法令・告示・通達
二酸化窒素の測定方法の変更に伴う措置等について
環大企287号
環境庁大気保全局企画課長から各都道府県・政令市環境担当部(局)長あて
二酸化窒素の環境基準による評価に用いる測定方法については、すでに、昭和53年7月17日付環大企第262号をもって、大気保全局長より通知したところであるが、測定法の変更に伴う措置の詳細及び二酸化窒素と同時に測定されている一酸化窒素の測定については、下記によられたい。
なお、二酸化窒素及び一酸化窒素の測定の全般的事項については、日本工業規格(JIS)B7953による他別添校正方法の標準例をも参照されたい。
記
1 ザルツマン係数の変更について
二酸化窒素の測定方法であるザルツマン試薬を用いる吸光々度法のザルツマン係数は、従来の0.72から0.84に改定されたところであり、以下に記すところにより所要の措置を可及的速やかに講じられたい。
新しいザルツマン係数に基づく測定値を得るための措置としては、測定器のスパン調整による方法及び、従来のザルツマン係数に基づく測定値を数値処理する方法がある。
スパン調整による場合測定器の一部については、調整範囲を超えるため、増幅器の部分的改造(抵抗の変換等)を行う必要がある場合があるがこの際には、特に、測定器の直線性の保持に留意されたい。なお、通常のスパン調整が著しく困難である場合には、吸収液量を変更する方法によることも止むを得ない。
数値処理による場合には、従来のザルツマン係数で測定された測定値を次式によつて新ザルツマン係数に基づく測定値に補正する。
CNO2=0.86 CNO2′
CNO2;ザルツマン係数0.84に基づく測定値
CNO2′;ザルツマン係数0.72に基づく測定値
2 一酸化窒素の測定法
一酸化窒素の測定としてザルツマン法を利用する場合より正確な測定を行うため従来未補正で用いられてきた一酸化窒素の二酸化窒素への変換率(以下「酸化率」という)を70%とする。この変更に伴う具体的措置は、1に記した方法に準ずるものとし、数値処理を行う場合の換算式については、次の通りとする。
CNO=1.22 CNO′
CNO:酸化率70%ザルツマン係数0.84に基づく測定値
CNO′:酸化率100%ザルツマン係数0.72に基づく測定値
なお、酸化率は配管トラツプ内の汚れや結露により、大きな影響を受けることから、測定器の保守管理にあたつては、この点に十分留意されたい。
3 測定法の変更に伴う移行措置等
- (1) 今回の測定法変更に伴う措置を実施する場合二酸化窒素と一酸化窒素についてこれを同時に行われたい。
- (2) 昭和53年度以降の測定値を年報等の公式統計として公表する場合、補正された値を用いることとされているが、年度途中の測定値の公表について未補正のものを利用する場合は、ザルツマン係数等を明示することとされたい。
- (3) 昭和53年度の測定値を補正する場合及び昭和52年度以前の測定値の補正が必要な場合には、1及び2に記した換算式を用いることとされたい。
(別添)
ザルツマン計の校正方法の標準例
(本標準例は、ザルツマン係数0.84、酸化率70%をスパン調整で実施した場合のものである)
ザルツマン法測定器の静的校正方法は吸収液中に二酸化窒素が吸収され、これによつて生ずる発色に相当するものを、亜硝酸ナトリウムで等価におきかえて調整した等価液を計測器の吸収発色びんに導入し、これによつて目盛りの校正を行なうものである。等価液の調整にあたつては、ザルツマン係数、試料大気流量、試料大気採取時間、吸収発色液の採取量が基本として計算されているので、これ等の値を十分確認する必要がある。またこの等価液は二酸化窒素濃度に対応するものであるから、一酸化窒素の目盛校正を行なう場合には、この等価液に一酸化窒素の酸化率の補正をして使用しなければならない。
(1) 吸収発色液量の測定
二酸化窒素吸収びん、および一酸化窒素吸収びんのそれぞれについて、吸収発色液の排出口にメスシリンダーをあてがい、手動操作で吸収発色液の計量と排出を、それぞれ5回行ない、その合計量より1回に計量される吸収発色液量を定める。計測器の測定値と違いのある場合には、正しく補正しなければならない。
(2) 試料大気流量の測定
計測器の試料大気導入口に、1回転1lの湿式ガスメーターを接続し、ガスポンプを動作させて試料大気に通気する、計測器の流量計の指示を設定流量の値に調整したのち、湿式ガスメーターが2回転するに要する時間を測定し、これより流量を計算する。計測器の設定値との違いが許容誤差範囲以上である場合には、フロートの位置を補正して流量を調整する。
(3) 等価液の調製
