法令・告示・通達

海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律等の施行について

  • 公布日:昭和62年4月3日
  • 運環31号

(各運輸局長・神戸海運監理部長・沖縄総合事務局長あて運輸政策局長通知)
 第九八回国会において、船舶の活動に起因する海洋汚染の包括的な防止を目的とする「一九七三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する一九七八年の議定書」(昭和五八年条約第三号。以下「議定書」という。)への加入が承認され、同国会において議定書の実施に伴い必要となる国内法制の整備を内容とする「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律」(昭和五八年法律第五八号。以下「改正法」という。)が成立した。議定書のうち附属書一(油による汚染の防止のための規則)は、昭和五八年一〇月二日から国際的に実施され、改正法第一条の規定も同日から施行されているところであるが、今般、議定書のうち附属書Ⅱ(ばら積みの有害液体物質による汚染の規制のための規則)が昭和六二年四月六日から国際的に実施されることとなり、これに伴い、改正法第二条の規定も同日から施行されることとなる。
 また、これに伴い、次に掲げる政令、府省令及び告示が公布されている。

 (政令)

  •  ○海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令(昭和六一年政令第三三六号)
  •  ○海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令((昭和六一年政令第三五六号)
  •  ○海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令(昭和六二年政令第一一五号)

 (総理府令)

  •  ○有害液体物質等の範囲から除かれる液体物質を定める総理府令(昭和六二年総理府令第三号)
  •  ○有害液体物質の排出率等を定める総理府令(昭和六二年総理府令第四号)
  •  ○海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律第九条の六第三項の規定に基づく未査定液体物質の査定に関する総理府令(昭和六二年総理府令第五号)
  •  ○船舶又は海洋施設において焼却することが禁止される油又は廃棄物に係る判定基準を定める総理府令等の一部を改正する総理府令(昭和六二年総理府令第六号)
     (総理府・運輸省令)
  •  ○船舶からの有害液体物質の排出に係る事前処理の方法等に関する命令(昭和六二年総理府・運輸省令第一号)
  •  ○船舶からの有害液体物質の排出に係る事前処理の方法等に関する命令の一部を改正する命令(昭和六二年総理府・運輸省令第二号)

 (運輸省令)

  •  ○海洋汚染防止設備等に関する技術上の基準を定める省令等の一部を改正する省令(昭和六一年運輸省令第四〇号)
  •  ○海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行規則の一部を改正する省令(昭和六二年運輸省令第五号)
  •  ○海洋汚染防止設備等に関する技術上の基準を定める省令等の一部を改正する省令の一部を改正する省令(昭和六二年運輸省令第三六号)

 (告示)

 ○船舶からの有害液体物質の排出に係る事前処理の方法等に関する命令附則第二項第二号に規定する有害液体物質を指定する件(昭和六二年環境庁・運輸省告示第一号)
 ついては、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律及び同法に基づく命令の施行に関し、下記事項に留意の上、運用に当たつて遺憾なきようにされたい。
 なお、本通達中、環境庁の所管に係る事項については、環境庁と了解済みのものである。
 また、本通達中、法、令等の語はそれぞれ次の意味で用いることとする。
 法:海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律(昭和四五年法律第一三六号)
 令:海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令(昭和四六年政令第二〇一号)
 改正政令:海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令(昭和六一年政令第三三六号)
 府令一:有害液体物質等の範囲から除かれる液体物質を定める総理府令(昭和六二年総理府令第三号)
 府令二:海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律第九条の六第三項の規定に基づく未査定液体物質の査定に関する総理府令(昭和六二年総理府令第五号)
 共同命令:船舶からの有害液体物質の排出に係る事前処理の方法等に関する命令(昭和六二年総理府・運輸省令第一号)
 規則:海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律施行規則(昭和四六年運輸省令第三八号)
 技術基準省令:海洋汚染防止設備等に関する技術上の基準を定める省令(昭和五八年運輸省令第三八号)
 技術基準省令等改正省令:海洋汚染防止設備等に関する技術上の基準を定める省令等の一部を改正する省令の一部を改正する省令(昭和六二年運輸省令第三六号)

