法令・告示・通達

大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について

公布日:昭和50年01月30日
環大規12号

環境事務次官から各都道府県知事・各政令市市長あて

 先般第72回国会において大気汚染防止法の一部を改正する法律(昭和49年6月1日公布法律第65号。以下「改正法」という。)が可決、成立し、昭和49年11月30日から施行された(大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和49年政令第374号))。これに伴い、大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(昭和49年11月27日公布政令第375号)及び大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和49年11月30日公布総理府令第71号)が制定、公布され、昭和49年11月30日からそれぞれ施行された。
本改正法は、国民の大気汚染防止対策に寄せる期待にこたえ、大気の汚染の早急な改善を図るため、ばい煙に関する従来の排出規制方式に加えて、いわゆる総量規制方式の導入を図ることを目的として制定されたものである。貴職におかれても、改正後の大気汚染防止法(以下「法」という。)の厳正かつ実効性のある施行について万全を期するため、下記の事項に十分ご留意のうち格段のご協力を願いたく命により通達する。

第1 改正の内容

  改正法の主な内容は、大気の汚染を早急に改善し、公害対策基本法第9条第1項の規定による大気環境基準を確保するため、いわゆる総量規制方式を導入したことである。総量規制の基本的な考え方は、現行の排出基準のみによつては、大気環境基準の確保が困難と認められる地域において環境濃度を大気環境基準のレベルに引き下げるため、気象、地形、発生源の状況等の地域の特性を考慮に入れつつ一定の科学的手法を用いてその地域内の発生源から排出することが許容される大気汚染物質の総量を算定し、その総量の範囲内に排出総量を抑えていくことをねらいとして工場又は事業場単位で排出規制を行うこととするものである。このような規制を行うことにより、当該地域においては、合理的かつ計画的に大気環境基準の確保が図られることになる。
 改正法では、このような総量規制方式を実施するため、都道府県知事はあらかじめ指定ばい煙総量削減計画を作成し、これに基づいて総量規制基準を定めることとしたほか、総量規制基準の実効性を確保するため直罰規定等の整備を行い、また、特に硫黄酸化物対策として、硫黄酸化物に係る指定地域において総量規制基準が適用されない工場等に対して燃料の使用に関する措置を行うことなどを内容とする改正を行つた。

第2 指定ばい煙に関する事項

  総量規制基準は、指定ばい煙について定めることとされているが、今回は、硫黄酸化物を指定ばい煙として指定したこと。(法第5条の2第1項、大気汚染防止法施行令(以下「令」という。)第7条の2)
  今後は窒素酸化物等について、その排出実態及び汚染実態のは握に努めるとともに、汚染予測手法の確立、ばい煙処理技術の確立等を急ぎ、その結果をふまえて、指定ばい煙として指定を行う考えであること。

