法令・告示・通達

湖沼水質保全特別措置法の一部を改正する法律の施行について

  • 公布日:平成18年4月1日
  • 環水大水第060401001号

(環境省水・大気環境局長から都道府県知事・湖沼水質保全特別措置法政令市長あて)

 湖沼水質保全特別措置法の一部を改正する法律(平成17年法律第69号。以下「改正法」という。)については、平成17年6月14日に成立し、同年6月22日に公布され、平成18年4月1日から施行される(湖沼水質保全特別措置法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成18年政令第55号))。
 また、改正法に基づき、湖沼の水質の保全を図るための基本方針である、湖沼水質保全基本方針(昭和59年12月総理府告示第34号。以下「基本方針」という。)の変更が、平成18年1月24日に閣議決定され、同月26日に公表された(平成18年1月環境省告示第29号)。
 さらに、湖沼水質保全特別措置法施行令の一部を改正する政令(平成18年政令第56号)が平成18年3月17日に閣議決定、同月23日に公布され、湖沼水質保全特別措置法施行規則の一部を改正する省令(平成18年環境省令第10号)は、平成18年3月29日に公布され、改正法の施行の日から施行される(平成18年4月1日)。
 貴職におかれては、別記事項に留意の上、改正法の施行に遺漏なきを期されるようお願いする。

別記

1 改正法の趣旨

  湖沼は、国民の生活及び生産活動にとって重要な資産であり、水資源の確保、水産資源の育成、治水機能等の様々な恵沢を国民にもたらしている。しかしながら、汚濁物質が蓄積しやすいという湖沼の特性に加え、湖沼周辺での開発及び人口の増加等の社会的経済的な構造の変化による汚濁負荷の増加等から、湖沼水質保全特別措置法(昭和59年法律第61号。以下「法」という。)の施行から20年以上経過した現在においても、湖沼の水質については顕著な改善傾向がみられない状況にある。
  指定地域における工場・事業場の排水規制については、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)等に基づく濃度規制のほか、法に基づく新増設事業場に対する負荷量規制が行われてきたが、負荷量規制を受けていない既設の湖沼特定事業場数が全指定湖沼において湖沼特定事業場数の5割程度残存している状況にあった。農地、市街地等からの汚濁負荷対策については、すべての指定湖沼で、施肥量の適正化等の農業地域対策、市街地雨水排水の沈殿処理等の都市地域対策等が湖沼水質保全計画(以下1及び2において「計画」という。)に盛り込まれているが、汚濁負荷の実態把握が十分なされていない等の理由から、多くの指定湖沼において数値目標を掲げた施策の実施にまで至っていない状況にある。また、水生植物を利用した湖水及び湖沼流入河川の浄化については、一定の水質改善効果があることが定量的に分かってきており、計画の施策体系の中での位置づけを明確にしていく必要がある。
  本改正法等は、こうした状況にかんがみ、湖沼の水質の保全を図るため、各発生源に発生源の特性に応じて技術的・経済的に可能な範囲の追加的な対策を講じていくという観点から、これまでの対策に加えて、既設の事業場等に対する負荷量規制の適用、農地、市街地等からの流出水に係る対策の実施の推進、湖辺環境の保護のための措置の導入、計画期間の柔軟化、計画の策定手続における指定地域の住民(以下「地域住民」という。)の意見聴取に係る規定等を整備することとしたものである。