一 用語の意義について

 (一) 有害液体物質

   有害液体物質とは、法第三条第三号、令第一条、令第一条の二及び府令一に規定しているように、「油以外の液体物質(令第一条に掲げる常温において液体でない物質を除く。)のうち、海洋環境の保全の見地から有害である物質(その混合物を含む。)として令別表第一に掲げる物質であつて船舶によりばら積みの液体物質として輸送されるもの及びこれを含む水バラスト、貨物艙の洗浄水その他船舶内において生じた不要な液体物質(府令一に掲げる液体物質を除く。)」をいう。
   令別表第一では、海洋環境の保全の見地から有害である物質を次のように定めている。

   第一号 A類物質等

  1.     イ A類物質 アクリル酸デシル等四二種類
  2.     ロ 法第九条の六第三項の規定により海洋環境の保全の見地からA類物質と同程度に有害であるものと査定されている物質

   第二号 B類物質等

  1.     イ B類物質 スチレン等一一〇種類
  2.     ロ 法第九条の六第三項の規定により海洋環境の保全の見地からB類物質と同程度に有害であるものと査定されている物質

   第三号 C類物質等

  1.     イ C類物質 硝酸等一二八種類
  2.     ロ 法第九条の六第三項の規定により海洋環境の保全の見地からC類物質と同程度に有害であるものと査定されている物質

   第四号 D類物質等

  1.     イ D類物質 エチレングリコール等一八七種類
  2.     ロ 法第九条の六第三項の規定により海洋環境の保全の見地からD類物質と同程度に有害であるものと査定されている物質

   このうち各号イに掲げるA~D類物質は、議定書附属書Ⅱ付録Ⅱに規定する物質とその分類に対応するものであり、各号ロの規定は、法第九条の六第三項の環境庁長官の査定が行われている物質について、その査定の結果(分類)に応じた有害液体物質として取り扱うことを規定している。
   なお、以下に掲げる液体物質は、有害液体物質、(二)に規定する海洋環境の保全の見地から有害でない液体物質及び未査定液体物質の範囲から除かれる。

  1.   ① 油 法第三条第二号に規定する油をいう。
  2.   ② 常温において液体でない物質(令第一条に掲げる物質)
       アンモニア、液化石油ガス等のほか、次のイ又はロのいずれかに該当する物質
    1.    イ 温度三七・八度において蒸気圧が一cm2当たり二・八kgを超えているもの
    2.    ロ 臨界温度が三七・八度未満であるもの
  3.   ③ 海洋において投入処分をし、又は処分のため熱焼させる目的で船舶に積載される液体物質等(府令第一に掲げる液体物質)

   なお、府令一第一号及び第二号に掲げる液体物質及び第一号から第三号に掲げる液体物質の輸送の用に供されている貨物艙に生じた洗浄水等は、法第三条第六号に規定する廃棄物に該当する。

 (二) 未査定液体物質

   未査定液体物質とは、法第三条第四号及び令第一条の三に規定しているように「油及び有害液体物質以外の液体物質のうち、海洋環境の保全の見地から有害でない物質(その混合物を含む。)として令別表第一の二に掲げる物質以外の物質であつて船舶によりばら積みの液体貨物として輸送されるもの及びこれを含む水バラスト、貨物船の洗浄水その他船舶内において生じた不要な液体物質(府令一に掲げる液体物質を除く。)」をいう。
   令別表第一の二では、海洋環境の保全の見地から有害でない物質としてアセトニトリル等七五種類の物質を掲げるとともに、第七六号に「法第九条の六第三項の規定により、海洋環境の保全の見地から別表第一第一号イ、第二号イ、第三号イ又は第四号イに掲げる物質のいずれのものとも同程度には有害でないものと査定されている物質」を規定している。
   アセトニトリル等七五種類の物質は、認定書附属書Ⅱ付録Ⅲに掲げる物質に対応するものであり、第七六号は、環境庁長官により「海洋環境の保全の見地から別表第一第一号イ、第二号イ、第三号イ又は第四号イに掲げる物質のいずれのものとも同程度には有害でない物質」と査定されている物質を有害でない物質として取り扱うことを規定している。
   なお、令別表第一の二に掲げる物質の輸送の用に供されていた貨物艙に生じた洗浄水等は、法第三条第六号に規定する廃棄物に該当する。
   以上のとおり、未査定液体物質は、船舶によりばら積み輸送される液体物質のうち、油等(一)①~③に掲げるもの、有害液体物質(環境庁長官により査定されている物質を含む。)及び海洋環境の保全の見地から有害でない物質(環境庁長官により査定されている物質を含む。)のいずれにも該当しない液体物質をいう。