第3 指定地域に関する事項

  1.  1 地域指定の考え方
       総量規制は、工場又は事業場が集合している地域で法第3条第1項若しくは第3項又は第4条第1項の排出基準のみによつては大気環境基準の確保が困難であると認められる地域として指定ばい煙ごとに政令で定める地域(以下「指定地域」という。)において実施されるものである。硫黄酸化物については、今回、千葉市、市原市等、東京都特別区等、横浜市、川崎市等、富士市、富士宮市等、名古屋市、東海市等、半田市、碧南市等、四日市市等、大阪市、堺市等、神戸市、尼崎市等、倉敷市(水島地区)及び北九州市等の11地域を指定したこと。(法第5条の2第1項、令第7条の3及び別表第3の2)
       硫黄酸化物に係る指定地域は、上記の各地域のように、工場又は事業場が相当程度集合している地域で、法第3条第1項又は第3項の排出基準(K値)が厳しい値に定められているにもかかわらず、なお相当広い範囲にわたつて二酸化硫黄の環境基準を超える汚染が生じている地域を指定するものであること。
  2.  2 地域指定の申出
       地域指定の要件に該当する地域があると認められるときは、都道府県知事は、法第5条の2第5項の規定に基づき申出を行うことができることになつていること、このように知事の申出という制度が設けられたのは、総量規制をより地域の実情に即した形で実施できるようにするねらいによるものであること。
  3.  3 指定地域外の排出規制の強化について
       地域指定の要件に該当しない地域にあつては、今後とも従来の排出基準(K値)のみによつて環境基準の確保を図ることとなるが、政府としても今後一層燃料の低硫黄化を推進するとともに、十分都道府県知事の意見を聴いてできる限り地域の実情に即したK値の強化を図つていくこととしていること。
       なお、硫黄酸化物の排出規制については、現段階では全国的な視野から低硫黄燃料の供給状況をふまえつつ計画的に環境基準を達成するという観点にたつており、改正法による総量規制制度が導入された後も、上のせ基準の設定が認められないことに変更はないものであること。
       なお、このような制度を設けた趣旨からみても、条例によつてこの制度と同様の規制を硫黄酸化物について行うことは法改正のねらいに沿わないものであるので、所要の措置を講ぜられたいこと。

第4 総量規制基準に関する事項

  総量規制基準は、総理府令で低めるところにより都道府県知事が定めることとされている。(法第5条の2)これは、具体的な総量規制基準の設定のために必要な当該指定地域の実情については、都道府県知事において的確には握されていることなどにかんがみ、都道府県知事に基準の設定を委ねるのが適当であると考えられたからである。
  総量規制基準は、総量規制の基本となるものであつて、罰則によりその遵守が強制される非常に厳しい基準であるので、基準の適用を受ける特定工場等設置者にとつて、わかり易く、かつ、一義的に基準値が求められるものとなるよう、次に述べる事項に十分留意のうえ、適切にその設定を行われたいこと。