2 湖沼水質保全計画の策定について

  今般の改正法により、計画の策定期間について、指定湖沼・指定地域の実情を踏まえて各指定湖沼ごとに定めることができることとなり、計画の記載事項として、計画期間が追加され、また計画を定めようとする場合において都道府県知事が必要があると認めるときは、あらかじめ、公聴会の開催等地域住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならないこととされている(法第4条)。
  計画の策定については、基本方針第2の1「湖沼水質保全計画の策定に関する基本的事項」及び「湖沼水質保全特別措置法の施行について」(昭和60年7月31日付け環水管第173号環境事務次官通知、昭和60年7月31日付け環水管第174号水質保全局長通知(以下「昭和60年局長通知」という。)の定めるところにより、指定湖沼・指定地域の実情を踏まえて実施されたい。
  計画の策定に当たっては、まず、湖沼特性を踏まえた、望ましい湖沼の水環境及び流域の状況等に係る将来像を明らかにする長期の視点に立ったビジョンを都道府県及び市町村の関係部局、地域住民、指定地域の事業者(以下「事業者」という。)並びに国の関係行政機関の参加のもと検討を行い、共有するよう努められたい。その際には、当該湖沼の将来像を示した計画又は指針等が既に策定されている場合には、それらを尊重して検討されたい。
  また、可能な限り指定地域内の水環境の状況及び汚濁負荷発生源を的確に把握したうえで、現状における指定湖沼の水質及び指定地域内において公共用水域に排出される汚濁負荷量を把握するとともに、人口、産業、汚水処理施設の整備等の動向を勘案して将来における汚濁負荷量の推移を推計し、これに伴う指定湖沼の水質への影響を予測されたい。
  次に、共有された長期ビジョンの達成という視点を踏まえて、計画の目標、期間及び目標を達成するために実施すべき水質保全対策を総合的に検討されたい。その際には、湧水の保全等水循環の確保に係る対策、水生植物の保全等生態系の保全に係る対策及び親水護岸の整備等による湖沼と地域住民とのふれあいを通じた意識啓発に係る対策のうち、水質保全効果のある対策についても検討の対象とされることが望ましい。
  計画においては、計画期間、計画期間内に達成すべき目標、目標を達成するために実施すべき対策並びに計画の目標及び対策と長期ビジョンをつなぐ道筋を盛り込まれたい。計画の目標及び対策と長期ビジョンとをつなぐ道筋は可能な限り定量的なものが望ましいが、定性的なものであっても一定期間に達成すべき指標を設定するなど段階的に長期ビジョンの達成に向かっていくことを示すものを盛り込むよう努められたい。また、行政主体の対策だけでなく地域住民及び事業者による取組並びに行政、地域住民及び事業者による協働の取組を位置づけることとされたい。
  計画の策定に当たっては、都道府県知事が必要であると認めるときは、計画案の策定過程において、地域住民及び事業者の参加を得た円卓会議又はセミナー等の開催、計画案が策定された段階において、計画案に対するパブリックコメントの実施に加え、公聴会又は意見交換会等の開催により地域住民の意見を聴取することが望ましい。また、計画に基づく事業の実施及び計画の評価段階においても、地域住民及び事業者の参加を得た円卓会議又はセミナーの開催等関係者が参加することのできる仕組みを設けることが望ましい。

3 湖沼特定事業場に係る汚濁負荷量の規制について

 (1) 規制基準の基本式

    湖沼水質保全特別措置法施行規則(昭和60年総理府令第7号。以下「規則」という。)第2条第1項においては、化学的酸素要求量、窒素含有量及びりん含有量に係る法第7条第1項の規制基準(以下「規制基準」という。)の基本となる算式が次のように示されている。
1号式
  L=a・Qb×10-3
2号式
  L={a・Qb-1・(Q-Q0)+a0・Q0b0}×10-3
3号式
  L=C・d・Q×10-3
 この式において、Lは排出が許容される汚濁負荷量(単位 一日につきキログラム)、Qは排出水の量(単位 一日につき立方メートル)、Q0は改正前の法に基づき設定された規制基準の適用の際における排出水の量(単位 一日につき立方メートル)、aは都道府県知事が水質汚濁防止法に基づく排水基準を勘案して定める定数、bは0.8以上1.0未満の範囲内で、都道府県知事が湖沼特定事業場の規模別の分布の状況等を勘案して定める定数、a0は都道府県知事が水質汚濁防止法に基づく排水基準を勘案して定める定数、b0は0.9以上1.0未満の範囲内で、都道府県知事が湖沼特定事業場の規模別の分布の状況等を勘案して定める定数、Cは排出水に適用される水質汚濁防止法に基づく排水基準(単位 1リットルにつきミリグラム)をそれぞれ表す。dは下水道終末処理施設、地方公共団体が設置するし尿処理施設若しくは浄化槽又は土地改良法(昭和24年法律第195号)第57条の4第1項に規定する農業集落排水施設整備事業に係る施設(浄化槽に限る。以下同じ。)(以下「汚水処理施設等」という。)から排出される排出水の水質に関する技術上の基準として定められた値をCで除した値以上1.0未満の範囲内で、都道府県知事が汚水処理施設等の整備の見通し等を勘案して定める定数を表すが、当該方法により定めることが適当でないと認められる場合には、当該技術上の基準として定められた値等及びCの値を勘案して、1.0とすることができるものとする。
    改正法により既設事業場において増設が行われるか否かにかかわらず汚濁負荷量規制が適用されることとなったため、2号式の算式が改正されている。すなわち、改正前の法に基づき設定された規制基準の適用の日以前の排出水及び当該規制基準の適用の日以後において増加することとなった排出水に関し、濃度に換算した場合の許容濃度を異なった値とすることができる算式となっている。また、既設事業場については排水処理施設が既に設置されていることを考慮し、規制基準の適用の日以前の排出水に対応する規制基準を定めるb0値の範囲は、当該規制基準の適用の日以後に増加することとなった排出水に対応する規制基準を定めるb値よりも限定された範囲内で設定するものとなっている。
    なお、既設事業場に関しては、都道府県知事が改正法に基づく2号式による規制基準の設定を行うまでは、改正前の規則における2号式が適用されることとなることに留意されたい。
    また、汚水処理施設等についても汚濁負荷量規制が適用されることとなった。汚水処理施設等に適用される規制基準の算式は、排出が許容される汚濁負荷量を濃度に換算した場合の値が一定となる算式となっている。