 (三) 有害液体物質等

   有害液体物質等とは、法第三条第五号に規定しているように「有害液体物質及び未査定液体物質」をいう。
   なお、不要となつた有害液体物質等が船舶から陸揚げされると廃有害液体物質等となり、廃有害液体物質等処理施設において処理されることとなる。

二 未査定液体物質について

 (一) 船舶からの未査定液体物質の排出

   未査定液体物質は、法第九条の六第一項の規定により船舶の安全の確保等やむを得ぬ事由によるものを除き、船舶からの排出が禁止される。

 (二) 未査定液体物質の輸送の届出

   法第九条の六第二項及び規則第一二条の二の九の規定により、未査定液体物質を輸送しようとする者は、あらかじめ、次の事項を記載した届出書を運輸大臣に提出しなければならない。

  1.   ① 氏名又は名称及び住所(法人にあつてはその代表者の氏名及び住所)
  2.   ② 当該未査定液体物質を輸送する船舶の船舶番号、船名、総トン数及び航行区域
  3.   ③ 当該未査定液体物質の名称、構造式又は示性式及び量
  4.   ④ 当該未査定液体物質の積込港及び揚荷港並びに当該未査定液体物質を輸送する船舶の航行経路
  5.   ⑤ 輸送予定年月日
  6.   ⑥ 荷送人の氏名又は名称及び住所(法人にあつてはその代表者の氏名及び住所)

 (三) 未査定液体物質の査定

   法第九条の六第三項の規定により、運輸大臣は、未査定液体物質の輸送の届出があつたときは、環境庁長官にその旨を通知するものとし、同項及び府令二第一条の規定により、環境庁長官は、当該届出に係る未査定液体物質が次に掲げる物質のいずれに該当するか判定することにより査定を行う。

  1.   ① 海洋環境の保全の見地から令別表第一第一号イに掲げるA類物質と同程度に有害である物質
  2.   ② 海洋環境の保全の見地から令別表第一第二号イに掲げるB類物質と同程度に有害である物質
  3.   ③ 海洋環境の保全の見地から令別表第一第三号イに掲げるC類物質と同程度に有害である物質
  4.   ④ 海洋環境の保全の見地から令別表第一第四号イに掲げるD類物質と同程度に有害である物質
  5.   ⑤ 海洋環境の保全の見地から令別表第一第一号イ、第二号イ、第三号イ又は第四号イに掲げる物質のいずれのものとも同程度には有害でない物質

   環境庁長官により①(A類物質と同程度に有害である物質)に該当すると査定された物質は、令別表第一第一号ロに掲げる物質として、A類物質等に係る規制を受ける有害液体物質となる。
   同様に、②~④に該当すると査定された物質については、それぞれ同表第二号ロ、第三号ロ又は第四号ロに掲げる物質として、B類物質等、C類物質等又はD類物質等に係る規制を受ける有害液体物質となり、⑤に該当すると査定された物質については、令別表第一の二第七六号に掲げる物質として、海洋環境の保全の見地から有害でない物質となる。

 (四) 査定結果の通知及び公示

   府令二第二条の規定により、環境庁長官は、査定を行つたときは、広くその結果を周知するため、遅滞なく、査定結果を運輸大臣に通知するとともに、これを公示する。

三 有害液体物質の排出

  有害液体物質の排出は、原則として禁止されている(法第九条の二第一項本文)が、次に掲げる排出についてはこの限りでない。

  1.  (一) 緊急避難又は不可抗力的な排出
    1.   ① 船舶の安全を確保し、又は人命を救助するための有害液体物質の排出(法第九条の二第一項第一号)
          例えば、座礁した船舶が、緊急に離礁しなければ船舶の安全を確保できず、また他に実行可能な方法がないため積荷の一部である有害液体物質を排出する場合等がこれにあたる。
    2.   ② 船舶の損傷その他やむを得ない原因により有害液体物質が排出された場合において引き続く有害液体物質の排出を防止するための可能な一切の措置をとつたときの当該有害液体物質の排出(法第九条の二第一項第二号)

