法令・告示・通達

騒音に係る環境基準の改正について

公布日:平成10年09月30日
環大企257号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事あて通知

 騒音に係る環境基準(以下「環境基準」という。)は、平成10年9月30日に環境庁告示第64号として公布され、平成11年4月1日から施行することとされた。
 昭和46年5月25日に閣議決定され設定された旧環境基準は、騒音の評価手法として騒音レベルの中央値(L50,T)によることを原則として定められ、運用されてきたものである。しかし、その後の騒音影響に関する研究の進展、騒音測定技術の向上等によって、近年国際的には、等価騒音レベル(LAeq,T)によることが基本的な評価方法として広く採用されつつある。今回の環境基準の改正は、このような動向を踏まえ、平成10年5月22日の中央環境審議会からの環境庁長官に対する答申「騒音の評価手法等の在り方について」(中環審第132号)を受けて、騒音の評価手法を騒音レベルの中央値(L50,T)から等価騒音レベル(LAeq,T)に変更するとともに、地域の類型区分を見直し、また、最新の科学的知見に基づき基準値を再検討したものである。
 このような環境基準の改正の趣旨にかんがみ、下記の事項に十分御留意の上、環境基準のそれぞれの地域の類型を当てはめる地域の指定を行うほか、各関係行政機関と連携を図りつつ、環境基準達成のための施策の実施に関し、格段の御努力を願いたく通知する。
 おって、環境基準達成のための施策に関して、関係省庁に対し、別添の文書を送付したので念のため申し添える。
 なお、「騒音に係る環境基準について」(昭和46年9月20日環大特第5号環境庁大気保全局長から各都道府県知事あて通知)は、平成11年3月31日をもって廃止する。

第一 地域の指定

  環境基本法第16条第2項の規定に基づく「環境基準に係る水域及び地域の指定権限の委任に関する政令」(平成5年政令第371号)により地域の指定の権限は、当該地域が属する区域を管轄する都道府県知事に委任されているので、次の事項に留意の上、遅くとも施行期日までに地域の類型を当てはめて、その指定を行われたい。

  1.  1 地域の類型AAは、単に病院等が集合して設置されている地域ではなく、地域の土地利用の実態からみて住宅地以上に特に静穏を必要とする療養施設、社会福祉施設、文教施設等の施設が集合して設置されている地域のことである。
  2.  2 地域の類型A、B及びCの当てはめは、原則として、都市計画法第8条第1項第1号に定める用途地域に準拠して行うものとし、住宅の立地状況その他土地利用の実情を勘案して行うものとする。
    1.   (1) 地域の類型と用途地域の対応関係を述べると、おおむね次のとおりである。
          地域の類型Aは、同法第9条第1項から第4項までに定める第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域及び第二種中高層住居専用地域とする。
          地域の類型Bは、同条第5項から第7項までに規定する第一種住居地域、第二種住居地域及び準住居地域とする。
          地域の類型Cは、同条第8項から第11項までに規定する近隣商業地域、商業地域、準工業地域及び工業地域とする。
          用途地域のうち、同法第9条第12項に定める工業専用地域については、地域の類型の当てはめを行わないものとする。
    2.   (2) 地域の類型Cについては、相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域とされているので、現状の住居の立地状況や土地利用動向について特に留意されたい。なお、現状で相当数の住居の土地利用が見られず、今後も相当数の住居の土地利用が見込まれない場合には、地域の類型の当てはめを行わなくても差し支えない。
    3.   (3) 住居系用途地域(住専系用途地域を除く。)と工業系用途地域が隣接している一部の地域であって、用途地域の区分に従っては騒音防止が著しく困難な場合には、用途地域の区分にとらわれることなく、騒音防止の見地から地域の類型の当てはめを行われたい。
    4.   (4) 地域の類型の当てはめは、原則として、用途地域に準拠して行われるものであるが、用途地域の定めのない地域についても、地域の類型の当てはめを行うことを妨げるものではない。当該地域の自然的条件、住宅等の立地状況、土地利用の動向等を勘案し、用途地域の定められている地域の状況を参考にしつつ、相当数の住居が所在する地域等に対し適切な地域の類型の当てはめを行われたい。
  3.  3 地域の指定を行ったときは、直ちに都道府県の公報に掲載するなどにより公示し、関係住民等に周知させるよう配慮するとともに、遅滞なく環境庁に連絡されたい。
  4.  4 地域の指定の見直しは、おおむね10年ごとに土地利用等の状況の変化に応じて行うとともに、土地利用計画の大幅な変更があった場合にも速やかに行われたい。