 (2) 規制基準の設定及び適用に当たっての留意事項

    前記による規制基準の設定に当たっての留意事項については、引き続き、昭和60年局長通知3(2)によるほか、2号式による規制基準の設定に当たっては、事業場における既設の排水処理施設の適正な維持管理により対応可能な範囲で設定するよう配慮されたい。
    また、3号式による規制基準の設定に当たっては、汚水処理施設等が工場・事業場排水及び生活排水等を集めて処理することにより湖沼に流入する汚濁負荷量を効率的に削減する公共施設であってその新増設自体が湖沼の水質保全に資するものであることから、下水道終末処理施設については、下水道法(昭和33年法律第79号)第2条の2第1項に規定する流域別下水道整備総合計画、地方公共団体が設置するし尿処理施設若しくは浄化槽又は土地改良法第57条の4第1項に規定する農業集落排水施設整備事業に係る施設については、当該施設の整備に関する計画との整合を図るなど、汚水処理施設等の整備の推進に配慮されたい。

4 流出水対策地区について

  農地、市街地等からの汚濁負荷量を削減するため、都道府県知事は流出水対策地区を指定し、当該地区に係る流出水対策推進計画の策定、流出水対策の実施のための指導等を行うことができることとされている(法第25条~第28条)。
  流出水とは、指定地域内の土地から湖沼に流入する表流水及び地下水のうち、水質汚濁防止法第2条第2項に規定する特定施設及び指定施設から排出される水並びに同条第8項に規定する生活排水を除いたものをいい(法第25条第1項)、流出水対策地区の指定及び流出水対策推進計画の策定の対象となる流出水は、主に農地、市街地等から排出される水(合流式下水道の越流水を含む。)とする。

 (1) 流出水対策地区の指定に当たっての留意事項

    流出水対策地区の指定については、流出水の汚濁負荷量の指定湖沼の汚濁負荷量に占める割合が大きい地区であって、汚濁負荷削減対策を実施することが可能な地区について順次指定を行うこととされている(基本方針第2の2)。流出水の汚濁負荷量の指定湖沼ヘ流入する汚濁負荷量に占める割合の大きさについては、湖沼ヘ流入する河川の数を勘案し、流入河川毎の流出水の汚濁負荷量の割合を比較することなどにより判断されたい。この判断に当たっては、流入河川毎の発生源別に算出された汚濁負荷量に基づくことが望ましいが、発生源別の汚濁負荷量に係るデータがない場合においては、流入河川毎における土地利用の状況、流入河川の水質及び水量等のデータに基づく流出水の割合等の比較を行うなどにより判断されたい。また、指定地域における土地利用、流出水対策の取組状況、農地、市街地等と流入河川との位置関係、流入河川の水質及び水量のデータ等について整理したマップ等を作成した上で対象地区を選定されることが望ましい。
    流出水対策地区の指定に当たっては、森林又は肥料が長年にわたり投入されていない農地といった自然的負荷のみの流出と認められる地区は対象としない。また、指定する範囲については、一つの流入河川の流域を、又は内湾等に複数の小河川が流入しているような場合には内湾等に流入する複数の小河川の流域を最大として指定されたい。したがって、一つの流入河川の支流の流域を対象に設定することも可能である。
    流出水対策の実施においては、対策地区の住民、農業者等の事業者若しくは道路管理者等の協力又は取組が必要であるため、流出水対策地区の指定に当たっては、これらの関係者の理解が得られるよう、事前に流出水対策地区の指定の趣旨及び必要性等について説明及び意見交換を行うよう努められたい。