       例えば、事故等により損傷した貨物艙に積載されていた有害液体物質を他の貨物艙にできる限り移し替え、排出防止の措置を行つてもなお排出が続く場合等がこれにあたる。

  2.  (二) 通風洗浄方法により洗浄された貨物艙に積載されていた水バラストの排出(法第九条の二第二項)
  3.  (三) 事前処理の方法、排出海域及び排出方法に関する基準に適合する有害液体物質の排出(法第九条の二第三項)

   有害液体物質を積載していた貨物艙に水バラスト又は洗浄水として加えられた水は、一定の事前処理が行われた後のものでなければ排出することはできない。事前処理が行われた後の水バラスト又は洗浄水は、一定の排出方法及び排出海域に関する基準に従つて排出しなければならない。事前処理の方法、排出海域及び排出方法に関する具体的な基準については、以下に述べる。

四 事前処理の方法に関する基準(法第九条の二第三項)

  有害液体物質を排出しようとする者は、物質分類に応じ、それぞれ次に掲げる方法による事前処理を行わなければならない(令第一条の八第一項)。

  •   A類物質等 濃度測定方法又は予備洗浄方法
  •   B類物質等 ストリッピング方法又は予備洗浄方法
  •   C類物質等 ストリッピング方法又は予備洗浄方法
  •   D類物質等 一〇倍希釈方法

 (一) 濃度測定方法

   濃度測定方法とは、令別表第一の七第一号イに掲げる方法を指し、具体的には、次の方法をいう。
   貨物の取卸しの後、ポンプやストレーナー等に残留するドレンを抜く等関連管系内から当該物質の残留物を除去し、洗浄水中の物質の重量濃度が〇・一%(二硫化炭素及び白燐(黄燐を含む。以下同じ。)については〇・〇一%)以下になるまで貨物艙を十分に洗浄し、かつ、当該洗浄水を貨物艙から除去すること。
   なお、貨物艙から除去した洗浄水は、海洋へ排出することはできず、陸揚げする必要がある。

 (二) 予備洗浄方法

   予備洗浄方法とは、令別表第一の七第一号ロ、第二号ロ又は第三号ロに掲げる方法を指し、具体的には、次の方法をいう。
   貨物の取卸しの後、ポンプやストレーナー等に残留するドレンを抜く等関連管系内から当該物質の残留物を除去し、貨物艙を次に掲げる方法により予備洗浄装置(技術基準省令第二二条第一項の予備洗浄装置をいう。以下同じ。)を用いて洗浄し、かつ、洗浄水を貨物艙から除去すること。
   なお、貨物艙から除去した洗浄水は、海洋へ排出することはできず、陸揚げする必要がある。

  1.   ① 船舶の縦傾斜及び横傾斜を貨物艙の吸引点に向かう貨物の流れを保持することができる傾斜にし、かつ、洗浄中において洗浄水を当該貨物艙から連続して除去しつつ用いること。
       すなわち、貨物艙の吸引点に洗浄水が集まるように船舶のトリム調整等を行い、かつ、予備洗浄装置から噴射される水が直接貨物艙の壁面に当たるように洗浄水を吸い上げながら洗浄しなければならない。ただし、洗浄水を吸い上げながら洗浄することができない場合には、洗浄と洗浄との間に貨物艙内の洗浄水を完全に浚え、②、③に掲げる方法による洗浄を三回繰り返して行う方法をもつて替えることができる。
  2.   ② 水を用いて洗浄すること。
       この場合、「水」とは、真水又は海水を意味し、一度洗浄に用いた水等の汚水は含まれない。
       また、凝固性物質(取卸しの際の温度がその融点に五度(融点が一五度以上のものにあつては、一〇度)を加えた温度未満の温度である物質をいう。以下同じ。)又は温度二〇度において二五ミリパスカル秒以上の粘度を有する非凝固性物質(凝固性物質以外の物質をいう。以下同じ。)の輸送の用に供されていた貨物艙を洗浄する場合には、温度六〇度以上の温水を用いて洗浄しなければならない。
  3.   ③ 予備洗浄装置の洗浄機を物質の分類に応じ、次の表に掲げるサイクル数(洗浄機を連続して作動させた場合に、同一の方位となるまでの一過程を一サイクルとした場合の数をいう。以下同じ。)以上作動させること。
    物質の区分
    洗浄機のサイクル数
    非凝固性物質
    凝固性物質
    A類物質等(二硫化炭素及び白燐を除く。)
    1
    2
    A類物質等(二硫化炭素及び白燐に限る。)
    2
    3
    B類物質等
    1/2
    1
    C類物質等
    1/2
    1
        なお、関連管系内を洗浄させるため、洗浄機を前記のサイクル数作動させた後も、十分に長い間作動し続けなければならない。
  4.   ④ 凝固性物質については、貨物の取卸しの後、できる限り迅速に洗浄すること。この場合、できれば洗浄前に貨物艙を加熱すること。また、ハッチ及びマンホールの残留物を予備洗浄前に除去するように努めること。