  1.  1 特定工場等について
    1.   (1) 特定工場等の規模
          総量規制基準は、特定工場等(総理府令で定める基準に従い都道府県知事が定める規模以上の工場又は事業場)に対して適用されることとされていること。(法第5条の2第1項)
          硫黄酸化物に係る特定工場等の規模を定めるにあたつては、総量規制の効果的な実施に資するため、当該地域において排出される硫黄酸化物の総量の相当部分(おおむね80パーセント以上)に対して総量規制基準が適用されるように定められたいこと。(大気汚染防止法施行規則(以下「規則」という。)第7条の2)
    2.   (2) 原燃料の換算方式
          特定工場等の規模を定める場合の原燃料使用量の換算方法は、原則として、燃料の場合はカロリー換算とし、原料の場合は当該原料から排出される硫黄酸化物の量と同量の硫黄酸化物が重油の燃焼により排出されたと仮定した場合の当該燃焼した重油の量に換算する方式によることとし、おつて告示することとしていること。
  2.  2 総量規制基準の設定方式
    1.   (1) 総量規制基準は、排出基準がばい煙発生施設単位に定められるのと異なり、特定工場等に設置されているすべてのばい煙発生施設において発生し、排出口から大気中に排出される指定ばい煙の合計量について定める許容限度として、特定工場等単位に定めることとされていること。(法第5条の2第4項)
          なお、個々のばい煙発生施設に対しては、従来どおり排出基準(K値)が適用されるものであること。
    2.   (2) 硫黄酸化物に係る総量規制基準は、特定工場等に設置されているすべての硫黄酸化物に係るばい煙発生施設において使用される原料若しくは燃料の量を基礎として算定する方式(以下「原燃料使用量方式」という。)又は特定工場等に設置されているすべての硫黄酸化物に係るばい煙発生施設から排出される硫黄酸化物に係る最大重合地上濃度を基礎として算定する方式(以下「着地濃度方式」という。)により、総理府令に定める算式を基本とした算式により定めなければならないこと。(規則第7条の3第1項、第2項及び第3項)
          なお、指定地域における自然的、社会的条件により、上記の方式により難いときは、環境庁長官が別に定めるところにより、総量規制基準を定めることができることとされていること。(規則第7条の3第4項)
    3.   (3) 規則第7条の3第2項及び第3項に掲げる算式は都道府県知事が総量規制基準を定める場合に基本とすべき式(以下「基本式」という。)であり、地域の実情に応じて修正を行つてもさしつかえないこと。都道府県知事が定める総量規制基準が基本式を基本としたものであるか否かは、規則第7条第1項の規定の趣旨及び基本式に照らして判断することとなること。なお、基本式と異なる式をもつて定めようとするときは、事前に環境庁と協議されたいこと。
          総量規制基準を原燃料使用量方式により定めるか、着地濃度方式により定めるかの選択については、当該指定地域における工場又は事業場の密度、硫黄酸化物の排出の状況、発生源の状況等の条件を考慮して、適切な方式と認められる方式を選択されたいこと。
    4.   (4) 総量規制基準は、都道府県知事が合理的かつ効果的な規制を行うために必要があると認めるときは、指定地域を2以上の区域に区分して、それらの区域ごとに定めることができることとされているが、このためには指定ばい煙総量削減計画において2以上の区域に区分した削減目標量が定められていなければならないこと。(法第5条の2第2項及び第5条の3第1項)
          なお、指定地域の区分を行つた場合は、区域ごとに特定工場等の規模を定めることができること。
  3.  3 特別の総量規制基準
    1.   (1) 都道府県知事は、新たにばい煙発生施設が設置された特定工場等(ばい煙発生施設の設置又は構造等の変更により新たに特定工場等となつたものを含む。以下「増設特定工場等」という。)及び新たに設置された特定工場等(以下「新設特定工場等」という。)について特別の総量規制基準を定めることができることとされているが、これは、指定地域が工場等の集合している地域であつて環境基準の確保が困難な地域であること、一般に新設又は増設に際しては最新の公害防止技術の適用が可能であること等を考慮して、現行の硫黄酸化物等に係る特別排出基準に相当するものとして定められたものであるので、この趣旨にかんがみ、当該地域における立地の動向等を充分考慮して定めることが適当であると考えられるためであること。
    2.   (2) 特別の総量規制基準は、一般の総量規制基準の設定方式に準じて定めることとされているが、この場合増設特定工場等と新設特定工場等について、それぞれ特別の総量規制基準を定めることができること。
          なお、特別の総量規制基準を定めようとする場合は、新設特定工場等及び増設特定工場等の増設されたばい煙発生施設から排出される指定ばい煙についての削減目標量が既設の特定工場等に係る削減目標量とは別には握されていることが必要であること。
  4.  4 総量規制基準の公示及び適用
    1.   (1) 都道府県知事は、総量規制基準を定め、変更し、又は廃止するときは、県公報に掲載する等一般に周知徹底するため通常用いられる方法により公示しなければならないこと。(法第5条の2第7項)
          総量規制基準の公示に当たつては、総量規制基準の算定式のほか、特定工場等の規模、原燃料使用量の換算方法、原燃料使用量又は硫黄酸化物の量の認定方法、最大重合地上濃度の算定方法、適用区域等総量規制基準の適用のために必要なすべての事項について、あわせて公示しなければならないこと。
    2.   (2) 総量規制基準を公示する場合には、指定ばい煙総量削減計画の達成の期間(中間目標の達成の期間を含む。)、特定工場等において採られる対応措置等を考慮して、所要の期間をおいて適用期日を定めなければならないこと。
          なお、所要の期間としては、法第13条の2第2項の趣旨にかんがみ、原則として6か月程度以上の期間を定めることが望ましいこと。