 (2) 流出水対策推進計画の策定に当たっての留意事項

    湖沼水質保全計画に位置づけられる流出水対策推進計画には、①流出水対策の実施の推進に関する方針、②流出水の水質を改善するための具体的方策に関すること、③流出水対策に係る啓発に関すること、④前3号に掲げるもののほか、流出水対策の実施の推進のために必要な措置に関することを定めることとされており(法第26条第2項)、各事項に係る記載事項等を以下に示す。

  1.     ①流出水対策の実施の推進に関する方針
         流出水対策地区における取組目標及び流出水対策の実施の体制等を記述するものとする。
  2.     ②流出水の水質を改善するための具体的方策に関すること
         流出水対策について、可能な限り実施主体、実施時期、対策を講じる場所及び対策内容を明記するとともに、可能な限り定量的な目標を設定するよう努められたい。定量的な目標としては、環境基準項目に係る負荷量の削減目標の他、対策面積又は対策の実施量等が考えられる。

     流出水対策推進計画中に盛り込まれる対策は、実態把握を行った上で、関係者が実行可能な内容のものとするとともに、従来から汚濁負荷削減を進める対策が実施されている場合には、当該対策を計画中に位置づけられたい。流出水対策としては、例えば、市街地においては、道路清掃、雨水の地下浸透及び貯留の促進、雨水の処理等、農地においては、水田の代掻き時の水管理の改善、都道府県で策定している施肥基準等に基づいた適正施肥の実施、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(平成11年法律第110号)に基づく認定農業者(エコファーマー)の認定の促進等による対策が考えられる。また、これらの発生源における対策に加えて、汚濁負荷が河川等を流下する過程で植物及び礫の浄化機能などを活用した浄化並びに汚濁底質のしゅんせつなどの対策が考えられる。さらには、他の地区でも実施可能なモデル的な対策を実証的に行うものも含みうるものとする。なお、流出水対策として、洪水時及び低平地等の農地湛水被害を防止するための農業排水の水管理並びに排水施設を整備する事業又は農業用排水路の管理者として要請されている範囲を超えるような対策は含まれない。

  1.     ③流出水対策に係る啓発に関すること
         パンフレットの作成、説明会、セミナーの開催等により、流出水対策の内容及び実施状況並びに地域住民及び事業者の取組内容等について広く周知を図る等流出水対策の啓発に係る取組について記述するものとする。
  2.     ④前3号に掲げるもののほか、流出水対策の実施の推進のために必要な措置に関すること
         対策の進捗状況及び対策効果の把握に関する事項等を記述するものとする。
         なお流出水対策推進計画の策定に当たっては、流出水対策地区における各種計画との整合を十分に図るよう努められたい。

 (3) その他の留意事項

    都道府県知事は、流出水対策推進計画を実施するために特に必要があると認めるときは、流出水対策地区内の土地であって、流出水の汚濁の原因となる物が著しく発生していると認められるものの所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)に対し、流出水対策を実施するよう必要な指導、助言及び勧告をすることができることとされている(法第28条)。本条に基づく指導、助言及び勧告は、農林地等のうち自然的負荷については対象としないことに留意し、当該所有者等の行為により汚濁負荷が湖沼に流入している場合であって、他の所有者等と比較して湖沼水質の汚濁原因となる物を著しく発生させていることについて客観的に認められるときに実施するものとし、指導等の内容は当該所有者等が実行可能な範囲内のものとするよう配慮されたい。また、勧告を行う前に指導又は助言を十分に行うよう留意されたい。なお、公共用水域の水又は雨水の流入に伴う汚濁物質を原因として流出水の汚濁が発生している場合においては、本条の所有者等に、河川等の管理者又は下水道管理者は含まれない。

5 湖辺環境保護地区について

  湖沼の水質の改善に資する植生を保護するため、都道府県知事が指定した湖辺環境保護地区において植物の採取等の行為を行う場合に、届出又は通知(以下「届出等」という。)を義務づけ、都道府県知事は必要に応じ当該行為に対する原状回復命令等を行うことができることとされている(法第29条~第36条)。