 (三) ストリッピング方法

   ストリッピング方法とは、令別表第一の七第二号イ又は第三号イに掲げる方法を指し、具体的には、次の方法をいう。
   貨物の取卸しの後、次に掲げる方法によりストリッピング装置(技術基準省令第二七条第一項のストリッピング装置をいう。以下同じ。)を用いて貨物艙の底部及び関連管系内に残留する当該物質を除去すること。
   なお、この方法によることができる物質は、非凝固性物質であつて取卸しの際の温度における粘度が、B類物質等の場合は二五ミリパスカル秒未満、C類物質等の場合は六〇ミリパスカル秒未満のものに限られる。
   また、貨物艙から除去した洗浄水は、海洋へ排出することはできず、陸揚げする必要がある。

  1.   ① 船舶の縦傾斜及び横傾斜を貨物艙の吸引点に向かう貨物の流れを保持することができる傾斜にし、かつ、洗浄中において洗浄水を当該貨物艙から連続して除去しつつ用いること。
        すなわち、貨物艙の吸引点に貨物が集まるように船舶のトリム調整等を行い吸排しなければならない。
  2.   ② 当該船舶に備え付けられているストリッピング装置の能力の最大限まで当該装置を作動させること。
        船舶に備え付けるべきストリッピング装置は、ストリッピング残留量(貨物艙の底部及び関連管系内に残留する物質の量をいう。以下同じ。)をB類物質等の場合は〇・一m3以下、C類物質等の場合は〇・三m3以下とする性能を有するものであることとされているが(技術基準省令第二七条第四項)、確実にストリッピング残留量がこれらの数値以下になるように、その装置の能力の最大限度まで作動させなければならないこととした。従つて、途中で作動を止めた場合には、まだ当該事前処理が終了したことにはならない。

 (四) 一〇倍希釈方法

   一〇倍希釈方法とは、令別表第一の七第四号に掲げる方法をいい、具体的には、次の方法をいう。
   貨物の取卸しの後、貨物艙に残留する物質を、希釈水漲水装置(技術基準省令第二八条第一項の希釈水漲水装置をいう。)を用いて、その体積の九倍以上の量の水を加えることにより希釈すること。

 (五) 前記の方法による事前処理は、原則として貨物の取卸しを行つた港において行うこととする。

五 排出海域及び排出方法に関する基準(法第九条の二第三項)

  四の事前処理を行つた後、次に掲げる有害液体物質は、それぞれ排出海域及び排出方法に関する基準に従つて排出することができる。(令第一条の八第二項)

 (一) 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて洗浄水又は水バラストとして加えられた水との混合物である有害液体物質(A~C類物質等)

  ① 排出海域に関する基準

    すべての国の領海の基線からその外側一二海里以遠であつて、水深二五m以上の海域

  ② 排出方法に関する基準

  1.    イ 当該船舶の航行中(引かれ船等にあつては対水速度四ノット、その他の船舶にあつては対水速度七ノット以上の速度で航行する場合をいう。以下同じ。)に排出すること。
  2.    ロ 海面下に排出すること。
  3.    ハ 喫水線下排出装置(技術基準省令第二四条第一項の喫水線下排出装置をいう。以下同じ。)を用いて、次に掲げる排出率以下の排出率で排出すること(A類物質等を除く。)。
           Qd=(D・5l/sinθ)
         (/Qp:排出率(m3/時)/D:喫水線下排出口の口径(m)/l:船首垂線から喫水線下排出口までの長さ(m)/θ:排出用配管の船体外板に対する角度(度)/)