第5 指定ばい煙総量削減計画に関する事項

  指定地域にあつては、都道府県知事は指定ばい煙総量削減計画(以下「計画」という。)を作成しなければならないこととされているが、これは大気環境基準をより確実に達成するため総量規制基準の設定に際し、あらかじめ環境基準に照らし科学的に算定された総量をもとに合理的な削減目標量を設定し、計画的に総量の削減を行うことが必要であると考えられたからであること。(法第5条の2第1項)
  このように計画は総量規制基準を定める基礎となるものであり、総量規制制度に極めて重要な役割を有するものであるので、次に述べる事項に十分留意のうえ、計画作成上必要とされる各事項について慎重な調査、検討を行い、適切な計画を作成するよう努められたいこと。
  なお、計画の作成にあたつては、総量の算定等の計画の作成作業の各段階において環境庁と密接な連絡をとられたいこと。

  1.  1 計画の内容
    1.   (1) 計画は、当該指定地域における事業活動その他の人の活動に伴つて発生し大気中に排出される当該指定ばい煙の総量(法第5条の3第1項第1号の総量。以下「1号総量」という。)を大気環境基準に照らし規則で定めるところにより算定される総量(法第5条の3第1項第3号の総量。以下「3号総量」という。)までに削減させることを目途として、当該指定地域におけるすべての特定工場等に設置されているばい煙発生施設において発生し、排出口から大気中に排出される当該指定ばい煙の総量(法第5条の3第1項第2号の総量。以下「第2号総量」という。)についての削減目標量(法第5条の3第1項第4号の削減目標量)並びにその達成の期間及び方途を定めるものであること。(法第5条の3第1項)
    2.   (2) 計画に定める事項
          計画の各事項は、次のように定められたいこと。(令第7条の3第1項、第2項及び第3項)
      1.    ① 計画の達成の期間は、硫黄酸化物については、昭和53年3月における環境基準の確保を目途として定めること。
      2.    ② 計画の達成の方途は、総量規制基準の基本的な内容を定めること。
      3.    ③ 中間目標としての削減目標量は、最終の削減目標量を達成する過程において段階的な削減を行うために定めるものであるが、今回指定された地域については、計画の達成の期間がおおむね3年間となるので、おおむね1年の間を置いて2つまで定めることができることとしたこと。      なお、中間目標は段階的な削減を行うためになるべく定めることが望ましいこと。
    3.   (3) 3号総量
          3号総量は総理府令に定めるところにより、科学的かつ合理的な大気汚染予測手法を用いて、当該地域の汚染が大気環境基準を確保する濃度となることを目途として算定するものであること。(規則第7条の5)
    4.   (4) 地域区分
          計画では、当該指定地域における大気の汚染及び工場又は事業場の分布の状況により、計画の達成上当該指定地域を2以上の区域に区分する必要があるときは、区分される区域ごとに1号総量、2号総量、3号総量及び削減目標量を定めることができることになつていること。(法第5条の3第1項)
          これは、当該地域の社会的、自然的条件を考慮したよりきめ細かい大気汚染防止対策が実施できるようにするものであり、計画において指定地域を区分した場合には、この趣旨を反映するため総量規制基準及び燃料使用基準についても区分された区域ごとにそれぞれ基準を設けることができることとされていること。(法第5条の2第2項、第15条の2第4項)
  2.  2 計画の作成
    1.   (1) 勘案すべき事項等
          計画の作成に当たつては、1号総量に占める2号総量の割合、工場又は事業場の規模、工場又は事業場における使用原料又は燃料の見通し、特定工場等以外の指定ばい煙の発生源における指定ばい煙の排出状況の推移、指定地域外からの指定ばい煙の流入等を勘案するとともに、その作成上必要とされる各時期における発生源の規模又は種類ごとの指定ばい煙の排出状況、特定工場等の規模ごとの使用原料又は燃料の見通し、特定工場等におけるばい煙処理施設の設置の見通し等について適切な考慮を払わなければならないこととされているので、上記の勘案事項及び考慮事項について十分実態のは握に努められたいこと。(法第5条の3第1項、令第7条の4第4項)