第二 評価方法等

  評価方法等については、環境基準に定められている事項のほか次の事項についても留意されたい。
  なお、騒音の評価のための測定の実施に関する細目的事項については、別途通知する予定である。

  1.  1 評価は、住居等の用に供される建物の騒音の影響を受けやすい面における騒音レベルによって行うことが原則である。これは、通常、音源側の面であると考えられるが、開放生活(庭、ベランダ等)側の向き、居寝室の位置等により音源側と違う面となることがある。音源が不特定な場合には、開放生活側の向き等を考慮して騒音の影響を受けやすい面を選ぶ必要がある。
  2.  2 透過する騒音に係る基準の評価に必要な「建物の防音性能値」は、外壁に用いられている資材、窓の構造等の条件等から見込まれる窓閉め時の建物の防音性能の値で足り、測定によって個々に検証を行う必要はない。
  3.  3 評価のために測定を行う場合は、日本工業規格Z8731に定める騒音レベル測定方法に従い、建物から1~2メートルの距離にある地点の騒音レベルを測定し、その値によって評価することを原則とする。当該建物による反射の影響が無視できない場合にはこれを避けうる位置で測定し、これが困難な場合には実測値を補正するなど適切な措置を行うこととする。
       測定に代えて道路交通量等の条件から騒音レベルを推計する場合は、道路交通量、道路構造、音源からの距離等のデータを用いて騒音レベルを推計し、その値によって評価することとする。
  4.  4 評価は、時間の区分ごとの全時間を通じた等価騒音レベルによることを原則としているが、評価のために測定を行う場合においては、騒音レベルの変動等の条件に応じて、実測時間を短縮することも可能である。この場合、連続測定した場合と比べて統計的に十分な精度を確保し得る範囲内で適切な実測時間とすることが必要である。
  5.  5 道路に面する地域以外の地域において環境基準の達成状況の地域としての評価を行う場合は、一定の地域ごとに当該地域の騒音を代表すると思われる地点を選定する必要があるが、これは、道路に面する地域と比べると地域全体を支配する音源がなく、地域における平均的な騒音レベルをもって評価することが可能であるとの考え方によるものである。なお、当該地点は、必ずしも住居等の建物の周囲にある地点である必要はなく、例えば空き地であっても、当該地域の騒音を代表すると思われる地点であれば選定して差し支えない。
  6.  6 道路に面する地域において環境基準の達成状況の地域としての評価を行う場合は、一定の地域ごとに当該地域内の全ての住居等のうち環境基準を超過する戸数及び超過する割合を把握して評価するものとされているが、地域内の全ての住居等における騒音レベルを測定することは極めて困難であるため、原則として、一部を実測し、これに基づいてそれ以外を推計することによって把握することとされたい。なお、将来的には全てを推計によって把握することも考えられ、環境庁において推計手法の確立に向けて検討を進めているところである。