 (二) 事前処理が行われた有害液体物質(D類物質等)

  ① 排出海域に関する基準

    すべての国の領海の基線からその外側一二海里以遠の海域

  ② 排出方法に関する基準

    当該船舶の航行中に排出すること。

 (三) (一)又は(二)の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質

  ① 排出海域に関する基準

    すべての海域

  ② 排出方法に関する基準

    排出方法は、限定しない。

六 事前処理の方法、排出海域及び排出方法に関する基準の経過措置

  現存船(改正政令附則第二項の現存船をいう。以下同じ。)については、一定の経過措置が認められている。具体的には、別表に掲げるとおりである。

七 バルティック海海域における排出基準の特例

  バルティック海海域は、議定書上「特別海域」として位置付けられており、特別の排出基準が適用されることとなつている。具体的には、バルティック海海域において有害液体物質の排出を行う船舶については、次に掲げるとおり事前処理の方法に関する基準が強化されている。なお、A~C類物質等に係る排出海域及び排出方法に関する基準は、一般海域と同じである。また、D類物質等に係る排出基準は、一般海域と同じである。

 (一) A類物質等に係る事前処理の方法に関する基準

   バルティック海海域において有害液体物質の排出を行う船舶については、濃度測定方法及び予備洗浄方法が認められているが、濃度測定方法による事前処理を行う場合には、洗浄水中の物質の重量濃度が〇・〇五%(二硫化炭素及び白燐については〇・〇〇五%)以下になるまで貨物艙を洗浄しなければならない。

 (二) B類物質等に係る事前処理の方法に関する基準

   バルティック海海域において有害液体物質の排出を行う船舶については、ストリッピング方法による事前処理は認められていない。また、ストリッピング方法に係る経過措置の適用もない。従つて、予備洗浄方法による事前処理を行わなければならない。

 (三) C類物質等に係る事前処理の方法に関する基準

  1.   ① バルティック海海域において有害液体物質の排出を行う船舶については、ストリッピング方法及び予備洗浄方法が認められているが、このうち、ストリッピング方法によることができる物質の粘度の基準が六〇ミリパスカル秒未満から二五ミリパスカル秒未満と強化される。
  2.   ② バルティック海海域において有害液体物質の排出を行う現存船について、ストリッピング方法による事前処理を行う場合には、ストリッピング装置の性能要件に係る経過措置の適用はない。従つて、ストリッピング残留量を〇・三m3以下とする性能を有するストリッピング装置を用いなければならない。
  3.   ③ バルティック海海域において有害液体物質の排出を行う現存船については、ストリッピング方法に替えて吸排装置を用いて吸排する方法は認められていない。従つて、ストリッピング方法又は予備洗浄方法による事前処理を行わなければならない。

八 油類似有害液体物質の排出基準

  タンカーからの油類似有害液体物質(共同命令別表に掲げる物質を含む水バラスト又は貨物艙の洗浄水をいう。以下同じ。)の排出については、油類似有害液体物質の物理的、化学的性状が極めて油に近いため、タンカーからの貨物油を含む水バラスト等の排出基準に従つて排出することが認められている(令第一条の八第三項)。ただし、この場合に用いるべきバラスト用油排出監視制御装置(技術基準省令第一一条第一項のバラスト用油排出監視制御装置をいう。)の油分濃度計は、排出される油類似有害液体物質の濃度を適正に測定できるものでなければならない。
  なお、タンカーからの貨物油を含む水バラスト等の排出基準について認められている経過措置は、この場合にも同様に認められている。