          なお、これらの実態のは握の方法及び計画の具体的な作成方法については別途通達する。
    2.   (2) 関係都道府県の協力等
          計画の作成に当たり、必要な資料を隣接都道府県知事が有する場合は、当該都道府県の知事に対し関係資料の送付を求めるとともに、県境をはさんで指定地域が隣接する等の場合は、それぞれの指定地域における指定ばい煙の削減の見通し等の点について必要に応じ関係都道府県間で十分協議されたいこと。また、協議を行つた場合は、その内容についてできる限り環境庁に連絡されたいこと。
          なお、この問題に関しては、必要がある場合においては、環境庁において所要の調整を行う考えであること。
    3.   (3) 計画の作成手続等
      1.    ① 公害対策審議会等の意見の聴取
             計画を定めようとするときは、都道府県公害対策審議会並びに当該指定地域内及びその周辺の関係市町村長の意見を聴かなければならないこととされていること。(法第5条の3第2項)これは、前述した計画の重要性にかんがみ、計画作成に際し、その計画の公平性、妥当性が担保されるような手続が必要であると考えられたからであるので、これらの意見の聴取を行うに当たつては、この趣旨が十分徹底するように、制度の趣旨、計画作成の考え方等について十分な説明を行われたいこと。
      2.    ② 報告
             計画を定めようとするときは、1号総量、2号総量、3号総量、削減目標量並びに計画の達成の期間及び方途を計画を定めようとする日の30日前までに環境庁長官に報告することとされていること。(法第5条の3第3項、規則第7条の6)この報告は、国において全国的な視野に立つて大気汚染防止対策を総合的に推進していくうえから、計画の内容をは握しておく必要があると考えられて設けられたものであること。
             なお、この報告には、規則第7条の6各号に掲げる事項に関する資料を添付することとされているので念のため申し添える。
      3.    ③ 環境庁長官の助言、勧告
             環境庁長官は、計画案の報告を受けたときは、当該計画の作成に関し必要な助言又は勧告をすることができるとされていること。(法第5条の3第4項)
             この制度は、複雑で高度の技術を要する総量の算定が適切に行われているか、計画の作成に当たつて勘案すべき事項等が十分は握され、適切に考慮されているか、隣接する都道府県の計画等との関連が適切に考慮されているかなどについて十分にチエツクし、より適切な計画の作成に資するため特に設けられたものであるので、環境庁においては、法令及び通達の趣旨に沿わない計画の作成が行われている場合等必要があると認められるときは、この規定に基づき助言又は勧告を行うこととしていること。
  3.  3 計画の公告
       計画は公告しなければならないこととされているが、この場合は削減目標量(中間目標としての削減目標量を含む。)並びに計画の達成の期間及び方途(中間目標に係るものを含む。)のみではなく、1号総量、2号総量及び3号総量も公告することとされていること。(法第5条の3第5項)1号総量及び2号総量については、計画の達成の期間の経過時点における計画に基づく削減がない場合に排出が見込まれる指定ばい煙の総量を同時に明らかにすること。
  4.  4 計画の変更
       都道府県知事は、当該指定地域における大気の汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、計画作成の手続に準じて計画の変更を行うことができることとされていること。(法第5条の3第6項及び第7項)
       これは、計画作成後の社会、経済情勢の変動に計画を対応させるのみならず計画の精度を向上させるためのものであるので、計画作成後も常に総量削減の実施状況のは握に努め、計画の各事項について変更が必要であると認められるときは、遅滞なく変更の手続をとられたいこと。