 (1) 湖辺環境保護地区の指定に当たっての留意事項

    湖辺環境保護地区(以下「保護地区」という。)の指定に当たっては、湖沼、湖岸から湖沼と一体で存在する湿地帯、流入河川河口部、内湖等において植生が一体として保護できるような区域において、湖沼の水質の改善に資する水生植物(湿生植物、抽水植物、浮葉植物、沈水植物又は浮遊植物)のうち、都道府県知事が選ぶ種が生育している地区について行うこととされている(法第29条、基本方針第2の3、規則第13条)。都道府県知事が選ぶ種として立木竹は含まれない。
    なお、都道府県知事による保護地区の指定は、場所を特定して行うものであるため、移動する可能性のある浮遊植物については、他の植物と一緒に生息している場合に指定するよう努められたい。また、保護地区における保護の対象となる自然環境には、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)第2条に規定する特定外来生物及び環境省が定める要注意外来生物リストに掲げられた植物で主に構成される植生は含まれず、同地区には、森林法(昭和26年法律第249号)第2条第1項に規定する森林、林野庁所管の国有林野及び公有林野等官行造林地、農地法(昭和27年法律第229号)第2条第1項に規定する農地、農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第8条第2項第1号に規定する農用地区域、農業用用排水施設、漁港漁場整備法(昭和25年法律第137号)第2条に規定する漁港及び港湾法(昭和25年法律第218号)第2条に規定する港湾区域等港湾は含まれない。
    保護地区の指定に当たっては、河川法(昭和39年法律第167号)第16条の規定に基づく河川整備基本方針、同法第16条の2の規定に基づく河川整備計画その他の関係する計画と整合を図るとともに、地域住民及び事業者の意見を取り入れるよう努められたい。
    保護地区の指定を行った際には、その旨を公表するとともに、当該湖辺環境保護地区をその区域に含む市町村に通知することとされている(法第29条第4項)。なお、公表した後は、保護地区内において保護地区に指定した旨の掲示を行うとともに、都道府県庁又は保護地区を含む市町村役場において保護地区について閲覧できるようにするなど、地域住民及び事業者に保護地区の場所について周知徹底を図ることが望ましい。また、指定後可能な限り速やかに湖沼水質保全計画に位置づけることとされたい。

 (2) 湖辺環境保護について

    ①維持管理計画の策定

     保護地区においては、必要に応じ、当該地区の植生を適正に保全、維持管理していくための計画を策定することとされている(基本方針第2の4(7))。植物による水質浄化能力は、複数の種類の植物がエコトーンとして一体として保全されることによって高まりうるため、維持管理に当たっては、複数の種の植生を維持することが望ましい。また水質が悪化する前に指定湖沼に存在した植生を把握し、その維持・拡大を念頭において保護することも考慮されたい。また、維持管理の内容としては、ゴミ拾い、見回り、必要に応じた刈り取り等が挙げられる。以上を踏まえ、策定する計画には、保全すべき植生の種類及び面積等の植生の保全に関する基本的な事項、都道府県、保護地区をその区域に含む市町村の関係部局、河川管理者、海岸管理者、保護地区周辺の地域住民又は事業者が行う維持管理活動に関する事項、地域住民及び事業者に対する湖辺環境保護の重要性の普及啓発並びに関係者の協力体制に関する事項等を盛り込むよう努められたい。

    ②保護地区における行為の届出等

     保護地区内において、法第30条第1項各号に掲げる行為をしようとする者は、都道府県知事に対し届出等を行うことが義務づけられ、都道府県知事は、届出を要する行為をしようとする者又はした者に対して、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置を執るべき旨を命ずること(以下「行為の禁止等」という。)ができることとされている(法第30条)。
     行為の禁止等は、当該行為によって保護地区の植生が破壊されることによって、保護地区の植生が有する水質浄化能力に悪影響を与えることが予想される場合に講じることとされたい。必要な措置としては、作業現場の周囲での柵の設置、行為に伴い採取した植生の原状回復又は植物の移植等がある。
     また、法第30条第9項及び規則第15条に掲げる行為については、以下の観点から届出等を要しないものとされている。