第三 その他

  1.  1 「道路に面する地域」とは、道路交通騒音が支配的な音源である地域のことである。
       なお、道路交通騒音の影響が及ぶ範囲は、道路構造、沿道の立地状況等によって大きく異なるため、道路端からの距離によって一律に道路に面する地域の範囲を確定することは適当ではない。
  2.  2 「幹線交通を担う道路」とは、次に掲げる道路をいうものとする。
    1.   (1) 道路法第3条に規定する高速自動車国道、一般国道、都道府県道及び市町村道(市町村道にあっては4車線以上の区間に限る。)。
    2.   (2) 前項に掲げる道路を除くほか、一般自動車道であって都市計画法施行規則第7条第1項第1号に定める自動車専用道路。
          地域の指定の周知に併せて、幹線交通を担う道路の定義を、都道府県の公報に掲載するなどにより、関係住民等に周知させるよう配慮されたい。
  3.  3 「幹線交通を担う道路に近接する空間」とは、次の車線数の区分に応じ道路端からの距離によりその範囲を特定するものとする。
    1.   (1) 2車線以下の車線を有する幹線交通を担う道路 15メートル
    2.   (2) 2車線を超える車線を有する幹線交通を担う道路 20メートル
  4.  4 「住居等」とは、旧環境基準においていう「住居、病院、学校等」と同義であり、その範囲を今回変更したものではない。
  5.  5 「個別の住居等において騒音の影響を受けやすい面の窓を主として閉めた生活が営まれていると認められる」場合とは、通常、建物の騒音の影響を受けやすい面の窓が、空気の入れ換え等のために時折開けられるのを除いて閉められた生活が営まれているということであり、それ以外の側面で主として窓を閉めた生活が営まれていることを必要としないが、窓を閉めた生活が営まれている理由としては、建物の防音性能が高められ、空調設備が整備されているといった対策等により生活環境の確保が十分に図られていることが必要である。
       幹線交通を担う道路に近接する空間に係る基準値の表の備考は、幹線交通を担う道路に近接する空間に在る個別の住居等がこの要件を満たす場合には、幹線交通を担う道路に近接する空間における騒音に係る基準又は屋内へ透過する騒音に係る基準が騒音に係る環境基準である旨を示すものであり、この要件について具体的事例に即して疑義照会があったときには、貴職において上記を踏まえ適切に対応されたい。
       なお、屋内へ透過する騒音に係る基準は、幹線交通を担う道路に近接する空間における道路交通騒音の実情にかんがみると建物の防音工事等の沿道対策の推進も視野に入れた対策の目標として環境基準を機能させることが必要であると判断して設けたものである。
  6.  6 「道路に面する地域以外の地域が環境基準が施行された日以降計画された道路の設置によって新たに道路に面することとなった場合」には、当該地域について、道路に面する地域の基準値が適用され、かつ、当該基準値の達成期間は道路の供用時から直ちに達成又は維持されるよう努めなければならない。なお、既設の道路に拡幅事業等が行われ、もともと既設の道路に面する地域である地域が事業後も道路に面する地域である場合には、既設の道路に係る達成期間(環境基準が施行された日より前に当該拡幅事業等が計画された道路にあっては事業後の道路を既設の道路とみなした場合の達成期間)によるものとする。
       また、「環境基準が施行された日より前に計画された道路の設置によって新たに道路に面することとなった場合」には、道路に面する地域の基準値が適用され、かつ、当該基準値の達成期間は、既設の道路に面する地域における達成期間の原則が準用されるため、環境基準の施行の日から起算して10年以内又は10年を超える期間で可及的速やかにである。
       なお、ここでいう計画された道路とは、環境影響評価及び都市計画に係る手続等において既に公告縦覧、地元説明等が行われた道路を指す。
  7.  7 「幹線交通を担う道路に近接する空間の背後地に存する建物の中高層部に位置する住居等」とは、マンションの中高層部に位置する住居などのことであり、これが位置する高さについては制限はない。
  8.  8 「その面の窓を主として閉めた生活が営まれていると認められる」場合とは、「個別の住居等において騒音の影響を受けやすい面の窓を主として閉めた生活が営まれていると認められる」場合と同義である。