九 四から八までにおいて述べた排出基準について注意すべき事項は以下のとおりである。

  1.  (一) A類物質等からD類物質等までの排出基準は前述のとおりであるが、それぞれの有害液体物質は、より上位の排出基準に従つて排出することができる。従つて、D類物質等をC類物質等の排出基準に従つて排出することも可能である。
  2.  (二) 他の船舶で発生した水バラストや洗浄水等の有害液体物質を含む汚水のみを瀬取りしてくる船舶に係る排出基準の考え方は以下のとおり。
    1.   ① 瀬取り船が汚水を積載する行為は、ケミカルタンカーが貨物を積載する行為と同じであり、瀬取り船から有害液体物質を排出するためには、当該瀬取り船について事前処理を行つた上、排出海域及び排出方法に関する基準に従つて排出しなければならない。従つて、当該汚水が発生した船舶からは排出海域及び排出方法に関する基準に従つて排出できる有害液体物質であつても、当該有害液体物質を瀬取りした船舶から当該有害液体物質を事前処理をすることなく排出することはできない。
    2.   ② 二以上の有害液体物質の汚水を瀬取りした場合には、未査定液体物質とは取り扱わず、当該有害液体物質に係る排出基準が併合されてかかる(すなわち、厳しい方の排出基準がかかる。)こととなる。
  3.  (三) 貨物艙を洗浄する場合に溶剤を用いた場合の取扱いは、以下のとおり。
    1.   ① 当該溶剤が例えばメタノールのように有害でない物質である場合には、当該溶剤は水と同様に取り扱う。
    2.   ② 当該溶剤が有害でない物質以外の場合には、積載貨物の有害度の区分に応じた事前処理に加えて溶剤の有害度の区分に応じた事前処理が必要となる。
  4.  (四) 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて加えられた水との混合物である有害液体物質については、当該水が洗浄水又は水バラストとして加えられたものである場合のみ排出海域及び排出方法に関する基準に従つて排出することが可能である。
       これは有害液体物質の排出が行われるためには相当量の水が加えられ、次回以降に加えられた水をクリーンなものとみなしうる程度に貨物艙が浄化されるようなものである必要があるという考え方による。
    一〇 A類物質等に係る事前処理の確認
      有害液体物質のうち、その排出につき海洋環境の保全の見地から特に注意を払う必要があるものとして令第一条の九に規定するA類物質等については、その適正な排出が確保されることがとりわけ強く求められることから、それらを船舶から排出しようとする場合は、その実施する事前処理が令第一条の八第一項に規定する事前処理の方法に関する基準に適合するものであることについて海上保安庁長官又は海上保安庁長官が指定した者(指定確認機関)の確認を受けなければならないこととした(法第九条の二第四項)。
      なお、国に代わつて事前処理の確認の業務を行う指定確認機関に対し、その公正かつ的確な業務の実施を確保するため、海上保安庁長官が所要の監督を行うこととした(法第二章の二第二節)。
    ○排出基準に係る経過措置
 
排出基準
経過措置
A類物質等
(事前処理)
 次の1又は2の方法によること。
1 濃度測定方法
2 予備洗浄方法
 特になし。
(排出海域)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての国の領海の基線からその外側12海里以遠であつて、水深25m以上の海域
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての海域
 特になし。
(排出方法)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  次の(1)及び(2)の方法によること。
 (1) 当該船舶の航行中に排出すること。
 (2) 海面下に排出すること。
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  排出方法は、限定しない。
 現存船については、昭和62年12月31日(昭和62年4月6日以後同年12月31日以前に特定改造が開始された場合には、その特定改造が開始された日の前日)までの間は、1(2)の方法による必要はない。
B類物質等
(事前処理)
 次の1又は2の方法によること。
1 ストリッピング方法
2 予備洗浄方法
 1について次の経過措置が設けられている。
(1) 現存船については、ストリッピング方法による際に用いるべきストリッピング装置は、ストリッピング残留量を0.3m3以下とするものとする。
(2) 現存船については、昭和69年10月2日(昭和62年4月6日以後昭和69年10月2日以前に特定改造が開始された場合には、その特定改造が開始された日の前日)までの間は、ストリッピング方法に替えて、吸排装置(技術基準省令等改正省令附則第3条第3項の吸排装置をいう。以下同じ。)を用いて吸排する方法が認められている。
(排出海域)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての国の領海の基線からその外側12海里以遠であつて、水深25m以上の海域
 