  •      ア 刈り取り、火入れ若しくは外来植物の除去など植生の維持管理等の通常の管理行為、環境教育又は自然観察を目的とした植物の採取等の軽易な行為、国若しくは地方公共団体の試験研究機関又は大学における教育・学術研究として行う行為、自然環境保全法(昭和47年法律第85号)に規定する保全事業等自然保護に係る事業として行う行為、河川その他の公共の用に供する水路の管理として行う行為等は、湖辺環境保護にとって有益又は支障の少ない行為であることから、届出等を要しないこととした。
  •      イ 下水道終末処理施設又は農業集落排水施設の整備若しくは維持管理等湖沼水質保全計画に基づき湖沼の水質の保全に資する事業として行われる行為は、当該行為そのものが湖沼の水質の保全に寄与するものであることから、届出等を要しないこととした。
  •      ウ 自然環境保全法に基づく特別地区又は野生動植物特別地区、自然公園法(昭和32年法律第161号)に基づく特別地域又は特別保護地区において許可を要する行為等は、自然環境の保全の観点から審査の上許可されることから、湖辺環境保護に支障を及ぼすものではないと考えられるため、届出等を要しないこととした。また河川法等の法令に基づく許認可等を要する行為についても、湖辺環境保護地区においては、湖辺環境の保護にも配慮して許認可が行われることから、湖辺環境保護に支障を及ぼすものではないと考えられるため、届出等を要しないこととした。
  •      エ 非常災害のために必要な応急措置として行う行為、電気事業法(昭和39年法律第170号)に規定する電気工作物、ガス事業法(昭和29年法律第51号)に規定するガス工作物を設置し、又は管理する行為、砂防法(明治30年法律第29号)に規定する砂防工事、地すべり等防止法(昭和33年法律第30号)に規定する地すべり防止工事、又は森林法に規定する保安施設事業の施行として行う行為等公益上必要な行為であって湖辺環境保護の観点から支障がない行為については届出等を要しないこととした。非常災害のために必要な応急措置として行う行為とは、施設及び設備の応急の復旧、土のう積み、シート張りなどの水防等災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に、災害の発生を防御し、応急的な救助を行う等の災害の拡大を防止するために行う行為であり、洪水時や低平地の農地湛水被害を防止するための農業排水の水管理等も含まれるものとする。

6 その他湖沼の水質保全に関する重要事項その他の留意事項

 (1) 水質の監視測定等

    湖沼及びその集水域の水質の状態を的確に把握するため、水質の監視測定を実施するとともに、必要に応じ監視測定施設・設備の整備並びに地域住民の協力及び参加も得た監視測定体制の確立の充実を図る。また、地域住民の理解及び施策への参加を促進する観点から、湖沼の利用目的等の特性に応じて、地域住民にも分かりやすい指標等を設けて、水質の監視測定に活用するものとされている(基本方針第3の2)。
    地域住民にも分かりやすい指標としては、透明度又は透視度、生物指標及び水道水源としての利用の観点からのカビ臭物質(2-MIB、ジェオスミン)等が考えられる。

 (2) 事務の委任

    本法の規定により都道府県知事の権限に属する事務は、政令によってこれを市長に委任することができることとされている(法第42条第1項)。改正法により導入された都道府県知事の権限に属する義務のうち、法第28条に規定する流出水対策地区内における指導等に係る事務については、政令市の市長に委任することとなっている。

 (3) 関係機関との調整等

    改正法の運用に当たっては、負荷量規制の基準の設定、流出水対策地区の指定、流出水対策推進計画の策定、湖辺環境保護地区の保護の対象となる植物の選定及び湖辺環境保護地区の指定に際しては、改正法に定める手続はもとより、昭和60年局長通知5アに掲げる関係機関、下水道管理者又は海岸管理者との十分な協議・調整を図られたい。当該湖沼が土地改良事業によって造成されたダムの貯水池又は主として農業用に利用されているため池である場合にはこれらの管理者との協議・調整も図られたい。
    また、保護地区内において、都市計画法(昭和43年法律第100号)又は宅地造成等規制法(昭和36年法律第191号)等の法令の規定による地区指定がなされている場所に関して、法に基づく土地の形状の変更を伴う行為等の届出等がなされた場合には、都道府県等における都市計画法等の担当部局に対し、届出等の内容を通知し対応についての調整を行うとともに、担当部局は、当該法令の規定に基づく許可申請等がなされた場合には、申請等の内容を通知し対応についての調整を行うなど、両制度間の調整・連携を図るように努められたい。

 (4) 地方公共団体における取組等

    改正法に基づき導入された制度に関して、地方公共団体が、類似の制度を条例等により既に実施し、又は今後実施すること、いわゆる上乗せ・横出し条例の制定を妨げるものではない。また、湖沼水質保全計画の策定及び湖辺環境保護地区の指定に当たっての地域住民の意見反映の必要性の判断並びに地域住民の意見を反映させるための方法(法第4条第4項、法第29条第2項)、流出水対策地区の指定の公表の手段及び時期(法第25条第3項)、流出水対策地区に係る地域住民への広報活動の手段及び内容(法第27条)、流出水対策地区における指導、助言及び勧告の発動の判断並びにその手段及び内容(法第28条)、指定された湖辺環境保護地区の公表の手段及び時期(法第29条第4項)及び原状回復命令の発動の判断(法第31条)については、都道府県知事の裁量に委ねられるものである。

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