第6 総量規制基準の遵守等に関する事項

  改正法は、総量規制基準の実効性を担保するため、排出基準についてと同様に、ばい煙発生施設の設置前における指定ばい煙の処理の方法の改善等の必要な措置の命令(以下「事前措置命令」という。)に関する規定、特定工場等の指定ばい煙の処理の方法の改善等の必要な措置の命令(以下「改善措置命令」という。)に関する規定及び直罰規定を設けたこと。(法第9条の2、第13条の2第1項、第14条第3項、第33条、第33条の2)
  なお、直罰規定及び改善措置命令に関する規定については、指定地域の変更等の場合に6か月間の適用猶予期間が設けられていること。(法第13条の2第2項、第14条第4項)

  1.  (1) 事前措置命令
       事前措置命令は、特定工場等についてばい煙発生施設の設置又は変更の届出があつた場合において、当該ばい煙発生施設の設置又は変更に伴い当該特定工場等が総量規制基準に違反すると認められるときは、その届出を受理した日から60日以内に限り、当該特定工場等の設置者に対し、当該特定工場等における指定ばい煙の処理の方法の改善、使用燃料の変更その他必要な措置を採るべきことを命ずることができるものであること。(法第9条の2)その他必要な措置としては、届出のあつたばい煙発生施設の設置又は変更に係る計画の変更又は廃止の措置、その他のばい煙発生施設の構造又は使用方法の変更の措置、特定工場等に設置されている一部のばい煙発生施設の使用の一時停止の措置等が考えられること。
       都道府県知事は、これらの措置を命ずるに当たつては、基準違反の程度、施設変更等の可能性等に応じて、適切な措置を命ぜられたいこと。
       なお、この命令に従わない者がある場合においては、大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について(昭和46年8月19日付け環大企第3号本職通知)第3の6の(2)のアと同様に告発の手続をとられたいこと。
  2.  (2) 改善措置命令
       改善措置命令は、総量規制基準に適合しない指定ばい煙が継続して排出されるおそれがある場合において、人の健康又は生活環境の被害が現に生じていなくとも被害が生ずると認めるときは発動し得るものであること。(法第14条第3項)
       なお、この命令については(1)を参照されたいこと。
  3.  (3) 直罰規定
       直罰規定の運用に当たつては、前記本職通知第3の6の(2)のアに述べる事項に留意し、厳正な運用を期されたいこと。(法第13条の2)
       なお、総量規制基準は、特定工場等に設置されているすべてのばい煙発生施設において発生し、排出口から大気中に排出される当該指定ばい煙の合計量について定める許容限度であるので、発生源の監視には従来以上の困難が伴うが、前記本職通知第3の6の(1)に述べるところに従つて監視体制の充実を図られたいこと。

第7 指定地域における燃料の使用に関する措置に関する事項

  1.  1 指定地域における燃料の使用に関する措置の内容
    1.   (1) 改正により新たに指定地域における特定工場等以外の工場又は事業場に対して、燃料の使用に関する措置を実施することとされたこと。(法第15条の2)これは、総量規制基準が適用されない特定工場等以外の小規模の工場又は事業場も硫黄酸化物による大気の汚染に寄与していることにかんがみ、これらの工場等に対して硫黄酸化物による大気汚染の改善を図らせるために設けられたものであること。
          なお、指定地域における燃料の使用に関する措置は年間を通じて実施されるものであることから、従来の燃料の使用に関する措置は「季節による燃料の使用に関する措置」と改められたこと。(法第15条)
    2.   (2) 工場又は事業場が遵守しなければならない燃料使用基準は、硫黄酸化物に係るばい煙発生施設が設置されている特定工場等以外の工場又は事業場について定める基準とし、重油その他の石油系燃料について、環境庁長官が定める基準に従い、都道府県知事が指定地域ごとに定めることとされていること。(法第15条の2第3項、規則第14条)環境庁長官が定める基準は、各指定地域の実情をは握したうえ、原則として燃料中の硫黄含有率について定め、おつて告示することとしていること。
    3.   (3) 燃料使用基準は、硫黄酸化物に係る計画を作成する場合において必要な特定工場等以外の発生源から排出される硫黄酸化物の排出状況の見通しに関係するものであるので、計画と十分関連をもたせて定めなければならないこと。したがつて、計画上中間目標量を定めて段階的に削減を行う場合は、総量規制基準と同様に、燃料使用基準についても段階的な強化を行うことが望ましいこと。また、計画上指定地域を区分した場合等必要があると認めるときは、区分された区域ごとに燃料使用基準を定めることができることとされていること。(法第15条の2第4項)
  2.  2 燃料使用基準の公示等
       燃料使用基準を定め、変更し、又は廃止するときは、所要の期間をおいて適用期日を定め、公示しなければならないが、燃料使用基準の適用を受ける工場又は事業場は多数にのぼると考えられるので、対象工場等に対しては、十分その趣旨の周知徹底を図り、燃料規制の円滑な実施を期されたいこと。(法第15条の2第5項)
  3.  3 基準適合勧告、命令
       燃料使用基準に適合しない燃料の使用をしていると認められる者に対しては、その遵守につき、期限を定めて勧告又は命令により是正させる措置をとられたいこと。(法第15条の2第1項及び第2項、法第34条第2号)
       季節による燃料の使用に関する措置が適用される地域と指定地域が重なり、それぞれの措置について適用される燃料使用基準が異なる場合は、通年規制である指定地域に係る燃料使用基準を遵守させるのはもちろんのこと、季節によつては、季節に係る燃料使用基準を遵守させる必要があること。