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての海域
 経過措置の(2)の事前処理を行つた場合には、2の有害液体物質もすべての領海の基線からその外側12海里以遠であつて、水深25m以上の海域
(排出方法)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  次の(1)及び(2)の方法によること。
 (1) 当該船舶の航行中に排出すること。
 (2) 海面下に排出すること。
 (3) 喫水線下排出装置を用いて、次に掲げる排出率以下の排出率で排出すること。
 排出方法について、次の経過措置が設けられている。
(1) 現存船については、昭和62年12月31日(昭和62年4月6日以後同年12月31日以前に特定改造が開始された場合には、その特定改造が開始された日の前日)までの間は、1(2)及び(3)の方法による必要はない。
(2) 経過措置の(2)の事前処理を行つた場合には、次のイからニまでの方法によること。
  ただし、昭和62年12月31日までの間は、ロからニまでの方法による必要はない。
 イ 当該船舶の航行中に排出すること。
 ロ 海面下に排出すること。
 ハ 喫水線下排出装置を用いて1(3)の排出率又は次に掲げる排出率のいずれか小さい方以下の排出率で排出すること。
         
   
Qd:排出率(m3/時)
D:喫水線下排出口の口径(m)
l:船首垂線から喫水線下排出口までの長さ(m)
θ:排出用配管の船体外板に対する角度(度)
   
         
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質排出方法は、限定しない。
       
   
Qd:排出率(m3/時)
k:1(2個の喫水線下排出口が使用される場合にあつては、1.5)
V:排出中の船舶の速力(ノット)
L:船の長さ(m)
Cs:排出される物質が混和性物質(洗浄水温度においてあらゆる割合で水に溶解する物質)である場合にあつては次の式により算出された値、混和性物質以外の物質である場合にあつては、1
   
         
   
n:排出する有害液体物質の輸送の用に供されていた貨物艙の数
Vr:排出する有害液体物質の容量(m3)
   
                 
 ニ 残留物排出記録装置(技術基準省令等改正省令附則第4条第1項の残留物記録装置をいう。)を作動させながら排出すること。
(3) 経過措置の(2)の事前処理を行つた場合には、2の有害液体物質も(2)の排出方法により排出しなければならない。
C類物質等
(事前処理)
 次の1又は2の方法によること。
1 ストリッピング方法
2 予備洗浄方法
 1について次の経過措置が設けられている。
(1) 現存船については、ストリッピング方法による際に用いるべきストリッピング装置は、ストリッピング残留量を0.9m3以下とするものとする。
(2) 現存船については、昭和69年10月2日(昭和62年4月6日以後昭和69年10月2日以前に特定改造が開始された場合には、その特定改造が開始された日の前日)までの間は、ストリッピング方法に替えて、吸排装置を用いて吸排する方法が認められている。
(排出海域)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての国の領海の基線からその外側12海里以遠であつて、水深25m以上の海域
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての海域
 特になし。
(排出方法)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  次の(1)及び(2)の方法によること。
 (1) 当該船舶の航行中に排出すること。
 (2) 海面下に排出すること。
 (3) 喫水線下排出装置を用いて、次に掲げる排出率以下の排出率で排出すること。
 現存船については、昭和62年12月31日(昭和62年4月6日以後同年12月31日以前に特定改造が開始された場合には、その特定改造が開始された日の前日)までの間は、1(2)及び(3)の方法による必要はない。
         
   
Qd:排出率(m3/時)
D:喫水線下排出口の口径(m)
l:船首垂線から喫水線下排出口までの長さ(m)
θ:排出用配管の船体外板に対する角度(度)
   
         
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  排出方法は、限定しない。
D類物質等
(事前処理)
 10倍希釈方法
 特になし。
(排出海域)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての国の領海の基線からその外側12海里以遠の海域
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  すべての海域
 特になし。
(排出方法)
1 事前処理が行われた貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に初めて水バラスト又は洗浄水として加えられた水との混合物である有害液体物質
  当該船舶の航行中に排出すること。
2 1の有害液体物質を除去した貨物艙に残留する有害液体物質と当該貨物艙に加えられた水との混合物である有害液体物質
  排出方法は、限定しない。
 特になし。

 (注) 特定改造とは、共同命令附則第2項に定める改造を指し、具体的には次に掲げるものをいう。

  1.   1 船舶の主要寸法又は積載容量の変更を伴う改造
  2.   2 船舶の種類を変更する改造(タンカー又は有害液体物質を輸送する船舶を昭和62年環境庁、運輸省告示第1号に定める物質のみを輸送する船舶に変更するものを除く。)
  3.   3 船舶の耐用年数を延長させる改造
  4.   4 1から3までに掲げる改造と同等以上と環境庁長官及び運輸大臣が認める改造
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