場合、そこに位置づけた各種対策を総合的に推進するとともに、対策の効果などを適切に評価し、その後の対策の推進に反映させる必要がある。また、計画等を取りまとめた時点以降、新たに問題となる区間が生じる場合や、都市構造、道路網計画等の状況が大幅に変化する場合においては、騒音等の監視、測定を始め各種の情報収集を継続して行い、連絡会議等で適宜対策の推進について検討することが望ましい。また、関係機関へ自動車交通騒音の測定結果を提供するなど、連絡会議等を引続き活用して、関係機関相互に連絡・調整を行いその連携を継続的に保つことが重要である。
  なお、以上は、道路交通騒音対策を念頭においたものであるが、これは騒音が全国的な、しかも比較的苦情が多く寄せられる問題であるためであり、地域の状況によつては排ガス等の対策も併せて取りまとめるのが適切な場合がある。
  また、計画等の取りまとめに当たつては、都道府県等の基本計画など既存の行政計画との整合性に配慮し、今後策定される計画とは必要に応じ十分調整を図るよう努めるものとする。

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