第8 鉱山、電気工作物等の取扱い

  1.  1 鉱山について
       鉱山保安法の適用を受ける工場等(以下「鉱山」という。)については、総量規制基準等に関する規定は適用されないが、特定工場等と同等の削減を行うよう鉱山保安法の体系で措置されることになつていること。したがつて、計画において、3号総量削減目標量等の算定を行うに当つては、鉱山についても特定工場等と同様の削減が行われることを見込んで算定されたいこと。
       なお、計画の作成のため必要な鉱山に関する資料は、所轄鉱山保安監督部(局)に求められたいこと。
  2.  2 電気工作物等について
       電気工作物又はガス工作物であるばい煙発生施設において発生する指定ばい煙を排出する者については、事前措置命令及び改善措置命令に関する規定が適用除外とされているが、都道府県知事は地域における総合的な大気汚染防止対策を実施できるように通商産業大臣に対して電気事業法又はガス事業法による措置をとるべきことを要請することができるものであること。(法第27条第2項及び第4項)なお、当該要請に必要な報告徴収又は立入検査については、従来の排出基準の場合と同様立入検査をすることができるものであること。

第9 政令市の長の通知等に関する事項

  1.  1 政令市の長の通知
       指定地域内の政令市及び指定地域に影響を及ぼすばい煙発生施設が当該区域内にある政令市の長は、計画及び総量規制基準の設定等に必要なばい煙発生施設の設置の届出の内容等総理府令に定める事項を通知すべきこととされたこと。(法第31条第2項、規則第20条)
       通知の時期等については、都道府県知事及び政令市市長との間で協議のうえ最も適切な時期等を定めておくことが望ましいが、都道府県知事及び政令市市長間においては総量規制の円滑な実施のためにも、日頃からできるだけ密接な連絡体制を確立するよう努められたいこと。
  2.  2 事務の委任
       改正法に基づく都道府県知事の権限に属する事前措置命令、指定地域における燃料使用基準適合勧告等に関する事務は、事業場に係るものについては函館市等51市の長に、工場及び事業場に係るものについては札幌市等9市の長に委任されることとされたいこと。(令第13条)
  3.  3 ばい煙量の常時測定
    総量規制基準の遵守に資するため、特定工場等に設置されているばい煙発生施設で環境庁長官が定める量以上の硫黄酸化物を排出するものに係るばい煙量については、常時測定を行うこととされたこと。(規則第15条第1号及び第6号)常時測定を行うべきばい煙発生施設の規模及び常時測定の方法については、おつて告示することとしていること。