等価液の調製は下記によつて行なう。等価液は、試料大気流量、試料大気採取時間、吸収発色液量など各計測器の形式により異なつている。
① 亜硝酸ナトリウム原液
105~110℃で2~3時間乾燥した亜硝酸ナトリウム(JISK8019、特級を使用する。含量98%以上)の下記の量を正しく秤り取り、水で溶かして1lとする。
(冷暗所で2ケ月間安定である。)
2.87×Sf×(100/m)×((f×t)/V)(g)
ここに Sf:ザルツマン係数
m:亜硝酸ナトリウムの含量(%)
f:試料大気流量(l/min)
t:試料大気採取時間(min)
v:吸収発色液採取量(ml)
② 亜硝酸ナトリウム溶液
亜硝酸ナトリウム原液10mlを正しく計り取り、水を加えて1lとする(これは等価液調製に際し、用時調製とする。)
この亜硝酸ナトリウム溶液の所定量を吸収発色液で1lに希釈して等価液を調製すると、対象とする形式の計測器の二酸化窒素濃度目盛について、この亜硝酸ナトリウム溶液の1mlは、20℃、760mmHgにおける大気中の二酸化窒素濃度0.01ppmに相当する。
③ 目盛校正用等価液
計測器のスパン校正に使用する等価液は、各測定レンジの80~90%附近に濃度を選んで調製する。また計測器直線性を確認するためには、各測定レンジの中間附近の濃度を選んで調製した等価液を使用する。
等価液の調製は、所定量の亜硝酸ナトリウム溶液を正しく計り取り、これに吸収発色液を加えて1lとする。これを常温で15分間放置し、二酸化窒素目盛校正用等価液とする。なお一酸化窒素目盛校正用等価液は計測器の酸化率でその表示する濃度を補正して使用する。
亜硝酸ナトリウム溶液の採取量と濃度の関係は下式によつて表わされる。
CNO2=0.01×V
CNO=0.01×(100/So)×V
ここに CNO2:等価液の二酸化窒素濃度(ppm)
CNO:等価液の一酸化窒素濃度(ppm)
V:亜硝酸ナトリウム溶液の採取量(ml)
So:一酸化窒素の酸化率(%)
次に、計測器のスパン校正、および中間点の試験に使用する、目盛校正用等価液の、亜硝酸ナトリウム溶液の採取量とそれぞれに対応する濃度を表に示した。
亜硝酸ナトリウム溶液採取量
|
二酸化窒素濃度
|
測定レンジ
|
---|---|---|
5ml
9〃
18〃
45〃
|
0.050ppm
0.090〃
0.180〃
0.450〃
|
|
〕0~0.1ppm
〕0~0.2ppm
〕0~0.5ppm
|
||
亜硝酸ナトリウム溶液採取量
|
一酸化窒素濃度
|
測定レンジ
|
---|---|---|
4ml
6〃
13〃
30〃
|
0.057ppm
0.086〃
0.186〃
0.429〃
|
|
〕0~0.1ppm
〕0~0.2ppm
〕0~0.5ppm
|
||
(So酸化率を70%とした場合の一例)
④ ゼロ調整用等価液
ゼロ調整用等価液は、目盛校正用等価液の調製に用いた吸収発色液をそのまま用いる。
(4) 等価液による計測器の校正
① ゼロ点の校正
計測器のゼロ点の調整は、二酸化窒素測定および一酸化窒素測定のそれぞれについて同様の操作に従つて行なう。
吸収発色びんに吸収発色液の所定量を満たし、これを排出する。この操作を2~3回繰り返し、指示が安定したら、自動ゼロ点調整の機能を持つ計測器はまず自動ゼロ点調整を行なう。もし指示が0ppmとならない場合は計器のゼロ点調整を廻して指示を0ppmに調整する。自動ゼロ点調整のないものには、始めよりゼロ点調整を行なう。最後に吸収発色液を再び吸収発色びんに満たし、ゼロ点の指示を確認する。
② スパンの校正
計測器のスパン校正は、二酸化窒素、および一酸化窒素のそれぞれについて、等価液の二酸化窒素濃度、および一酸化窒素濃度にたいして行なう。計測器は、例えば、0~0.1ppm、0~0.2ppm、0~0.5ppmの各段階に測定レンジを切換える様になつており、スパン校正はこの全てのレンジについて行なう。またスパン校正は高感度の測定レンジより実施する。
- [ア] 吸収発色びんにスパン点の等価液の所定量を満たし、これを排出する。この操作を2~3回繰り返し、指示が安定したら、計測器のスパン調整器を廻して、等価液の表示する濃度に目盛りを合わせる。
同じ等価液を再び吸収発色びんに満たして、正しく目盛が校正されているか確認する。 - [イ] スパン校正が終つたら、その測定レンジの中間点の等価液を吸収発色びんに所定量を満たし、これを排出する。この操作を2~3回繰り返し、指示が安定したらその値を読み取り、計測器の直線性を確認する。
- [ウ] 引続いて、0~0.2ppm、0~0.5ppmなど、他の測定レンジについて同様な操作によつて、スパン校正、および中間点のチエツクを行なう。